2017-09

「女だらけの戦艦大和」・マツコ、迷子になる!? - 2012.01.27 Fri

「女だらけの戦艦大和」には動物が二匹いる――

 

その二匹は、あまりにも暇なので連れだって「艦内旅行」をすることに決めた。言いだしっぺはハッシー・デ・ラ・マツコである。トメキチに、

「ねえ、みんなほとんどで払っちゃっててつまんないわねえ。もうあのマツオカとかいう奴を相手にするのも疲れたし、屋根の上も寒くってあたしには体に良くないわ。・・・あんたこのでかい艦の中を知ってるんならあたしを案内しなさいよ」

と言ったのだ。トメキチも寒いのはあまり好きではなかったし、ご主人の見張兵曹も麻生分隊士も休暇とやらで出かけたので暇は暇である。ただし、誤解のないよう言っておくが見張兵曹はトメキチが邪魔で置いて行ったのではない。

「休暇中は私が預かる~!」と、梨賀艦長が申し出て泣く泣くトメキチを預けたというだけの話である。

ともあれ。

トメキチも(まあこのおばさんも『大和』の中を知っておいてくれた方が何かといいかな)と思い、「そうですね、マツコさん。じゃあ、いっしょに『艦内旅行』しましょうか」と言ってマツコはその大きな体をトップから防空指揮所に降ろしてきた。

「アーラ、『艦内旅行』ってなんなの?」

ときくマツコにトメキチは「初めてこの『大和』に乗ってきた兵隊さんたちは『艦内旅行』と言って中を見て回るの。でもものすごーく大きい艦だから迷子になってしまう兵隊さんもいるの。マツコさんも迷子にならないでね、僕と離れないでちょうだい」と説明してやった。マツコは羽を大きく広げて

「あらやだ。あたしは今まで迷子になんかなったことないわよ。見損なわないでちょうだい」

と言い返した。トメキチは笑って、「それならいいです。じゃあ行きましょうか」と言ってマツコの前に立って歩き出した・・・

 

「そうだ、マツコサン」とトメキチは防空指揮所を出る前にマツコを振り返ると言った、「そこら辺にあるものをいたずらしたらいけませんよ。何が起きるか分かんないから」。

マツコは羽を膨らまして「何いってんのよあんた、あたしはあんたみたいな子供と違うんだからいたずらなんかしないわよ。まったく・・・」と少し怒ったようだ。

トメキチは「それならいいですが」と言うと前楼裏にあるラッタルへの扉を開いた。ボーっと、風が吹き上げてきた。

マツコが「こ、ここを降りるの」と少しばかりビビったような声を出した。トメキチは何事もないような顔で

「そうですよ。ここを降りなきゃ下へは行かれないですもん」

と言うとさっさとラッタルを降りてゆく。マツコはあわてて「ちょ・・・ちょっと待ちなさいよアンタ。あたしを置いて行くんじゃないわよ・・・」と後を追いラッタルを降りる。両方の羽でラッタルを持って降りるのだが、慣れない作業のため危なっかしいことこの上ない。

やっとこさっとこ、居住区のある上甲板に降りた二匹。マツコはもうへとへとである。そんなマツコを見てトメキチは「あ、マツコサンは飛べるんだから何もラッタルを降りなくてもよかったですね、飛んで最上甲板に降りればよかったのにね」といまさらながら言って、マツコは

「なによう!アンタわざとやったわねえ!あたしをはめたんでしょう!?」

と大変に怒って羽をバサバサと叩いた。トメキチは全く気に留めないで「さあ行きましょう」と言うとサクサク先を歩く。あわててそのあとを追うマツコ・・・

休暇中とあって行きかう兵がまだいない。

「ここは何なのよ。変な部屋みたいのがあるばっかで面白くないわねえ」

マツコはぶつぶつ言っていたが不意に、「あら、なんかいいにおいがするわよう」というなり走り出してしまった。トメキチは「あ、おばさん待ってよう」と叫んだがそのときちょうど向こうから歩いてきた士官に「おお、トメキチぃ!」と抱きとられてしまい、後を追い損ねた。(まあおばさんのことだから変なこともしないだろうから急がなくってもいいかあ)トメキチはそう思った。

