「女だらけの戦艦大和」番外編・連合艦隊連合運動会6

「カッタ―八艘飛び」の出番待ちでは、いろいろな人間模様が紡がれている――

 

麻生分隊士は、軽巡「熊」の熊田久万大尉にオトメチャンを一晩貸せ!と詰め寄られている。しかし分隊士も負けてられない、「私が一秒でも、一歩でも早くゴールしたらオトメチャンはあなたにはお貸しいたしません。以後一切。よろしいですね」と言った。その分隊士に熊田久万大尉は「言ってな。今のうちだぜ、あの子は今夜俺のもの」という。

更に分隊士のレース順より後ろでは、『大和』機銃分隊の増添兵曹が戦艦『榛名』の乗組員に絡まれている。

「おい、ハゲ。女ハゲ。見せろハゲを、早く見せろ」

絡んでいるのは少尉連中。増添兵曹は泣きそうになっている。少尉連中は兵曹が黙っているのをいいことに、鉄兜と略帽を取ろうとした。

さすがに兵曹は腹が立って「やめてください、いい加減にしてください」と怒鳴った。いきり立ったのは少尉連中で「何を偉そうにぬかすか、貴様より俺たちのほうが上だぞ。謝れ貴様」と怒鳴った。そこに割って入ったのが特殊潜航艇艇長の松尾敬子大尉である。松尾大尉は見かねて『榛名』の乗り組み士官に「貴様たちのほうが悪い、人のことをああだこうだ言うのは帝国海軍軍人としてどうなのか?恥ずかしくないのか?」としかった。大尉に叱られて少尉連中は黙った。それを見て松尾大尉は、「いいか、もしもこのレースでこの兵曹が貴様たちに勝ったら貴様たちは両手をついて謝罪しろ。いいな。これはどう見ても、どこから見ても貴様たちに非があるのだからな」と宣言。少尉連中はばつ悪そうに体を小さくした、そして「はい」と返事をした。

増添兵曹は、松尾大尉に「ありがとうございます。助かりました。私は『大和』の増添と申します」とあいさつした。その兵曹に松尾大尉は穏やかに微笑んだ。

 

さあ、レースは大変な盛り上がりを見せている。坂井三子少尉と武藤金代少尉のいるレースは航空隊がものすごい歓声で応援。そしてなんと坂井・武藤両少尉は38歩兵銃ではなくなんと零戦の機銃をはずしたものを担いでいる。そして飛行帽に飛行服、軍袴のポケットにはたくさんのチャートを詰め込みカポック(救命胴衣)も身に付け大変な重さであろうことは一目瞭然。

その姿でスタートを切る。他の選手は(あんな重いものを持って八艘飛びだ?無理に決まってんじゃん、航空兵だからってカッコつけんじゃねえよ)と内心馬鹿にしている。

が。

彼女たちは異常なほどに軽やかな身のこなしでさっさとカッターを飛んでゆく。駆逐艦からの選手はわが目を疑う。二人の航空少尉はあんなに重い機銃を担いであっという間にカッターを飛び終えた。

坂井・武藤両少尉は同着。やんやの喝采に両手をあげて答えたのだった・・・。

そして、麻生分隊士の直前のレースにはあの『狂犬浜口』こと『大和』の浜口機関長が「気合いだ気合いだ気合いだー!オイオイオイ!」と叫び出し、周りの兵は迷惑げである。そしてレースが始まったが浜口機関長がカッタ―に着地するたびカッターがあり得ないくらい大きく上下に揺れ、その時運悪くカッターに着地した他の兵は天高く舞い上がることになって、結局海へどぼん。浜口大尉は「うわはっは、うわっはっは、うわっはっは。皆弱いなあー。気合いが足りないぞ!」と言って鉄兜を取って額の汗をぬぐって笑った。その機関長を、海中から情けなさそうな顔で見つめる他の選手たち。・・・・かわいそう過ぎる。

 

そしていよいよ麻生分隊士のレース順が来た。心なしか顔色の青くなった麻生分隊士に熊田久万大尉は「そんな顔つきじゃあ、貴様負けるな。さあ、今夜はどうやってあの子を可愛がろうかなあ~」と言っている。麻生分隊士はやっと明るい所に出て、熊田久万大尉を改めて見た。そして(うゲッ!こいつこんな女だったのか!?)と驚いた。クマダクマという名に恥じないでかい体の上に、毛深い。(まさに熊だな。こんな奴にオトメチャンは絶対渡せない!)と麻生分隊士は覚悟を決めた。

(負けるものか。こんな女にオトメチャンがどうにかされるのは絶対いやだ!)

