2017-10

「女だらけの戦艦大和」・大輪の花咲く日2<解決編> - 2011.12.28 Wed

春山兵曹の今年最後の上陸日は、彼女にとって人生最良の日でもあった――

 

春山兵曹はその日、親代わりでありそして「武蔵」での上司の北野特務少尉、友人であり少し先輩の秋川兵曹とともに上陸場に降り立った。

今日は春山兵曹と、横須賀海軍工廠・技術中尉の三浦智一との祝言の日である。

祝言の支度は三浦中尉がすべて仕切ってくれると言うことで「春山さんは何も心配しないで身一つで来てくださいね」と言ってくれた。この上陸場のあたりで待ち合わせである。

春山兵曹には既に両親はなく、長兄が横須賀の近郊に住んでいる。その長兄への報告や挨拶はとうに済んでいるが、残念なことにその日は都合がつかず式には来てもらえない。

それを伝え聞いた北野少尉が「それではあまりにさみしいではないか。よし、私がその日は親代わりだ!」と言って軍医長に申し出て、上陸を許された。

「すみません、出航前のあわただしいときに・・・」

と春山兵曹は小さくなって謝ったが、北野少尉は笑って「何言ってんだね。おめでたいことじゃないか、遠慮することはないよ。しかし、新婚生活が一晩だけってのはちょっとかわいそうだなあ」と言った。

秋川兵曹が、「北野少尉、次に内地に帰ってくるときに私の休暇を半分春山に譲ります。私は独り身ですからね、それより春山に結婚生活を味わってほしいですから」といい、北野少尉は「よしわかった。忘れんように手帳に書いておくぞ」と言って皆は笑いあった。

やがて三浦中尉がやってきて「遅れて申し訳ありません。お待たせしました!」と皆に敬礼。北野少尉はあわてて「いやとんでもない、そんなことはありません!今日はおめでとうございます」と固くなって返礼。

秋川兵曹も春山兵曹もなんだか普段と違って緊張しているのが、三浦中尉には面白い。

「さあ、みなさん。そんなに固くならないでください。・・・式場にはこの先の料亭を借りてありますから、行きましょう」

三浦中尉はそういうと皆を先導して歩き出す。その時さりげなく、春山兵曹のほうに手を差し出したのが北野・秋川両名にはじんと来る光景である。

(この二人、本当にいい縁でつながってるんだな)秋川兵曹は前のことを知っているだけに心から安堵している。

十五分ほど歩いたところにこじんまりとしているがなかなか品のある料亭が見えてきた。ここは三浦中尉が昔からなじみの料亭。

「今日は貸し切りですからね」そう言って、三浦中尉は皆を振り向いて笑った。

料亭の玄関にはもう、女将が待っていて皆に深々と頭を下げて迎えてくれた。女将は

「本日はおめでとうございます。では花嫁さまはこちらへ」

というと春山兵曹の手を取って奥へ。三浦中尉には、大番頭が「三浦様はこちらへ」といざなう。

北野少尉と秋川兵曹には二名の仲居が来て「皆さまはこちらのお部屋でお待ちくださいませ」と部屋を案内された。

案内された部屋で茶を喫しながら待っていると、三浦中尉の友人・上司が三名ほど入ってきた。

お互いに自己紹介をしあってもう和気あいあいとした雰囲気になる五人。

上司の喜木キリ技術少佐は気さくな人柄で、

「いやあ、あの三浦のようないい男を誰が射止めたのかと思っていたらなんと『武蔵』の乗り組みの方だと言うじゃないですか。横須賀海軍工廠の期待の星と、全海軍の期待の星の『武蔵』乗組員の夫婦が誕生とは、これは幸先がいいですなあ!」

