2017-10

「女だらけの戦艦大和」・恐怖の甲板整列2<解決編> - 2011.11.23 Wed

巡検終了後の「女だらけの大和」の艦内では、甲板整列と称して上の兵が下の兵員に罰を与えることが当たり前である――

 

十三分隊ではあろうことか松岡分隊長が整列させた艦橋要員に「春歌」まがいの歌を無理やり歌わすと言う「セクハラ」のような罰則?が行われ、主計科では宮島(しゃもじ)を使ったバッター制裁が行われている。

まあ、軍隊に限らず大人数が生活する場においては、規律を守るために大なり小なり「制裁」やそれに近いものはある。

だがそれを見て心を痛める者がいた。

その人影は、松岡分隊長に依るセクハラ甲板整列を見て(こういうことをされたら士気にかかわる)と思い、主計科のような体罰に(もしも体を壊したら・・)と気が気でなくなった。

(どうしたらいいのだろう。こういう陰惨な陰湿な制裁をなくしたいんだ私は)と悩んだその人こそ・・・・

梨賀幸子艦長である!

梨賀艦長は以前駆逐艦に艦長として勤務したことがあり、そのさいの駆逐艦の家族的雰囲気が大変気に入っていた。

駆逐艦は小さな所帯で戦闘の際は全艦が一丸となって戦い、戦い終われば皆で疲れをねぎらい合って食事も皆一緒に取る。

よっぽどのことがない限りバッター制裁などない。

それなのに(なぜに戦艦ではこうも多いんだろう?駆逐艦に比べてたるんでる?それとも人数が多すぎて個々を把握できないからこうなる?・・・ううむ、ゆゆしき問題だ)と悩んだ。

そして梨賀艦長は、(戦艦にも駆逐艦のような家族的雰囲気が必要なんじゃないのか?戦闘が始まれば一蓮托生の身、普段から心を通わせねばいざという時そっぽを向かれかねない。確かに厳しくするのも大事な時もあろうがどうも見てると上の人間の独りよがりな時が多いもんねえ。よし、では私はここは一肌脱ごうじゃないか!)

と思うに至ったのだ。

心を決めた艦長は、副長の元に急いだ・・・

 

翌日の巡検後。

「そろそろ巡検終わるな、煙草盆出せはまだかあ」と寝床の中でひそひそ話す兵員の耳にスピーカーからの声が。

「当直夜勤を除いた総員、最上甲板に集合せよ!!」

皆はそれこそ飛び上がるほど驚いた、あっという間に当直を除いた総員が最上甲板に集合した。その時間はわずか五分。

皆は前甲板に整列している。緊張の面持ちである。

「いったい誰が号令したんじゃろ?」

「さあ、わからんが。あの声は副長じゃあないじゃろか」

「いったいこがいな時間になんじゃろう?重大事項の伝達か?」

「まさか。副長が私たちに<バッター制裁>を?」

「・・・まさか!?」

皆の私語がこそこそと夜空に広がる。そこに、やおら艦長が現れて朝礼台に上った。皆がしんと静まった。

艦長は皆を一通り見回して咳払いを一つした。いやがうえにも高まる緊張感。艦長は両手を後ろに組むと、

「集まってもらったのはほかでもない。<甲板整列>と称して行われる制裁について私なりに考えた。必要な、教育としての制裁もあろうが私が最近見た限りでは度を超えた物が多い。中にはセクハラまがいのことが行われて私は正直情けない・・・」

と言って、麻生分隊士は松岡分隊長をそっと盗み見て傍らの見張兵曹に「ほら、あの時のことじゃないか?あの変な歌を歌わされたときのこと」と囁いた。見張兵曹も麻生分隊士を見上げて「そうですね、艦長どこで見よったんでしょうか」と答える。

艦長はなお続ける。「それというのも艦内の絆や立て横のつながりが希薄ではないかと私なりに分析した。そこでこの事態を打破するためにはどうしたらいいかを考えた時、平常時においては週に一、二回はこうして集まって皆で心を一つに出来ることをしようではないかという結論に至った。そこで!」

ここまで艦長が言った時、副長と森上参謀長が金色に光る棒状のものを持って現れた。皆は騒然、「あれはなんじゃあ!新手のバッターか?」

「艦長言ってることとやることが違う、あれで俺たちをひっぱたくってえのか!?」

しかし艦長はそれを押さえて、

「さあみんな、今日はすべてを忘れて盛り上がろうじゃないか!」と言うといきなり自分の軍装を引き剥がした。

ハッとした皆の目に、艦長の服装があっという間に変わったのが見えた。艦長の服は紅の和服風のミニドレスになっているじゃないか!