麻生分隊士の全身に闘志が湧き立った。一旦鉄兜を取ると、下にかぶった略帽の上に締めた鉢巻きを固く締め直した。そして鉄兜をしっかりかぶりなおした。顎紐をきっちり掛ける。

「用意」とスタート係りの水兵長の号令がかかる。麻生分隊士は熊田久万大尉を見て「ずるいことはしないでくださいね、シーマンシップにもとるような行為は無しで願います」と言った。熊田大尉は「てめえもな」と鼻で笑う。

「かかれ!」と同時にピストルがなり、皆は一斉に最初のカッターを目指す。最初は皆ほぼ一列に並んで飛ぶが、三艘目あたりからばらつきが出始め麻生分隊士の隣の空母・『蒼龍』の士官が思いっきり海中に突っ込んだ。

それを見ていた『蒼龍』の柳本艦長が「ああ!惜しいなあ~、おっこちちゃったよ~」と残念そうに甲板を叩いた。

熊田大尉は五艘目を飛ぶときに少し着地に失敗したようだ、足首に痛みが走った。が、(あのおぼこをモノにしたい!)の一念で来るから痛みなど屁でもない。

「さあ、行くぞーー!」と大声を出して麻生分隊士を威嚇し、自分は更にパワーアップを図った。分隊士は(まずい、先を越される!)と焦った。いよいよ熊田大尉が七艘目に飛び移るその時、審判用のカッターにオトメチャンが乗っているのに熊田大尉と麻生分隊士は気がついた。カッターの上で立ちあがって様子を見守るオトメチャンは水着のまま(山本長官や宇柿参謀長ほかの意向であるから仕方ない)、その腰のパレオが風に吹かれてまたもオトメチャンの股部分がチラリと・・・・

見とれていた熊田大尉は七艘目のカッターに飛び移った・・・と思いきや、よそ見をしていたためか着地地点を大きくそれた。ハッと大尉が気付いた時には時遅し、大尉は重い装備とともに海面にその身を叩きつけていたのだった・・・。

麻生分隊士は一番で八艘目に降りてオトメチャンに手を振った。(よかった、これでおれの勝ちだ)。熊田大尉は海面に顔を出し悔しげであるが、約束は約束。引き下がらざるを得なかった。

そのあとの増添兵曹も「ハゲ」と言われた悔しさに負けることなく『榛名』の士官連中を大きく引き離し、勝鬨を上げた。そしてレース後、松尾大尉の見守る中で士官連中は両手をついて増添兵曹に謝ることになったのだった。

増添兵曹は「ふん、ハゲの底力を見たか。馬鹿者どもが!」と息巻いたが長妻兵曹に「増添さん、自分からハゲを認めとるんか?」と言われて赤面した。

 

さあ、一応すべての競技が終わり後は山本長官から講評と結果発表がある。

皆の間には「いったいどこが一番なんやろな」とか「いや、今回はうちらが一番じゃの」「おらがが一番ずら?」などとお国ことばが渦巻く。

総員が『赤城』『加賀』の飛行甲板に居並んだところで、山本長官が宇柿参謀長を伴って現れた。その後ろから妙な高い鉄棒も出てきたのが変ではあったが皆は長官に敬礼。長官は満足げに皆を見回し返礼。そして今回の運動会の成功を喜んで講評とした。

宇柿参謀長が「結果発表、表彰状授与」といい、プレゼンターとしてオトメチャンが賞状の入った桐の箱を持ってくる。『武蔵』の小椋兵曹がトロフィーを抱えている。オトメチャンはもちろん水着のままでしかし、略帽をかぶっている。水着の可愛さと略帽のカッコよさのギャップにまた「萌え」る皆である。

