「女だらけの戦艦大和」・悩める柱島の司令長官3

山本長官は、息せき切って「女だらけの戦艦長門」の長官室に駆け込んだ――

 

そして誰も入ってこないようにドアに鍵をかけた。長官従兵が「山本長官?どうなさいましたか、何かありましたか!?」とドアの外から声をかけたが長官は「大丈夫なんでもない!いいからしばらく来ないで!」と叫んだ。

従兵の足音が遠ざかったのを確認すると山本長官はやおら靴下を脱いだ。

そして、大きな椅子をひっぱってくると部屋の真ん中あたりにそれを置いた。そしてそれに上がると・・・

天井にむき出している「梁」に手をかけて、体をぐううっと持ち上げた。このくらいは兵学校でさんざやったからどうってことはない。あのときよりも年齢を重ねた今でも。

そして、山本いそは大胆な行動に出た。足のつま先をなんと「梁」に引っ掛けたのだ。そしてゆっくり体を伸ばす。

山本いその体は、宙づり状態になっていた。(やった、やったぞ!見たか、これぞ私の新開発宴会芸、その名も「こうもり」だあ!)

きっとこの光景を従兵が見ていたら卒倒しただろう。そのくらい異様ですさまじい光景である。山本長官はやがて体を曲げると梁を掴み、椅子に足をつけて床に降りた。

はあ・・と息をついた。そして天井の梁を見上げると思わず会心の笑みを浮かべた。

(これをもっと素早く出来るようになればもうこっちのものだ。みんな驚くぞ、私が蝙蝠のように梁にぶら下がってるなんか、思いもよらんだろうからな)

 

その翌日から人知れず長官の「こうもり訓練」は続けられた。時には足が滑って頭ッから床に転落したり、梁に引っ掛けた足がつって今度は背中から転落したりと痛い目にもいっぱいあった。

しかし不屈の闘志に燃える山本いそはくじけない。

「柱島停泊艦艇合同慰安会」(でよかったかな?あまりに長い名称に書いている本人が分からなくなってきました・筆者注)まであと三日に迫った日、山本長官は何か物足りなさを感じた。

ひとり紅茶を喫しながら

「う―む。ただぶら下がるだけじゃあ、芸がない。なさすぎるね。もうちょい、あとひとひねり欲しいなあ」

と、『女だらけの大和』の野村副長見たいなものの言い方をして考え込む。もっと、みんなをあっと言わせるようなにかを追加したいものだ、この『こうもり』に。

そして山本長官はまたペンを取り出すとメモを取り始める・・・

ひげをそる・・・私は女だ、そるひげなどない。却下。

髪を結う・・・女ではあるが、髪は短い。結うほどない。却下。

絵を描く・・・うまい考えではあるがちょっと私には絵心がない、馬鹿にされるのは嫌だ。却下。

皿回し・・・ぶら下がったままでの皿回しは大変インパクトがあるが皿回しの練習をする時間がもはやなし。却下。

「は~。なかなかないもんだなあ」

山本長官は考えるのに疲れてしまい、寝室のベッドの上にごろんと横になった。目を閉じるとあっという間に眠りの中に引き込まれていった。

・・・夢の中で山本長官は、「女だらけの長門」の早川艦長と昆野副長に追いかけられている。二人はでっかい一升瓶を抱えて長官を追い回している。

「ちょーかーん!一杯いかがですかあ!」

「万福いっぱいいかがです~~!?」

二人は口々に叫びながら下戸の長官を追い回す。長官はもう必死で二人から逃げる、逃げる逃げる・・・。

しかしとうとう追いつめられた。

そこは『長門』艦内ではないようだ。長官がよくよく見ればそこは昔、子供の頃の長官がよく遊んだ河っぺリの土手。

だが土手というにはちょっと険しくはないだろうか、これ?

