「女だらけの戦艦大和」・飛来せしもの3

「勝負だ、鳥くん!」松岡中尉は愛用のラケットを持つと、灰色の鳥のいるトップに上がって行った――

 

「分隊長、いけない!危ないです、やめてください!」麻生分隊士は必死になって呼び掛けた。見張兵曹や石場兵曹も、「分隊長、降りてください!」と口々に叫ぶが頭に血が上ったか、松岡中尉は聞き入れないでトップに上がった。

そして灰色の鳥と対峙する格好になった。

灰色の鳥は相変わらず微動だにしないで風に吹かれている。その灰色の頭の羽がふわりふわりと風に浮く。

その金色の目は遠くを見つめている。

松岡中尉は、ふふんと鼻を鳴らした。そして手にしたラケットで灰色の鳥をビシッと指すと、

「鳥くんー!さあここで私と真っ向勝負だ。いいかい鳥くん、この『大和』は君の居場所じゃあないぞ。まあ百歩譲って『大和(ここ)』にいてもいいとしてもこのトップだけは駄目だ!このトップは私の場所だからね。・・・さあ、わかったら速やかに退くがいい。どうしても退かぬと言うなら」

そしてラケットを最上段に構えた。

麻生分隊士が、

「松岡中尉、分隊長―!殺しちゃいけませんよ、殺生はいけません。お願いですー!」

と叫ぶ。その声に分隊長は

「麻生さ―ん、大丈夫大丈夫。殺したりはしないよ。追い出すか生け捕りにしてどこかしかるべき場所に送ろうと思ってるだけだからね。それにはこいつをどうにかしないといけないから。でも殺したりはしないから心配しないでー!」

と叫んでラケットを振り回した。

狭いトップ、しかも申し訳程度の鉄製の鎖の囲いしか付いていないところで、今、松岡中尉と灰色の鳥の勝負が始まろうとしていた。

松岡中尉は(こいつはおとなしそうだが急に羽を広げたりして危険なやつだからね、一気に先手を取って羽交い絞めしてやればもう、こっちのものだからね)と思っている。そして注意深く灰色の鳥の挙動に注視しつつ<その時>を待つ。

一方、灰色の鳥は動かないで遠い目のまま風に吹かれているばかりである。

それを固唾をのんで見守る麻生分隊士・見張兵曹・石場兵曹、そして主砲射撃指揮所の面々。握った拳にじっとりと汗がにじむ。

松岡中尉は、じりッ、と相手ににじり寄った。しかし相手は動こうとしない。

「もらった!」

と松岡中尉は叫ぶと、ラケットを振りかざし飛びかかった。ラケットで鳥を抑え込もうとしたのだ。

が!

松岡中尉が鳥を抑え込むより早く、灰色の鳥はそのでっかいくちばしで分隊長の大事なラケットを挟みこんでいた。

なんという早業であろうか。今の今までちっとも動かず、遠い目をして分隊長なぞ眼中になかったはずなのに。

灰色の鳥のその大きなくちばしは、ラケットをしっかりと挟んで分隊長は焦りまくった。どうにか引き離そうとブンブン腕を振り回して

「こらっ!鳥くん放さないか!これはね、私の大事な大事なラケットなんだからね・・・傷がついたら困るんだよ!・・・放せ、放せったら!この鳥野郎が!焼き鳥にするぞ貴様あ!」

と最後のほうはずいぶん口汚く罵っている。

灰色の鳥の金の目がゆっくり動いて松岡中尉を見た。松岡中尉はドキッとした(こいつ、笑ってやがる!)。

灰色の鳥は笑いを含んだ目で分隊長を見て(取れるものなら取ってみな?)と言っているようだ。ラケットを挟むくちばしの力が強くなったようだ。ギギギ・・と、挟まれた柄の部分がきしむ音がした。

松岡中尉は「鳥くん!君なかなかいいくちばしをしてるじゃないか?だがねえ、私のこのラケットは普通じゃないんだよ?ガットは敵弾を跳ね返すし、フレームでは敵兵をたたき殺すことだってできるんだよ?怖いだろう?・・・さ、怪我しないうちに私の言うことを聞くんだ、いいね」と言ってラケットをもぎ取ろうとしている。

それを下で聞いていた見張兵曹は「え!?あのラケットで敵兵を叩き殺せるんですか?怖い」と真っ青になってしまった。麻生分隊士も「えらいことじゃのう、これからは戦闘中でもむやみに近づかんようにみんなに言わんといけんなあ」と真面目な顔で言う。石場兵曹だけは「張ったりじゃろ?あげえなもので人なぞ殺せんよ・・」とつぶやいてはいるが、しかし気味悪げな表情は隠せない。

