2017-10

「女だらけの戦艦大和」・艦上のひな祭り3 - 2012.02.26 Sun

翌日トメキチは石川水兵長とともに上陸して行った――

 

「トメキチ、石川水兵長を困らしたらいけんよ?ええ子にしとらんとね」と、見張兵曹はトメキチに言い含めその頭をなでてやった。トメキチは「大丈夫です」というように小さくキャンと鳴いた。そしてトメキチは呉に行ったのだがそれを『大和』のトップで見ているハッシー・デ・ラ・マツコ。

羽を広げて「トメキチ~、<お雛様>がどんなもんかしっかり見てくんのよ~」と叫んでいる。それを見た石場兵曹が「ほう!ハシビロのやつが羽を広げてなんぞ叫んどってよ。なんじゃろうねえ一体」と不思議がっている。麻生分隊士もそれを見て「ほうじゃねえ、何ぞ天変地異の前触れじゃなかろうねえ」と心配げである。

亀井一水だけが「心配ないですよ。トメキチがいなくなったんでさみしゅうなったんでしょうな」と平気である。みなが「そうじゃな、どう見てもあいつにそんな能力があるようには思えんで」と言って笑った。

 

トメキチはやがて石川水兵長とともに呉の街を歩いていた。まだ寒い呉の街の風からトメキチを守ろうと水兵長は自分の外套の中にトメキチを入れている。トメキチは外套の温かさと水兵長の体温でほかほか、気持ちがよさそうだ。

不意に石川水兵長が立ち止まって「トメキチ、見てみんか」と言って外套の前を少し開いた。トメキチが顔を出すと、目の前にショーウインドーがありその中には雅なひな人形が鎮座している。トメキチはそれが何かよくわからず水兵長の顔を見上げると彼女はトメキチの鼻先をちょんと指先で突っついてから

「トメキチ、よう見とけ。これがお雛様じゃ。きれいじゃろう~、うちらこがいにきれいなお雛様になれるじゃろうかねえ?うちが今日ここに来たんは、お雛様の研究に来たんじゃ。どうでやるならきれいなお雛様になりたいじゃろ?」

と言っていたずらっぽく笑ってウインドウの中に見入った。トメキチは(これがお雛様なんだ・・・)と感心してこれもウインドウに鼻面をくっつけて見ている。

 

翌日『大和』に水兵長とともに帰艦したトメキチはトップから降りて最上甲板で待ち構えていたマツコにつかまって

「ねえねえ。見て来たの?<お雛様>をさあ!」

とせっつかれた。トメキチは「見てきましたよ」というとマツコは「早く早くぅ。教えなさいよどんなもんだったかさあ!」と羽を広げてそこらを跳ねまわる。それを見て甲板士官の彼女が「なんだあ、あのでかい鳥が踊ってる!ワハハハ」と腹を抱えて大笑い。マツコはその甲板士官につかつかと近寄って「でかい鳥じゃないわよ馬鹿な女ねえ。あたしはマツコ」というと「ふん!」と踵を返してトメキチの方に戻る。

「で?」とマツコは乱れた羽をくちばしで直してから言った、「どんなふうだったの?お雛様」。トメキチは「あのねえ・・・」というとみてきたことを詳細に伝えたのだった。

 

「そう・・・。じゃああたしたちがお雛様にはなれないってことね」

マツコは心底がっかりした声で言った。残念そうに肩を落としてその場に立っている。頭の毛が風にふわりふわりと浮いている。トメキチはそっとマツコに顔を寄せると

「ねえ、おばさんは<お雛様>になりたいの?」

と聞いてみた。とたんにマツコは狼狽して羽を大きく広げて羽ばたきをすると「い、いやあねえアンタ!何言ってんのよお、あたしがお雛様になりたいなんていつ言ったあ?」とわめきだした。トメキチは落ち着いて「今さっき。言ったでしょ?」と言ってやった。

とたんに恥ずかしくなったのは両方の羽で顔を覆うとマツコはあっという間にトップに向かって飛び立ってしまったのだった。それを見送るトメキチの顔に何とも言えない笑顔が浮かんだ――

 

その頃工作科では雛段の製作に大わらわである。秋山兵曹長は部下を励ましながら「頑張れよ、ほいでもケガせんように。一番でかい雛段はどこの発注か?小さいのはどこどこか?」と言いながら走り回っている。また別の部署では衣装の発注を受けてこれもミシン室や工作室で衣装を縫うのに懸命である。他にも大道具・小道具の製作にいそしむ兵たちがいて工作科は活気付いている。

それを見まわりながら梨賀艦長と野村副長は「忙しそうだなあ、これじゃ私たちの衣装は頼めそうもないなあ」とあきらめ顔である。それを聞きつけた工作科の水木しげこ水兵長が「ご迷惑おおかけして申し訳ないであります。もし、よかったら呉の街に私の友人の仕立て屋がおりますけん、ご紹介いたしましょうか」と言って梨賀艦長と野村副長は喜んだ。