地面に腰を落として逃げようとする長官。しかしもう後がない。絶体絶命、飲めもしない酒を飲まされるのか、ああ、また放言しちゃったらどうしよう・・・。

長官が泣きそうになったその時いきなり昆野副長が「つ~かまえた~」と長官の両足を掴んだ。「うわあ、やめてよ昆野副長!」

長官が叫んだが二人はニコニコしているだけ。その時長官の腰のあたりの土がドドッ!と崩れ落ちた。とたんに上半身が崖にぶら下がる格好になった山本長官。

「ギャッ!」と叫んだ時、崖の上から早川艦長が最高のほほ笑みを浮かべ、一升瓶を持って立っているのが見えた。

「ちょ~かん!」と艦長。

「万福一杯いかがです~」と副長。

次の瞬間、逆さになった山本いその顔めがけて一升瓶の酒が注がれた――

 

「ブハア!!」

山本いそは苦しくなって思わず目が覚めた。

「夢だったかあ、いやな夢だ」そういいながらベッドから降りる。「全くなんで艦長と副長が私に酒を」といいかけて、山本いそはハタと気がついた。

「そうかあ、こうすれば面白いじゃないか!」

 

山本長官は、こっそり艦内を歩いて一升瓶を「ギンバイ」してきた。よく洗えば大丈夫、と一升瓶を服の上着の中に隠して長官室に。

そしてその瓶の中に水を一杯入れた。瓶を椅子の上に置くと自分は『こうもり』の体勢を取った。そして椅子の上の一升瓶に手を伸ばすと、その水を飲み始めたのだった。

連合艦隊司令長官が、「こうもり」をしながら一升瓶の水を飲む。

すごい光景だが(どうだ、宴会芸ってなぁこんなものよ)と当人は悦に入っている。

(「剣舞」と「こうもり」でみんなの心をわし掴みだあ!)

そう思ってニタリとした瞬間。

・・・長官は、また頭から落ちた・・・

 (次回に続きます)

    ・・・・・・・・・・・・・・・・・

戦艦長門)WIKIより。かつては『長門と陸奥は国の誇り』と言われて国民に知らないものはいなかった・・・というつわものです、よろしくね!
Japanese Battleship Nagato 1944.jpg



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Comments 4

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見張り員  
鍵コメさんへ

鍵コメさん こんばんは!

素敵なお姉さんにぜひ!くれぐれもよろしくお伝えくださいませ!
素晴らしい姉上様です!これからもずーーーっとそのままで置いてくださいませ~~!

モミチャン、今日はサツマイモを混ぜた晩御飯をモリモリ行ってますww。
うちのは「赤柴」ではありますが別名「イモ柴」とも呼びますww。

いつもありがとうございます!

2011/09/30 (Fri) 20:45 | EDIT | 見張り員さん">REPLY |   
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見張り員  
ジスさんへ

ジスさん こんばんは!

コウモリって可愛いのかキモいのか?よくわかんないですね。というか種類によっては「かわいいじゃんこいつ!」ってのもいますが中には「邪悪」っぽい顔つきのやつもいて・・・(汗)。
ええ!?東山動物園にはそのようなファンタステイックな場所があるのですか!
一度行って、コウモリたちをみたいですね~。

頭から落ちるのはホント痛いですよね。私も、昔鉄棒してて頭っからおっこって・・・死ぬかと思いましたww。

涼しくなりました、ちょっとは楽になるかなあ?
でも御身大切にね。

2011/09/30 (Fri) 20:41 | EDIT | 見張り員さん">REPLY |   
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2011/09/30 (Fri) 07:49 | EDIT | REPLY |   
ジス  

こんばんは。いつもありがとうございます。

コウモリですか!リアルな野生のやつは数えるほどしか見たことがありませんがわりと不気味でした。
名古屋の東山動物園には暗い建物の中に何匹も飼っているコーナーがあり、なかなか見応えがあります。

頭から落ちるって・・・・痛そうですね。どうかご無事で、とお祈りさせてください。

2011/09/29 (Thu) 23:54 | EDIT | REPLY |   

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女だらけの「帝国海軍」、大和や武蔵、飛龍や赤城そのほかの艦艇や飛行隊・潜水艦で生きる女の子たちの日常生活を描いています。どんな毎日があるのか、ちょっと覗いてみませんか?
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ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)