「女だらけの戦艦大和」・節分初体験2<解決編>

節分当日、前日までに大釜で炒られた豆が、大きな木箱に入れられ各分隊に配られた――

 

マツコは「豆まき」とか「節分」がどんなものだか今一つ分からないので不安ながらもわくわくしている。そして今日はトップから防空指揮所に降りてきてトメキチに、

「ねえ、まだ始らないの?ねえ、まーだーぁ?」

とせっついている。トメキチはオトメチャンのそばで座っていたがさすがに苦笑して

「マツコサン、豆まきは夜になってからなの。だからまだまだずっと先だから待っててね」

と言った。マツコは「あら・・・そうなの?早く夜になんないかしらねえ」と待ちきれない様子である。

 

そんなころ、艦長室では梨賀艦長・野村副長、そして森上参謀長が何やらしている。三人は「今日は節分だし、『艦艇―ズ』特別リサイタルをしよう」と言って練習後、「今回も鬼の役をしようか!」とトレーラーでやったような完璧な鬼の扮装を整えているのだ。

前回、完璧な鬼の扮装をした際はわれを忘れた兵たちに豆や、一升枡など投げつけられ踏みつけられ失神するという大失態があったがもう皆はわかっているから「大丈夫!」というわけで扮装にも熱が入る。

野村副長は、

「今回は内地での節分だから、南方風から日本ふうにしたらどうかねえ」

と言い、森上参謀長が「ならこれだろう」と<なまはげ>のような蓑をこしらえる。「じゃあ、顔もそれっぽくしようよ」と梨賀艦長がいい、お面も<なまはげ>に変化していった。

副長は大笑いしながら「こりゃあいい!みんな驚くぞ!!」と手を叩いた。そして梨賀艦長が、

「それでね、これを○○○○(都合により今は伏字)に××(都合により今は伏字)してみたらどうかなあ。意表をついてウケルと思うんだけど?」

とあるものを二人の前に出し、副長も森上参謀長も腹を抱えて手を叩いて嬉しがって賛成した。

 

艦内は皆今夜の楽しい行事に浮足立っている。豆の入った木箱の周りにはどこの分隊でも兵たちが集まって、そこの班長や分隊士、あるいは分隊長が「豆のギンバイ行為は厳禁だ!豆をギンバイした奴は今日の豆まきには参加させんぞ!」と言って木箱の上に座り込む。

図星をさされた兵たちはきまり悪げな笑みを浮かべながら「そ・・・そんな大それたこと考えちゃいませんて。ただ、ええにおいじゃなあ~って思うただけです」と言っては残念そうにその場を離れる。

航海科でも同様で、航海科の士官居住区で松岡分隊長が例のラケットをかついで豆の入った箱の上に胡坐をかいている。麻生分隊士が「分隊長、そげえなことをせんでもうちの分隊員は行儀がええですけえ大丈夫ですよ」と言ったが分隊長はラケットを片手に構えて、

「麻生さん、私だってね自分の部下を信頼していないわけじゃあないよ。でも他から誰かが来て摘まんでいくってこともあるかもしれないじゃないか?だから私が見張りの役を買って出たってそういうわけだよ。ここは私がいるから大丈夫、麻生さんは自分の仕事をしていいよ」

と言って笑った。分隊士は「ほうですか・・・じゃあ」と言うとその場を離れた。そして麻生分隊士は見張兵曹と石川水兵長に手伝わせて一合枡を分隊の人数分そろえる・・・

 

やがて。

呉湾に夜の帳が下りた。皆のボルテージはもう最高潮である。医務科では日野原軍医長がけが人が出た時のためにと薬品を用意して、自分も衛生兵たちとともに日の丸の付いた鉢巻をしめ、

「いいか、また今年もこの日が来た!無礼講の豆まきは普段の恨みを晴らすいい機会だ、艦長でも副長でも参謀長でもいい、思い切り豆をぶっつけてうっぷん晴らせよー!」

と飛んでもない檄を飛ばしている。衛生兵たちもすっかり頭に血を上らせて、

「おおーーう!!」

と天にこぶしを突き上げて叫んでいる。

・・・そして。

艦内のスピーカーから副長の声で、「各分隊、豆を配布せよ」の号令が流れ大きな木箱のふたが開けられた。わっ、と箱に群がる兵を両手で「待て待て!順番だってえの!」と払ってからもったいぶった顔で分隊士が各自の枡に豆を入れてゆく。