そしてその日のうちに紹介状を持って艦長・副長、そして森上参謀長は呉に上陸して行ったのだ。

水木水兵長の友人の仕立て屋――楳図かずこ――は話を聞いてとても喜んで

「さっそくさせていただきますけえ、こちらで採寸を」

と店の奥にいざなう。店は赤と白のストライプで統一され、そこここに面白い仕掛けがあって参謀長はのぞきこんだり入り込んでは艦長に叱られている。

ともあれ採寸を済ませ、楳図店長は「で・・・どがいなデザインで行きましょうか?」と三人に聞く。

するとにんまりした副長が一枚の大きな紙を作業台に広げて「・・・こんな感じで」と楳図店長を見た。

その紙に視線を落とした楳図店長、「ギョエエエ!これは~~」と叫ぶと次の瞬間には瞳をらんらんと輝かせて

「やりますよー。やりますとも、絶対立派に作ってみますからねえ!グワシ!」

と叫んで片手で妙なサインを作って見せた。その紙には衣装のデザイン画が描かれており、それはどうも見事に楳図店長のつぼにはまったようだった。楳図店長は目を輝かせたまま「ほいじゃあ二日の午後にはお届しますけえ、お待ちくださいね~」と言ってデザイン画を持って作業室に入って行った。

 

そんなこんなで大騒ぎな『大和』艦内。

麻生分隊士と見張兵曹は並んで立って双眼鏡で見張りをしている。皆が皆、浮かれているわけではないのが「軍艦大和」である。

そんな後ろ姿を見て谷垣兵曹と石場兵曹が、

「やっぱりのう、このフネで一番のお雛様はあの二人じゃね」

と言い合っている――

 

        ・・・・・・・・・・・・・・・

 

風雲急を告げる<ひな祭り>準備であります。

さあマツコは夢破れてしまったのでしょうか、そして艦長たちの衣装とは!?次回をご期待下さいませ。

 

「グワシ」。
まことちゃんのグワシ


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● COMMENT ●

かなやのぶ太さんへ

かなやのぶ太さんこんばんは!
そう!お雛様にロマンをいつまでも感じてこそ「永遠の女の子」ですね!

マツコもなんだかんだ言いながらしっかり「女子」していますね~。トメキチもいよいよ『大和』のアイドルとしての本領発揮でしょうか!ガーン!w

さて「大和』艦上のひな祭りどうなりますやら!ご期待を。

女の子はいくつになっても5段のお雛様にあこがれちゃいますよねえ~☆
マツコも強がっちゃって、本当は(女の子だもの!)美しくなりたいに決まっているじゃないですか^^それにしても水さんに気遣ってもらえるトメキチちゃんがかわいくてとっても羨ましくてドキドキしました☆
次回!「大和」甲板に8段飾り!?その最上段を飾るは誰そ!?お楽しみに~^^(←

オスカーさんへ

オスカーさんこんばんは!

ハシビロのマツコ。
体の色はほんっとに地味ですよね。灰色で。
女の子?のハッシとしてはちょっと耐えがたいかもしれませんね。ここで一発、マツコ大変身を遂げたら、女の本懐でしょうね^^。

マツコの赤白ボーダーシャツ姿。しかもグワシ!とかしたらちょっと怖いですね・・・って羽しかないからグワシはできないか・・・ww。

まろゆーろさんへ

まろゆーろさんこんばんは!

そうなんですよ女というものどれだけ年齢を重ねてもひな祭りには特別な思いがあります。
お母さま、素敵ですね!お雛様の隣に向井理さんとは!
恋する心を忘れたら女が廃る!私もお母さまを見習いましょう^^。それこそが人として生まれてきた喜びなのでしょう。

風邪、おかげさまで直りました!
今年は花粉症もまだ出ないので安心していますが・・・注意せんといけんですね^^。

ジスさんへ

ジスさんこんばんは!

なかなか寒さが抜けませんがお風邪をひいてはいませんか?

一年って早いですよね、もうこの季節がめぐってきました。
妹さんのためにお兄さんがひな人形を飾る…とてもほほえましくって素敵なごきょうだいの姿が見えるようです^^。楽しいですよね、あの作業って!

私も子供時代、家もせまかったしひな人形を買ってはもらえなかったです。親王飾りでもいいからほしかったと思ったものです。
でも自分でそれっぽく作って楽しんでいましたっけ。

こんにちは。マツコって身体の色が地味だから華やかな衣装には憧れがあると思うんですよね。みにくいアヒルの子なら白鳥になりますが、マツコはずっとグレーな毎日。違う色になることもあるのかしら? どうぞ他の皆さま同様、ワタクシのマツコにも女の子気分を味あわせてあげて下さい!! 赤白ボーダーシャツとか黒と黄色のちゃんちゃんこを着せるのは、ひな祭りの後にして欲しいです(笑)

女性はいくつになってもお雛様、雛祭りに心がときめくようですね。
我が家の母も御年79歳ながらいまだに飾っています。その隣にはなんと向井理の写真!!
浮世離れにも程があるようです。しかし、恋するバアサンもまた美しいものです。マツコさんのお雛に思う気持ちとどこか似ているような。

寒いですね。風邪は治りましたか。お大事にお過ごし下さい。

こんばんは。いつもありがとうございます。

ご無沙汰していました。又今日は寒くなって来ましたね。

そうこうするうちにもうひな祭りの季節ですか・・早いものですね。私が子供の頃妹のために大きな7段飾りがあり設置するのが私の仕事で楽しかったのを思い出します。

そしていま娘が居ますがさすがに7段なんぞ飾れないし雛人形も無いですね。かわいそうかもしれんけど狭いししょうがないかなって思います。


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Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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