2017-10

「女だらけの戦艦大和」・マツコ呉散歩1 - 2012.03.30 Fri

その話は、実は少し前から出ていたのだった――

 

「女だらけの大和」が呉に入港する少し前に松岡分隊長が不意に言ったのだった。

「ねえ麻生さん、私はあの鳥くんと呉の街を歩いてみたいと思うんだよ?きっと鳥くんも熱くなれるんじゃないかなあ」

麻生少尉はちょっとびっくりして訓練報告書から顔をあげて分隊長を見た。そして「あの鳥と、ですか?ええとは思いますがじゃけどあの鳥は人目を引きすぎませんかのう」と首をひねった。すると松岡分隊長は微笑んで、「確かに。あの鳥は珍しいなんてぇもんじゃないからきっと皆の注目を浴びることになるね。だから私が一緒に居れば鳥くんも安心して呉散歩をできやしないかと思うんだが」という。麻生分隊士は、「はあ、一緒にですか。ゆうか分隊長、分隊長が目立ちたいんと違いますかねえ、あの鳥をだしにしとるとしか私には思えんですが」と言った。

すると分隊長は麻生分隊士の肩をドン、と突いて「麻生さーん。あなたはどうしてそうも人の心を読んじゃうんだね?そうだよ、私が実は目立ちたいんだよ。目立つ鳥くんと一緒に居れば私も目立つ。そしたら」

「そしたら?」

そうおうむ返しに問う麻生分隊士に、松岡中尉は「私は嬉しいんだよ、注目されたら誰だって嬉しいだろう?」と言い放ち、麻生分隊士は馬鹿臭くなって訓練報告書に目を戻した。

その分隊士に「あれ?どうしたの麻生さーん。・・・あ!もしかして私だけ目立つのが気に入らないんだな?じゃあ、麻生さんも一緒に行って目立とうじゃないか!そうだそれがいい。そしてほかにも目立ちたい人がいたら所属階級にこだわらず一緒に鳥くんと歩こうじゃないか、そうだそうしよう!で、麻生さん。鳥くんはどういう格好であるいたらいいかなあ?あのままじゃちょっと当たり前すぎないかい?何かこう、変装ではないが衣装を着せた方が印象的だよねえ」とまくし立てた分隊長。

分隊士は軽く腹を立てて松岡中尉に向き直った、そして「ええですか分隊長。私はちいとも目立ちとうはないんです。いえ、却って目立ってはいやなんですよ。ですからあの鳥と一緒にどうぞ分隊長が目立ってきてください。私は結構ですけん!」と語気を強めて言った。

が、松岡分隊長は相手が腹を立てているとも気がつかないのか「ふーん、麻生さんは奥ゆかしいねえ。目立ちたくないなんて<大和撫子>の見本だね。・・・うん、わかった。私が一つあの鳥くんと一緒に目立ってこようじゃないか!」と言うと分隊士の肩をポンポンと叩いてどこかに消えた。

麻生分隊士は「ふうっ!」と大きなため息をつくと、訓練報告書の上に鉛筆を投げだした。

 

以上がもう二月近く前のこと。

そして昨日、工作科の水木水兵長が松岡分隊長を訪ねて防空指揮所にやって来た。何か大きな包みを抱えている。

分隊長は大喜びで水兵長を迎えて、「ありがとう、随分早かったねえ~。嬉しいよありがとう」と何度も繰り返して「これ、私からのお礼だ。水木君これからも熱くなってくれたまえ」と大きな羊羹を一本渡した。そのでかい羊羹に驚きつつも水木水兵長は敬礼して下へ降りて行った。

とたんにその場にいた小泉兵曹だとか石場兵曹、見張兵曹や石川水兵長に亀井一水が分隊長を取り囲んだ。

「なんですねこれ」

「何ぞ作ってもろうたんですか?」

「わかった、<艦艇―ズ>みとうな衣装でしょう?」

等々少しやかましい。が、松岡分隊長は至極機嫌がいい。皆を見て、「誰かあの鳥くんをここに連れてきてくれないかな?」と言った。小泉兵曹が「え?ハシビロをですか?」と少し怪訝な表情をした。

