2017-10

「女だらけの戦艦大和」・節分初体験1 - 2012.02.01 Wed

内地に帰っている「女だらけの大和」内にいい香りが充満していた――

 

その香りを誰よりいち早くかぎつけたのは犬のトメキチである。トメキチはその日は寒い防空指揮所を避けて昼戦艦橋に、これまた寒さが苦手なハッシー・デ・ラ・マツコととともに居て艦長やほかの兵員たちが仕事をしているのをおもしろそうに眺めていた。

マツコは灰色の羽をくちばしでなでつけながら

「まああんたちょっと見てよ、あの艦長とかいう女!自分は何にもしないでさっきから紅茶ばっかしガブガブ飲んでるわよ。いやあねえ、あれで艦長ならこんな楽な仕事ないじゃないの!」

と梨賀艦長の一挙一動に怒りをぶつける。トメキチは少し笑って、

「マツコサン、でもね梨賀艦長はいざとなると一人で何人分もの働きをして本当にすごいんだから、そんなこと言っちゃダメよ」

と言った。マツコはその金色の目で艦長をじいっと見つめると独り言のように「そうかしら?あたしにはそれほど<デキル>女には見えないけどねえ・・・」とぶつぶつ言っている。

その時トメキチが「あ!」と言うと顔をあげてあたりをクンクンし始めたのだ。その様子にマツコは、

「あらどうしたってのよ、何か変なことが起きたんじゃないでしょうね?」

と心配そうな顔でトメキチを見た。

トメキチはううん、と頭を振って「そうじゃないの。とってもいい匂いがしてくるの。・・・ね、なんの匂いだか見に行かない、マツコサン」と誘った。マツコが断るわけがなく二匹は連れだって艦橋を出た。

ちょうど、エレベーターで森上参謀長が上がってきたところだったのでその目を盗んで二匹はそっとエレベーターに乗り込み上甲板へ降りることができた。

「ちょっとぉあんた、すごいじゃないこれ!」とうれしがって大騒ぎのマツコにトメキチは、「マツコサン、これはやたらと使えるものじゃないからね。えらい人しか乗っちゃいけないんだから」と少し怖い顔で言ってやった。しかしマツコは聴いていないようだ・・・

ともあれ二匹はにおいのもとをたどって狭くて長い廊下を歩いてゆく。途中行きあった水兵や士官連中にマツコは頭をつかまれたりしながら、トメキチはなでられながら。マツコは「いやーねえこいつら!なんで人の頭をいちいち掴むのかしらねえ!」と怒っている。それはとりもなおさず、マツコの頭は「掴んでくれ」と言わんばかりの形であるからだが。

「マツコサン、ここだよ!」

トメキチの声にマツコは怒りを納めた。見ればそこはいつだったかたくさんの食べ物を貰った「烹炊所」ではないか。マツコの顔が嬉しさに輝いた。

トメキチは中に福島大尉がいるのを見ると、大尉の方に走って行った。そして大尉に飛びついた。福島大尉が

「ああー!トメキチぃ!どうしたのぉ、上にいなくていいの?・・・あ、上は寒いからここに来たのかあ。ほらトメキチ、今日はねえこれをしてたんだよ」

とトメキチを抱き上げて大きな釜の中を見せてくれた。

中には大量の「豆」が炒られていたのだった。大尉はにっこりとしてトメキチに

「そう!もう節分だもんねえ~」

と語りかけた。トメキチは二年ほど前だったかのトレーラー島での豆まきを思い出した。まるで戦場のような騒ぎでついには本物の「鬼」まで出た始末。あのときは僕も興奮したっけねえ。

それでこのいい匂いがしたのね、とトメキチは福島大尉に言ったが大尉には「ワンワン、ワン」としか聞こえない。が、大尉は微笑んで「そうよトメキチ。また楽しい豆まきしようねえ~」」とトメキチを抱いたままその場で一回転。

