2017-10

「女だらけの戦艦大和」・体当たり! - 2011.10.05 Wed

「女だらけの帝国海軍」第八三一水雷戦隊第四駆逐隊は、訓練帰りに敵に遭遇した――

 

第四駆逐隊は四隻からなる。旗艦は『縄張』。駆逐隊は他に、第八、第一六、第二四の各隊。その水雷戦隊は、トレーラーから某所で訓練を行って帰投するところであった。

が、第四駆逐隊の艦「金槌」が機関の不具合で遅れた。駆逐隊長の乗る「烏賊槌」は旗艦「縄張」に「カナヅチ キカンコショウ ヤヤオクレル サキニイカレタシ イカヅチカンチョウ」と発光信号を打って、第四駆逐隊は本隊から少し遅れることになった。

「どうしたんでしょうね、『金槌』。昨日の夜戦訓練で何かあったんでしょうかね」と、「烏賊槌」航海長は言った。艦長の吉田中佐は航海長を見返って

「うん、『金槌』は昨夜大活躍だったからね、そのせいかな?でも実戦でこれだと困るじゃないか。もっときちんと整備をしてもらわんと」

と少々眉間にしわを寄せて言った。

見張り員が「本隊との距離、八〇」「上空、海面ともに不審物なし」と知らせてくる。

艦長はうなずいてから「『金槌』はどうした?付いてきてるか?」と聞く。航海長が双眼鏡で見ていると見張りが、「『金槌』、六時方向にいます。特に遅れはありません」と言って皆はほっとした。

旗艦・「縄張」から無電で護衛にハライタ島航空基地から零戦隊が八機来ると知らせが来た。その知らせを持ってきた通信長は、

「安心ですね。零戦隊は後五〇分で我々に合流出来るそうですから」

と電文を見た。

艦長は「『金槌』の様子を見ながら注意して航行だ。『鼾(いびき)』『淦付(あかつき)』にもしらせよ」というと艦橋の外に出た。

 

たった四隻の駆逐隊はしばらく何事もなく航行していた。零戦隊が来るまでもう少しである。

が。

「右舷方向、敵艦船!」

という叫びが艦長たちの耳をつんざいた。「なに!敵艦船だと!」と食べかけの握り飯をほうりだして双眼鏡を覗くと右舷方向六万メートルほどに確かに帝国海軍のものではない艦が二隻ほどこちらをうかがうように並走している。

「な、なんということだ。訓練帰りに敵に遭遇とは…第一なぜこの海域に敵がいるんだ!?」

航海長は腹を立てて叫ぶ。

艦長は「合戦用意!対潜水艦注意!」を叫び、艦内は砲戦準備にかかる・・・

 

この敵艦と思しきものは、アメリカの輸送船で当然しっかり武装もしている。この輸送船は日本に兵站線を遮断された仲間をすくわんと、オーストラリア海軍の協力を得て物資を東南アジア方面に届ける途中であった。武装船と思われないように、見かけはおとなしげな輸送船のような民間の船を気取ってはいるが。

輸送船・「ショップバッグ」の船長は「う、うわあ!あれはジャップの艦隊じゃなくて!?いや~どうしよう・・・。『オバマ級戦艦』も『空母・レーガンⅡ』もいないと来てるのに」と卒倒寸前だったが、砲術長が「キャプテン。この船は唯の輸送船じゃないね。優秀な砲員がいますからあんなもの一発で沈めますよ。あれはどれも駆逐艦のようですし、そばに巡洋艦も戦艦もいませんから、まあ、楽勝ですね。見ててください」というと、即座に「砲戦用意」を命じる。

 

「金槌」では見張り員が「敵艦は民間船のふりをした『巡洋艦』ですっ!」と見抜いて報告。吉田艦長はそれを受けて駆逐隊に「右砲戦用意、各駆逐艦は適宜砲撃せよ」と命令を下した。

対するアメリカ輸送船、「あんなもの唯の駆逐艦じゃん!?どうってことないね、即刻ドカンと海の底に送ってやろうよ」と息巻いていたが。

 

これらの駆逐艦は、最新の装備をつけていて、そのための訓練に出た帰りだったのだ。だからアメ嬢たちが思っているような「今までの」日本の駆逐艦とは一味違うのである。第八三一水雷戦隊は、新しい装備をつけた水雷戦隊ということで海軍全体の期待も大きい。すべての海軍工廠の優秀な技師が集められ、「新しい装備」を日夜研究し試行錯誤しながら出来たものがこの第八三一戦隊に装備されているのだ。実戦でよい戦果が上がれば、すべての水雷戦隊に装備させると言うことになっている。

