「女だらけの戦艦大和」・内地の正月3<一人でも・・>

「凛々しく生きたい。女であっても女々しく生きるのは嫌だ」・・・

 

いよいよ麻生分隊士と見張兵曹の上陸日。二人は大勢の上陸員に交じって陸へ上がる。久しぶりの呉、内地の正月に心が弾んだ。

見張兵曹はちょっと「大和」を見かえってから「まだ塗装とやらははじまっとらんのでしょうかねえ?工廠の皆さんも正月休みじゃろうか」とひとりごちた。それに麻生分隊士は「いや、正月返上でやっとるようじゃね。今は上陸時間じゃけえ、向こうさんも遠慮して時間をずらしてくれとるんじゃろ。なるべく急いでせんとトレーラーを御留守にするわけにもいかんけえね」と答えた。

「ほうですか」と見張兵曹はつぶやいた。自分たちもそれなりに大変だとは思うがしかし、工廠の技師・職工たちはもっと大変ではないか・・・見張兵曹はふと思った。正月返上でも不平を言わないで黙々と働く工廠の人たちが見張兵曹にはとても神々しいものに思えていた。

(凛々しいひとたちじゃなあ)

その皆のためにも、この戦争には絶対勝たねば。そう兵曹は改めて決意を固めるのだった。

 

二人は下宿に行こうと歩いていたが途中で、

「ああ!麻生少尉じゃないか!?」

と声をかけられ振り向けば麻生少尉の海兵団からの友人の少尉連中が数人立っていた。みな他艦の勤務でなかなか会えないのだが今回はうまくタイミングが合ったらしい。

「よお、竹下に吉田、それに池田じゃないか!」

麻生分隊士もちょっと興奮気味の声を上げた。そして四人は駆け寄ってそれぞれ肩をたたきながら談笑している。

それを微笑みながら見ているオトメチャンに気がついた竹下少尉が「あれ、あの子は?」というと池田少尉が「たけちゃんなんも知らんのか?ほらあの子が麻生のアレだって」と言ってくすくす笑った。吉田少尉が「ほう、あの子がね!初めて見るがええ子じゃないか。麻生ちゃんええ子をどうやって捕まえたンね?」と言って身を乗り出した。

麻生少尉は照れてエヘエヘと笑っていたが、不意に池田少尉が「麻生は明日まで俺たちに付き合え、ええか!」と宣言したのには驚いた。

「・・・明日までって」と、麻生少尉は驚きのせいかあまりよく話せなくなったようだ。「俺は休暇中は下宿であの・・・」

しどろもどろな麻生少尉を少し意地悪げな眼で見て池田少尉は、

「聞けば貴様の艦は一週間ほど休暇があるらしいのう。なら一晩くらい昔の仲間と遊んだって罰は当たらんじゃろうが。あの子には俺がよう言うておくけん。任せろ」

と言うなりオトメチャンのそばに行った。

知らない少尉に近寄られて、オトメチャンは姿勢をただすと敬礼をした。そのオトメチャンに返礼して池田少尉は「俺たちは海兵団から麻生とは一緒で仲ようしとったもんじゃ。今日はもう何年ぶりにここで麻生と会うた。で、貴様にはほんまに悪い思うが今日は麻生をお借りしたいんじゃが・・・・ええかのう?」と言った。池田少尉はわざと威圧的に話をした。

そのせいかオトメチャンはとても緊張して「はい。ええです」と短く返事をした。麻生少尉は何か言いたげだったが、ほかの仲間に抑えられた。

「じゃ、麻生。行くぞ」

池田少尉が麻生少尉の肩を叩いたが、麻生少尉は「ちいと待て」と言うと見張兵曹に「オトメチャン。下宿で待っててくれ。俺は絶対今夜中に行くけんね、まっとってな」と言ってその手を握った。オトメチャンはかわいく笑って

「はい、わかりました。分隊士、楽しんでいらしてくださいね、うちは待ってますけん」

と言って敬礼した。そのいじらしさすら感じる行為に麻生少尉だけでなく傍観していた少尉連中も感じ入ってしまっていた。

(おい、あんなええ子に・・・いいんかなあ?俺たちなんか悪いことしてるみとうじゃ)

竹下少尉と吉田少尉はぶつぶつ言ったがもう後には引けない。三人は麻生少尉を囲んで歩きだした。

少尉連中が遠ざかってからオトメチャンはふう…っと息をついて(仕方ないね。古くっからのお友達じゃあ断れんじゃろ、分隊士も)と思って下宿に歩き出す。

そうだ分隊士が留守の間に部屋をきれいにしとかんといけんねえ、とオトメチャンは考えつつ歩いた。

 

オトメチャンは下宿に着くと置いてあったもんぺに着替えて部屋を掃除し始めた。前に下宿のおばさんが作ってくれた布団を窓辺に干す。今日は天気も良く布団もあったかくなりそうだ。オトメチャンはほっとしたような笑みを浮かべて空を見上げる・・・

