「女だらけの戦艦大和」・<新・特殊潜航艇>2 解決編

――格納庫に明かりがつき、皆は「それ」を見た――

 

「おお!これは!」と六百名が歓声とも嘆息ともつかない声をあげた。

彼女たちの前には今まで見たこともない奇っ怪な代物が並んでいた。それは二つあり、一つは現在の特殊潜航艇の大きさにほぼ近いもの。若干小さい。

そして何よりその形・・・

「これは<いるか>ではないですか!?」

ひとりがやっと声に出した。するともう一人が「こっちは・・・」と顔を向ける。もう一つは<いるか>と呼んだものよりずっと大きい。特殊潜航艇二つ、いや二つ半くらいの大きさである。しかも「これはまるで小型の<クジラ>じゃないか・・・」。

多茂神司令はうなずいて、

「そうだ、これは敵の博愛心につけ込み相手を撃退する兵器である。小型の<いるか>型が集まり敵の目を引く。敵はこうした動物が好きである。そして警戒心を解かせてその中央に<鯨型>数隻が現れ、このクジラの顔面部分から新型の噴進砲が飛び出し、一気に敵をせん滅する!・・・とまあそういう算段だな」

というと大笑した。痛快でたまらないと言った感じの笑い方である。

はあ・・・と総員の間からため息が漏れた。多茂神司令は総員を見まわした後「訓練用の<いるか>と<くじら>が桟橋に来ているから、その航行をよく見学するように」といい、皆は後ろを振り返り振りかえりしながら桟橋に向かったのだった。

 

皆は桟橋に集まった。既に<いるか型>と<鯨型>の新型特殊潜航艇がそれぞれ係留されている。艇の前には、二人搭乗員がいて皆を眺めまわしている。誰あろう、黒木中佐と仁科大尉の二人である。

多茂神司令は皆に二人を紹介した後、

「この訓練「的」(注・「的」とは特殊潜航艇を指す言葉です)の<いるか型>は二人が乗ることが出来る。誰か乗りたいものはおらんか>」

とほほ笑みながら総員を見た。ちょっとだけざわついたが、その中の一人がまず手を挙げた。

「私は乗りたいです!」

彼女は予科練から志願して来た海枝一飛曹。いつも手のひらに「忍」の字を書いていると仲間内で有名な我慢の人である。

「よーし。いいぞ!」

多茂神司令は嬉しそうな笑みを顔いっぱいに浮かべると海枝一飛曹に搭乗帽を渡し、<いるか型>的の前に彼女を連れていった。

仁科大尉が海枝一飛曹を見た。海枝一飛曹は仁科大尉に敬礼して「海枝万里(まり)一飛曹であります。よろしくお願いいたしますっ!」とあいさつ。

仁科大尉も返礼しながら「まあそう固くならないで。どんなもんかまず、乗って体験することだな」といいなんだか意味ありげな笑いを浮かべた。が、海枝一飛曹は緊張しているのでそこまで気がつかない。

そしてまず、仁科大尉が乗りこみそのあとを海枝一飛曹が続いた。ハッチを整備員が閉める。それを見守っていた多茂神司令はまた総員に向き直ると、

「さて。<鯨型>にも一人乗ってもらうが・・希望者はおらんか?」

と言った。ハイハイ、と手が上がって多茂神司令は「じゃあそこの君」とひとりの下士官を指名した。

渡辺よしみ一等兵曹が小躍りしながら列の前に出て、今度は黒木中佐にあいさつ。搭乗帽を借りて彼女たちも<鯨型>的の中に消えた。

そして整備員が<いるか型>のハッチ部分をハンマーでカンカンカン、と叩いた。中から一秒の間をおいてカンカンカンと返信があり、やがて<いるか型>的はスクリューを回し始める。

そして<いるか型>はしずしずと桟橋を離れて行く。

見ていた者の中から「なんだ?新型とかいいながら普通の的と変わらんねえ」という声が聞こえる。それが耳に入った多茂神司令はなぜかなお一層嬉しそうな笑みを顔に浮かべると、

「そこの君。私と一緒に追従艇に乗って見ようではないか。他に五名、いないかな?」

といい、合計六名の訓練生が司令たちと一緒に追従艇に乗り込んだ。

その間に<鯨型>が桟橋を離れて行く。追従艇はそのあとを少し離れてついてゆく。

桟橋を離れること八〇〇メートルほど来た時、「それ」は起こった――

<いるか型>はそれまで静かに航行していたが突然急速に潜航して行った。

司令以外の皆は一様にハッとして消えていった<いるか型>的の後を見守っている。そして約三〇秒後いきなり前方の海面に的が飛び出して来た。

「おおっ!」と皆が声を上げたその時、的はまるで本物のいるかのような運動を始めたではないか。

ジャンプしては海面に潜り、また飛び上がっては潜り・・・。

「ま、まさに<いるか>だ・・」

見学の訓練生の間からため息が漏れた。司令はそんな皆を面白そうに見つめた後「あちらを見ろ」と持っていた細い棒で指し示した。

そちらには急速に浮上する<鯨型>的がいた。ちょっとした中型のクジラと見まごうばかりの堂々たる威容である。

しかも「潮吹き」までするのに皆は大喜びである。

司令がそんな皆を見て「いいか、これからが<鯨型>的の本領発揮だ。よーく見ているんだ」といい皆は<鯨型>的を凝視した。

的は顔部分を半分ほど出した・・・と思うや否や、その顔の中央あたりがすごい勢いで開いた。そしてそこから「噴進砲」の模擬弾が噴出されたではないか!

