「女だらけの戦艦大和」・なやめる柱島の司令長官1

「女だらけの戦艦大和」でハシビロコウが松岡分隊長と一緒に御縄にされていた頃、広島・柱島では山本いそ連合艦隊司令長官が――

 

広島は秋めいてきている。柱島にも秋の気配が近づいている。

旗艦・長門はその身を穏やかな海面に浮かべている。・・・が、その長官室でひとり頭を抱えているのは誰あろう、泣く子も黙る連合艦隊司令長官の山本いそ大将である。

山本大将はこのところあまり眠れない。食欲もそれほどない。従兵や幕僚などが心配してあれこれと食欲が進むように工夫をしているがそれでも以前のようにはいかない。

「どうされたんだろうか、長官は?」

幕僚たちは首をかしげる。

長門に立ち寄った小澤治三(はるみ、と読んでね!じさ、じゃないよww)中将なども「どうされました、山本さん。お顔の色が優れませんね。

・・・ほら、もうすぐ『柱島停泊艦艇合同慰安会』も近いですからね。元気を出してくださいよ?

このところ急に涼しくなりましたからね、そのせいかもしれませんね。まあ、当日を楽しみにしていますよ」と励ましてくれるのだが。

山本長官は(その『柱島なんとか慰安会』が問題なんですよ、私には)と思っている。小澤中将の言う『柱島停泊艦艇合同慰安会』(長い!)とは、今回初めての企画で、柱島に停泊中の艦艇すべてで乗組員の慰労会として計画されたものでそれぞれの艦で無礼講の宴をしようという物。

そして旗艦・長門では各艦艇の艦長・副長クラスから連合艦隊のトップクラスまでが集うことになっている。

「思う存分飲めるなあ、広島の銘酒を堪能しちゃおっと!」

と今から楽しみにしている将官もいる。

だが、山本長官の顔はすぐれない。

なぜなら、彼女――山本いそ――は「下戸」であるからだ。山本長官は(ああ、私がちょっとでも飲めたらよかったのに。この私ともあろう者がちょっとも飲めないなんて、恥だ・・・。だからと思っていつだったか口にしたら)

あっという間に顔を真っ赤にして酔ってしまい、しかも気が大きくなったのか放言し放題。それには居合わせた伊藤整子軍令部次長や福留繁代軍令部第一課長もあっけにとられてしまい、あとで実に気まずい思いをしてしまったのだった。

(だから)と山本長官の悩み・悔しさは続く、(あの後の最初のハワイ奇襲だって、『へえ!山本長官また酔ってるんじゃないんですかあ?ちゃんと素面の時に話してくださいよね~!』なんて伊藤の野郎と福留の野郎に馬鹿にされて!私が抗議したら『ああ、素面でしたか。そうだ山本さんはばくちが好きですからそれかあ!』なんて更に馬鹿にしやがってあの女あ!・・・だから飲み会って嫌なんだよなあ。飲めない人間にとっちゃ、地獄だよ・・・)

山本長官は、苦り切って頭をごしごし掻きながら長官室のラジオに手をかけ、なにげなくスイッチを入れた。

チューニングを合していると、海軍の国内外向けの放送が入った。軍艦行進曲が勇壮に演奏された後、アナウンサー(これも海軍の美声の持ち主だが)が

「ではここで外地にいらっしゃる将兵の皆さんからのリクエストの多い『艦艇ーズ』の歌をお届けいたします」

といい、あの『艦艇―ズ』(女だらけの大和の梨賀艦長・野村副長・森上参謀長の三人のグループ)の歌が流れだした。

「おお!」と山本長官は唸ると、音量を上げた。素敵なハーモニーが広がる・・・

「いいなあ、こういう特技のある人たちはさ」と山本長官はつぶやいたが、次の瞬間ハタと手を打って叫んだ。

「そうだ!私も酒の席で何か披露できるものを探せばいいんだ!」

そうだ、世に言う「宴会芸」だ。それを何か身につければ座が保てる。酒なんか飲めなくたって、宴会芸をしてウケたらいいんだ。皆が笑って、その場が和めばいいじゃないか。

ならば、と山本長官は机の前に座りこむと思いつく限りの「宴会芸」を紙に書き始める。

 

<腹芸>・だめ。『大和』の梨賀幸子大佐の十八番。しかも超下品。連合艦隊長官としての品位にかかわる。却下。

<どじょうすくい>・いまいち。実は『武蔵』の猪田敏代大佐のお家芸と聞いている。本人は死んでも言わない・見せないだけ。私には出来ない。却下。

<野球拳>・海軍の若い士官嬢たちの十八番と言われる下品な芸。いや、芸のうちに入らないと言うか入れたくない。却下。

<投扇興>・優雅ではあるがこれは立派な対戦ゲームだった・・・。よく考えたら私ってノーコンなんだよね。負けたら元も子もないじゃないか。却下。

 

「ああ。どうしたらいいんだろう」

山本長官の苦悩はまだ、始まったばかりである。そして・・・『柱島停泊艦艇合同慰安会」まであと、二週間!!

