「女だらけの戦艦大和」・連合艦隊総員女優??

「女だらけの帝国海軍」は当然女だらけ、女は噂話が大好きである――

 

その話も枯野に火が駆けずるように「女だらけの帝国海軍」の間を走りぬけた。その話とは、「私たちの映画を撮るんだって!」という話で、しかも「山本いそ連合艦隊司令長官が主人公なんだってよ!」という衝撃的なもの。

そのうえ、「井上成美(いのうえなるみ)」中将や、「黒島亀子(くろしまかめこ)」参謀、それになんと「山口たも」少将たちそうそうたるメンバーも出演するとあって、海軍全体が浮足立っている。

それを伝え聞いた「女だらけの大和」の見張兵曹や小泉兵曹・麻生分隊士までが騒ぎ出した。「じゃあ、山本長官が大和(ここ)でロケをするかもしれないな!おお、もしかしたら俺たちも映画に出られるかも知れんぞ!」そんなことを分隊士が言ったものだから皆は「私たちもですか!映画に!?」と大騒ぎになった。

分隊士はうんとうなずいて「だってさ、山本長官や井上中将たちが出演とくりゃあ我らが『大和』だってでないわけがないだろう?どういう話を撮るんだか知らねえが、きっと長官のカッコいいとことかなんかだろう?そしたら、『大和』が出なきゃ片手落ちってもんじゃあねえの?」と言った。

見張兵曹は、「あ、二航戦の山口少将も出られるなら、連合艦隊大集合みたいな映画かもしれませんね。もしかしたら前の『ミッドウエー海戦』の話かもですよ」と言って小泉兵曹も、「ほうですね、ミッドウエーの話なら山口司令官も、もしかしたら『武蔵』の猪田艦長とかもでるんじゃないですかねえ」と唸る。

そこに石場兵曹が来て話に加わる、「うちの艦長だってでますよね、すごい一大スペクタクル映画になるんと違いますか」。

皆の脳裏にすさまじいミッドウエーでの戦闘がよみがえってきた。あれを映画で再現するとなると製作費もすごかろう・・・。

「もちろんロケ地はミッドウエーでしょうね。稼働全艦艇を集めて実録映画もどきなんてすばらしいですねえ。帝国海軍ここにあり、を内外に見せつけてやりましょうよ」

皆はすっかりその気である。

 

その気になっているのはこの連中だけではない。話を聞きつけた『武蔵』『長門』他の戦艦、各駆逐艦、潜水艦、航空隊関係もそわそわし始めている。

山本長官は立場上、落ち着いて見えるが内心は(私が映画にねえ、演技はうまくないからなあ。でも頑張ろうっと!)と思っているし、黒島参謀は(あんまり目立たなかった私も、ついに脚光を浴びる時が!さあ~、お肌の手入れもしなきゃねえ~)と化粧水をそろえ出す。

山口たも少将は(うふふ・・・見たか!私が本気で痩せたらこんなもんだ!映画でもグラビアでもなんでもこーい!いっちばん目立ってやるからね!)と長官や参謀連中に対抗心をめらめらと燃やしている。

井上成美中将は(何で山本さんが主人公なんだ?やっぱり第一回真珠湾奇襲の考案者だから?私だっていろいろ活躍してるのになあ。うーん、なんとかして目立たんといけないな)と腕を組んで考え込む。また、『赤城』飛行隊の淵田中佐は(もしかしたら・・・あの真珠湾攻撃の映画を!?なら、山本長官が主人公でも当然かも。でも!!準主人公の座は攻撃隊長のこの私だあ!)とニヤニヤしている。

それぞれ――兵から佐官まで――の思惑が交錯している「女だらけの帝国海軍」である。

 

そして。

ある日、山本長官の元に「明日の〇六〇〇(午前六時)から映画の撮影をはじめるんだそうです」と海軍省から通達が来た。まず『長門』で初ショットを撮ると言う。

長官は「そうか!では今夜のうちに私は『長門』に行こう」と言って横須賀に寄港中の旗艦・『長門』へ向かう。

『長門』では、早川艦長が昆野副長とともに出迎えた。そして艦長はニコニコしながら「長官。映画ご出演おめでとうございます!」と手を叩いた。昆野副長も拍手してほほ笑む。

その二人に長官は微笑みかけて「ありがとう。そうだ、君たちにも出演の機会を与えてもらおうじゃないか」と言って二人を喜ばせた。

昆野副長が「艦長、この映画はどのような内容になるんでしょうか」と聞くと早川艦長は山本長官の顔を見て「そりゃあ副長。いかに山本長官が素晴らしいお方であるかという内容に決まってるじゃないか。そしてこの『長門』の素晴らしさと。きっとタイトルも『女たちの長門・NAGATO』に決まってますよ」といい副長も「そうでしたね!いやー、私も当然のことを聞いちゃったりして!」と言って三人は大笑いをしたのだった。その晩にはなぜか山口たも少将も『長門』を訪問し、「撮影隊が来るまで」泊まって行くことに・・・