 

その日も夕方となりあたりに暮色が満ちた。(そろそろ分隊士もお帰りじゃろうね)と思ってオトメチャンは階下に降りた。下宿のおばさんに台所を借りようと思って声をかけた。おばさんは笑顔で「ええよ、好きに使うてええからね」と言ってくれた。

オトメチャンはそこで数品を作り、その中からおばさんのために一人分を分けた。できた料理を二階に持ってあがる際、「あの、これを。あまり上手でないですが」と恥ずかしげに言っておばさんに差し出した。

「ほう!これはまあおいしそうじゃねえ!オトメチャン悪いねえ、いつもこがいにしてもろうて」おばさんはとてもうれしそうにしてオトメチャンの料理を押しいただいた。

そして、「ありゃ、今日は麻生さんはどうしたんね?」とあたりを見回すしぐさをした。オトメチャンは笑って「古くからのお友達に誘われて行きましたけえ、ちいと遅うなるみとうです」と言って二階に上がった。

しかし待てども待てども分隊士は戻ってこない。

戻れなかったのだ。

分隊士はあの後、池田・吉田・竹下の各少尉に誘われて映画を見に行ったり食堂で食ったりして歩いた。夕方になり「俺、そろそろ戻るけえ」と言ったが皆は許さない。「麻生、貴様あの小娘に骨抜きにされとらんか?」とか「たまには内地で男を味わわんと、貴様クモの巣張ってしまうで」などとからかわれかつ、脅された。

「じゃが、夕方には戻ると約束した」と言い張る分隊士を、皆は強引に遊郭に引っ張って行ったのだった。

池田のなじみの見世に上がり、酒を飲むうちに男性が四人来た。麻生分隊士があまり気乗りしない顔で酒をちびちび飲むうちに一人、また一人といつの間にか消えている。別の間に入って行って楽しむらしい。

最後に残った分隊士が「俺はこれで・・・」と帰ろうとしたとき、そばに付いていた男性が「すみませんがあなたをお返ししてはならんと池田さんから言われとります。あなたの分の料金は池田さんからいただいておりますけえ・・・」と少しばかり言いにくそうに言った。

「なんだって、料金を」麻生分隊士はこれは今夜は帰れん、と思って嘆息した。この四人の間の密約で<誰かのおごりのときはそれを蹴って帰ることならず>というものがある。

逆手に取られた、と麻生分隊士は内心歯噛みした。その分隊士に満面の笑顔で

「さ、少尉さん。行きましょうか」

と言うと男性は分隊士の手を取って別室にいざなった――

 

その頃、オトメチャンは一人の部屋でさみしさに耐えていた。食事はすっかり冷めている。(でも、いつお戻りになるかわからん)と食事はそのままでいる。

夜はしんしんと更けてゆく。

日付が変わる頃になっても分隊士の帰るような感じすらしてこない。

(こんなとき、普通のおなごなら泣き伏してしまうんじゃろうなあ)と思う。それが女としては可愛いのかもしれないが(うちには出来ん。うちは、帝国海軍の軍人じゃもの。みっともない真似は出来ん)と思う。

(うちは凛々しく生きたいんじゃ。好きな人が一晩おらんからというてべそべそ泣いておったら分隊士にも恥ずかしい。恋するにもかっこよくせんと、女がすたる。分隊士がお戻りになりんさるまでしっかりしとかんと)

オトメチャンはそう決意してその晩を一人過ごしたのだった。

 

そして翌〇六〇〇<女・麻生太>朝帰り。

そっと下宿の玄関のかぎが開けられ、また閉められた。そしてひそやかな足音が階段を上って二階のふすまを開けた。

「!オ、オトメチャン!」

分隊士はふすまを全開にした。分隊士の視線の先には、きちんとちゃぶ台の前に正座しているオトメチャンがいた。

「分隊士、おはようございます」とオトメチャンは頭を下げた。そしてうれしそうにほほ笑んだ。分隊士はたまらなくなってどっとオトメチャンのそばにしゃがみ込むと「すまんのう、オトメチャン。ずっと一人にさせてしもうて、さみしかったじゃろう」と抱きしめた。

抱きしめられながらオトメチャンはそっと、

「・・・さみしうなかった言うたら大ウソ。さみしかったです。でもうちは分隊士の御留守を守るんが務めです。・・・でも、分隊士のおらん世界はうちには耐えられんです・・・」

と囁いた。

分隊士は(なんて可愛い!)と思うなり、その場にオトメチャンを押し倒して○○○…してしまったのだった。

昨晩男性と遊んできた分隊士であったが(やっぱり俺はオトメチャンがええ)と心から思うのだった――

 

       ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

女の子だって凛としていきたい、生きたい。

オトメチャンの心には凛とした乙女と、可愛い乙女が同居しているのでしょうね

 

昨日ラジオで聴いて懐かしさに感激!南野洋子ちゃん「ハイカラさんが通る」!!