そして副長と参謀長もそれにならって来ているものを引き剥がすと黄色と青の和服風のドレスが現れた。

「うわあああ・・・『艦艇ーズ』だあ!」

皆は歓喜の声とも恐怖の声とも付かぬ声をあげる。

やがていつの間に用意をしたのか電蓄が通信科の兵曹によってまわされ、愛国行進曲や太平洋行進曲に乗って金の棒を振りながら歌い踊る『艦艇ーズ』・・・。

 

「これが・・・新しい『甲板整列』か。いいような悪いような」とつぶやいたのは誰だっただろうか・・・。

 

余談だが、主計科の森脇主計兵曹がかつてした「やけど」というのは本人が言ったのよりずっとずっと軽傷だったことが福島大尉の証言でのちにわかった。

福島大尉は

「あらあ・・・森脇兵曹そんな大げさなことを?あの人何かのゆで汁をちょっと足にこぼしたのよ。ほら烹炊所は皆ハダシで作業じゃない?そしたらさあの人すっごい大騒ぎして周りの子に医務科に担がれてって、で、日野原軍医長に『大げさだっ』て怒られたのよう」

と大笑いをしたのだった。そして、

「川越さんのやけどのほうが大変だったみたいね。あとで来るように言って?」

といい、何事かと恐る恐る福島大尉を訊ねた川越主計兵は「もう治った?これお見舞い代わりね」と大尉からそっと乾燥パインを一袋もらったとか。

 

ともあれ、今後は戦場以外では週一ペースで「艦艇―ズ」ミニコンサートを見なければならなくなった「女だらけの大和」の乗組員はある意味、過酷な甲板整列より苦痛が増えたとか・・・。

 

  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

くだらない落ちで済みませんでした!!

実際の海軍での甲板整列での制裁はものすごいものがあったそうです。それは特に戦艦ではすごかったようで当時の兵隊の間のざれ歌にも歌われています。

>鬼の山城 蛇の比叡

 いっそ金剛で首つろか・・・・

さまざまに言葉は違うようですが「鬼のなんとか」「蛇のかんとか(地獄の~というのもあります)」、そして「どこそこで首つろか(海兵団で、というのも見たことがありますね)」と来ます。それだけ厳しいバッター制裁があったと言う証左なんでしょうか。

ひっぱたくモノも、「精神注入棒」と言われる樫の木や時にはラッタルの手すりをはずして来た「鉄の棒」だったりしたそうですからこれはもう驚きだ!

陸軍さんでも、靴の手入れが悪い!と上官が怒って、靴底を舐めさせたなんて話も聞いたことがありますがまあ本当かどうかは???ですね。

 

戦艦金剛。昭和一九年十一月二十一日米軍潜水艦により台湾近海で沈没(写真WIKIより)。


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● COMMENT ●

周平さんへ

周平さん こんばんは!

そうですね、「厳しすぎる」「人権はあるのか!」なんて言うのは現在の物差しであって当時戦に勝つか負けるかで必死な時にはこうした体罰も有効に働いたのでしょう。
殴る方もつらい時はあったと思いますね・・・

「戦争」はどの面にあっても大変なものだと思いますね。あの時代だったら私なんぞ生き延びれなかったと思うのです。

いつもありがとうございます、寒さ厳しくなってきました。御身大切になさってくださいね。

こんばんは!

当時規律は生命線だったと思います。
それでないと戦局厳しい時を乗り切れなかったと思います。
苦渋の選択だったのではないでしょうか?!
本当に何もかも苦しい時代だったと思います、、、
泣けます!

まろゆーろさんへ

まろゆーろさん こんばんは!

ホントにわけわかんなくなりつつある「女だらけの戦艦大和」です・・・!
この先が思いやられます、軌道修正が必要かも!?

けつバットではありませんが、中学2年の時クラス総員が担任(数学担当)に「怒りの竹刀けつ叩き」をされました。担任に気に入りの女の子には形だけ、でも私のように数学の成績の悪い女子には思い切り。
私は思い切り組だったので相当痛かった思い出があります。

今の世の乱れはひどいものです。なんとか正したいものですが・・・せめてここで「修正!」かましてやりましょう。

本当に寒くなりましたね、まろにい様も御身大切にね!

何が何だか分からなくなってしまいそうな賑やかさに変わり始めた艦上ですね。
ケツバット……、私は受けたことはありませんが野球部の友人たちは始終監督やコーチからいたぶられていたようです。あの時代だったからこそ許された体罰だったのでしょうね。今こそ必要な世の中だと思います。
せめて「女だらけの戦艦大和」の中で今の歪んだ世の中を糺して下さいね。

寒くなってきました。体に気を付けてお過ごし下さい。


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Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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