 

ともあれ、「海戦」は始まった。ともに航空機の援護もない戦いであるから最初はぶん殴り合いの様相であった。第四駆逐隊としてはそうしながら相手の力量を見ていたのかもしれない。四隻の駆逐艦は、二隻の敵艦を追い込むようにして砲撃。

一隻の輸送船「ショップカート」の船尾に、「鼾」の砲弾が命中し、たちまち行き足が落ちる。それでも砲撃をしてくる敵、「敵ながらあっぱれ」ではある。

しかし行き足が落ちたのが「ショップカート」には不運で、「淦付」の集中砲火と、魚雷であっという間に沈んでしまった。

「ショップバッグ」はそれを見てさすがにまずいと思った。どうやら相手は百戦錬磨の駆逐艦らしい。

「ショップバッグ」艦長のマイ・バッグ大佐はビビる船長を艦橋から追い出して「戦争なら私がプロだね!素人はすっ込んでて頂戴!」と自分が艦橋に陣取った。

マイ・バッグ艦長が艦橋に入ってほどなく、日本駆逐艦からの砲撃が至近で爆発した。大きな水柱が上がり、船が揺れた。

エコ航海長が「艦長、どうしましょう。多勢に無勢です」と艦長に進言、さすがのマイ・バッグ艦長もまずいと思った。航空機の護衛もない、頼めない状態での戦闘など考えられない。

というわけで。

「全速力で退避!」と命じた。ショップ・バッグは機関全開でその海域から離れようとしていた。それを「金槌」の吉田艦長は見て取った。艦長は、これ以上砲戦を仕掛けてもそれほど効果はないと考えた。かと言ってこのまま逃がすわけにが絶対いかない。

「かくなる上は」新しい装備を試してやろうと思い皆に問うた。「あの(・・)装備を使おうと思う・・・」。だがまだ使ったことがないだけに必ずしもその攻撃が成功するとは限らない。

だがやらずに敵輸送船を逃がし、敵を有利に導くことだけは避けたい。避けねばならない。

吉田艦長は、艦橋に集まった要員に自らの覚悟を示すかのように口を開いた。

「身はたとい」・・・皆はそれを聞いて気が引き締まった。艦長が辞世を詠むのか、その覚悟でこの『新しい装備』を試すのなら我々もその覚悟で臨もう。

艦長は皆を見回すと、

「身はたとい 太平洋に朽ちぬとも」

と更に詠んだ。

「留めおかまし 大和魂」・・・

皆は艦長の顔を食い入るように見つめた。おお艦長、それは「吉田松陰」先生の辞世のパクリです・・・!

しかしそれを合図のように「金槌」は全速でショップバッグに突撃した。艦内には突撃ラッパが鳴り響き、機銃が鳴り響く。

ショップバッグは、日本の駆逐艦が血相変えて突っ込んでくるのに衝撃を受け、なんとかこれを回避せんとした。マイ・バッグ艦長は「これが世に言う日本人の『バンザイアタック』なの!?いやー!逃げるわよッ!」と叫び、艦は取り舵を切った。

そこに――

「駆逐艦・金槌」は一直線に突っ込んで行った。

 

それを、後方を守る「烏賊槌」艦長は見て「ああ!やったか!?」と叫んでいた。その叫びは悲痛だった。

はるか前方でものすごい爆発音と発光、目がくらんだ。

駆逐艦三隻の乗組員は、寂として声も出ない。『烏賊槌』の機銃員が、「ああ・・・やっぱり駄目だったのか。敵を道連れにして自分もともに・・・ああ、海軍魂を見た・・・」と言って泣き始めた。大きな感動が全艦を包んだその時。

煙が晴れたその向こうに無傷の「金槌」の姿が浮かび上がった。とたんに歓喜の声をあげる三隻の駆逐艦の乗組員たち、そして駆逐隊司令はその場に立ち尽くしてそれを見守った。