と言っては茶をがぶがぶ飲んでそれが秋川兵曹には可笑しくて仕方ない。

聞けば三浦中尉の父親も海軍工廠の技術士官であった。もう一〇数年も前に定年になったので中尉の両親はハワイに渡り、乞われてハワイの海軍工廠で働いていると言う。

「彼のご両親も大変なお喜びですがいかんせん、ハワイからちょっくらちょいと帰ってくるのも大変だ、というわけでこの私が親代わりを仰せつかったわけでして」

そう言ってまた茶を飲む喜木少佐。皆がほほ笑む。

 

そして。

「お支度が出来ました」

と女将のひそやかな声がふすまの向こうですると、そっとふすまが開かれた。「こちらへ」と、五人は女将のいざなう方へ。

十畳ほどの部屋に金屏風がしつらえられ、「祝言」の場である。皆は左右に分かれて新夫婦となる二人を待つ。

皆が落ち着くと、ふすまが開きまず、羽織はかま姿も凛凛しい三浦中尉が入ってきた。そのあとを女将に手をとられて春山兵曹が美しい花嫁姿で入ってきた。

(おお・・・)と皆の間に声にならないどよめきが起きる。それほど二人は凛凛しく美しく似合いの二人であったのだ。

春山兵曹は角隠しに白無垢姿。紅く口紅を塗った唇が心なしか震えているように見える。
秋川兵曹は感無量である。(彼女とは乗り組み以来一緒だものなあ)こんなに素晴らしい花嫁になって本当によかった。なぜだか二人の姿が揺らめいた。涙があふれていた。

盃ごとは無事に終わり、喜木少佐が乾杯の音頭をとった。

金屏風の前の二人はそっと見つめあってはほほ笑み合う。(まるで一枚の絵のようだな)と北野少尉は見とれている。

 

祝言はそのあと夕方まで和やかに続き、夜になる前お開きとなった。新夫婦は今夜この料亭の一室に泊まる。

出席の皆を玄関まで見送った新夫婦に北野特務少尉は「三浦中尉、春山をどうぞ末永くよろしくお願いいたします。ふつつかな女ではございますがどうぞ三浦中尉、お導きを」とあいさつし三浦中尉は

「私こそ不出来な男でありますがどうぞよろしくお導きを願います」

というと深く頭を下げた。喜木少佐が満足げにうなずいた。
秋川兵曹は花嫁姿の春山兵曹に「本当におめでとう。・・・まずは今夜一晩ではあるがしっかり妻として勤めてこいよ!」と励ましてやった。春山兵曹は少し恥ずかしげにうつむいて「はい」と答えた。

玄関の明かりに、白無垢に銀糸で縫いとられた「桜と錨」がきらめいた。

 

・・・そしてその晩。

春山兵曹は、三浦中尉の「妻」となったのだった・・・

 

   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

無事祝言が終わりまして春山兵曹は三浦中尉の妻となりました。

今後の二人をどうぞ見守ってやってくださいね♡

 

桜に錨・・・これは帽子の徽章ですね。(WIKIより)



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● COMMENT ●

ソライエさんへ

ソライエさん こんばんは!

ホント、一日日付が変わるだけなのに、どうしてか時に感傷的にもなる年末です。
こちらこそお世話になりました、ありがとうございます。
そして来年もどうぞよろしくお願いいたします!

よいお年をお迎えくださいね。

周平さんへ

周平さん こんばんは!

「桜と錨の縫いとり」はこの話を書き始めるときから頭の中にもうイメージとして出来上がっていたんです!そこから話が一気に書きあがった、というわけなんですよ^^。

平成23年、つらいことも多かった年ですが周平さんと知り合えてよい年になりました。
素晴らしいお写真に心なごみ、また考えさせられ、時には微笑み・・・
どうぞ来年もよろしくお願いいたします。

よいお年をお迎えくださいね!