と、福島大尉は入口に立っているハシビロを見た。そして

「あらそこにいるのは誰かな?こっちにおいで」

と言って声をかけた。トメキチが「マツコサン、いらっしゃいって」と言い、マツコはのしのしと歩いてきた。

そして福島大尉のそばまで来ると「ハッシー・デ・ラ・マツコです。よろしくね」と言って頭を下げた。マツコにはこの大尉が<アソウ>より<マツオカ>より階級が上の人だと直感でわかったらしい。礼を尽くしたつもりである。

福島大尉は片手でハシビロの頭をなでた、そして「ほら、あなたもこれをご覧?こんなの見たことないでしょう」と大きな釜をのぞかせた。豆がいい香りを放ってまだ熱い。

マツコは、「これ・・・食えるのかしらねえ」とトメキチを見て言う。トメキチは「食べられるけどその前に大事なことをするの。だからまだ食べられないの。二月三日になれば食べられるから楽しみにしてて、マツコサン」と言って笑った。

マツコは「三日ねえ。あと二日もあるじゃないの。冷めちまうじゃないの、この丸いもの」と残念そうに言った。そして気がついたように

「ちょっとあんたさ、<大事なこと>って何なのよ」

とたずねた。が、トメキチはいたずらっぽく笑って「今は教えない」と言うだけである。マツコはイジイジして、

「ちょっとやあねえ。あんたも人が、いや、犬が悪いわねえ。教えなさいよ」

と言ったがトメキチは笑うだけ。教えて教えて、とトメキチに飛びつくマツコに福島大尉は、

「鳥さん、おなか空いてない?おいしいお菓子があるからトメキチと一緒においで」

と言うとその場の主計兵に、「お疲れ様、粗熱が取れたら木箱に入れておいてね」と言うと、トメキチをだっこして、マツコの頭に手を添えると私室に向かい歩き出した。

その一部始終を見ていた主計兵の西一水は、

「福島大尉は動物を手なずけるのも上手なんじゃねえ」

と感心し、同じく時田一水は

「最初はお菓子で手なずけるのはうちらもされたっけのう」

と言うと二人顔を見合わせて「うちらは動物並みなんか・・・」と複雑な顔で豆をでかい宮島でかき回した。

 

節分まであと二日。今年の節分は何事もなく終わるのだろうか――?

  (次回に続きます)

 

       ・・・・・・・・・・・・・・・

 

今年も節分の日が近くなってきましたね。ああ、この日を待っていました。普段のうっ憤を豆をぶっつけることで晴らせる日です。そして・・・恵方巻き。でもこのでっかい巻き寿司はダイエット中の人間にはちとつらいかも!?

トレーラーでの「節分騒動」はこちらを。


葛飾北斎画:『北斎漫画
『節分の鬼』(WIKIより拝借しました)

なんだか鬼が惨めっぽい…哀愁漂う節分だ!
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● COMMENT ●

matsuyama さんへ

matsuyama さん こんばんは。

なんとそちらでは落花生ですか!でもかたずけるのに面倒なくっていいかもしれませんね!でも都市の数食べるとしたらどう数えるのかなあと思いましたが奇数の年齢だといろいろ困るからやはり一つの殻で一個でしょうか?
う==ん、謎だww。

今夜さっそくまきましたよ!思いっきりぶっつけてやりました^^、敵は痛がっていました(爆)。そうですね来年は大豆に加えて落花生をまきましょう。

ちなみに・・・私は豆を・・・いったいいくつ食べたか忘れましたw、だってまきながら食べたもので・・・^^。

No title

今夜ですね。節分の豆撒き。大和でも炒った豆を撒くんですね。
こちらでは撒く豆は落花生なんですよ。
これも恵方巻同様業者の陰謀みたいです(笑)。
でも撒いた後、落花生の方が片付けやすいですけどね。
飛んで行った落花生を見つけやすいし、そのまま殻を破って食べられますからね。
落花生、当ったら痛いですよ。怨念を晴らすにはいいかもしれません。

その方の歳の数だけ食べるんだそうですが、落花生だとどれを基準に計算するんでしょうかね。
殻付きの落花生を歳の数だけ、あるいは殻の中の実を歳の数だけ。
見張り員さんは何個食べますか(笑)。