そしてはるかトレーラー環礁では『大和』の梨賀艦長もこの話を聞いて、

「ええ!映画だって!?じゃもしかしたら、いや!もしかしなくってもこの『大和』でもロケをするに決まっている!おう、これは我ら『艦艇ーズ』を全国民に知ってもらういい機会ではないか!」

と浮足立っている。野村副長も森上参謀長も「おお!ではとっておきの衣装を着ようぜ!」とすっかりその気である。

「いつこちらに撮影隊は来るんですかねえ」と問う副長に艦長は、「先に『長門』で撮ってからだって聞いたからこっちは少し先かもね。撮影に来る前に新曲と振り付けの練習をみっちりやっておこうね!」と言って三人はさっそく練習にかかる。

この騒ぎは、潜水艦部隊もしかり。帝国海軍が世界に誇る超ド級潜水艦・伊号八〇〇潜水艦でも「うわあ!やったやった!我らが有名になれるいい機会だ。さあ、みんなで艦の掃除をしよう」と言って艦の外にへばりついた牡蠣やフジ壺を掻き落とす作業を始めている。伊五七〇潜では「もしかしたら砲撃シーンも撮るかも知れんぞ!」ということでさっそく砲撃訓練を始める。そして「艦内は狭いから撮影隊が入れないと撮ってもらえないかもしれんぞ、皆で艦内の整理整頓をしよう」と言って下は一等水兵から上は艦長までがせっせと艦内の掃除と整頓に励む。

『武蔵』ではちょうど外洋訓練中だったが猪田艦長が「なんだって。映画撮影ね。ならば我が『武蔵』もいくらかのお役に立てないと申し訳ない」と急いで横須賀に向かう。『武蔵』乗組員も「映画だってよ!映れたらいいな、そうだ、今から魅力的な表情の練習だ」と課業終了後に鏡を見て表情を作る練習に余念がない。

『大和』では・・・

防空指揮所で夜風に吹かれながら、麻生分隊士と見張兵曹が当直である。双眼鏡を見ながら分隊士が、

「でも俺はちょっと心配じゃ」

という。オトメチャンが「何がですか?」と双眼鏡からは目を離さずに問うと、分隊士はいきなりオトメチャンを双眼鏡から引き剥がした。驚く見張兵曹を抱きしめて分隊士は、「オトメチャンが映画に出たりしたら・・・映画会社の人の目にとまって『女優』デビューとかにならんかと、俺は心配じゃ。俺だけのオトメチャンでのうなってしまうんは、いやじゃ」とその耳元でささやく。

オトメチャンは分隊士の背中にそっと手を回すと「分隊士。うちは女優になれるほどきれいじゃありませんけえ、そんな心配なさらんで下さい。うちはいつまでも分隊士と一緒に居りますけん」と囁く。分隊士はたまらなくなって「オトメチャン!」と叫ぶなりオトメチャンの紅い唇を奪った。

そこに松岡分隊長がいきなり入ってくると「麻生さ―ん!熱くなってるか―い」と叫んでラケットを一振り。あわてて離れる二人に松岡分隊長は、

「さあ御二人さん。もうすぐ映画の撮影隊がこの私の活躍を撮りにやってきますから、明日は皆でここをきれいにしましょう。麻生さん、あとで分隊のみんなに伝えてね。明日朝食の後指揮所要員はここに集合ですからね。サボっちゃダメですよー!」

とひとりでしゃべって、あっという間に階下に降りて行ったのだった。二人がポカンとしている上空には南の星星がきらめいている・・・

 

そんな頃。

山本長官は衝撃を受けていた。なぜなら「旗艦・長門」に撮影監督他数名がやってきて「今回山本長官を主人公に映画を撮ります。彼女が長官役をする<役場こう>さん、でこちらが山口たも少将を演じます<阿部寛子>さんです!」と紹介したのだった。

なんと。

「私たちが出る」んじゃなくって「私たちを女優が演じる」んだったのね・・・。海軍省はその辺をしっかり伝えていなかったようだ。つまりは誤解が生じたのだ。

急速にしぼんで行く気持ち。その知らせはあっという間に全艦隊・全艦艇に伝わり・・・しばらくの間女だらけの連合艦隊は自虐的ムードだったと言うが何より一番傷ついていたのは山口たも少将で、「もう、あんなに痩せてる女優を持って来やがって。・・・チクショー、こうなったらもっと痩せてやる!ええ痩せますともッ!」と大変に自棄になって居たそうな。

 

   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

シリアスな話が続きました後は、馬鹿話となってその落差に驚かれた方も多いとは存じますがこれが「女だらけの戦艦大和」の神髄です!

さて、今年の12月23日、映画『聯合艦隊司令長官・山元五十六」が公開です!山本いそ、じゃなかった山元五十六長官を<役所広司>さんが、山口多聞司令官を<阿部寛>さんが演じます。

皆で観ましょう!