分隊長は満面の笑みで「そうだよ小泉さん。あの鳥くんに私は用事があるんだよ」と言い、「ほいじゃあ」と亀井一水と石川水兵長がハシビロのところに行った。

ややして、ハッシー・デ・ラ・マツコが指揮所に降りて来た。最近マツコは皆に対して従順になってきているから扱いやすい。

ノシノシと松岡分隊長の方へ歩くマツコ。

そのマツコを両手を広げて迎える分隊長にマツコは「なによう、気持ち悪いわねえ。また何か企んでるんでしょう?」とくちばしをカタカタさせた。

マツコが分隊長の前に来ると、分隊長はマツコの頭をそっとなでた。皆が<あほ毛>と呼ぶマツコの頭のてっぺんの立った羽がそのたびにピンピンと動いた。

「鳥くん」と分隊長は呼びかけた。「鳥くんも私と一緒に呉の街に行きたいだろう?いつもここでは退屈だろうと思うんだ。だから今度の私の上陸の日に一緒に行こうではないか」

すると。

マツコの大きな量の羽がバサッ、とこれ以上ないほど大きく広げられた。そしてその大きなくちばしもこれ以上ないくらい大きく開いた。

「おお!ハシビロが喜びよるで!」

皆がざわめく。

確かにマツコは喜んでいた。今までなんだか気おくれがして街に出かけるのをためらってはいた。が、その実ものすごく街にあこがれていた。夜になると明かりがついて心が浮き立つ。いつだったかトメキチが石川水兵長と上陸したときは、本当は付いてゆきたいほどだったのだ。

「マジ!?呉の街にマジで?やったあ、嬉しい~。松岡、あんた結構いいやつじゃない~」

マツコは羽を広げたままでわめきながらその場を飛び回る。

それを見ていた松岡分隊長、やおら水木水兵長からもらった包みをマツコの前に出すと、

「ではちょっとこれを着て見てくれないか鳥くん。いくらなんでもそのままでは<芸がなさすぎる>だろう?ちょっと目立たないと意味がないよ、意味が」

と言って包みを開いた。

マツコや兵曹たちがのぞきこんだ包みの中には、マツコ用に誂えられた「海軍士官用一種軍装」が畳まれていた。

「こ、これは分隊長?」と包みと分隊長を交互に見ながら見張兵曹と石場兵曹が言った。「いったいどういうことで?」

すると分隊長は「鳥くんも一応士官並みに扱ってあげようかと思ってね。この堂々たる威容はどこから見ても士官だよ君」と言って服をマツコに着せようとしている。

「ほいでも」と見張兵曹がつぶやく、「ハシビロはこげえなもんを着るんは嫌なんと違いますかのう」。

しかし皆の心配をよそにマツコは大喜びでその軍装に羽を通した。その上軍帽までかぶって目つきまできりっとしてきた。

「おお、鳥くーん。とってもよく似合うよ。さあ、まだ着なれないようだからしばらくの間これを着ていてほしいな。着こなせるようになったら鳥くんも一人前だぞ」

松岡分隊長はマツコの肩のあたりを持って軽くゆすった。マツコは「着こなせないわけ、ないでしょーッ!見てろよー!」と叫んで羽ばたきをしながらその辺を飛んで回る。

そこにトメキチを抱いて上がってきた麻生分隊士はあまりに珍奇なその場の様子に立ちすくんでいた――

         ・・・・・・・・・・・・・

さあ、マツコが初めての日本の土を踏みます。しかも士官の格好でなんて、想像するととても珍奇・珍妙ではありますが本人たちは至って真面目です。

次回、呉に何かが起きる・・・!?

