2017-10

「女だらけの戦艦大和」・健康診断後日譚 - 2012.03.12 Mon

「女だらけの海軍」健康診断の後日譚――

 

「女だらけの大和」での最上甲板での「診察」を、艦橋トップのトップからハッシー・デ・ラ・マツコが見下ろしている。

トップから見下ろせば艦首に近い部分に天幕が張られその前にぞろぞろとたくさんの兵隊たちが列をなしている。

マツコは指揮所の陽だまりで丸くなって昼寝をしているトメキチに「ねーえ、ちょっと見てよう」と声をかけた。トメキチは半分眠ったままのような瞳をマツコの方に上げて、「どうしたの?おばさん」と言ってから大あくびした。

マツコは下の列をじっと見つめたまんまで「あれよあれ。みんなでぞろぞろ並んじゃってさ、一体何をしてるのかしらねえ」と興味しんしんの様子。トメキチはもう一つあくびをして体をうんと伸ばした、そして今度は双眼鏡の椅子の上に登って丸くなると「気になるんなら見てきたら?僕は眠いからここにいる・・・」と言うともう眠っている。

マツコは「あらやだわ、この子もう寝ちゃってるじゃないの。・・・じゃああたし、ちょっと見てこよっと!」と言うと大きな翼を広げてその場を飛びあがり、下の天幕の方へと降下して行った。

マツコは兵隊の列の一番後ろあたりに舞い降りた。心なしか兵たちの顔は緊張の色を帯びている。見張兵曹とかいう小娘は緊張しきって真っ青な顔色で麻生分隊士とかいう「おとこ女」にしきりに慰められているようだ。が、二人ともマツコに気が付いていない。

(一体どうしたってのかしらねえ、普段はギャーギャー小うるさい女どもが今日はなんだかおとなしいじゃないさ?)

そう思ったマツコはノシノシと前へと歩いてゆく。時折「あ、ハシビロじゃ」とか「何しよるんじゃ、あのでかい鳥は」というつぶやきが聞こえてくるがマツコは知らん顔で天幕の方へ向かう。天幕の中に入れるかと思ったマツコだが、どうも入れそうもない。仕方なくマツコは天幕の後ろへ回った。ふと見れば天幕の後ろ部分が風にあおられて開いている、その中から何やら声がする。マツコは興味をそそられて開いた部分からそっとその体を中に入れてのぞいてみた・・・・

「ギャーーー!」

と飛びだしてきたのはマツコ。中から「なんだあ、今のは?」と言う声がしたがそれはたぶん日野原軍医長の声。

マツコはギャーと叫びながら無茶苦茶にトップに飛んで行った。そして指揮所のトメキチのそばに舞い降りるとハアハアと荒い息をついた。トメキチが目を覚まして「・・・どうしたの、おばさん?」と声をかけた。マツコは目を白黒させながら

「あ、あんた。絶対下に入ってあの中を見たらだめよ!いい!?あれは子供が見るもんじゃあ、ないわよ!」

と言ってトップに上がって行った。マツコはそこで(ああ、驚いた!何してんのかと思ったらあの女どもったら裸の大股開きで台の上に寝転んでるじゃないの!いやーねえ、女の恥じらいってないのかしら?全く人間ってわっかんないわあ~)とひとり思って赤面していた。

それを見上げてトメキチは(変なおばさん)と思っていた――

 

「女だらけの武蔵」を退艦して潜水艦と輸送艦を乗り継いで横須賀に向かう春山兵曹。途中の伊号潜水艦内では艦長以下がとても気を使ってくれた。敵もいないから潜航なしでの航行、時折近くの航空隊から零戦が護衛に飛来してくれる。

快適であったが乗艦して二日ほどした時兵曹につわりの症状が顕著になりつらくなってしまった。

艦長は、「すみません、員数外が入り込んだ上にお手数をおかけして」と平身低頭する春山兵曹に「何を言ってるの、あなたは母親になる体でしょう。そんな素晴らしい人を乗せたこの潜水艦は名誉ですよ。・・・あと数日で小笠原、天気もいいようだからちょっと外に出てないかな?」と言って艦の外に誘ってくれた。

司令塔から外に出ると波しぶきがまぶしくきらめいて風がとても心地よい。艦長が兵曹が滑ったりしないように手をつかんでくれる。

思わず兵曹が笑顔になると艦長や見張りの兵がその顔に見とれた。

(いいなあ、母親になる人ってこんなにいい顔をするんだ)

正直うらやましい。そう思っていると春山兵曹が海上の一点を指差して「あ、あれは」と声を上げる。見張り兵が双眼鏡でそちらを見るとイルカの群れ。それがまるで兵曹を祝福するかのように飛び跳ねて、やがて伊号潜水艦の周囲に来て一緒に泳ぐ。「わあ、イルカ!」と声を上げる春山兵曹の表情はこの上なく明るい。

 

やがて伊号潜水艦は小笠原基地に着いた。ここで伊号潜水艦とはお別れである。春山兵曹は涙ながらに潜水艦の総員に礼を言って艦を降りる。

艦長が、「これから乗る輸送艦の艦長にもよく言ってありますから大丈夫です。それから横須賀の鎮守府にも連絡をしてありますからあなたのご主人も迎えに見えることでしょう。・・・くれぐれもお大事にしていいお子を産んでください」と言い、兵曹は「はい、ありがとうございました。伊号潜水艦の今後のご武運を祈ります」と艦長と握手をした。