↑山本長官を演じる役所広司さんです。(画像拝借しました)

にほんブログ村 小説ブログ 百合小説へ
にほんブログ村
関連記事

Comments 8

見張り員">
見張り員  
ジスさんへ

ジスさん こんばんは!

いやいや・・・本来のあほな私が表れて来たんですよ~~www!

この映画(山本五十六)の話を聞いた時思わず「マジで!?」と言ってしまいました!役所広司さんの五十六はどんなかな?と今から楽しみです♪

山口多聞さんが阿部ちゃんというのは少し・・・ですがこれも楽しみです、はい!

2011/11/09 (Wed) 21:48 | EDIT | 見張り員さん">REPLY |   
ジス  

こんばんは。いつもありがとうございます。

確かに!シリアスなお話の後のコミカルなお話、流れを作られるのが大変お上手で、どんどん引きこまれてしまいます。映画は本当にあるのですね。役所広司さん、雰囲気がありますね。

2011/11/08 (Tue) 23:50 | EDIT | REPLY |   
見張り員">
見張り員  
オスカーさんへ

オスカーさん、 こんばんは!

そうなんですよ~。多聞さんが阿部ちゃんじゃちょっとイケメンすぎ(ごめんなさいたもさん!)、やせすぎですww。

多聞さんは要するに「肥満体」に近かったようで、部下と飲みに行くと酔った部下にそのおなかをポコポコたたかれていたという話です。
彼がミッドウエーで戦死した時49歳ですからね~。あのころの50前後は立派なオジサンですねw。

ハッシー。元気です。
ハッシー・デ・ラ・マツコは間もなく出番が参りまーす!!

2011/11/08 (Tue) 22:07 | EDIT | 見張り員さん">REPLY |   
見張り員">
見張り員  
関本健二さんへ

関本健二さん こんばんは!

なんだか昔から軍隊に関して興味があります。海軍に興味があるのは、(私も最近まで知らんかったのですが)祖母の父親の方が軍神・広瀬中尉と親戚関係だったというのと何か関係があるのかなあと思っています。

知覧。陸軍特攻の最前線ですね、私も一度は行きたいところです。資料館の御遺書には涙なしでは読めないですね。
今の日本人、この方たちのことをもっと知らねばなりません。

ご訪問&コメントをありがとうございます!!

2011/11/08 (Tue) 22:02 | EDIT | 見張り員さん">REPLY |   
見張り員">
見張り員  
まろゆーろさんへ

まろゆーろさんへ

そうなんですよ「山本五十六」さんの映画が公開になっちゃうんですよ~~!!
役所広司三、昔から気になる役者さんでしたが、本当にいい役者さんになられましたね!きっともう少し年齢を重ねたらもっと素敵な役者さんになられると思います。
「役所五十六」、楽しみです❤

オトメチャン、もう分隊士しか眼中にないです。かわいい女性は私の憧れ、理想です。松岡修子さんは相変わらずです(ww)。

今日(八日)はさすがに寒くなりました。
ちなみに今日11月8日は、仁科中尉達が伊号潜水艦に乗って大津島から出撃した日です(戦死11月20日)。

2011/11/08 (Tue) 21:57 | EDIT | 見張り員さん">REPLY |   
オスカー  

こんばんは。山口多聞がアベちゃんなんてカッコよすぎないですか?(笑)私が最初見た多聞さん(ダンナが読んでいた小説のイラスト)はオッサンだった気が…!
いろんな角度から当時の人たちや出来事を知って欲しいですね。
ところで、ハッシーの次の出番はいつですか♪

2011/11/08 (Tue) 20:26 | EDIT | REPLY |   
関本健二  

聯合艦隊や戦艦大和など60年以上も前の出来事に関心を持っておられることに敬服します。
何年か前に特攻基地のあった鹿児島県の知覧に行ったことがあります。
ここの記念館で、出撃前に両親や兄妹にあてた遺書を見たとき涙があふれて止まりませんでした。
今の平和は、この方たちの犠牲の上に成り立っているとつくづく思います。

2011/11/08 (Tue) 13:45 | EDIT | REPLY |   
まろゆーろ  

おぉ、いよいよ映画になるのかと流石に見張り員さん、幅広く展開して下さるものだと思いながら読み進めたら本当に映画が出来ちゃってるんですね。役所さん、凄味すら感じる風貌ですね。役者魂の見せ所でしょうか。

オトメチャンは相変わらずかわいいですね。こんな女性がいたらきっと後を付いて行きたくなります。松岡さん、あの熱血そのままですね。
明日は立冬ですがご自愛下さいね。

2011/11/07 (Mon) 23:48 | EDIT | REPLY |   

Leave a reply

About this site
女だらけの「帝国海軍」、大和や武蔵、飛龍や赤城そのほかの艦艇や飛行隊・潜水艦で生きる女の子たちの日常生活を描いています。どんな毎日があるのか、ちょっと覗いてみませんか?
About me
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)