女だらけの戦艦大和・総員配置良し!

女だらけの「帝国海軍」、大和や武蔵、飛龍や赤城そのほかの艦艇や飛行隊・潜水艦で生きる女の子たちの日常生活を描いています。どんな毎日があるのか、ちょっと覗いてみませんか?

「女だらけの戦艦大和」・艦上のひな祭り1

「女だらけの戦艦大和」は内地の春を間近にして、その身を呉に置いている――

 

「今年は春が早めなんじゃろうか」

防空指揮所で呉の町並みを見ながら見張兵曹は言った。それを聞いて小泉兵曹が「ああ、ほうじゃな。そういやあこないだ上がった時梅がほころんどったし、桜の花芽もふくらんどったねえ」

「ほうかあ、ならもうひな祭りが近いゆうことじゃね」

二人の間から石場兵曹が顔を出して言った。見張兵曹と小泉兵曹は「ほうじゃ、ひな祭りじゃわ!」と手を叩いた。

三人が騒いでいると松岡分隊長がラケットを担いでやってきて「お!?君たち何か楽しいことでもあるのかな?熱く語ってるじゃないか!」と話しかけてきた。

そこで石場兵曹が「分隊長、もう季節は春近し、であります。ということはひな祭りの時期であります」と言った。分隊長は興味をそそられたようで「ひな祭りねえ、ふ~む」と唸っていたがハタと手を打つとダッと下へ走り降りて行った。

「なんじゃねありゃ?」

と小泉兵曹と石場兵曹は分隊長が走って行った方を見て言った。見張兵曹は、ねえねえと小泉兵曹の袖を引いて、

「なあ、小泉の家のひな祭りってどがいなん?」

と聞いた。小泉兵曹はほうじゃのう、と言って腕を組んで少しもったいぶってから

「うちのひな人形は段飾りでな、こう階段みたあに段々が六段あったのう。ほいで一番上にはお内裏様とお雛様。その下に三人官女がおって、その下に五人囃子。その下に右大臣と左大臣。ほいでその下に仕丁の三人。一番下にはお雛様のお道具じゃ」

と言って思い出に浸る目になった。小泉兵曹はさらに言葉を継ぐ。

「お内裏様とお雛様の横には雪洞があってなあ、それがまあええがいに明るうてねえ。その明りを受けてお雛様のお顔がほんのり見えてほんまにえかったわ。で、ひな壇の前に桃の花を飾ってみんなで白酒を注いでもろうて、ごちそうをいただくんじゃ。うちは姉さんと一緒に普段は着せてもらえん着物着てなあ。・・・たのしかったで」

そう言ってしまってから小泉兵曹はしまった、と思った。こんな話は見張兵曹にとっては「お金持ちのお嬢様の自慢話」でしかないのではないか?石場兵曹も見張兵曹をそっと見つめる。

しかし小泉兵曹たちの心配をよそに見張兵曹は目を輝かせて話を聞いている。そして

「ほう、小泉兵曹がたはええねえ。六段の段々のお雛様ゆうてどんなもんじゃろうねえ。うちも見てみたいわあ」

と言っている。小泉はどんな顔をして答えたらいいか迷いながらあいまいな笑顔をしている。石場兵曹も困ってしまったか少し顔をそむける。見張兵曹はそんな二人に気がついたか、

「家にもお雛様はあったがあれは姉さんたちのものじゃけえ、うちは触らせてもらえんかったわ。家のお雛様は確か三段の段々じゃったねえ。みんなはご馳走食べとったけどうちにはくれんかったね。ほいでもうちはお雛様見るだけで嬉しかったわあ」

と明るく言った。

 

見張トメは幼いころのひな祭りに参加させてはもらえなかった。継母は「貴様はこれに触ったらいけんで。これは姉さんたちのもんじゃけえね。触って壊したらはあ貴様のおる場所はないけえね。わかったらあっち行きんさい」と言ってトメを追いたてた。トメは追いたてられて庭の隅から、あるいは縁側からお雛様を見つめた。

やさしい微笑みのお雛様たちはトメに差別的な視線を投げてはこない。むしろトメをいとおしむような瞳で見つめてきている。

それが幼いトメにはなんだか嬉しいような恥ずかしいような、くすぐったい心持だった。そんなふうにひな人形を遠くから見つめていると姉たちが「ああいやじゃわあ。変な奴がお雛様見とる。汚れてしまうけえ障子を閉めんと」と言って障子を閉めてしまう。自分から縁側を上がって障子を開けることはできない。それをしたら姉たちに縁側から蹴落とされる。

だからトメは、再び障子が開くまで待つしかなかった。ひな人形を飾った部屋に入ることもその前の廊下を通ることも禁じられていたあの頃。トメは一日の仕事が終わると、継母から茶碗一杯の粥を与えられて納屋に戻るのだった。(明日はまたお雛様に会えるじゃろうか)と思いつつ。