「こがいに小さい枡じゃああっという間にのうなってしまう」とぼやく兵に、下士官がそっと「大丈夫じゃ、あちこちに豆の詰まった缶が置かれるけえ、そこからつかみだしたらええんよ」と教える。「で、」とその下士官はなお続けて「ついに豆がのうなったらな、この枡を投げてやったらええんじゃ。誰が投げたかわからんけえね」と言ってくすくす笑った。

豆が各自にいきわたったころを見計らって、ついに・・・

「豆まき、はじめ!!」

の号令が下り・・・艦内から戦闘よりものすごい声や物音が湧き上がってきた。バチバチ、バチバチと豆がはぜる音、「いてえ、痛い!やめろ貴様らあ!」と泣きそうになりながら怒鳴る鬼役の士官たち。それを執拗に追う兵たち。七転八倒・阿鼻叫喚の世界がここに展開している。

そのものすごい騒音を、第一艦橋で聴いたマツコは最初何が起こっているのか全く分からず、

「あんた、あのものすごい声みたいのは何?」

とトメキチに尋ねる。トメキチはにこっと笑うと、「あれが豆まきですよ。さあ、マツコサンぼくたちも行こう!」と言うと自分は鉄兜をかぶり、防弾チョッキを着込んで歩き出す。マツコは何が何だか分からないという顔でそのあとをついてゆく。

艦橋を降り、上甲板に入ったところからもうわけがわからない状態で逃げる人、追うひと、そして前が見えないくらい投げつけられる豆、豆が鉄の壁に当たる音等で普段の『大和』艦内とは異質な世界となっている。

トメキチは喜んでその中に入って行ってしまった、マツコは度肝を抜かれてその場に立ち尽くしている。

そのマツコにも、豆がバシバシと投げつけられマツコは泡を食って逃げ出す。マツコは豆の当たる痛さに、「いったい何なのよ!なんであたしに弾を当てるのよう!」と叫んでその大きな翼で頭を抱えると逃げ出す。

すると誰かが、「ハシビロが逃げたぁ!」と叫んで皆がマツコを追うことに。マツコは本当に驚いて上甲板から下甲板、最下甲板まで走り回った。最下甲板では機関長の浜口大尉に「鬼は外ー!わっはは、わっはは!おい、変な鳥、お前も笑え!!」と無理な注文をされた上、正面から豆をぶっつけられる可哀そうなマツコ。

「ギャー!何すんのよう、このおとこ女!」

マツコは悪態をつくと一目散に最上甲板を目指す。目指した最上甲板に、果たしてあの『大和』の三馬鹿、もとい、三賢人の艦長・副長・参謀長がなまはげの装束で立っていた。マツコを追って艦内中の兵たちが追ってくる足音が雷鳴のように轟いて艦全体がびりびりと振動さえしている。

マツコはなまはげにさらに度肝を抜かれ立ち尽くしていた。と、一人のなまはげ(梨賀艦長であったが)がグッとマツコをつかんだ。ものすごい力でマツコは引きずられ、その頭に何かをかぶせられた。

「何よ、何すんのよアンタ!」とマツコは叫んだが次の瞬間、最上甲板になだれ込んできた艦内の総員があっという間に三人と一羽を取り囲んだ。絶体絶命の三人と一羽。

すると殺気立った兵たちの間から鉢巻き姿も凛々しい日野原軍医長が現れ、大きな一升枡を頭の上に高々と掲げると普段の温厚な軍医長に似合わない大音声で

テ―ーーーッ!

と叫んだのだった。豆が投げつけられるその数瞬前。

眼にも止まらぬ速さで梨賀艦長はマツコのくちばしを両手でこじ開け、副長と参謀長がその翼を両方からグイッと広げた。

鬼の面をつけ、大口を開けさせられ翼を大きく広げたマツコはもう、鬼そのもののようになっている。そこに大量の豆が・・・

 

気がつけば、マツコは信じられない量の豆を口に叩きこまれ枡まで投げつけられ、翼にも豆が食い込んで昏倒していた。そのマツコを盾にした三人のなまはげも悪いことはできないもので、枡の直撃をくらって昏倒。