そのあと、輸送艦に乗った兵曹はここでも乗組員に質問攻めにあっていた。「どこでご主人と知り合ったのでありますか?」とか「いつ赤ちゃんは生まれるのでありますか」とか「男の子と女の子、どちらがいいでありますか」等々・・・。ついには艦長に「おい貴様ら、そんなに春山兵曹を疲れさせたらいけないぞ、体に触るではないか」としかられる始末。兵曹は恐縮して「大丈夫であります、話をしていた方が気分の悪さを忘れられていいであります」と言い、また皆に「つわりってそんなに気分が悪くなるでありますか!」と質問される。

ワイワイ言いながらそして艦は横須賀に・・・

 

トレーラーを出てから一体何日かかったのだろうか。順調な航海であったから十日にも満たなかったが春山兵曹にとってはその日々は生涯忘れられない楽しいかたらいの日になっていた。

「春山兵曹、お元気で。安産を祈ります」

輸送艦の総員に見送られ、水兵長が一人荷物持ちに付いてくれて兵曹は艦を降りた。ランチに乗り込み手を振る兵曹、見送る皆の間から「元気でねえ!」「いい子を産めよ」と声がかかる。

上陸場について衛兵所を通る時もう話を聞いていたと見え、衛兵たちが兵曹を見ようと集まっている。

春山兵曹は恥ずかしくってならなかったが敬礼をしてそこを通過。

と、「桃恵さん!」と声がかかり兵曹の前に愛しき三浦中尉が現れた。満面の笑みの中尉は、そばにいた水兵長に「わざわざここまでありがとうございました。妻が大変お世話になりました。艦長にどうぞよろしくお伝えください」と挨拶して水兵長は顔を真っ赤にして敬礼。荷物を受け取って二人は礼を言って水兵長と別れた。

三浦中尉と兵曹は向き合って見つめ合ったままである。三浦中尉が「さあ…鎮守府に行きましょう」と兵曹の左手を取った、その薬指に中尉が贈った結婚指輪が光っている。

中尉は嬉しそうにほほ笑むと、「ほら」と自分の左手の指も見せる。同じデザインの指輪が光り、二人は微笑みあった。

「気分は悪くないですか?」と問う中尉に兵曹は「あの・・・敬語はやめてくださいな・・・」と恥ずかしげに言い、中尉はちょと周りを見回してからエヘンとせき払いをした。

そして

「気分は悪くないか、桃恵」

と言って顔を真っ赤にすると、妻の手をしっかり握ってゆっくり歩きだしたのだった。三浦桃恵は春のような微笑みで夫を見上げると一緒の歩調で歩きだした。

 

この先の人生も、一緒の歩調で歩いてくださいね。そしてこれからはもう一人、一緒に歩くんですよ・・・

若い二人の思いは一緒である。その後ろ姿に春の日差しが暖かく明るく照り映えた――

 

    ・・・・・・・・・・・・・・・

「健康診断」後日譚でした。

マツコはいったいどんなものを見たんでしょうか・・・ってわかってるでしょう、あなたも好きねえ~

伊号400潜 
伊号400潜水艦です。この物語に出てくる「伊号800潜」はこれよりもっと大きいのだ!(創作です) 


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● COMMENT ●

オスカーさんへ

オスカーさんこんばんは!
恋人から夫婦への第一歩、それはこ・と・ば❤
・・・って感じですね^^。

リクエスト受け付けました!!
臨月は夏の終わりくらいでしょうか、そのころを楽しみにしていてくださいね~^^。

こんばんは。言葉使いの変化も夫婦を実感することの一つですね。初々しくほほえましいです。出産の時には絶対立ち会いそう(笑)←書いて下さいね~リクエストします!!

荒野鷹虎 さんへ


荒野鷹虎 さんこんばんは!

御退院おめでとうございます、どうぞご無理のないようお過ごしくださいね。
お越しいただきありがとうございます!
またどうぞよろしくお願いいたします。

まろゆーろさんへ

まろゆーろさんこんばんは。
そうです、やっぱり女でも見ると『ぐおっ』と思うこと請け合いだと思いますねw。
男性は産婦人科に限りないロマンを感じる方が多いらしいですね。それはなんとなくわかりますね^^、でも実際なってみるとこれほど大変な職業もないようで、夢のままでいいのかもしれないですよww。

桃恵ちゃんが赤ちゃんを連れて旦那さんと一緒に「武蔵」を見に来る日も遠くなさそうですね。
今の若い人たちにはあまり、というかほとんど『恥じらい』を感じませんね。開けっぴろげでこっちが恥ずかしい思いをしたりします。
『恥じらい』が当たり前にあったころの日本を感じていただければ嬉しいですね!

見張り員さんへ!!

コメント頂き本当に嬉しかったです。
頑張ってくださいポチポチ!!

やはり女性が見ても卒倒するような風景でしょうか。ましてやマツコさんのような組合の方なんて気も狂わんばかりのようで。
私だったら……、一度は夢見る産婦人科医です。
来世ではもっと勉強して本懐を遂げとうございます。

しかし、そのナニをナニしてご懐妊の桃恵さん。お幸せそうですね。ほのぼのとします。
何をするのでも顔を赤く染めて初々しい限りです。今の人たちから見たら信じられないことでしょうね。


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ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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