 

マツコは「いいにおい」を追った。これは上甲板後部にある烹炊所からの調理の匂いだった。いつも腹ペコで食いしん坊のマツコにはとても魅力的なにおいである。

はたしてマツコは兵員烹炊所の前に来た。そっと中をのぞくと多くの主計兵が忙しく立ち働いている。(これじゃあちょっと何かをいただきます、ってわけにはいかないわねえ)と思ったマツコだが、落胆したその時一人の主計兵がマツコを見つけた。

「あ!見てみて、あれってハシビロじゃないかしら?」

その主計兵は、包丁を持ったままの手でマツコの方を指している。マツコは一瞬、殺されるのではないかと恐れて羽を広げかけたがそうではないので安心した。

烹炊班長の森脇兵曹が、「おお、ハシビロじゃ。どうしたんねこんなとこに来て?何か欲しいんか?」と言うと、そばにあった魚の切れっぱしをマツコに放ってやった。マツコはそれを器用にくちばしで受け止めた。それを見ていた兵たちが「おお、上手~」と口々に言ってマツコは気を良くした。

マツコにあちこちから魚の切れ端はもとより、大根のしっぽやこんにゃくの端っこ、なると巻きの半分ほどが放られ、それをマツコは器用に受け止め食った。

「見て、ハシビロがこんにゃく食った!」と皆は大喜びである。そのうち腹いっぱいになったマツコは烹炊所を後にして又歩き出した。

それから下士官浴室で浴室掃除中の下士官と一緒に掃除をしたりして過ごしたマツコはもう皆の人気者である。

マツコはすっかり気を良くしている。そして「そういやあの子供、どこに行っちゃったのかしらねえ~」と言いながら元来た道を戻ろうとしたが・・・・

どこよ、ここ!?

と真っ青になった。どこから来たのかどこへ行けば元の場所に戻れるのか全く分からなくなっていた。

「ちょっとお、トメキチ!アンタどこにいるのよー!」

叫びながら狭い廊下を走るマツコ。途中で出会った兵たちが「うわあ、ハシビロだあ」と大喜びしている。

がマツコはそれどころではない、必死になって元の場所を探す。でも・・・みつからない。

そのうちドアのあいた部屋を見つけそこに誰もいないのを見たマツコは「ちょっと休ませてよね」と言うとその部屋に入って机の前の椅子に座った。机の上には何やら難しそうな機械が並んでいた。そしてその手前にはマツコの気をそそる「モノ」が・・・

マツコはトメキチとはぐれてクサった気を紛らわさんと、それをもてあそび始めた・・・

 

「なんだ、『大和』から緊急電だ」

駆逐艦・無花果の電信員が無電機から顔をあげて叫んだ。聞きつけた谷航海長が「どうした、なんて言ってる?」と飛んできた。

電信員は片耳レシーバーに神経を集中させると、「・・・ワレ、マイゴナリ。ワレ、マイゴナリ。・・・いったい何なんでしょうね」とわけがわからないという顔をした。

「『大和』に発光信号を送れ。『意味不明の無電、そちらから発信あり。発信者の特定願う』」

谷航海長はそう言って甲板に上がって行った。

すぐに発光信号が『大和』に送られ、それを信号員が受信し大騒ぎで副長以下が捜索したところ、ハッシー・デ・ラ・マツコが上甲板の無電室で電鍵のキーを叩いているのが見つかり「これか!」とマツコを保護。駆逐艦・無花果に解決を報告した。

副長は艦長にこれを報告、梨賀艦長は「へえ!あのハシビロは無電も打てるんだねえ。トメキチもとても役に立つけどハシビロも訓練しだいで役に立ちそうだね」と大喜びしたとか。

 