ご挨拶

見張り員さん
いろいろありがとうございました。
一日日付が変わるだけですが、一旦2011年のお礼まで。
2012年もよろしくお願いします。

ありがとうございました。

玄関の明かりに、白無垢に銀糸で縫いとられた「桜と錨」がきらめいた。
↑最後にこれを入れるとは、、ニクイですね。
読者の心をくすぐります。

平成23年はありがとうございました。
お疲れ様でした。
平成24年もよろしくお願いします。
見張り員さん、よいお年をお迎えくださいね。

ジスさんへ

ジスさん こんばんは!

なんとかよい結果の話にできてホッとしています^^。

もう今年もあと一日と数時間になりました。この一年間どうもありがとうございました。たくさんのコメント感謝です!

また来年もよろしくお願いいたします。
どうぞお風邪など召しませんように、よいお年をお迎えくださいね^^!

荒野鷹虎 さんへ

荒野鷹虎 さん こんばんは!

今年もたくさんご訪問いただきましてありがとうございました。
こんなブログですがまだまだ続けてゆく所存ですのでどうぞ来年もよろしくお願いいたします。

荒野様も御身大切に、よいお年をお迎えくださいませ。

鍵コメさんへ

鍵コメ様 こんばんは!(少し遅くなりましたね、ごめんなさい)

さっそく拝見いたしましたよ!身に余るお言葉ありがとうございました^^!
こちらこそよろしくお願いいたします

本年はお世話になりました、また来年どうぞよろしくお願いいたします。

よいお年をお迎えくださいませ!

No title

こんばんは。いつもありがとうございます。
年の瀬の締めくくりに相応しい心温まるお話でした。

今年も残り僅かとなりました。色々とお世話になりありがとうございました。来年も引き続きよろしくお願いいたします。どうぞよいお年を迎えてくださいね。

貴重な斬新なブログです!

今年一年大変ありがとうございました、コメントを残せなかったことを残念の思っています。お許しの程!趣旨はご理解しているつもりです。!来年もどうぞ益々発展されることを期待しています。☆!

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

まろゆーろさんへ

まろゆーろさん こんばんは!

いわゆる昔ながらの挙式には今もあこがれます、この年になっても^^。
三浦・春山の二人は一晩だけでそれぞれの配置に分かれますが、これで終わらないのが「女だらけの~」です。この二人に関してはまた続きを書くつもりですので待っていてくださいね~(*^^)v

私もこの頃PCと相性がよくないのかそれとも寒さのせいで体がかじかんだせいか、送信エラーが多いです。打てる振りしてキーボードをよく見ないせいかもしれません!!

あと二日で終わりますね。
明日は義弟夫婦が来るようですが私は私でやってゆきます!いつもご心配を頂戴して嬉しく思っています。にい様も御身大切にお過ごしくださいませ。

オスカーさんへ

オスカーさん こんばんは!

ここだけほんのり春の暖かさ・・・ですね^^。
なんといってもこの季節、あったかいのが一番です。

そう言えば「大奥」ではそういう役目の女性がいたとか。なんだかいやだなあ(爆)、ひとの営みを見届けてあとで報告するなんざ、私は恥ずかしくってできませんや、ハハハー!

三浦・春山の二人は、そう言う邪魔ものもいなくて素敵な初夜だったと思います❤

No title

おはようございます。
素敵な結婚式の様子が目に浮かんできます。ひと夜限りの夫婦の契り、悲しいですね。このお二人は戦争が終わったらきっと末長く添い遂げますよね。そうさせてあげて欲しいです。

昨夜コメントを書いて、さぁ送信したら「ページが開けません」とお断りを頂きました(笑)
きっと私の太い指が一発で何処かを叩いてしまったのでしょうね。

年末商戦に突入でしょうか。風邪など引かずに、また気の添わぬ人たちを無視して大晦日まで頑張って下さいね。

良かった!良かった!!おめでたい話は心をあたためてくれます。この寒い季節にはありがた~い!地方や時代によっては初夜を見届けるばぁさんやら仲人やらいたみたいですが、2人にはおじゃま虫がいないみたいで安心しました(笑)


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ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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