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Comments 8

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見張り員  
オスカーさんへ

オスカーさん こんばんは。

そうですね!オトメチャンのイメージに合ってますねこの歌。「オトメチャンのイメージソング」にしてしまいましょうか^^。

私は午前0時になると眠くなりますがそれを我慢すると2時まで行けます。旦那・・・だれそれ?ww

2012/01/14 (Sat) 20:49 | EDIT | 見張り員さん">REPLY |   
オスカー  

こんばんは!
♪凛々しく恋してゆきたいんです、私~傷つくことに弱虫なんて乙女がすたるもの
ややこしいかけひきは苦手です、私~ 晴れた空が好きです
オトメちゃんのテーマソングにしたらどうかしら!? 私は0時過ぎたら即寝るタイプでしたわ~だっていつ帰ってくるかわからないんじゃ…今なら深夜アニメ見ながらウキウキ待っていられるのに、ダンナは私よりずっと早く帰宅します(--;)

2012/01/13 (Fri) 23:24 | EDIT | REPLY |   
見張り員">
見張り員  
matsuyama さんへ


matsuyama さん こんばんは。
あまり年の違わない??(と言っておこう)南野チャン、大好きでした。今もTVに出られると見ちゃいますね。
NHKの大河ドラマ「武田信玄」に出たときこの歌歌ってる時だったかしら、トップテンか何かにドラマの衣装で出て歌ってたのがすごくかわいかった。

オトメチャンの今のイメージに近いかもしれないですね。

麻生分隊士。体系はスリムで顔は麻生太郎さんを女にした感じ・・・ってイメージしにくいですね(-_-;)。
う~ん…いいサンプルが見つからないですね~。探してみましょうか?

2012/01/13 (Fri) 20:35 | EDIT | 見張り員さん">REPLY |   
見張り員">
見張り員  
ジスさんへ

ジスさん こんばんは。
登場人物の名前もなんだかネタ切れになりつつあります(-_-;)・・・ですので歴代首相からお借りしちゃいましたww。

不粋で、人のことをあんまり考えない「悪友」は持ちたくないですね。

オトメチャンを気に入ってくださってうれしいです。本人恥ずかしがりつつも喜んでいます^^。

2012/01/13 (Fri) 20:31 | EDIT | 見張り員さん">REPLY |   
見張り員">
見張り員  
まろゆーろさんへ

まろゆーろさん こんばんは。

本当にいけ好かない池田ですww(全国の池田さんごめんなさい!)。
分隊士がかわいそうです。

オトメチャンのような女の子、本当に探してもいないでしょうね。私の憧れの女の子像であります。きっとかつてはこういう女性がたくさんいたんだと思います。
男性にとってはいい時代…だったのかしら?

え!?私ですか?・・・う~む、やはり黙って待つタイプかもしれないですね。大騒ぎは嫌いですので^^。

2012/01/13 (Fri) 20:28 | EDIT | 見張り員さん">REPLY |   
matsuyama  
No title

可愛いですね、南野洋子さん。
デビュー当時の彼女より、熟年の南野洋子さんしか知りません。こんな可愛かったんですか。
乙女が似合います。こんな感じなんですかね、オトメチャン。これからはオトメチャンをこんな感じのイメージで見ることにします(笑)。さぞや「女だらけの戦艦大和」が倍楽しくなるでしょうね。
麻生分隊士、どんなイメージかな。以前の会社に女ボスと異名をとった営業のおばさんがいたんです。背が低く、小太りで役員や上司などの周囲に気を使ってました。そんな気配りおばさんでしたが、好きな女性の1人でした。
今まではそんなイメージで麻生分隊士を見ていましたね(笑)。麻生分隊士、オトメチャンをよろしくね。

2012/01/13 (Fri) 19:29 | EDIT | REPLY |   
ジス  
No title

こんばんは。いつもありがとうございます。

まずは歴代の総理大臣たち・・・笑えました。しかし無粋なヤツらですね。

健気に待っているオトメちゃんの姿、感動しました。女性の鏡であると思います。幸せになってほしいものですね。

2012/01/13 (Fri) 00:02 | EDIT | REPLY |   
まろゆーろ  
No title

無粋な池田メ!! 総理か宗教家か知りませんが意地悪な池田メ……、ですね。
それに引き替えオトメチャンの健気なことったら。今なんてこんなにも可愛くて素晴らしい女性はいないでしょう。
昔の女性はこうやってひたすら耐えて待っててくれたんですね。きっと見張り員さんも……、そうでしょうねぇ。
僕だったら寂しいのと疑うのとで悶々の一晩になることと思います。醜いなぁ。

2012/01/12 (Thu) 22:09 | EDIT | REPLY |   

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女だらけの「帝国海軍」、大和や武蔵、飛龍や赤城そのほかの艦艇や飛行隊・潜水艦で生きる女の子たちの日常生活を描いています。どんな毎日があるのか、ちょっと覗いてみませんか?
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ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
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(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)