宇柿参謀長が手にした紙を見ながら「第三位。潜水艦・特殊潜航艇チーム」と発表。とたんに歓声がわき上がる。普段地味な扱いしかされない潜水艦チームとしては溜飲が下がる思いである。甲標的の都竹兵曹が、松尾大尉の顔を見て嬉しそうに笑った。黒木少佐と仁科大尉は互いに右手の親指をぐっと立てて笑いあう。

「第二位。駆逐艦他小艦艇チーム」これには駆逐艦の乗組員や小さな海防艦だとか補給艦の乗組員は大喝さい。普段どちらかというと縁の下の力持ち扱い、菊の御門もいただけない艦としては潜水艦チーム以上に嬉しいかもしれない。

「無花果艦長、やったねえ~」と喜ぶ「雪風」の寺内艦長に菅直子『無花果』艦長は「私はイチジク浣腸じゃないって言うのに!」といいながらも嬉しそうである。

「第一位!」宇柿参謀長の声に皆静まった。

さあ、注目の第一位は・・・・!?

 (次回に続きます)

 

   ・・・・・・・・・・・・・・・・

回転考案者のお1人「仁科関男」海軍少佐のことを少し。滋賀県出身、海軍兵学校71期。戦艦「長門」、「空母・瑞鳳」乗組みの後潜水学校普通科学生に採用されました。その後特殊潜航艇・甲標的講習員第6期としてP基地に着任後黒木大尉らと「回天」を考案しました。昭和一九年十一月八日、「菊水隊(伊47潜)」でウルシ―環礁にて戦死なさいました。享年二十一歳。
菊水隊出撃の際の写真(左から二人目が仁科中佐)。写真はお借りしました。



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柴犬ケイさんへ

柴犬ケイさん こんばんは!

ご訪問&コメントをありがとうございます!うれしいです!!

昼間は暑いくらいでしたが夕方から北風が強く吹いてきました!寒くなりそうです・・・
柴犬ケイさんもお風邪など召しませんように。
ケイちゃんもお元気でね。モミジも元気です!
またお邪魔させていただきますのでどうぞよろしくです!

見張り員さん   こんばんは♪

連日のご訪問とコメントありがとうございました♪

今夜からかなり冷え込みそうですので、暖かくして
風邪などひかれませんように気をつけてください。
モミジちゃんにも宜しくです。

まろゆーろさんへ

まろゆーろさん おはようございます。

「榛名」の士官を叱っておきます!!ww。

クマダクマを退治して、オトメチャンも無事。麻生分隊士の愛の力が勝ちました!「必ず最後に愛は勝つ」という歌もありましたね♪まさにその通りです~❤

番外編がえらい長くなりましたがあと一回です番外編。もうちょっとだけお付き合いくださいませ!

No Subject

今日は「ハゲ、ハゲ」の声が身につまされております(笑)

それにしても横恋慕の結末は往々にしてこんな感じですね。人様のものを横取りしようなんていう了見がいけません。オトメチャン、やっぱり収まる人の胸に収まるのですね。良かった良かった。

matsuyama さんへ

matsuyama さん こんにちは!

女はこわい、というのを如実に?現した事件でしたww。
そしてどうやら運動会も終わるのですが優勝・第一位は一体どこが取るのでしょうか?そしてこの後のイベントも気になります・・!

麻生分隊士も、増添兵曹も意地を見せました。人間ここ一番という所、踏ん張りどころがないといけないですからね♪
祈るは増添さんに一日も早くふさふさの髪が生えることですね。

連合運動会も佳境に入ってというか、脅迫合戦の中で幕を閉じましたね。
まさに女同士の虐めですよね。
パワハラの脅迫に負けなかった麻生分隊士、増添兵曹。ご立派。
悔しげな熊田大尉や榛名の士官連中。見ているだけでも痛快マ・ル・カ・ジ・リでした(笑)。最後は天罰が下るのだ~。
さあ~、優勝の行方はどちらなんでしょうね。
プロフィール

見張り員

Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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