2017-10

「女だらけの戦艦大和」・横須賀物語(ストーリー)三題 - 2011.12.12 Mon

今日も横須賀の町には「女だらけの帝国海軍」の兵たちが歩いている。そんな彼女たちの小さな物語(ストーリー)――

<その壱>

軍艦『武蔵』の医務科の秋川上等兵曹は横須賀の町を歩いている。彼女は軍人になる前、その声の良さから音楽学校への入学も考えていたくらいの美声の持ち主である。

駅への通りは賑やかで、兵たちがたくさん歩いている。いろいろな店を見ながら歩く秋川兵曹、ふと一軒の店の前に佇んだ。そこにはグランドピアノが鎮座している。気がつけばもう一人、ピアノを見つめている軍人がいる。

どうやら武蔵の乗組員のようだ。

秋川上等兵曹は「ピアノ、弾けるのですか?」と声をかけて見た。その兵は顔を秋川兵曹のほうに向けた。彼女は嬉しそうに笑うと「弾ける、なんて大げさではないけどね。好きなのよピアノ。これを思いっきり弾けたら気分がいいだろうねえ」と言って「あなたは『武蔵』の人かな?」と聞いた。

秋川兵曹は姿勢を正すと「はい、『武蔵』の医務科の秋川上等兵曹であります」と言った。すると「そう!私も『武蔵」の十一分隊の中村ひろ少尉です。よろしく」と言って彼女は秋川兵曹に右手を差し出して来た。

慌てて秋川兵曹は右手を服でごしごしこすってから中村少尉の手を握った。

少尉は「私は本当を言えば音楽学校に行ってピアノを習いたかったんですよ、でも家が貧しかったから軍人の道を選んだんです。この先戦争が終わったら、音楽学校に行こうかと思っています。で、あなたもピアノを?」と秋川兵曹の瞳を見つめて言った。秋川兵曹は「いえ私はピアノは出来ませんが歌いたいんです。私も音楽学校に行きたかったクチです。私はこんな素晴らしいピアノの伴奏で歌を歌えたらなぁ、と思っています」という。

中村少尉は深くうなずいて、「わかりますよあなたのお気持。・・・そうだ、そのうち武蔵のどこかでお会いしましょうよ。私はあなたの歌声を聞いてみたい!そしていつかあなたと私でリサイタルを開けたらいいですね!」と嬉しそうに言う。秋川兵曹も顔を紅潮させて「ぜひお願いいたします!私も中村少尉のピアノを聞かせていただきたいです」と答える。

その秋川兵曹をしばらく見つめた後、中村少尉は「・・・そしてこの戦争に早く勝ってあなたと二人『カーネギーホール』でたくさんの人を集めてリサイタルをしましょうね」といい、その瞳に力がこもった。

秋川兵曹も中村少尉を見つめ「そうですね。私も少尉と一緒にその『鴨葱ホール』で歌いたいです!」

二人は「音楽」という共通の目標と夢を持つ同士、不思議なきずなで結ばれた――

 

<その弐>

春山兵曹は主計長とともに軍需部で衛生用品の受け取りをした後、主計長と別れて横須賀の町を歩いた。

ひとりで歩くのは少しさみしかったが、ある通りの角を曲がった時海兵団からの友人にばったりと出会った。

「あれ!?春山さん!」「あらま、神谷さん」二人はその場に立って話しこんだ。友人の神谷は空母・「蒼龍」の勤務。春山が『武蔵』の勤務と聞いて「ええ~、『武蔵』かあ、いいなあ!」と笑った。春山兵曹も「蒼龍なんてかっこいいねえ。柳本艦長ってどんな人?」と聞いて話はなかなか止まらない。二人が「じゃまたね、元気で!」と別れたのは壱時間以上たってからだった。

春山兵曹はその後ろ姿を見送って、やがて踵を返した。

(ああ、楽しかった。・・・でもこんなふうに)偶然にあの人とも出会いたいなあ、と思ったその時背後から「春山さん、春山さんじゃないですか」と声がかかった。

振り向けばなんと・・・あの時の彼が立っている。春山兵曹がいつだったか幼馴染の彼に手ひどく振られた後、衝撃的な出会いをしたひと。

「・・・三浦中尉!」

海軍横須賀工廠の技術中尉の三浦智一(みうらともかず)であった。

春山兵曹は満面のほほ笑みで彼を見つめた。三浦も嬉しそうなほほ笑みで彼女を見、「今日は上陸ですか?お時間はありますか?」と聞いた。春山兵曹は「はい。今日は集会所泊まりの上陸です、時間はたくさんあります」と答え眩しげに三浦を見た。三浦は「それは良かった。私は明日、非番なんです。・・・よかったら今日はお付き合い願えませんか」と言って頭を下げた。

