「女だらけの戦艦大和」・<上>に注意!

昨年の暮れ、空母・「蒼龍」の五人組なかよしグループ、自称「嵐」(注・この場合は駆逐艦の名前ではありません)の一人、二宮水兵長は占い師に『上に注意』と言われながらも、穴に落ちると言う事態に「もう占いなんか信じてやんない!」と怒っていたが――

 

「蒼龍」のなかよし・嵐五人組は配置は一緒ではない。大野水兵長と相葉水兵長は整備兵として活躍、二宮水兵長・櫻井水兵長が主計科烹炊員、そして松本水兵長は航海科である。

でも五人はなかよし。

「蒼龍」はインド洋での大作戦を無事終えて、僚艦の「飛龍」その他の艦艇とともに大スンダ列島に沿って東進、スンダ海峡を抜けてボルネオ島・バリクパパンに行き給油と休養の予定である。大変な戦いだった・・・セイロン沖海戦。でも、第一航空戦隊(「加賀」は今回不参加)・二航戦ほかの航空部隊と参加艦艇の奮戦で大勝利を収めたのだった。

 

さて、あの日からもう数ヶ月たったのだがこのところ二宮水兵長は浮かない顔つきでいる。久しぶりに五人が夜になって飛行甲板で会った時も、彼女は浮かない顔。

松本水兵長が心配して、

「ニノ、どうしたんだね?なんだか顔色悪くない?せっかく勝ったのにそんな不景気な顔してたらやだなあ」

と言うと大野・相葉も同調した。二宮水兵長はその場に座り込んで、「うん・・・」と生返事。大野水兵長が同じ配置の櫻井水兵長に、

「どうしたのさ、なんかニノおかしくねえ?」

と言うと櫻井は鼻の下を右手の人差指でごしごしこすってから、

「あのさ、覚えてない?」

と言った。大野水兵長たちは「なにを?」と一斉に尋ねた。そう言われてちょっとずっこけた感の櫻井水兵長は、

「ほら、去年の暮れ横須賀で占い師のお婆さんに視てもらったの、覚えてない?」

ともう一遍言った。すると、相葉水兵長が「ああ!」と大声を出して二宮水兵長に向かって

「あの時ニノ、『上に注意しなさい、災難は上から来る。頭上注意』って言われたけど穴におっこっちゃったんだよね!」

と言って笑った。二宮水兵長は相葉水兵長を見てうなずいた。「で、」と松本が言う、「それがどうかしたの?」。

櫻井水兵長は艦内帽を一旦取って少し伸びた前髪をかきあげ、額の汗を手の甲で拭うと艦内帽をまた被った。そして、

「それがさ、そのあとからあの占い、当たり始めちゃってさあ」

と言うと皆が「ええ!まさか」とのけぞった。そして「ホントかね、おい!」と三人が二宮水兵長を囲んだ。

二宮水兵長はぼそぼそと語り始めた・・・

 

あのあとさ、穴に落ちたからこの占いは外れたな!って思ってたんだよね。そのあともしばらくは何事もなかったし。でもね、「蒼龍」が作戦に出る支度を始めた今年の頭あたりからおかしくなってきたんだよ。

ほら、俺って烹炊所でしょ。だからあまり上に注意するようなことはないと思ってたんだけど、しゃがんで何かを取ろうとしてた時に上からお湯が落ちてきたり、だいこんが落ちて頭を直撃したり。それだけならいいけど、居住区に戻ろうとしてラッタルを上りだしたらラッタルの一段が外れて頭にぶつかったり、かと思えば水虫にはなるし・・・ってこれは上じゃないけどすっごい痒くってもうたまらなかったし。極めつけはハンモックで寝てたら上からでっかい蜘蛛が降りて来たし。俺が蜘蛛を大っきらいなの、知ってるでしょ?

もういやだ、きっとこの先もっと嫌なことか怖いことがあるに違いないよ!きっとおれは内地に着く前に死んじゃうんだ、・・・それもきっとくだらないことで死んじゃうんだよ。いやだよそんな死に方!