皆が怖げな顔で見上げた時・・・

業を煮やした分隊長はついにラケットから手を放した。下の皆が「おおっ!?」とどよめいた。次の瞬間。

「それならこうだあ!熱くなれよーー!」

松岡中尉はいきなり灰色の鳥に抱きついた。羽を広げられないように後ろから羽交い絞めしている。さすがに灰色の鳥は抵抗を始めた。

「動くなって、おとなしくして下に降りるぞ!」分隊長は鳥の抵抗を抑え込むと、正面から羽交い絞めに。床に倒れ込む。

そして下の連中に向かい、「おーいみんなあ!こいつを縛れるようなロープを持ってきてくれないかぁ!」と叫んだ。

石場兵曹が「伝令所にありましたよ!」と走ってゆきすぐにロープを持ってきた。松岡中尉は「早く、それをここに持ってきてくれないかー!」と叫んで、麻生分隊士がロープを持って上がってゆく。麻生分隊士も初めての『大和』の本当の頂点。分隊士はめまいがするのをからくもこらえ、ロープを構えて鳥とともに床に倒れている分隊長のそばに立った。

「よーし、麻生さん。私がこうしている間にこいつに縄をかけてくれないかな?」

松岡中尉はそう言って分隊士のほうを見た。はい、と分隊士が返事をしたその時。

「ぎゃああーー!」

と時ならぬ大声が響いた。そして「分隊長―、しっかりしてくださいー!」という麻生分隊士の悲鳴。

すわ、一大事!と皆が一斉に狭いトップに殺到した。そこで皆が見たものは――!

 (次回に続きます)

ハッシーです、よろしくね!(画像はWIKIより)

ハシビロコウ



にほんブログ村 小説ブログ 百合小説へ
にほんブログ村









関連記事

Comments 6

見張り員">
見張り員  
まろゆーろさんへ

まろゆーろさん こんばんは!

お待たせしました、解決編が書きあがりました。

この写真のハッシーはホント、不敵な面構えですね~にくったらしいくらいですww。でも本当は謎っぽくって不思議な鳥ですよ~。

解決編は陳腐な内容になりましたが・・・ご容赦を!!!

2011/09/24 (Sat) 23:30 | EDIT | 見張り員さん">REPLY |   
まろゆーろ  

ジリジリとするくらい次が待ち遠しい!!
それに最後のあの鳥メの顔の不敵なことったら。
何やら物語とこの写真の鳥メがだぶってきたような錯覚に陥り始めました。
早く、早く続きが欲しい!!

2011/09/24 (Sat) 23:10 | EDIT | REPLY |   
見張り員">
見張り員  
オスカーさんへ

オスカーさん こんばんは!

宝塚の方の愛称だとは知りませんでしたが、なんで「ハッシー」なのかなあ??
でも可愛いですよね、ハッシーって。
しかしこの鳥は可愛い・・・とはいいがたい・・・(苦笑)。

さあ、松岡分隊長は一体どうなるのでしょうか。ご期待ください!

2011/09/24 (Sat) 20:59 | EDIT | 見張り員さん">REPLY |   
見張り員">
見張り員  
ジスさんへ

ジスさん こんばんは!

すごいでしょうこの鳥!!私も最初、本物を見た時「これはいきものか!?」と我が目を疑いました。ほんとにウルトラQとかに出てきそうですよねww。

さあ、松岡分隊長以下、どうするのでしょうか???

とても秋らしくなりました、ほっとしたのがいけなかったか風邪をひいて咳が止まらず難儀ですw。ジスさんも御身大切になさってね。

2011/09/24 (Sat) 20:53 | EDIT | 見張り員さん">REPLY |   
オスカー  

こんにちは。ハッシー!!どこかで聞いたような~と思ったら宝塚の男役さんで葛城七穂さんていたのですが(かなり前に退団されました)その方の愛称でした!!ヅカファンの頃は鳥に縁がなかったので気にもしませんでしたが(笑)
「もっと熱くなれよ~!!」松岡さまやまわりの皆さまの顔が熱くなるような事態になっているのか!?なんなんだろ~ワクワク!!

2011/09/24 (Sat) 12:30 | EDIT | REPLY |   
ジス  

こんばんは。いつもありがとうございます。

す・・・すっごい形相した鳥ですね!
まるでウルトラQに巨大化して出てきそうなヤツですね。でも殺生はいけませんよね・・・続き気になります!

朝晩すっかり涼しくなりましたね。風邪などひかれませんよう。

2011/09/24 (Sat) 00:02 | EDIT | REPLY |   

Leave a reply

About this site
女だらけの「帝国海軍」、大和や武蔵、飛龍や赤城そのほかの艦艇や飛行隊・潜水艦で生きる女の子たちの日常生活を描いています。どんな毎日があるのか、ちょっと覗いてみませんか?
About me
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)