まろゆーろさんへ

まろゆーろさん こんばんは。

そうです、年に一度の恨みの晴らしどころです!!・・・なんちゃって、大げさですがここぞとばかりに豆をぶつけると心もすかっとします(って相当嫌なやつな私)。家じゅうの鬼を退治てくれよう、桃太郎!!(ってこれ古いですね)

トメキチとマツコはなんだかいい相棒になってしまったようです。平和な光景には安どしますね。この先また戦闘があるのかないのか・・・でも戦いはないほうがいいですから・・・何とかしたいものです。

敵を撃滅し、早く平和な中の「女だらけの~」にしたいなあと思いますね。

荒野鷹虎 さんへ

荒野鷹虎 さん こんばんは!

コメントをありがとうございます!本当に寒すぎますね、積雪量も普通じゃないですね、この冬はなんか「ものすごい」です。

「女だらけの大和」は寒さに負けず頑張っております!という私自身が寒さに負けそうですww。
自衛隊を「軍隊」に!というと「戦争するんだろう!」と気色ばむ人が多いですがそうではなく、「戦争を避ける手段」としての国軍の存在もあると思いますよね。
「抑止力」というものだと思うのですが・・・「持たざる国の悲劇」にならないようにしたいですが。

御身大切になさってくださいね!

ジスさんへ

ジスさん こんばんは!

名古屋に積雪の様子をTVで見ましたが、こないだの東京よりすごいですね。今日は寒いうえに足もとが悪くって大変でしたね。お風邪ひかないよう暖かくして休んでください。

節分を境にしてもうそろそろ、春が萌してもいい頃ですよね。
厚いコートを春ものに変えるころには気分も晴れるかなあという感じですが、いつも心は晴天でいたいものです。

いつもありがとうございます。

オスカーさんへ

オスカーさん こんばんは。

昨日今日と風は強く寒かったですね、鳥はあんな高いところを飛んで寒くないのでしょうか???

マツコなら…意外と耐えるかもですよ、結構打たれ強い人、じゃない鳥ですからww。
「豆」を横に倒すと・・・おお!見える見える。
私は明日、うちの二大鬼に豆をぶつけてやりますよ~!!

さてマツコの節分初体験はいかがなりますか、ご期待くださいね~~!

No title

あはは。思いのたけを……、日ごろの鬱憤を……、明日はしっかりと果して下さい。鬼は、あそこにもここにもどこにでもおりますので。

トメキチさんとマツコ、なんだかナイスなお友達になっていますね。
束の間の幸せな風景でしょうか。このまま終戦になってくれることを切に、切に願っています。
鬼畜米英めがけて豆打ち、大賑わいの節分を期待していますよ。

見張員さんへ!!

コメントいつもありがとう御座います。!
まもなく節分というのに、寒い日が続きますねー。
「大和」も好調で、努力に頭が下がります。!
早く、自衛隊の、軍隊昇格を願っています。
戦争準備ではありませんが、国民の賛同が得られなく残念です。
日本は形式過ぎますね~^^。
頑張ってください!☆!

No title

おはようございます。いつもありがとうございます。

節分の時期ですね。明日を前にしてこの猛烈な寒波、驚きです。名古屋でも結構な積雪となりました。

季節の変わり目、いろいろと思うところもあります。
節分より気持ちを新たに清々しい気分で生きていきたいですね。

こんばんは。風が強かったですね。いつもはきれいに並んで飛んでいる鳥たちが、今日は枯葉みたいにバラバラでした(--;)
マツコだったら耐えたかしら!?(笑)タイトルを見て接吻初体験と読み違えるところだったおやぢな私、今日買ったマンガに「豆という字を横に倒すとKOI(恋)になるの。だからね、好きな人に豆をぶつけて横倒しにすると恋が実るの」とありました!もちろんギャグなんでしょうが、もしかして…マツコやっちゃったりして~本命は誰だ!?(爆)
続きを楽しみにしています!!


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ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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