2017-09

「女だらけの戦艦大和」・番外編 キケンな島1 - 2012.06.21 Thu

ある日、「女だらけの大和」の麻生分隊士、見張兵曹、小泉兵曹、長妻兵曹そしてハッシー・デ・ラ・マツコにトメキチは、ちょっとしたことから乗っていたカッタ―が航路を外れ、「漂流」する羽目に――

 

「こまったのう、もう日が暮れる。無線機もないしどがいにしたらええか」

そう、泣きそうな声でいう小泉兵曹に、麻生分隊士はなだめるように

「こうなったら仕方ない、明日陽が昇るまで待つしか無かろう。うちらが帰らんことはもうきっと航海長も知って、艦長にいっとるよ。明日になったら水偵を飛ばしてくれるじゃろ。じたばたせんことじゃ」

と言ってトメキチとマツコを見て「お前たち、海に落ちんようにせえよ」と言ってはしけの中ほどに引き寄せ、皆で二匹を囲むように座った。

「これならちいとばかり海が荒れたとしても安心じゃけえね」

そう言って分隊士は二匹を安心させた。長妻兵曹がマツコの肩を抱き見張兵曹がトメキチをしっかり抱えた。

 

が。

この夜にはお約束のように海が荒れしかも、風雨が強くなってきた。

「いけんで、これは。皆ひと塊りになって姿勢を低うせんと落ちるで!」

麻生分隊士の叫びも風雨と波の音にかき消される。でも皆はしっかりひっつきあって船底にへばりついた。

 

と、ひときわ大きな波がカッターをひっくり返した――

 

どのくらい経ったのだろう?

砂浜を小さな波が叩く音と、明るい日差しに麻生分隊士はハッとして起き上がった。そこは、見知らぬ小島の浜辺。どこもけがをした様子もなく痛みもない、分隊士はほっとした。

「オトメチャン、小泉、長妻!トメキチ、ハシビロ!」

あわてて周囲を見回すとカッターは波打ち際にひっくり返り、皆はその周辺に点々と横たわっている。麻生分隊士は走り寄って「長妻!小泉!おお、トメキチにハシビロ・・大丈夫か?」とそれぞれをゆり起した。そして「オトメチャン、オトメチャンはどこじゃ」

オトメチャンの姿が見えず、分隊士はあわてた。(まさか、どこかに流されてしもうたんじゃないじゃろうな)

一瞬その場に立ち尽くす分隊士。

気がついて起き上がった小泉兵曹、長妻兵曹も周囲を見回した。トメキチが、その身を起すと一目散にカッターのそばに駆け寄った。カッターの下を覗き込むようにしたトメキチは、

「おばさん、トメさんがこの下にいるよ」

そう叫ぶと、これも起き上がって羽を繕っていたマツコが顔をあげて分隊士のもとに駆け寄るとそのくちばしで分隊士の腰をつついた、「ちょっとあんたの大事な小娘があの下にいるわよ!」

「どうしたハシビロ!」

分隊士は服の裾をマツコにくわえられて艀のもとへ。「まさか、この下に居るんか!」麻生分隊士は顔色を変えると

「おーい、小泉、長妻ぁ!ここにオトメチャンが居るようじゃ、手え貸してくれ!」

と怒鳴って二人はすっ飛んできた。

三人と二匹で重いカッターはやっとこさ、持ち上げられた。と、

「あっ、オトメチャンが!」と小泉兵曹の叫び、見れば見張兵曹がうつぶせになってその身を水につけている。顔色が青白い。

「いけんでこりゃ、おいオトメチャンしっかりせえ」

分隊士は兵曹を抱きあげ、乾いた砂の上に兵曹を置いた。「オトメチャン、しっかりせえ」と長妻兵曹が叫んでとりすがった。小泉兵曹がトメキチを抱きしめた。

マツコが黙って見張兵曹を見下ろして(駄目かもね、これは。こんな顔色じゃあ助からないかも)と思ってそのまぶたを閉じた。

麻生分隊士は「オトメチャン、戻ってこい!」と叫ぶと人工呼吸を始めた。オトメチャンの服の前を開くと、その胸を押した。そして自分の口をオトメチャンの口につけて息を吹き込んだ。

