「女だらけの戦艦大和」・悩める柱島の司令長官2

「女だらけの戦艦長門」では、山本連合艦隊司令長官が呻吟していた――

 

(ああ、あと弐週間だと言うのになにも思いつかないよ・・どうしたらいいんだ。・・・待てよこういうときは心を落ち着けて。まずみんなが他にどういうことをしていたか思い出して)

山本長官は戦闘中にも見せたことがない厳しい顔つきである。今まで兵学校の時の仲間や、艦隊の仲間たちがどんな芸を披露していたかをゆっくり思い出す。

吉田善子・・・確かまんじゅうの早食いだったっけ。ちょっと私には無理。却下。

島田繁代・・・手品だったなあ。でもちょっとインチキってか、子供だましすぎてすぐばれるし。面白みに欠けるね、却下。

堀悌子・・・私の大親友だから言うわけじゃないけど、詩吟の名手。うますぎ。彼女のマネをしても多分笑われるし、「長官、御経ですかあ!」と言われるが落ち。却下。

米内光江・・・宴会芸に置いて彼女の右に出る物は無し。もはや玄人の域。マネは不可能。却下。

山口たも・・・テーブルの上に並べた抜き身の日本刀の刃の上に素足で立つことが出来る。しかし大変危ない。私には無理。却下。

 

と、そこでふっと山本長官はひらめくものがあった。

(日本刀。かたな。剣。剣と言えば・・・そうだ、剣舞!これはまだ誰もやってないし!)

「決めた!剣舞だ!」

長官は思わず大声で言って、あわてて口を両手でふさいだ。聞かれちゃあならんぞ、大事な秘密だから。

剣舞と言えばやはり「頼山陽」のあの「鞭声粛粛 夜河を渡る・・・」というあれだろう。


   鞭声粛々 夜 河を渡る
   暁に見る 千兵の大牙を擁するを
   遺恨十年 一剣を磨き
   流星光底 長蛇を逸す

これだこれだ、とうれしくなった長官はさっそく練習を始めようとしたが(待てよ、これはある意味ありふれてる。もしかしたら他に演じる奴がいないとも限らないぞ。他にももう一つくらい、絶対誰もしないってものを見つけないといけないな!)と思った。もしかしたら米内さんとか山口さんが来ないとも限らないし、彼女たちが剣舞をしない保証は全くない。

「ああ、困った困った」

そういいながら長官は長門の艦橋へと上がって行った――

 

戦闘艦橋に上がった長官に、艦長の早川幹代大佐の微笑みと敬礼で迎えられた。早川艦長は、「山本長官、今日もいい天気でありますね」と話しかけ、長官も「ああそうだね。ずいぶん秋らしくなってきたじゃない?あの辺の島々も秋色になって、日本の四季はいいねえ」と言って二人はしばらく瀬戸内の秋に見入った。

「そういえば」と早川艦長が口を開いた。

「もうすぐ『呉停泊艦艇合同慰安会』ですね。飲み会というと、何かしら宴会芸をしなくちゃなりませんからちょっと私はドキドキします。みなさん芸達者な方ばかりですから、気が抜けませんよ」

そう言って少し笑った。山本長官はそれを聞くと、ちょっとほっとした。(ああ、長門の艦長でもこんなふうに思うんだ。まあ、私とは立場も違うが思いは同じだよね)

長官は艦長にうなずいてやると、艦橋の窓から外を見た。

「あ、早川艦長、あれはなんでしょうね?」

不意に長官の声が緊張感を帯びた様子になり、何事かと艦長は窓に駆け寄った。

「ほらあれ。その窓の外だよ、なにかがぶらさがってるじゃない?なんだろうか」

長官は早川艦長にそれを指さして教えた。長官が指さす先、艦橋の窓の外の軒部分に何かが下がっている。

「む。・・・ああ、長官。あれはこうもりのようですね。どこかから飛んで来て動けなくなってここで夜を待つつもりなんでしょう」

早川艦長は言った。そして思った、良かった敵機とかじゃなくって。て言うか帝国の上空に敵機が飛来するなんてありえないけどね。

「ほう。こうもりだったか・・・」

長官はその蝙蝠をじっと見つめた。狭い軒先につま先を器用に引っ掛けてぶら下がっている。その姿は健気でもあるし、妙に可愛くもある。

長官は子供の頃夏の夕暮れ、河の上を虫を捕食しようと飛び回る蝙蝠を見たのを思い出した。だがあのときは不気味な印象しかなかった。

(けなげとか、可愛いなんぞと思ったことはなかったがね)

そう思って踵を返したその時、長官の頭に電撃のように走ったものがあった。

「そうだ、これだよ!!」

山本長官は大声で叫ぶと戦闘艦橋を飛び出して行った。早川艦長はいったい何事かと仰天してその場に立ち尽くしてしまった。

長官はそのまま長官室に走り込んだ。

そしてハアハアと息を切らして・・・

 (次回に続きます)
   ・・・・・・・・・・・・・・・    

 

蝙蝠です、よろしくね!(wikiより)

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Secre

まろゆーろさんへ

まろゆーろさん こんばんは

長官のひらめき・・・変なことじゃなければいいのですがw。

この「鞭声粛々」は結構皆さん吟じる方が多いんですね。
しかし・・・
鞭声ちゅくちゅく・・・(爆)!!
笑っちゃいますね、でも御本人が真面目に吟じてる時笑うのもちょっと・・・ですね。
私がその場にいたらきっと下を向いてしのび笑っていますww。

長官は何に閃いたのでしょう。
またまた乞うご期待ですね。
昔々の宴席でのことですが、恰幅の良い紳士が
「それではひとつ」と言って吟じたのがこの
「鞭声粛々……」でした。
私は初めて聞いた詩吟なるものに驚き、さらにこの紳士氏。
粛々と発音できず、「鞭声ちゅくちゅくぅぅ、夜……」と。
そう言えばこの人、宿利(しゅくり)さんと言えず「ちゅくりさん」と言っていました。
面白い癖に周りの人は笑っていました。
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Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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