「女だらけの戦艦大和」・マツコ受難1

「まーッたくさあ、人間て本当に馬鹿だと思わない?」というのは誰あろう、<ハッシー・デ・ラ・マツコ>である――

 

マツコはいつものように『女だらけの大和』の一番トップに陣取ってあたりを睥睨しながら防空指揮所に座ってこちらを見上げるトメキチにそう言った。

「馬鹿、ですか?う~ん、僕はそうは思わないですけど?」というトメキチにマツコはふふんとさも小馬鹿にした笑いをその目の奥に浮かべると、大きな羽を広げてトメキチを見下ろし「だからあんたも馬鹿だっていうのよ。あんたもここで飼いならされちゃって人間同様の馬鹿になっちゃってんじゃないの!?」という。

トメキチは、マツコをよく見ようと双眼鏡の架台に取り付けられた小さないすに飛び乗ってマツコを見上げた。そして、

「どうしておばさんはそんなに人間が嫌いなの?どうしてそんなに悪く言うの?悪く言うならどうしてここに居るの?」

と立て続けに訊ねた。

マツコはその大きな羽をめいっぱい広げるとバッサバッサと羽ばたきをして怒りを表した、そして

「おばさんじゃねえって言ってんだろうが、このくそ犬が!いい加減にしろって言うんだよまったくもう・・・。どうして人間を悪く言うの?かあ!?そんなのこないだの騒ぎ見てりゃあわかるじゃないのさ。何が「映画に映る」だよ。あいつらの馬鹿づらなんか、誰が見たいもんかって言うのよ。全く天井知らずの自信家だよ人間なんて。悪く言うならどうしてここにいるってかあ!?そんなの決まってんじゃないのよ、<食い物>があるからよ。この馬鹿」

と怒鳴った。

トメキチはなんだかその剣幕がとても滑稽に思えてきてしまい、「なんだかおばさんって男の人みたいだねえ」と言ってしまった。

とたんにマツコはトップから舞い降りてきてトメキチの座る椅子の双眼鏡にとまった。そして目を真っ赤に充血させてふうふうと息をつきながら

「男、だとぅ・・・・このくそったれ犬。今度行ったらその毛皮、ひんむくわよ!いい!?あたしは女。女のハシビロコウ。その名も<ハッシー・デ・ラ・マツコ>だからねッ。覚えらんないなら体で覚えさしてやろうか!」

とでかいくちばしをグワッと開いた。そこに麻生分隊士がやってきて、

「おおう!こら貴様、ハシビロコウ!貴様の配置はあのてっぺんじゃろうが!降りてきたらいけん!なんでここに来たんじゃ!トメキチを苛めたら承知せんぞ!」

と怒鳴った。そしてトメキチを抱き上げると艦内帽を取って、ハッシーに向かって振り回した。マツコは、トメキチにだけわかる言葉で「あぶないわねえ、この<おとこおんな>!わかったわよう、戻ってやるわよ。この馬鹿!」と悪態をつくとトップに飛び上がった。

麻生分隊士はトメキチを抱いたままマツコを見上げて「ふんだ、この居候野郎!悔しかったらなんぞの役に立って見んか、ばーか!」と悪態をつく。トメキチはどちらの言葉もわかるので面白くって仕方がない。分隊士の腕の中でクスクス笑った。

マツコは、と言えば分隊士に向かって羽を大きく広げて「何言ってんのよ、この<おとこおんな>!役にたて、だあ?ふざっけんじゃないわよ!」とこれも毒づく。それが聞こえたとかわかったとかではないが麻生分隊士は更に大きな声で、

「ただ飯食ってるならなあ、貴様、一片でもいいから何か『大和』の役に立つことして見やがれってんだ。でないと焼き鳥にしてやるぞ、このばーか!!」

と怒鳴る。主砲射撃指揮所の村多大尉がそれを聞いていて大笑いをする声が外に漏れてくる。

そこに松岡分隊長と見張兵曹、小泉兵曹たちがやってきた。

「あ、分隊士。どうなさったんです」とオトメチャンが訊ねると、分隊士はトメキチを下におろして今までの顛末を話して聞かせた。

松岡分隊長は、それを聞くなりマツコに向き直り、手にしたラケットでビシッと指すと大音声を発した。

「おおう、鳥くーん!君はちょっといい気になってないかい!いいか、明日から『大和』は大きな訓練に出るからな、君は邪魔だ。訓練中は最下甲板で過ごすんだ、いいな!」

そのとたん・・・

マツコのでかい体から力が抜けた。トメキチはそれを見逃さなかった。

マツコはへなへなとその場に座り込むと小さな声で「・・・なんでよ・・・なんで最下甲板に人を押し込もうってそんなひどいことを言うのよ・・・全く、いい加減にしてよ」とつぶやいている。トメキチが「おばさん、どうしてそんなに最下甲板がいやなの?ねえどうしてえ?」とマツコに叫ぶ。するとマツコはげんなりとした顔つきでトメキチに言った、

「あたしはさあ、あんた・・・。ここに来る前最下甲板ってとこに居てボカ沈食らったって言ったでしょうよ・・・あたしそういうところに居るの、いやなのよ。怖くってさあ・・・」

トメキチはそれを聞くなり呵々大笑していた――

 (次回に続きます)

      ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

『大和』最下甲板の図です(画像はお借りしました。謝)



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matsuyama さんへ

matsuyama さん おはようございます。

動物同士の会話を想像するとなんだか空恐ろしいものがありますよね。うちにも犬がいますがこれが道でであった他の犬と何やら会話してるのを解読できたら・・「コイツまったく変な人間でさ」「そう!うちもそうなの。カイショなしでさあ!」なんて言われてたらと思うとぞっとしますw。

サア、今後の展開は・・・!?

オスカーさんへ

オスカーさん おはようございます

「ハッシー・デ・ラ・マツコ」。そうです、イメージはあのマツコ・デラックスさんですねw。
そうだ!サッチーもいましたね(って完全に過去の人扱いの私)!
どっちもすごいぞ!!

さあこのハッシー、いかなる目に遭いますやら。松岡さんの中に何やらどす黒いものを感じます・・・!

動物も人間の会話が出来たら、こんな会話をしてるんですかね。悪口雑言は人間と同じですね。
こんな悪口を強気でいう人間て、相手からはもちろん、親しい仲間からも嫌われますよね。
まっ、見渡したところ自分の回りには見当たりませんけど。
最近犬の言葉がわかる本とか、猫の言葉が分る本とか出てますけど、どうなんでしょうかね。
分ってしまったら犬や猫へのイメージが変わってしまうかも。

Re:

こんにちは。ハッシーのしゃべるイメージや声は私の中では完全にマツコですわ~昔だったら野村沙知代さんでしょうか?意外におとめな部分のあるハッシーが見たいです~誰かによろめくとか(笑)

まろゆーろさんへ

まろゆーろさん こんばんは!

そう言う人いますね。
憎まれっ子世にはびこる、って感じででかい態度でいる方が豪快かもしれないですね。小者な憎まれっ子は鬱陶しいばかりですが、大物な憎まれっ子は却って「すごいなあ」と感心します。まあそんなのはめったにいませんねw。
人間同士、多少のことは譲って付き合いたいなあと思うのですが・・・。

あはは。でかい態度でも弱点はあるものですね。
特に態度も体もでかいのが急に萎むと逆に不憫に思ったりするのは人間だからでしょうか。
横着な人は最後まで憎まれっ子で貫き通す方が面白いかもしれないです。
根っから憎々しいなんて思いもしていないことの方が多いのが人間同士の付き合いですもんね。
プロフィール

見張り員

Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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