何度も、何度も・・・

麻生分隊士は

「オトメチャン、戻れ!戻ってこい、死んだらいけん。死んだらいけんで、俺を置いて死ぬんは許さんで、オトメチャン!」

と絶叫しながら胸を押す。小泉兵曹や長妻兵曹、マツコにトメキチが心配そうに取り巻いているが見張兵曹は蘇生しない。

麻生分隊士がそれでも彼女の胸を押して、「帰ってこーい!」と叫んで、次の瞬間オトメチャンの上に突っ伏すように体を投げ出すと号泣した。

皆もすすり泣き始めた時・・・「ごふっ!」と何かをはきだす音がして、見ればオトメチャンが飲んだ海水を吐き出しているところだった。

「おお!オトメチャン」「オトメチャン!」「ワンワン」「カタカタカタ・・・」

その場の皆が声を上げた。オトメチャンはまだゴホゴホと咳こんで海水を吐き出している。分隊士はその体を少し起こしてやるとオトメチャンは一気に水を吐いた。

そして「・・・分隊士、みんな。うちはどがいしたんじゃ?」と弱い声で尋ねた。分隊士が、

「あの大風でカッターが転覆したんじゃ。オトメチャンはカッタ―の下敷きになっとったんじゃ。ほいでも無事でえかった」

と言ってほっとしたように腰をその場に落とした。オトメチャンは体を起して、

「ほうでしたか、すみません。ご心配をおかけしてしもうて」

と謝った。長妻兵曹が

「オトメチャンの謝ることじゃないけえ。仕方がないことじゃ、じゃが、息を吹き返してえかったのう」

と言ってオトメチャンの肩をそっと叩いた。皆の間に安どの空気が流れた時、マツコがふっと顔をあげてトメキチに囁いた。

「ねえ、トメキチ。あんた何か感じない?」

トメキチもマツコの瞳を見つめて、

「おばさんも感じてたのね。僕も変なもの感じるの。・・・早くここを出た方がいいと思うんだけど」

と言って不安げに島の奥の方を見る。

だが、人間たちにはその不安感は感じられないようだ。ここがどこだか、どがいなところだかわからんが丘があればそこに登って周囲を見たら何かわかると分隊士が言いだし、皆も同意して島の内部へと歩き出した。

「いやな感じだわね。あんた、ちょっと周りに注意してよね」

マツコは周りを気にしながら歩く、トメキチもフンフンと鼻を鳴らしながら歩いて

「おばさんもね」

と言った。

不意に長妻兵曹が、

「おう、あれこそわが命!」

と叫ぶなり服を脱ぎ捨てて走り出した。

マツコが、激しく舌打ちして「あのバカ女!」と鋭く叫ぶのがトメキチに聞こえた――

  (次回に続きます)

 

        ・・・・・・・・・・・・・・・・・

番外編です。

シリアスっぽいですが、どんなことに?サスペンスでしょうか、それとも??

次回をご期待下さいね~。
 
(WIKIより拝借いたしました)


長妻昭さん。一応長妻兵曹の(名前だけ)モデルです。全くイメージ違うよね(^^ゞ

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● COMMENT ●

matsuyama さんへ


matsuyama さんこんばんは!

考えてみればオトメチャンもう何回目でしょう、命の危険にさらされるのって。
波乱に満ちた人生がこのこの宿命なのかそれとも書き手の意地悪か!?

溺死した人は本当に気の毒な様子になると私も母親から聞きました。田舎で川に落ちた子供が上がった時、そのひどさにみな声がなかったと・・・

オトメチャン、分隊士の愛の力で蘇生していますね。
やはり二人は離れられない運命なのかも・・・!

オスカーさんへ

オスカーさんこんばんは!

いやあ・・・期待はずれな展開になってごめんなさい!
「もう読まない!」なんておっしゃらないでぇ~~~~!(泣)

ラブラブシーンは、もうちょっと先のお楽しみということでご勘弁ください^^!

いつもコメントをありがとうございます、励みになります!

オトメちゃん、何度か九死に一生をえているようですね。運がいいのか、それが宿命なのか。
縁起でもない話ですけど、溺死した土左衛門は相当水を飲み、顔なんかも水ぶくれになるんだそうですね。生前の面影がないそうです。
オトメちゃんが吐いた水も麻生分隊士の人工呼吸のお陰かもしれませんね。よかった、可愛いオトメちゃん、水ぶくれにならずにすんで。

こんばんは。ナニナニ~気になる展開!!ブルック・シールズの「青い珊瑚礁」(古い!!)みたいなラブラブ&お楽しみなシーンはあるのか!?←おやぢ過ぎ!!続きはなるべく早めにお願いします(爆)

まろゆーろさんへ

まろゆーろさんこんばんは!
オトメチャンは不死身です・・・(^^ゞ
でもみな、いいやつばかりです。親身になって心配しています、トメキチもマツコも・・・。

この島は一体何が潜んでいるのでしょうか。
実は・・・大変しょうもないものだったりして!?
マツコがどう出ますか、ご期待くださいね♪

一時はどうなることかと……。
オトメチャン、生き返ってくれてほっとしました。みんな、仲間なのですね。
ところでこの島は一体……。動物にしか察知できない危険。身に迫っているのでしょうか。心配ですね。何も感じない人間、無鉄砲の長妻さんは大丈夫でしょうか。どうやらマツコさんの大きな出番がありそうな予感がしています。


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Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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