たくさんの兵たちがその周りで跳ねまわりつつ凱歌を上げるという異常事態である。終わらぬ歓声の中をトメキチが走り寄ってきてマツコをなめた、そして

「マツコサン、大丈夫?生きてる?」

とその耳元で言う。マツコはようよう気を取り直し、起き上がった。そのでかいくちばしから豆がバラバラ・・と落ちた。翼からも。

口の中の豆をすっかり吐き出した後、マツコは金色の目で跳ねまわる兵たちをすごい目で見まわした。大きな翼をバッサバッサと動かし始めた。兵たちが何事か、とマツコを凝視した。

トメキチが、「マツコサン、乱暴はだめ!」と止めようとしたとき。

マツコはその場で高く跳びあがると兵たちの中に飛び込んで行った。

「食べ物を粗末にするんじゃないわよおお!」

と叫びながら・・・。


数時間後。

 「艦艇―ズ」が歌い踊る最上甲板、マツコは主砲の砲身にくくりつけられていた。艦長が「ハシビロはハイテンションになって危ないからここにくくっておいて」と命令したからだ。マツコは砲身から「ふん、このへたくそ!いい年こいて変なかっこしてんじゃないわよ。それよりあたしをここから放してよ、もうこの馬鹿!」とわめいた。

しかし皆は「艦艇―ズ」に夢中で知らん顔。マツコがさすがに悲しくなった時、マツコを縛るロープが解かれてマツコの体が楽になった。マツコが見返ると砲身にまたがってロープをまとめる見張兵曹と麻生分隊士、そしてトメキチがいた。トメキチは「トメさんと分隊士は艦長に内緒でマツコさんを助けに来たんだよ。トメさんたちはマツコさんに豆を投げたりしてないから怒らないでちょうだい」と言った。マツコは嬉しかった、そのマツコを「艦長に見つかるといけんから」と大きな布に包んで分隊士はオトメチャンと抱えて指揮所に連れて行ったのだった。

 

さて。

残った大量の豆だが、その豆は集められてきれいにされて「きな粉」にしたという。福島大尉が「もったいないわあ、こんなにたくさんのお豆捨てちゃいけない。きな粉にしましょう」と言い決まったのだ。

そして、航海科の部屋から集められたこれも相当な量の豆はマツコとトメキチが二人で食ってしまい・・・二人は今、艦内で「屁こき鳥」「屁こき犬」と呼ばれているという――

 

       ・・・・・・・・・・・・・・

しょうもない「豆まき」でした。みなさんのお家では豆まきをなさったでしょうか?節分も日本の大事な伝統文化です。次代に継承したいものですね。

大きなお口のハッシー(画像お借りしました!)。
thumb5ハッシ―2


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Comments 10

見張り員">
見張り員  
周平さんへ

周平さん こんにちは。

こんなことが本当に会ったらさぞよかっただろうなあ、と思いますね。
でもきっと長い航海中、なにがしかの楽しみがあったと思います。
大戦艦はそれほどでもなかったようですが駆逐艦・潜水艦のような小所帯では和気あいあいだったようです。
「女だらけの~」はその辺ちょっといい加減かもしれませんね^^。

私もそういう機会があれば絶対上司だろうが社長だろうがどさくさにまぎれてやっちゃいます!家の中のでも、しましたから・・・へへへ!

2012/02/05 (Sun) 17:24 | EDIT | 見張り員さん">REPLY |   
周平  
おはようございます。

厳しい訓練、長い航海で船員達も疲労困憊、そんな中での艦内での無礼講の豆まき!
下っ端にとってはストレス解消の楽しい行事だったんでしょうね。
僕だったら幹部に向かって投げまくりますね、間違いなく、、
幹部もその辺り解ってくれてみんな一緒になって楽しんでる。
そこがいいですね!良い行事です、、

2012/02/05 (Sun) 10:14 | EDIT | REPLY |   
見張り員">
見張り員  
鉄さんへ

鉄さん おはようございます!

ありましたね!そのシーン。
もしかしてあの豆も・・・・まさか秋山さん!・・・・な~んてことはないですね(爆)

コメントありがとうございました、またどうぞお越しくださいね^^!