春山兵曹は最高にうれしそうにほほ笑むと「はい。是非に」と言って、二人はどちらからともなく寄り添って歩きだした――

 

<その参>

この街にも夜の帳が下りてきた。

それでも兵隊相手の店店がまだ煌々と明かりをつけて客を待っている。「蒼龍」の数名の兵が歩いていたがそのうちの一人がふと足を止めた。

「ねえねえ、あそこに占い師がいるよ。ちょっと見てもらわない?」

大野水兵長がまず寄って行き、そのあとを相場、二宮、櫻井、松本の各水兵長がついてゆく。五人が寄って行った先にはひとりの老婆が占いの店を出していた。店と言ってもリンゴ箱をひっくり返したような机を置いてそこに小さな石油ランプがあるだけではあるが、なんだかその雰囲気だけでも「当たりそう」な感じで皆の胸はときめいた。

「いらっしゃい、可愛い兵隊さんがた。・・・さてどなたから見ましょうかねえ」

老婆は言って、まず「私から!」と名乗りを上げた大野水兵長の右手を優しく取った。そして大きな天眼鏡で大野水兵長の手のひらを丹念に見た。

固唾をのんで見守る四人。

老婆はゆっくりと顔をあげると「あなたは良い星の下に生まれていますね。この先も大きな災難に襲われることなく行けますよ」と言った。

大野水兵長は嬉しそうに自分の手のひらを眺めて「・・・あ、ありがとうございます!」と礼を言った。

そのあと櫻井、松本、相場の順で見てもらった。それぞれ「浪費をしないようにすれば出世も早いでしょう。親に仕送りをするのがいいです」とか「北に行くことがある時は、厚手の下着をつけなさい。南方に行くようなときは替えの肌着を多めに。あせもになると治りにくくなるから」とか「好き嫌いをなくしなさい。そうしたら上官の覚えもよくなって運も開けます」などと言われて皆恵比須顔である。

そして「じゃ、しんがりは私!」と二宮水兵長が老婆の前にしゃがんだ。

老婆は最初にこやかにその手を見ていたが不意に顔を曇らせた。二宮水兵長は老婆の顔を凝視した。老婆は今度は二宮水兵長の顔をじっと見て、そして言った。

「・・・上に気をつけなさい、災難は上からやってくる。頭上注意」

二宮水兵長の顔から精気が消えた。

そのあと五人はわずかな料金を支払ってその場を去った。すっかりしょげている二宮水兵長の肩を叩いて他の四人は「大丈夫だよ、ただの占いじゃないか。注意しろって言うなら注意したらいいんじゃない?災難の来る方向が分かれば避け方もあろうし、な!さ、<遊び>に行こうよ!」といい、兵たちがよく行く「遊び場」に足を向けた。

道々、二宮水兵長は上をちょくちょく見て歩く。櫻井水兵長が笑って「ニノ、いい加減にしないと首が変になるよ?そのほうがずっと災難じゃないかい?」という。そうだそうだ、と同調する他の連中に二宮水兵長は「ああ・・・ああ」と生返事でさらに上を見て歩く。

いよいよ皆のお目当ての「遊郭」に来た。大勢の海軍嬢たちがいて「おいこれは待ちそうだね。さ、行くぞ」と相場水兵長が言って皆は走り出す。

「ああ、・・・おいちょっと待って・・」といいかけた二宮水兵長の声が急に消えた。ふっと皆が降りむくと二宮水兵長の姿も消えている。

「ニノ、どこ行ったあ!」

と叫ぶ四人の足元から「ここだあ、助けてえ」との声が。見れば二宮水兵長は先日来の雨で崩れかけた側溝の中に落っこちていたのだった。

おしゃれして昨晩寝押ししてきた水兵服は土まみれ。皆は大笑いで穴から二宮水兵長をひっぱりだした。二宮水兵長は半泣きになりながら

「あのばあさん、上のことばっかり言いおって。何が災難は上からくる、だよ。災難は下にあったじゃないか、ひどいよ」

と文句を言い皆は大笑い。四人は「まあいいじゃないか、これで厄落としだ。さ、行こうぜ」と二宮の背中や尻に着いた土を払って彼女を担ぐようにして見世に走り出したのだった――。

 

   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

それぞれの「横須賀」でした。

今横須賀では「三笠」が熱い!ぜひ一度記念艦「三笠」を見に行ってください。そして横須賀名物「海軍カレー」も食べてくださいね~~!

三笠公園に保存されている戦艦三笠

(写真はWIKIより)


帝国海軍の流れをくむ、「海上自衛隊」のカレーの作り方です!参考になりますよ、ちなみに私はカレーも肉じゃがも「海軍式」で作ります。



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● COMMENT ●

鍵コメさんへ

鍵コメさんこんばんは!