模擬弾はまっしぐらに二キロ先の「標的」を粉砕したのだった――

 

言葉をなくして「追従艇」の皆が桟橋に戻ってきた。皆一様に気を抜かれたようである。

そこに<いるか型><鯨型>が戻ってきた。

まず<いるか型>のハッチが中から開いて、整備員がそれを持ち上げると中から仁科大尉と海枝一飛曹が出てきた。

海枝一飛曹は降りるなり皆に背を向けて桟橋にくず折れると「オエエエ!!」と海面に戻し始めた。皆がウワッ、と引いた。仁科大尉はそれを苦笑して見て手袋を外した。そして

「まあ、最初はこんなもんだね。いるか運動中は上下の動きが激しいからこうなりやすい。が、これは<いるか型>的の宿命でもある。敵を撃滅するにはまず一に訓練、二に訓練で慣れることだ。・・・これがどうしてもできないなら司令に申し出ろ。元の部隊に戻してやると司令もおっしゃっている」

と言った。<鯨型>も戻ってきて、降りてきた渡辺義美一等兵曹も吐きそうな顔で真っ青である。黒木中佐も苦笑しながら降りてきて「初めはこんなもんかもな。まあ慣れることしかない」と言って黒木中佐と仁科大尉は司令に敬礼すると兵舎に戻ってゆく。訓練生たちは声も無くその背を見送る。

やがて多茂神司令は皆を見かえって

「見ただろう、これが新・特殊潜航艇の姿である。私は諸子がひとり残らずこれに志願し、大いなる戦果をあげる日が遠くないことを望むものである!」

と力強く言いきった。

訓練生たちは顔を紅潮させ、拳を固く握ると「オオーッ!」と雄たけびを上げて誓いを立てたのだった――

         ・・・・・・・・・・・・・・・・

新・特殊潜航艇の活躍はもうちょっと先のようですね。まずはこの<いるか運動><鯨運動>に慣れないといけませんね。

<いるか>と<鯨>です。よろしくね!(WIKIより)
Dolphin,2007-4-13.jpg



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ジスさんへ

ジスさん こんにちは!

シー・シェパードがまた活動しそうですよね。もう他人の国の食文化、ほっとけ!といいたいですよまったく。
でも、欧米人の「いるか」「クジラ」の対する編愛と言ってもおかしくないあの思いはいったん何なんでしょうね?
その癖人間には結構厳しいくせに・・・

海中での上下運動・・・私も想像しただけでめまいがしてきます。めまいの持病と車酔いの激しい人には向かない兵器ですね。
一緒に辞退しましょう!!

No title

こんばんは。いつもありがとうございます。

・・・そうきましたかwww
イルカと鯨・・・これは例のシーシェパードを意識されたのでしょうか?確かにそちらの人々は特別な思いがありそうだし。

上下運動は確かに厳しそうですね。私なんぞ普通の船でも酔ってしまいますからww

matsuyama さんへ

matsuyama さん こんばんは!

自分で考えてみたものの・・・あまりに奇想天外なのであきれました。
しかしむか~し読んだ本に、どこの国だったか「いるかに爆弾を抱かせて敵艦に体当たりをさせる」という戦法を考えているという記事があって驚いた記憶がありました。

このお話の<いるかがた>的はどんな武器を持っているでしょうか。そして、鯨型は??
こうご期待です。

こう寒いと少しでもいいからあったかい南の島にでも行きたくなりますね。matsuyama さんも御身大切になさってくださいね。

オスカーさんへ

オスカーさん こんばんは!

>撒き餌軍人
笑っちゃいました!
こんな兵器があったら・・・乗りたくはないですね、確実に酔っちゃいます。オエエです、私は遠慮しときましょう。

マツコ。またそのうちあの人(人?)は出てきますからその時はどうぞよろしくね!


本当に今日は寒くって寒さで頭痛がしております。オスカーさんもお気をつけてね❤

No title

特殊潜航艇「いるか」と「くじら」。華麗なジャンプをしたり、天高く潮を吹いたり、これこそ特殊潜航艇ですね。敵の目をごまかすにはこれ以上にない戦法ですよね。
潮を吹くくじらが狙いを定めて敵艦に毛じらみを放射したり、いるかがジャンプしながら催涙弾を打ち放したりしたら敵艦もびっくりでしょうね。
しかし、乗組員も大変ですよね。小さな艇を縦横無尽に操縦するには人一倍の熟練が必要でしょうね。

寒い冬だけでも日本を離れたいですね。見張り員さんもご自愛ください。

こんにちは。イルカもクジラもマスコット的なキャラデザだと可愛いですが(笑) いざ乗り込んで、あの大海原でジャーンプ!!とか…うっ!!想像しただけで、蒔絵職人ならぬ撒き餌軍人になっちゃいます!! マツコが見つけたら、追っかけて捕まえようとするでしょうか?そこでまた一騒動も楽しいかもしれない!!
今日はまた寒いですね。ご自愛下さいませ。
プロフィール

見張り員

Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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