呉がその発祥の地と言われる「肉じゃが」、水を使わないで作るのが海軍式です。とてもおいしいよ!
肉じゃが!


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● COMMENT ●

けみディさんへ

けみディさんこんばんは!
コメントをありがとうございます。私もコナンくん好きですよ~、子供たちが小さいころよく見ていましたもんw。

話を書くこと自体が好きです、いろいろ考え過ぎて長くなってしまうんですよ~(^^ゞ
こんな話のサイトではありますが、またいらしてくださいね~。
私もまたお邪魔しにまいります!

すごーい!

こんにちは!名探偵コナンがだ~い好きなけみディです。
昨日はブログへの訪問、ありがとうございました♪

なかなか記事のボリュームが多くて尊敬しちゃいます。
そんなに書くの大変だと思うので。

また暇があれば見に来ますね♪

まろゆーろさんへ

まろゆーろさんこんにちは!
やはり春は桜ですよね^^、靖国神社の桜が昨日開花しました!4日が長女の学校の入学式で近くまで行きますから式後に参拝してきたいと思っています。
間もなく4月7日、『大和』ほかの沖縄水上特攻隊が撃沈された日が来ます。昭和20年の4月に入るとアメリカ軍の沖縄上陸が本格開始になります。それを阻止せんとたくさんの陸海軍の将兵が特攻隊として散華してゆきました。
満開の桜を見ることができた人は一体何人だったか・・・見ることができなかった人たちに「テンプレート」でも桜を感じてほしい、そんな気持ちで今の時期これにしています。
ちょっときざでしょうか^^。

水なしの肉じゃが、野菜から水分が出るから失敗がないですよ。しかも美味しいです。
うちではこの方式でやります。娘もこの方式で作ってくれます!
ぜひ今夜は『海軍式肉じゃが』で一杯!

おぉ、たけなわの桜模様に大変身!! 華やいでて気持ちが良いです。見張り員さんも萌えて下さいまし。

松岡分隊長の粋なはからいでマツコさん、かっこよく大空を飛べますね。どうしてこうも真からかっこよかったのでしょう。昔の人は。きっと命が表裏一体だったからでしょうか。

水なしから肉じゃがを作るなんて初めて知りました。
そうだ!! 今夜は肉じゃがにしよう!!

柴犬ケイさんへ

柴犬ケイさんこんばんは!

マツコが出現する呉の街。大騒ぎにならなければいいのですが心配です・・・(-_-;)

肉じゃがの発祥地の争奪戦?が呉と舞鶴で今もあるみたいですね~。うーん、私はどちらでもいいような気がしますが??

昨晩から今日にかけてものすごい風で、モミジ落ち着かず昨晩は家の中に入れました。モミジはビビりなのでちょっとした物音にもびっくりしてしまうんですよね。
散歩のときもゴミ袋が風に吹かれてガサッ!といっただけでもう飛び上がっていました^^。

オスカーさんへ

オスカーさんこんばんは!
松岡はほっておいてくださいww、マツコいよいよ外出です。しかも士官の格好で・・・何か起きなきゃいいんですが。
次回を楽しみにしていてくださいね~^^。

こんにちは♪

見張り員さん  こんにちは♪

いつもありがとうございます♪

テンプレートは春らしく可愛いです。
マツコさんの出番で土官の姿で呉の街の様子が
楽しみです。
肉じゃがの発祥地が呉か舞鶴かでそれぞれが先と言って
いましたね。

昨夜は風と雨が強く気の小さいケイちゃん怖くて
眠れずガサガサしていましたが今は熟睡しています。
モミジちゃんは雨と風が強いのは大丈夫ですか?

こんばんは。松岡さまの本音がどうあれマツコが喜んでいるのは嬉しい~(笑) マツコが新しい世界に羽ばたくのですね~珍道中に間違いないとは思いますが(笑)ドキドキしながら続きを待っていますね!!


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Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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