2017-10

「女だらけの戦艦大和」・嵐の中で3 - 2012.05.29 Tue

台風はついにその牙をむき出しにして襲いかかって来たのである――

 

・・・その晩二〇〇〇(午後八時)、ついに強風が吹き始めた。海上は白い波しぶきが立ち視界があっという間に悪くなった。二一〇〇(午後九時)過ぎには雨さえ降りだしそれが艦全体に叩きつけて来た。

梨賀艦長は第一艦橋からそれを見て「総員警戒せよ。最上甲板に出ることを禁ず。各分隊長は分隊員の動向を掌握せよ」と命令を出した。つまり、分隊長においては各分隊員がどこにいるか、その所在を確認しておけということである。どこの分隊長もそれを聞くや、一散に居住区や各配置に走って行って「○○分隊集合!」の号令をかける。

そして皆の所在と安全を確かめるとまた、自分の持ち場に散ってゆくのである。

十三分隊の松岡分隊長も分隊の総員を集めてその所在と安全を確かめた。そして麻生分隊士を見返って、

「麻生さん、じゃあ私と一緒に来てくれるかな」

と言い麻生分隊士はちらっと見張兵曹を見てから「はい」と返事をして分隊長と行こうとした。その目の端に樽美酒少尉がそっと見張兵曹の手に触れるのが見えた。

(こいつ、絶対許さねえ)

麻生分隊士の口が思い切りひんまがった。その分隊士の手を松岡分隊長はしっかり握ると「さあ、麻生さん急ぐよ!熱くなろうぜ―、でっかい台風だあ!今日から君も台風だ!」というと走ってゆく。それを見た見張兵曹の顔が曇り、樽美酒少尉は・・・。

その頃にはトメキチとマツコは航海科の居住区に収容され、マツコは「怖いわねえ。タイフウって言うんですってよこの嵐!」と感にたえたように言ってくちばしをカタカタさせた。それを見て航海科の兵たちが「おお、見てぇ?ハシビロがよろこんどるわ」と手を叩いて大笑い。トメキチは酒井上水の膝に入って「おばさんでもその言い方じゃ、怖そうじゃあないねえ」と言って笑う。マツコはその目を細めると、「まあ、これより怖いことが今晩か・・・明日の晩までには起きそうな感じがするからね」と言って・・・トメキチはなんとなく背筋がぞっとしたのだった。

 

さらに翌日、台風はその猛威を存分にふるい始めた。天辰中尉は「これから明日明後日くらいが正念場ですね。気を引き締めてゆきましょう」と梨賀艦長、野村副長に言った。梨賀艦長と副長は重々しくうなずいた。艦橋の外を、どこからか吹き飛ばされてきた木の枝が飛ぶのが一瞬、見えては消えた。

 

その晩も遅く、下甲板の艦首側の一角で・・・

バシッ!と一発の鉄拳が鳴って一人の士官が廊下に倒れた。倒れたのは誰あろう樽美酒少尉、殴ったのは麻生分隊士である。麻生分隊士は松岡分隊長との仕事が終わった後樽美酒少尉を呼び出していきなり殴ったのだった。

「貴様、なんで見張兵曹に手を出すんだ!見張兵曹は・・・兵曹は、おれのものだ!」

そういうと倒れた樽美酒少尉を引き起こした。そして食いつくように

「なんで兵曹にちょっかいかける!?ああ?どういうつもりなんだ、ええ!?」

と言ってゆすぶった。樽美酒少尉が何か言いかけるそこに、誰かが知らせたのだろうか見張兵曹が駆けつけて来た。

樽美酒少尉をつかんだ麻生分隊士の腕にすがって、

「お願いであります、分隊士。もう乱暴は止めてつかあさい」

と懇願した。樽美酒少尉が「大丈夫だから、麻生分隊士に今から私がお話しするから」というのを遮って、麻生分隊士は「オトメチャンはあっちに行ってろ!俺は樽美酒少尉が許せんのじゃ!・・・大事な、大事な俺のオトメチャンを・・・」と怒鳴って樽美酒少尉を締めつける。「・・・ぐッ・・・」と樽美酒少尉の喉が少し鳴った。

と、見張兵曹の顔が歪んで涙がボロボロ流れた。そして

「うちはこがいなことをする分隊士が許せん!それに、分隊士が樽美酒少尉を殴ってええなら、うちだって、うちだって、・・・を殴りた・・」

最後のほうはかすれた声で聞き取れなかったがオトメチャンは、くるりと背を向けると走り去ってしまった。麻生分隊士は「オトメチャン!」と鋭く叫ぶと樽美酒少尉から手を離して、「樽、一時休戦だ。オトメチャンを追うぞ!」と言い樽美酒少尉も「はい!」と叫んで麻生分隊士の後を付いてゆく。

 

オトメチャンは寝静まった艦内を泣きながら走っていた。(分隊士のあほ。どうして樽美酒少尉を殴るんじゃ。うちだって、うちだって・・・)

その足音を聞きつけてまずトメキチが居住区の床から顔を上げた。次に入り口近くに立って眠っていたマツコも目を開けた。トメキチとマツコは顔を見合わせた。マツコが「・・・あの小娘の足音ね。泣いてるようよ、どこへ行こうってのかしらねえ」とつぶやいた。トメキチが「ずっと上の方に行ったみたい。・・・まさか、ねえおばさん!」