 

そう一気に離すと二宮水兵長は泣きだした。皆は黙って彼女の泣くのを見つめている。大野水兵長が声を励まして、二宮の肩を揺すると

「何言ってんだよ、そんなのただの偶然だ偶然!大体占いなんかに左右されるなんてニノらしくないぜ?極めつけが来たんならもう終わりだよ、それに水虫は上じゃなくて足だから下だろ。

だいたいさ、あの戦いでも何事もなく無事に済んだんだからあの占いは外れたんじゃないか?ホントに当たったなら、ニノはここにこうしていられないかもしれなかっただろ?だからもう大丈夫だよ。あまり気にすると、却って不幸を呼ぶぜ、もう考えるのやめろよ。な?」

と言ってやった。

櫻井も松本も、大野水兵長もそうだそうだ、気にし過ぎだと励まし始める。座り込んでいた二宮水兵長は、ゆっくり立ち上がりそして皆の顔を見回した。

「そうかな・・・あの占い、もう終わったのかな」

そういう二宮水兵長に、皆は大きくうなずいた。やっとそこで二宮水兵長は顔をあげた、帽子の庇の下の瞳が、やっと生気を取り戻したように輝いた。二宮水兵長は防暑服の袖から出た腕を軽くさすると、

「じゃあ、もう気にしない!気にしないったら気にしない!上がなんだ、上なんかこわかねえぞ。ワハハハ!!」

と今度は打って変って豪快になった。大野たちはその変わり身の早さに少しびっくりはしたが(これがニノかもな、まあ良かった)と安心したのだった。

 

二宮水兵長は、皆と別れ櫻井水兵長と肩を並べて居住区に帰る。

すると居住区の前で班長がそれは怖い顔で待ち構えていて、二宮水兵長の顔を見るなり

「二宮あ!貴様いったいどこ見て仕事してるんだ、水兵長にもなっていい加減な仕事しやがって、こっち来い!」

と怒鳴る。いったい俺が何をしたと、とけげんな顔の二宮水兵長を班長は引きずるように烹炊所へ連行。

烹炊所の冷蔵庫に引っ張ってゆかれた二宮水兵長、「扉を開けてみろ」と言われ開けてみれば。

棚に置くべき食品がすべて冷蔵庫の床に積まれ、足の踏み場がないし、荷物で壁が出来てしまっている。

これは二宮水兵長が「頭上注意」を気にして自分の頭の高さより上に物をあげなかったそのせいである。

「なんで棚に上げんのだ、これじゃあ作業ができんじゃないか!足の踏み場がねえじゃねえか、ふざけてるんじゃあ、ない!」

班長は大変怒って、

「これは今夜中に貴様一人で片付けろ。櫻井、貴様絶対手伝うなよ。最近こいつはボーっとしてて上の空でいけない。今度こんなことしやがったら海にたたきこむからそう思え、いいなっ!」

と怒鳴り、二宮水兵長は泣く泣くそれを片づける羽目に。

櫻井水兵長はそう言われた手前、手伝うわけにもいかず一人居住区に帰ったが翌日烹炊所に言ってみると今度は掌主計長から二宮がお叱りを受けている。

「リンゴが十個足りない、貴様夕べギンバイしたな!?正直に言わんか!」

二宮水兵長は泣きながら「しません、食ってません。十個も食えませ~ん」と訴えていたが。

 

それを気の毒そうに見ていた櫻井水兵長の頭に電光のように閃いたことが。

「上に注意、頭上注意」とは単に位置的な上、ではなく「上の」人間に注意せよということではなかったのだろうか、と。

(あの占い師のお婆さん、妙な言い方しないでちゃんとわかりやすく言ってくれたらよかったのに)

櫻井水兵長は、泣きながら「リンゴ食ってません」と言うニノを憐れむような瞳で見つめていた。

 

その頃、横須賀の街ではあの占い師のお婆さんが(去年のあのかわいい水兵さん。今頃上官に叱られてなきゃあいいけどねえ。あたしの占い、結構当たるんだから)と思っている――

 

         ・・・・・・・・・・・・・・・・

ギエッ!二宮水兵長ご難でした・・・でも本物のニノくんが嫌いで書いたんじゃないのでその辺誤解なきよう(実は好きなんじゃ!!)。

 

上に注意、と言われたらまず自分の頭の上を注意しますよねえ。困った言葉の使い方をする占い師さんでした。

・・・え、言葉の裏をよく考えなきゃだめじゃないかって?占い師のお婆さんからのご伝言でした・・・(-_-;) はい、気をつけます・・・。


嵐の皆さん

嵐の皆さん。かっこいいですね^^!(画像お借りしました)


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まろゆーろさんへ

まろゆーろさんこんばんは!
如何にも「軍隊もの」らしい<上>の話でした(^^ゞ

上というもの、位置でも人でも気をつけないと痛い目にあったりしますね。ホント要注意です。
きっとそのうち二宮さんはじめ、「女だらけの蒼龍」のみなにもいいことがあると思います❤ 可愛い二ノちゃんを今後もよろしくです♪

浅田次郎さんの「蒼穹の昴」、読んでみたいと思いました!!

matsuyama さんへ

matsuyama さんこんばんは!
そうです、二宮水兵長はあの「嵐」の二宮君がモデルです^^。
matsuyama さんも二ノくんがお好きですか!