2012/02/05 (Sun) 09:23 | EDIT | 見張り員さん">REPLY |   
鉄  
あのドラマ

そう言えば、去年で完結した NHKドラマスペシャル「坂の上の雲」の秋山真之。炒り豆を食べてましたね。(笑)

2012/02/04 (Sat) 23:45 | EDIT | REPLY |   
見張り員">
見張り員  
柴犬ケイさんへ

柴犬ケイさん こんばんは!

モミジ本当にむきになって食べていましたよ、豆を!!
柴犬は割合イモが好きなので、まさかマメは・・・と思っていましたがまあ食べるわ食べるわ。
ケイチャンもうれしかったでしょうね❤年に一度のお豆の日~~♪て感じでしょうか^^。

インフル、ものすごい猛威をふるっていますね。私は予防接種をしていない(できないのです、以前したら具合が悪くなりましたので)からちょっと怖いです。

寒さがまた来週辺りきそうですね、御身大切になさってね。

2012/02/04 (Sat) 19:56 | EDIT | 見張り員さん">REPLY |   
見張り員">
見張り員  
まろゆーろさんへ

まろゆーろさん こんばんは!

私も当初はあまり彼女?を好きなほうではなかったんですが、「有吉・マツコの怒り新党」という番組辺りから見方が変わってきました。
チャラ男みたいな芸人よりは全然いいと思いますし、なんかかわいげが出てきたような気がしています。

ハッシー・デ・ラ・マツコ、本物のマツコさんに似てきましたか!なんだか嬉しいですね❤

食欲は人間の三大欲の一つですからこれが旺盛なほうが生命力があっていいと思います。人間生命力がないとこんな世の中生き抜けません。
鵜呑み、ですか?鵜呑みは胃によくないのでなるべくやめて、30回はかんでから飲み込んでくださいね~(^v^)

今日のそちらは暖かでしたか?くれぐれも御身大切になさってくださいね。

2012/02/04 (Sat) 19:52 | EDIT | 見張り員さん">REPLY |   
見張り員  
Re: オスカーさんへ

> オスカーさん こんばんは!
> 「あなたのマツコ」ww、大人の階段をまた一つ、上りました~^^。
>
> そうだ2月はバレンタインもありましたね。おお、なんと行事が盛りだくさんの2月なんでしょうか・・・と感心している場合ではないですね、バレンタインネタを探しに旅に出ます~~^^。
>
> 今日は暖かかったとは言いますが一人「寒い寒い」とみんなと正反対のことを言っていたあまのじゃくな私でした。
> オスカーさん、御身大切になさってね❤

2012/02/04 (Sat) 19:46 | EDIT | REPLY |   
柴犬ケイ  
No title

見張り員さん  こんにちは♪

コメントありがとうございます♪

寒い日が続きますが、見張り員さんモミジちゃんも
元気で何よりです。
豆まきでモミジちゃん豆を食べれて嬉しかったでしょうね。
我が家の柴も喜んで拾って食べていました。
インフルエンザが流行っていますので、見張り員さんご家族
気をつけてください。


2012/02/04 (Sat) 14:14 | EDIT | REPLY |   
まろゆーろ  
No title

ハッシー、ほんとマツコさんにそっくりだ!!
最初はなんて横柄な態度と口のきき方の人かと思っていましたが、最近はもっとひどい芸人が有象無象状態になったからでしょうか、マツコさんが憎めなくなりました。あんなキャラも良いかもしれませんね。
艦上のマツコさん、よく捉えていて人間のマツコさんとオーバーラップしますよ。

食い意地は私とて負けてはおりません。
手当たり次第口に入れたがる鵜呑みのワニみたいなもんらしいです。私……。

2012/02/04 (Sat) 10:38 | EDIT | REPLY |   
オスカー  

こんばんは!私のマツコがマツコがぁ~初体験!!(笑)ひとつオトナになってしまったわ(爆) バレンタインの時はあの方が麦チョコをラケットでマツコに連打しそうで怖いです! バレンタインはおとめモード全開でしょうか?←すでにバレンタインの話もあると思っている私です~どうぞよろしくお願いしま~す♪

2012/02/03 (Fri) 23:23 | EDIT | REPLY |   

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女だらけの「帝国海軍」、大和や武蔵、飛龍や赤城そのほかの艦艇や飛行隊・潜水艦で生きる女の子たちの日常生活を描いています。どんな毎日があるのか、ちょっと覗いてみませんか?
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ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
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(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)