その声を合図のようにマツコとトメキチは居住区を飛び出していた。マツコは長い脚を器用に動かして走りながら、

「全くばかな小娘ねえ、こんな日に外に出ようとするなんて自殺行為よ。いったい何があったって言うのかしらねえ」

とぼやく。トメキチにはうっすらと理由がわかるような気がしていた。(このところ麻生さんとトメさんはあまり一緒にいる機会がないし、あのお休みの時もあちこち行ったりして疲れたようだったし。いつも夜になるとトメさんのお布団に入っちゃう麻生さんがそれをしない日もあったしね。最近松岡さんがやたらと麻生さんを触ること多いからトメさんは気が気じゃないと思うんだよね。それがもしかしたら?麻生さんは麻生さんで樽美酒さんがトメさんに接近してると思ってるみたいだし)

 

オトメチャンは泣きながらラッタルを駆け上がる。そして艦橋内に入って防空指揮所へひた走る。途中の部屋にも誰かがいたはずだが、皆台風の警戒で神経をとがらせているからちょっとくらいの物音には耳も貸さないようで、オトメチャンが泣きながらあがって行ったのを誰も知らない。

やがてオトメチャンは、指揮所の重い扉を開いた。

ドオオオ・・・とものすごい風の音と風圧に気押されそうになりながらもオトメチャンは扉の隙間に体をねじ込むようにして指揮所に出た。

オトメチャンの小さい体を吹き飛ばさんばかりの雨と風が吹きつけてくる――

 

           ・・・・・・・・・・・・

さあたいへん。

麻生分隊士とオトメチャンの間に何があったのでしょう。台風も佳境に入ってきたようです、どうなる、「女だらけの大和」!?

 

台風とは無関係ですが好きな歌です。「如何に狂風」。



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● COMMENT ●

tama さんへ

tama さんこんばんは!
ホント今朝は何気なくバスを見たら、!!でした^^。

昨日のグラタンはきっと上手にできたことと思います!
どうぞゆっくり読んでやってくださいね、ありがとう!!

爆笑中

こんにちわ!先程はバスへのお見送りありがとうございました。
今日は母の病院&美容院の付き添いです。病院メチャ混みで酸欠なので、いま外階段で、携帯で検索して訪問できました。
昨日はグラタンで力尽きて、マツコまでたどり着かなかったの、ごめんなさい。いま読みながら爆笑中です。おでかけの楽しみが増えました♪

まろゆーろさんへ

まろゆーろさん、お返事遅くなってごめんなさいね!

さあ!風雲急を告げる「女だらけの大和・IN・小笠原」です!この複雑に絡み合った人間関係(しかも少しただれているかもしれない)、どううまく清算するのでしょうか。清算のはずが凄惨なことにならなきゃいいのですが・・・(-_-;)

トメキチ&マツコ、もうみんなの意識の中にしっかり納まっていますので、避難も完了しました^^。

>みんなが知りあいのようになっている私の心です。
とてもうれしいお言葉です、書いてきた甲斐があるというものです!ありがとうございます!!

オスカーさんへ

オスカーさん、お返事遅くなってごめんなさいね!

愛の嵐は吹き荒れる・・・。こりゃあ確実のようですね^^。
そういえば「アラシ」の名の戦隊ものとか忍者ものがかつてよくあった気がしますね~、なんかそそられる語感なのかしら??

さあいよいよクライマックスの「小笠原嵐編」ご期待を~~~!

ジスさんへ

ジスさん、お返事遅くなり御免なさい!!

さあ来ました台風!そして愛の嵐は吹き荒れるのか…見どころがやってまいりますよ~~~ww!

ダルビッシュさん、いい感じの活躍に嬉しくなりますね。うんと頑張って、自分を思いきりだして目立ってほしいです^^。

どうもこのところ天気が落ち着かないですね。最近になってようやく「雷」の怖さを思い知った感のあるこの頃です。

どうぞ御身大切にお過ごしください!

NoTitle

おぉ、手に汗握る展開になってきました!!
頭の中はまるで暴風のようにあれこれの思考やら空想が渦巻いております。
どうなっちゃうの!!! 台風が去った後には穏やかなふたり……、いや三人四人になれるのでしょうか。

ちょっと心配していた。トメキチとマツコさん、居住区に避難していて安心しました。なんだかみんなが知り合いのようになっている私の心です。

こんにちは。「愛の嵐」ですね~!!どなたか変身忍者アラシになり、全てをまるく納めてくれないかしら…もちろんあんなことやこんなことがあった後で(笑) 嵐の夜に~嵐の海に~気になることがたくさん~楽しみです!!

NoTitle

こんにちは。いつもありがとうございます。

台風やってきましたね・・・・大きな被害が出ないことを願います。
ダル・・・今ノリノリですね。別に自分が何か良いことあるわけでもなんでもなくても日本人メジャーリーガーの活躍は見ていて嬉しいものです。

今日も晴れたり曇ったり・・・不安定な天気なんでしょうか。突然の雷雨などにお気をつけ下さいね。


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ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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