さっそくみました!
すっげえええ!!

私も食べてみたかった。ついでに太さも46センチにしたら・・・って無理だろww。

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

かなやのぶ太 さんへ

かなやのぶたさん こんばんは!

そうですよねつい最近「三笠」をご覧になったばかりのかなやさん!
その余韻をこんな変な話で汚してしまって・・・(-_-;)

でも素敵なコメントに感謝です♪

「武蔵」が「大和」が沈まずにいてくれたらなあ、と思いますね。そうしたら今の日本ももっと違っていたんでしょうね,残ってるってことは戦争に勝っているということだろうし。
歴史にIFはないというけど考えますよね~(^u^)

No title

10月にも横須賀の街を歩いてきたのでなにかとても体の奥がむずむずします^^ ピアノコンサートに思わぬ再会、そして災難(笑)ですね。風通しのいいさわやかな空気を感じるようでした。「武蔵」も見てみたかったなあ~

matsuyama さんへ

matsuyama さん こんばんは!

matsuyama さんも「三笠」をご覧になってらしたんですね!
あの辺の風景ってなんだか独特で私も好きなんですよ。もう一度、いやもっと行きたいところです。

アメリカ海軍の基地もあったりして日米の融合がおもしろくあります。そう言えば前に行った時、アメリカ海軍の家族と思しきおかあさんと子供が「モナ王」をかじっていてなんだか笑えましたww。

どら焼きの「三笠」、私も「戦艦三笠」からかなあと思ったらさにあらず、奈良の三笠山に形が似てるからということとか。
そう言えば「三笠」の包みに山の絵が書いてあったような気が・・・・ちょっとがっかり(笑)。

ジスさんへ

ジスさん こんばんは!いつもありがとうございます。

こういう形式が多くなってきました、なんか書きやすくって(手抜きだ!!!)・・・ヘヘヘ^^。

そうです!「蒼龍」水兵長5人組は何をかくそうあの「嵐」から頂きました!ちょうどこれをかいていた時TVに大野君が出てて、登場人物の名前に困っていた時だったのでお借りしました。

が。ニノさんはちょっとかわいそうだったかなあ~次はもっといい思いをさせてあげましょう。

オスカーさんへ

オスカーさん こんばんは!

三笠ペイントのボデイーの電車!見かけたら乗ったら、萌え死してしまいそうですww。
関東では一番身近な「海軍」を感じられる街、最初に行った時から好きです!

本当にあの街を歩けば、「山口多聞」さんとかもしかしたら「東郷平八郎」さんとかが歩いていてもおかしくない気がしますし、どうして会えないのかなあ?という気にさえなりますね。

豚まん争奪戦(爆)、なんかありそうでいいですね~~^^!

No title

懐かしいですね、戦艦三笠。よく行ってました。
多い時は週1回、横須賀の海浜釣り公園まで釣りに行ってましたからね。自衛艦がよくあの周囲を航行してました。多い時はあの基地に10隻近い自衛艦が停泊してる時もありましたよ。
帰り道三笠公園に立ち寄って休んだり、恐る恐る外人の兵隊さんと腕を組んで歩く若い女性を見てました(笑)。
さすが戦艦三笠大きかったですよ。どら焼きの三笠焼って、戦艦三笠が由来じゃないんですかね(笑)。

No title

こんばんは。いつもありがとうございます。

それぞれのお話、とても興味深く拝見致しました。皆さんの顔が私の脳内でそれぞれ再生していましたが・・・・

最後の5人・・・嵐じゃありませんか!!娘が大ファンでねwwwニノはかわいそうでしたね・・・。

こんばんは。戦艦三笠、利用している電車が京急乗り入れなので、たまに三笠ペイントのボディの時があります。
港町・横須賀、たくさんの語られない物語がある気がします。自分の好きな軍人さんが横須賀を歩いていたら…今の街並みを見たら…と考えるのも楽しいですよね。豚まん争奪戦とか(笑)

まろゆーろさんへ

まろゆーろさん こんばんは!

「絆」。
大事なことですよね。親子の絆、家族の絆、地域の、国の・・・・。
今年ほど「絆」ということの大事さを痛感させられた年もなかったですね。つないだ絆を未来永劫断つことなく次代へとつなげてゆかねばならないと切に思うのです。

まろにいさんの仰せのとおりです、「流行り廃りの問題ではない」のです。

No title

横須賀でのそれぞれに、それぞれの絆が見えますね。
今年はやはり「絆」で決まりました。これしかないでしょう。来年は絆を切ることなくより太く成長させることが被災された人以外である我々の大きな使命と責任だと思います。
流行り廃りの問題ではないということですね。


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ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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