2017-09

「女だらけの戦艦大和」・それぞれの「秋」 - 2011.10.02 Sun

日本に秋が来た。そして内地・外地にいるそれぞれの「女だらけの陸海軍」の将兵たちにも、秋は来た――

 

<軍艦武蔵乗組員の秋>・横須賀に入港した『武蔵』は艦内外の補修や兵器の修理をしている。今回もすべて終わるまでには少し長い時間がかかりそうである。その間乗組員は交代で休暇を取る。

「武蔵」は横須賀海軍工廠のドック入りし、その身を休める。

その『武蔵』を振り返ってから休暇のため故郷に帰るのは小椋一等兵曹。

彼女の故郷は千葉県の某所。汽車で長い時間揺られて帰る故郷は一面田畑の農村である。小椋兵曹は、仲間と横須賀線に乗り込む。

途中仲間たちは降りて行く、「じゃ、よい休暇をね」「親御さんによろしく」等々声を掛け合いながら。

車窓の外にはすっかり秋めいた内地の景色が広がり、窓を開けた兵曹は思いっきり深呼吸した。懐かしい日本のにおいが彼女の鼻腔を刺激した。(ああ、これだ。これこそが日本のにおいだ)小椋兵曹は涙ぐんだ。

長い間外地にいて、日本の風景や匂いと離れていたせいかとても新鮮である。(やっぱり私は日本が好きだ。日本のすべてが好きだ)

途中乗り換えをしたりしながら、やっと兵曹は自分の故郷の駅に降り立った。今日は兵曹以外降りる人も少ない。兵曹は改札を抜ける。

遠くの森の木々は紅く黄色く色づき、目を細めてそれを見つめる兵曹の体を包むように風が吹き抜け、田んぼの稲のにおいを運んできた。そろそろ刈り入れも近いのだろう。遠くに見える田んぼが金色に光っている。

小椋兵曹はカバンを下におろすと両手をあげてうんと背伸びをしてまた深呼吸した。懐かしいふるさとのにおいが胸一杯に広がった。

ハアッ!と手をおろした時「ねえさ―ん」「お帰りなさーい」と声が。そちらを見やれば、小椋兵曹の弟妹たちが母親の手をひっぱってこちらに走ってくるところである。

「おお!只今あ!」小椋兵曹も声をあげて、かばんを掴むと皆のほうへ走ってゆく。その肩に、一枚の黄色い葉っぱが乗っかった・・・

 

<陸軍ビルマ派遣軍将兵の秋>・かの地には四季はない・・・が、そこに派遣されている陸軍将兵のみんなにもしっかり「内地の秋」は来た。

それは「慰問袋」の中の品物や、家族からの手紙である。

最近は海上輸送も敵が跳梁跋扈しなくなったので大変うまく行くようになり、外地の派遣軍の将兵のみんなは物資の不足に悩むことなく作戦を遂行できる。

そんな中慰問袋や手紙の類がたくさん届いて皆を喜ばせる。

「うわあ。これ見て、手作りの乾燥芋だよ、やったね!」とか「ああいいなあこれ!見て見て、もみじの押し花だ。もうこんなに真っ赤になったんだねえ」とか「ほう、朝夕はもう綿入れが必要だそうな。懐かしいな~」などと話に花が咲く。

「早いとここの戦争に勝って・・・内地に帰りたい」というのが皆の本音ではあるがおくびにも出さない。女々しい考えは作戦を誤らすもとだ、と皆は思っている。しかし強い意志で臨むならきっと遠くない将来、日本は勝利して凱旋出来よう。

(その日まで)陸軍将兵の決意は固い。

ひとりの兵がふと気がつけば、慰問袋や手紙で盛り上がる将兵たちを物珍しそうに見つめる現地の幼子たちがいる。

その一等兵は幼子たちを手招くと、慰問袋から飴を出して幼子たちに配った。子供の顔に笑みが浮かび、兵たちは故郷の妹や弟思い出し幼子を膝に入れてまるで兄弟か親子のよう。

それを見つめる部隊長の顔も嬉しげにほころんでいる。そしてその手には内地の家族からの秋の風景の絵手紙が・・・。

 

<北方守備隊隊員の秋>・ほとんどいつも寒い気候のアリューシャン方面を守備する海軍嬢たち。見張り所に立って、海を見つめる主に年若い一等水兵たち。

「今日は昨日より海が青いなあ」「そうね、そろそろ季節もまた移るね。寒くなるねえ、いつになれば内地に帰れるかね」などといいながら。

「おい、里心がついたか?情けないなあ海軍軍人が!もっとしゃんとせい!」と彼女たちを監督する上等兵曹が軽く叱る。

「はい!」と一等水兵たちは姿勢を正すが、上等兵曹は「もう内地は秋だな。秋祭りの頃だなあ。鎮守様から祭りばやしが聞こえてくるともう矢も盾もたまらんのさ。

それから近くの土手にススキが生えてさ、それを取って葉っぱで指切って・・・」と独り言のように言う。

それを聞きながら一等水兵たちもそれぞれの故郷の秋を思い出す。

(祭りの晩、隣村のあの人につけぶみされたっけ。あの人元気かなあ)

(月見の夜、団子を取りに大勢であちこち行ったっけな。そういえば村長の家の団子のでかかったことったら!)