「金槌」は、艦首に仕込んだ新型の合金で敵艦の横っぱらを切り裂いたのだった。この合金は海軍工廠の技師たちが敵を葬るための策を考えに考えた結果である。

艦首に超合金を仕込むことによって艦の強度を増し、体当たりをかますことで敵を切り裂いて鎮めることが可能になると考えられた。

そしてその考えはすさまじい結果となって現れた。しかも最高の結果で。

それをちょうど上空に飛来した零戦隊が目撃し言葉もなかったという・・・。

そのあと四隻の駆逐艦は輸送船の乗組員を救助し、トレーラーの収容所に護送した。そして浮かんだ品物は皆すべて・・・いただいたという・・・。

   ・・・・・・・・・・・・・・・

吉田松陰 天保元年(1830)八月四日~安政六年(1859)一〇月二七日 二九歳で刑死。幕末の志士に大いなる影響を与え、今なお彼の言葉・思想は生きています。

彼の言葉は今の日本を見通していたのではないか、と思うくらいの言葉があります。折々ご紹介したいと思います。

文中に引いた歌の元は

「身はたとひ 武蔵の野辺に朽ちぬとも

留め置かまし 大和魂」

松陰先生辞世の句です。
Yoshida Shoin2.jpg

WIKIより

吉田松陰像(山口県文書館蔵)

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音楽独言さんへ

音楽独言さん こんばんは

コメントをありがとうございます。
こんな私の愚ブログ、間違っても「文学作品」ではございませんので(汗)、本当にお気軽に、記事とは何にも関係ないことでもまったく構いませんのでどんどんコメント欄に書きこんでいただけると大変うれしいです!
ですからこれからも、なんでもいいので書いていただけると私の励みになります、どうぞよろしくお願いいたします!!

まろゆーろさんへ

まろゆーろさん こんばんは

今回「水雷戦隊」についての知識がほとんどなかったので、水雷戦隊の本を読みながら首っ引きで書き上げました。
正直苦しい話でありましたがおほめを頂きうれしいです♪
松陰先生については、この間娘の部屋から出て来た松陰先生のお言葉の文語のままと、対訳を乗せた本を読んでいるうちに「松陰先生の声を今に響かせなければ!」と思ったのです。
たくさんの手紙などからの言葉にはこの国のあり方や武士の生き方、殿さまとしての生き方を説いたものがあり今の政治家に正座して読ませたいものばかりです。
松陰先生という方が刑死なさらずにその天寿を待とうされていたら日本という国の今はもっと違うものになっていたかもしれないですね。
残念だと思います。

翻って松下政経塾。民主党の議員が多数ここの出身ではあるようですが本来の松下幸之助さんの遺志は生きていないような気がしてなりません・・・

matsuyama さんへ

matsuyama さん こんばんは

久々の「海戦」でした。この頃たるんだ話が多かったのでここでちょっと引き締めを図りましたw。
もし。このように艦首に超合金をはめ込み、艦体は磁性塗料?で塗りまくったものがあれば無敵だったのになあ・・としょうもないことを思う昨今です・・・
本物の戦争では駆逐艦は大変重要だったようで、常に最前線、そのせいか「消耗品」の用は扱いを受け「軍艦」としては扱われなかったようです。
そのよい証拠が軍艦には必ずある「菊の御紋」がないことです。潜水艦にもないですね(泣)。

松下村塾。
あの頃の志士のような、本当にまごごろ込めて命がけで日本を思って行動する人は出てこないものでしょうか?

見張り員さん、こんにちわ

久しぶりのコメントで、すみません。
コメント好きの私としては、もっとコメントを入れたいのですが、
文学小説というのは、どうコメント入れていいのか自信がありません。

私は学生時代から現代国語が弱くて、特に小説という分野に弱くて
どこにどのように絡んでいいのか要領をえません。すいみません。
身の回りの日常的な出来事とか書いていただくとコメントできるのですが、
それでは、このブログの意味がなくなるというか、
せっかくの見張り員さんのすばらしい持ち味が損なわれますよね。

このように内容とは無関係に勝手にコメントを入たりして失礼かとも思いましたが、
入れたくなったので入れさせてもらいました、すみません。
いつも私のボヤキを読んでいただき感謝しております。

テンポある展開にワクワクしています。
松蔭先生まで登場するなんてさすがです。
ひと昔前までは松下村塾の血を引いた政治家がまだ日本にいたのですが、
今は松下政経塾に取って代わってしましましたね。それでも幸之助さんは立派でしたが……、はてさてです。

駆逐艦と巡洋艦の海戦が始まったんですね。
艦首に超合金を仕組んだ駆逐艦の体当たりは凄まじいですね。
決死の覚悟でしょうが、当てられた敵艦はひとたまりもないですよ。

一昔前に一世を風靡した当り屋。
悪いこととはいえ、これだってある意味決死の覚悟ですよね。
当りどころが悪かったら大変なことになってるでしょう。

吉田松陰が塾頭をしたという松下村塾って、今の松下政経塾とは
関係ないんですね。なんかいつも混同しちゃいますよ。


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Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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