「拝啓父上様」私も少し見てましたがあの辺りから二ノくん、それから嵐自体が変わってきた気がしています(良い方へ、ですね)。
二宮君の出演の「硫黄島からの手紙」もよかったですね。磨き方次第ではいい俳優になれそうです!!

二宮くんだと思って読むと…この話大変気の毒でたまりません(泣)。

柴犬ケイさんへ

柴犬ケイさんこんばんは!

占いを気にするあまり、過去を振り返りすぎては本末転倒のような気がしますよね。
人間例えば歴史は過去に学ぶことは大事ですが、自分自身の人生を必要以上に振り返り後悔しているとつまらない人生になっちゃいますね。
そういう考えの人と話をするのは苦痛ですね(-_-;)

今日は夕方から雨でしたがモミジ散歩に行って嬉しそうです^^。

オスカーさんへ

オスカーさんこんばんは!
典型的な昭和っ子、ニノちゃんです~ww。

占い、信じるも信じないも本人次第ではありますが、あまり気にし過ぎてもいけないですよね。生活がそれに振り回される人も時にいるようですが・・・「たかが占い」と済ますのも手ですよね。

話の裏というか、芯の部分を聴き逃してはいけないという教訓?いや、そんな高尚な話ではないですねww。

No title

そういう「上」でもあったわけですね。
落ちる物も、癇癪持ちの人も、上の存在にはくれぐれも気を付けなきゃならないということでしょうか。でも流れは上から下にが自然の摂理ですのでそのうちニノさんにも良いものでもと思っていますが……。しかしニノさん、可愛いですね。
大当たりの占い師さん、浅田次郎の蒼穹の昴に出てきた白太太という占いばあちゃんを思い出しました。

ジスさんへ

ジスさんこんばんは!

お嬢さんの大好きな嵐!実は私も大好きなんですよ~~^^。
なんて言うか、嫌みのないグループですよね。感じがいいです。
そこでというわけでもないですがこんな役どころに…(^_^;) お嬢さんがこれを読んだら・・・・大泣きされちゃうかな(^^ゞ

位置的な「上」も注意しないとですが、人間関係の「上」は正直うっとうしいこと多し・・・ですね。上の人ってあまり部下のことを気にしていないことが多くって腹が立つことがあって。
でもきっとそのうちいいことありますからね、信じて待ちましょうね^^!

No title

二宮水兵長、とんだ災難続きですね。続く時は続くもんですよね。
ところで二宮水兵長、嵐の二宮和也がモデルだと思うんですが、実は自分も嵐の中ではこの二宮のファンなんですよ。
5,6年前確か「拝啓 父上様」とかいうTVドラマに出演してましたよね。それまでチャラチャラしたイメージしかなかった彼の演技を見て「あっ、好演してるじゃないか」と、見直しました。あの影のありそうな役どころを立派にこなしてましたからね。思わず最終回まで見ちゃいましたよ。
あの二宮君が班長に叱られたり、主計長に疑惑をかけられたり。ちょっとかわいそう(笑)。

No title

見張り員さん   こんばんは♪

いつもありがとうございます♪

占いを妙に気にしているいますが自分の心にあの時こうして
おけば良かったとか時々思い出すんでしょうね。
その方と話をすると過去の後悔ばかりで疲れます。

梅雨でモミジちゃんの散歩も大変でしょうがもう少しの我慢ですね。

こんばんは。ニノは昭和の匂いがします(笑)占いってまず自分の気にしていることと結びつけちゃって、全然違うことを注意したり気をつけたりして、とんでもない災難を自分から招いたりしますよね…今回は人の話はよく聞きましょう~わからないことはちゃんと確認しよう~という良い教訓になったと思います(笑)

No title

こんばんは。いつもありがとうございます。

おお~。娘の大好きな嵐のメンバー勢ぞろいですね。
小学校でもとても流行っているようで、娘はこの春のドラマ、毎週録画して大喜びで見ていました。そして週に三本のバラエティも毎週見ています。

「上」に注意・・・なるほど。人間関係のことですか。私も毎日「上」に注意してばっかりですが何にも良いことがありません。どっか可怪しいのかもしれませんね(T_T)
プロフィール

見張り員

Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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