そんなことを思う彼女たちに冷たい一陣の風が吹きつけた。鼻の奥がジーンとして、涙がにじんだ・・・。

 

<軍艦大和乗組員の秋>・トレーラー環礁は常夏であるから、秋の気配は全くない。

が、ほかと同じく慰問袋や手紙で秋を感じられる。見張兵曹は、最上甲板で岩井しん少尉と話をしている。

岩井少尉は「うちが嫁入りしたんも秋じゃった。抜けるような蒼い空じゃったなあ・・・その空の下、うちは人力車に乗ってあの家に行ったんじゃが・・・あの家の事よりうちには婚礼の日の空の青さや風の気持ちよさしか記憶に残っとらんね。うちの人力の後を親が乗った人力がついて、そのあとを親戚だの婚礼道具だのがついてきての。皆は『しんちゃん。玉の輿じゃ、えかったねえ』言うたがね。ええことなかった。あとはいつか話した通りじゃ」と言って見張兵曹を見て笑った。「でもうちは今一番幸せじゃ。兵曹のような可愛い「妹分」も出来たしね。『大和』にのっとるうちより若い子たちはみんな、うちの妹じゃと思うとるよ」

見張兵曹は嬉しそうに笑った。

その時海を渡ってこの上ないすがすがしい風が過ぎて行った。岩井少尉が、「あ。今のは内地の秋の風みとうじゃったね」と言った。

その通りだと、見張兵曹は思った。

聞こえるはずもないが、『大和』の主砲射撃指揮所の屋根でハシビロコウが羽を広げて、まるでふたりのはなしに同意するかのように頭を上下させた――
(モミジ画像拝借しました)
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● COMMENT ●

オスカーさんへ

オスカーさん こんばんは

このところ急に朝夕寒くなりましたね~。それなのに昼間は「ええっ!?」って暗い暑くなるというこういう過酷な気温に耐えきれない私ですww。
私に絵心があったら自分で挿絵を書いて記事にアップしたいのですがいかんせん・・・(泣)。

私が話を書くのは普段の日は仕事をすべて終えてからだから…午後9時以降ですね。休みの日は思いついたらPC開きます。
書き方ですが、ワードにいったん書いてからそれをブログの管理画面に張り付けるという方法です。FC2以前やっていたブログ会社(というのでしょうか)では、じかに書いていたら送信の時記事が消える「事故」が頻発したので以来この方法を取っています。
しかし私はまだPCの扱いが下手なので失敗も多々あります(爆)。
いつもありがとうございます、これからもがんばって書きますのでどうぞよろしく!!!

こんにちは。朝晩の冷え込みがツラい~昼間は暑いし~自分でいろいろ考えて対処しなさい!!と天の神様から課題をいただいているようですわ(笑)乙女たちのそれぞれの秋、綺麗な絵日記に描きたい気分です。山本さんの隠し芸も後世に残したいかも!!
お身体に気をつけて、またお話楽しみにしています。ところで、執筆はいつされているのですか?パソコンに直に打ち込みですか?紙とペンで書いた完成品を打ち直す方ですか?時間のある時に教えて下さいましm(__)m

まろゆーろさんへ

まろゆーろさん こんばんは!

秋というのはやはり特別ですね。暑くもなく寒くもない気候がもの思うにぴったりなんでしょうか。言ってみれば春の華やかさに対して寂びのような・・・。
今日の東京の月は冴え冴えとしてすごみさえ感じます。
昨夜から気温がぐっと下がっています。
もう、かいまき一枚では寝られませんねww。
今夜から厚めの布団を掛けて寝ます!
にい様も御身大切になさってくださいね、風邪がはやっているようですから・・・。

ジスさんへ

ジスさん こんばんは!
ご訪問&コメントをありがとうございます。

いきなりの涼しさ、というより寒さでちょっと参りました・・・今までこういうことはなかったのでちょっと変ですよね。

「日本の秋」は私たちのDNAの中にしっかり染みついていますよね、どんなに気候が変わってもこれだけは変えられないというものですね。
次代に継承したいものです。

私も秋は大好きです!
花粉の春ははな水垂らし、猛暑の夏はへとへと歩き、寒さの冬は動きもかなわず・・・ですものww。

ジスさん、どうぞ御身大切になさってくださいね。

それぞれの人たちがそれぞれの秋を思っているのですね。
四季の中で秋だけは郷愁を誘うというか、居てもたってもおれないような気持ちにさせるみたいな。やはり艶やかな春とは異なった、懐の深い日本の秋が私たちをワクワクさせてくれるのかもしれないですね。
なんだか急に寒くなってしまって。東京は如何でしょうか。風邪を引かないようくれぐれもお気を付け下さいね。

こんばんは。いつもありがとうございます。

秋ですね。10月に入り朝晩は本当に涼しくなりました。
お祭りやススキといったいわゆる「日本の秋」、コレは本当に子供の頃から我々の心に浸透したものであり一生忘れることはないでしょう。
暑かった夏が終りを告げ、朝晩涼しいこの季節、一年で最も好きな時期です。

・・・春は花粉症、夏は猛暑、冬は厳寒・・・ですからね。


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Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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