トメキチと艦長室で再会を果たしたマツコは

「トメキチ~、あんたいやよ~あたしを一人にしちゃあ~」

と泣いてすがって、トメキチはなんだかとても「むずがゆい」ような気分になったという・・・

 

   ・・・・・・・・・・・・・・・・

久々の更新となりました。共有のPCだといろいろ不都合が多い、ああ自分のPCが欲しいです。


電鍵です(WIKIより)

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● COMMENT ●

matsuyama さんへ

matsuyama さん こんばんは。

「艦内旅行」、これ本物の大和でもあったくらいのもので、そうやって覚えないとなかなか艦内のどこに何があるかを把握できないということで新入りに課されたのだそうです。
時にはスタンプリレー並みなこともあったとか聞いております。時間内に戻れず、手すきが総出で探したこともあったそうですよ。
さすが総排水量6万数千トンの大和ならではの話ですね。

動物が話をできたらいいなあと思うことがしばしばありますね、うちの犬が何を要求しているのかわかりかねるときはそう思いますがそうでないときはちょっと嫌かしら^^。

マツコ電信員誕生か!?動物に手を借りられたらこれまた楽ですねw。

北日本の壮絶な大雪に絶句しています。そちらはいかがですか?くれぐれも御身大切になさってくださいませ。私も時々休みながらも楽しんで書き続けますね!ありがとうございます。

オスカーさんへ

オスカーさん こんばんは。

お待たせしました!あなたのマツコです^^!!
マツコは普段は強がっていますが思いがけない事態に陥ると「乙女」が出ちゃうみたいですね。
ほんとにこれでマツコファンが増えてくれたらいいなあと思いますね~(*^^)v。

マツコ、これからもちょくちょく出てくるかと思いますのでそのせつはどうぞよろしくです~。

まろゆーろさんへ

まろゆーろさん こんばんは。

マツコ・デラックスさん、私は実は好きなんですね~。あのふてぶてしいようでいて繊細な部分も垣間見える人柄が好きですね~^^。

ハッシー・デ・ラ・マツコは最初は分隊長からは目の敵にされほかの兵たちには嫌がられていましたが、訓練で分隊長に激突して死にかけたとき皆から心配されて開眼したようです。
そうですよね、真の嫌われ者はいないのかもしれません。自分の心がけが一番なのかもしれません。

本当に寒いです、あすの朝の東京は氷点下の寒さとか・・・・おおお~~~う!!
そちらも寒いことでしょう、お互い大事に過ごしましょうね^^!

No title

艦内旅行ですか。すごいですね。それだけ大和の巨艦を表現してるってことですよね。
昨年飛鳥Ⅱが当地にも寄港しましたが、その雄姿は素晴らしいものがありました。戦艦大和は5万トンの飛鳥Ⅱを上回る大きさなんでしょ。迷子になるのも納得ですね。

話が出来ない動物が何を考え、何をしようとしているのかがわかります。
きっと言葉をしゃべれる動物がいたらこんなんでしょうね。
それにしてもマツコが無電を打てるなんて奇想天外ですね。

寒さも一段と厳しくなってきました。休暇中の見張兵曹と同様作家活動に
支障のないよう、時々休暇をとりながら「女だらけの戦艦大和」楽しくご執筆くださいね。

こんばんは。待っていたわ~私のマツコ(笑)迷子になって「どうしよう~」とチラッと見せる「おとめ」な部分がたまりませんわ(*^^*)この作品でマツコファンが急増しないかな♪ これからも出番を与えて下さいまし~どうぞよろしくお願いいたします(笑)

No title

マツコさん、テレビで見る本物を彷彿とさせて下さいました。
よく特徴をつかんでる!!
意地悪で根性悪でも、人様から良くされたり、無心に遊んだりすると素に返って少しだけ優しさが出てくるということでしょうか。
あながち嫌われ者なんてこの世の中には居ないのかもしれませんね。
今日も素敵な話をありがとうございました。

寒いですからくれぐれも体に気を付けて過ごして下さい。


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Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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