 (次回に続きます)

     ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

山本五十六大将(WIKIより)

Isoroku Yamamoto.jpg

伊藤整一中将(WIKIより)
Ito Seiichi.jpg

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Secre

渓流の民さんへ

渓流の民さん こんばんは!

本物の山本大将が、げ、下戸だった!!
ーーーと今なら大スクープ?になりましょうかww??

私も飲めませんから宴会は嫌いです。カラオケは歌いますが、軍歌とかかつての歌謡曲ばっかりで場がしらけます。
本当にいやです。
会社を辞めて自営業になってからそういう機会がないのがうれしいです。

う~ん そうでしたか!
下戸でしたか! そうは見えませんが!
私は飲みますが、量が少ないですし、カラオケも苦手です?
宴会芸も、まるでダメです!
そうゆう、飲み会が近ずくと、悩みます?
気持ちが、よくわかります!

ジスさんへ

ジスさん おはようございます

お酒が強ければ楽しい飲み会もそうでない人間にとっては苦痛以外の何物でもないですね(涙)。私も昔からそうで、皆がお酒で盛り上がるなか、一人ウーロン茶とかジュースでちんまりといました。さみしいですよね。
本当にこればかりは鍛えるわけにもいかないから、耐えるのみ・・・ですね・・タメイキ。

勲章、すごい数ですよね~。結構な重さじゃないかと私も思います!東条英機さんもたくさんくっつけておられますが、あれはどのくらい重いのか?
実際につけたい私ですw。

まろゆーろさんへ

まろゆーろさん おはようございます

出ました山本元帥(って今はまだ大将だったww)!やはり彼、いや、彼女が出てこないと話になりませんぜ!!

しかし実際の彼は下戸だったとは信じられないですね。新潟出身でコメどころ・・・とくれば酒もうまい、とくれば酒はイケル方・・・という私の安易な想像は打ち砕かれました。
というわけで「女だらけの~」の山本いそさんも下戸ですw。

「女だらけの帝国海軍」連合艦隊司令長官は、どんな行動に出ますか、ご期待を!!

オスカーさんへ

オスカーさん おはようございます

世界の三船!私はアメリカ映画・ミッドウエー(これって日本がぼろくそに負けるから大嫌いなんですが)でも山本五十六の役でかっこよかったですね~。
あと五十六さんと言うと、「連合艦隊」の小林桂樹さんが好きでしたね。今年の暮れには役所幸次さんが演じるとか!見にゆかねばですww。

すべての軍人さんから「うーん、寝てみたい」と言われたら素晴らしいですね~(懐かしいなあこのCM!)。みんなで取りっことか(爆)。

さあ長官の芸はいかなることに・・・ご期待を!

matsuyama さんへ

matsuyama さん おはようございます

本物の山本元帥も下戸だったらしいですね、見た目は「いけそう!」ですが人とは見かけによらぬものです。

私も飲めないのでいわゆる飲み会は苦手でしたし、今も苦手です(汗)。そう言う時座が保てる芸があればいいんですが・・・私も今からでも頑張りましょうかww。

サア、長官。どう出るか・・・!?

こんばんは。いつもありがとうございます。

お酒の飲めない方にとっての宴会は苦痛ですね。私も決して強い方ではないのでよくわかります。こればかりは鍛えればってものではなく体の中のアルコール分解能力という先天的なものなんで・・・仕方ないですね。

山本長官・・・すっごい勲章の量ですね。重たいんじゃなかろうか?

おぉ。舞台が変わって大物の登場ですね。
はなから悩める長官のお姿とは「何やろか」と案じていたら下戸だったとは。
私たちの知っている山元五十六像とは異なったイソさんのこれからの活躍が楽しみです。

こんにちは。山本長官ときくといつも三船敏郎がうかんでしまいます(笑)「男の修行」ならぬ「女の修行」、この難問を乗り越えて世界のミフネに…いえ世界のヤマモトになっていただいて、全ての軍人さんから「うーん、寝てみたい…」と言われて欲しいです!!←三船敏郎のコマーシャルを知らない人にはわからないですね(--;)
続きが楽しみ!!

そうか、山本長官は下戸だったんですね。
下戸の人良く見かけますけど、辛いでしょうね。
宴会が終わるまでの時間、苦痛なんですよね。
そんな時、隠し芸を持っていると場が持ちますし、
自ら宴会を楽しめますよね。
さ~、長官の出しものは何かな!
プロフィール

見張り員

Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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