 

そんな話をポツリポツリと語ると小泉兵曹も石場兵曹も少し鼻をすすりあげた。石場兵曹は「オトメチャンはそがいな思いをしとったんじゃね。ひな祭りはおなごのお祭りじゃいうんに。どがいな理由があろうと子供を差別するなんか人の道に反しとる・・・」と独り言のように言って袖で涙をぬぐった。

そんな二人を見てオトメチャンは「ほいでもうちはお雛様を見ることができただけ幸せですよ」と言って微笑んだ。

 

さて、防空指揮所を走り去って言った松岡分隊長はどこへ行ったのか?途中出会った麻生分隊士も「麻生さんも一緒に来て!」と引っ張ってあの人の部屋に――

         ・・・・・・・・・・・・・

何を思いついた松岡分隊長!麻生分隊士まで引き込んで考えることは果たして・・・!?

緊迫?の次回をお楽しみに。

 

ひな祭り。いいですねえ~~。
画像は2年ほど前の我が家のひな飾りです(今年も飾りましたが写真が大きすぎて乗りませんでした泣)。
200902221605000ひな人形


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大和 | コメント:6 | トラックバック:0 |
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コメント

としぼんさん こんばんは!

としぼんさんは3月3日のお誕生日ですか!私が小学校3年の時大好きだった担任のT先生も3月3日の生まれでした。
とてもいい先生で、小学生時代先生に恵まれなかった私の唯一の思い出に残る先生です。

きっととしぼんさんも素敵な方なんだろうな~と思っています^^。


でも子供の時って「女のくせに5月5日生まれだってよ~」とか「男のくせに~」って変なことをつっつきましたよね。いったいどうしてなんだか???
今の子供たちもそうなんでしょうか・・・?

またいらしてくださいね^^!
2012-02-24 Fri 21:05 | URL | 見張り員 [ 編集 ]
まろゆーろさん こんばんは!

「陰」と「陽」の織りなす情景こそ日本人ならではの美意識だと思いますね。
こういう美しさがわかってこそ日本人と言えるのかもしれないですね、最近は色のはっきりした(いや、どぎつい?)風景が多すぎますから日本的なこうした風景に浸りたいですね^^。

そうですさすがまろにいさま。
この母親の冷たい突き放し方は私のトラウマが元です。
どうしてもトメとか岩井少尉の話になると自分が出ちゃいますね・・・

2012-02-24 Fri 20:51 | URL | 見張り員 [ 編集 ]
オスカーさん こんばんは!

オスカーさんの田舎では4月ですか、4月も花が咲きまくっていい感じですね。
うちの段飾り、この写真のはちょっといい加減な飾り方なんですよ。今年はきちんと基本に忠実に飾ったので結構「決まったぜ」って感じで何事も基本が大事だと痛感しました。
左側かな、の市松人形は次女の初節句に実家で贈ってくれたものです。

さあ、感情のひな祭りはどうなりますか・・・マツコはそしていったい!
ご期待くださいね^^。
2012-02-24 Fri 20:46 | URL | 見張り員 [ 編集 ]
こんにちは 遅めの昼休みで帰宅して覗きに来ました。
俺はひな祭りに一種のトラウマがあるんです><
実は俺、三月三日生まれで子供の時から誕生日を
周りの友達に言えなくて、何かの時に誕生日を言うはめになって三月四日って言ったら担任に「嘘はいけません」と言われ恥ずかしさで堪らなかった事が毎年この時節に思い起こされますw
多分一種のトラウマだと思うのですが・・
頑張ってくださいね
2012-02-24 Fri 14:26 | URL | としぼん [ 編集 ]
ほのなか雪洞の灯りに映るお雛の顔。この陰影の美しさこそ遠い昔の御所そのものかと思いますね。谷崎潤一郎の陰翳礼讃、日本人のDNAが疼きます。

トメさんへのお母さんの仕打ちはたまらないですね。惨めだったろうなぁと思います。
お母さんのこの突き放し方……、我が妹のトラウマだろうかと感じたのは邪推でしょうか。
痛々しげと憎々しげがあまりにお上手なもので。ごめんなさい。
2012-02-24 Fri 10:51 | URL | まろゆーろ [ 編集 ]
こんばんは。お雛祭り!!ウチの田舎は4月なので今の時期だとピンとこないんですよね(笑)見張り員さま宅の段飾り、ステキですね。やはり女の子のいると違うのだわ~華やか!! 物語の中でそれぞれの記憶にあるお雛様、乙女だなぁ~って思いました。結構お顔の好き嫌いってありますよね。着物もですけど。なんか私も書きながらウキウキしてきました♪マツコも女の子なのでよろしくお願いします!!
2012-02-23 Thu 23:13 | URL | オスカー [ 編集 ]

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