2017-10

「女だらけの戦艦大和」・飛来せしもの2 - 2011.09.22 Thu

「な、なんだあれは・・・!」麻生分隊士の声が響く――

 

その声に「英霊の座」にいた見張兵曹や小泉兵曹たちは一斉に立ち上がって受け持ちの双眼鏡についたり、上を見上げる。

それは・・・

「でかい。でかいなあ、灰色の鳥じゃないか!」

そう、上空を旋回しながらこちらをうかがっている大きな鳥、それは全身灰色の鳥であった。その鳥が、いきなり急降下して来て松岡分隊長のお気に入りの場所である「トップのトップ」、主砲射撃指揮所の屋根の上にとまった。

「なんですかあ、ありゃ?」

亀井一水が息を飲む。酒井上水も、石場兵曹もそいつを見つめたまま動けない。「あの鳥、目に表情がない」と難しいことを酒井上水は言った。鳥の目はどれもそうだが何を考えているかわからない目をしているがこの鳥はもっと怖い。

「くちばしも、でっかいですねえ」

見張兵曹が双眼鏡から離れて、麻生分隊士のそばに立って言った。

麻生分隊士も「ああ、見たことねえなあ。なんて言う鳥じゃろう」とそいつを見つめたまま言う。参謀長が、「初めてだな、この手の鳥は。・・・誰か鳥に詳しいものはおらんか?」とあたりを見回して言ったがあいにくここには「鳥」に詳しいものはいないようだ。

「いないか。あとで他艦の連中に聞いてみよう」参謀長は言ってその鳥を追い払おうとした。が、その鳥はなぜか微動だにしない。

「疲れているんじゃないのか?どこかから長旅して来たんじゃないのかね?参謀長、少しの間ほうっておいてやったらいい。・・・松岡分隊長、訓練を終了しよう」

そう、梨賀艦長が言い松岡分隊長は「はいっ!ではこれにて散開」と宣言し皆はそれぞれに散ってゆく。

松岡分隊長は、灰色の鳥を見上げてそれにビシッと指さしながら大声で「やあ、灰色の鳥君!そこはねえ私の場所なんだよ。だから速やかにそこをどいてほしいんだ。頼むよー!」と叫んだ。

しかし。

灰色の鳥はその金色の目を動かすことなく微動だにせずその場に立っている。松岡分隊長はしばらくそれを見ていたが、「頼むよ。鳥くん」というと下に降りて行った。

 

森上参謀長はトラックに停泊中の各艦艇に「誰か鳥に詳しいものはおらんか?」と発光信号などで訊ねてみた。

すると、軽巡洋艦・陣痛の士官の中に鳥に詳しい人がいると言うのがわかり参謀長は「悪いが『大和』に来てその鳥を見てほしい」と『大和』から迎えのランチを出してその士官を迎えた。

やがてその士官――谷原中尉・軽巡陣痛の通信士――が「大和」にやってきた。谷原中尉は森上参謀長直々の「お召し」に驚きながらも、案内されて防空指揮所に上がった。

谷原中尉は始めて上がる『大和』の艦橋の高さに驚きつつも、「あれなんだが・・」と参謀長が指さす先を見た。

そこには参謀長がさっき見たのと全く同じ格好で「あれ」がいた。

谷原中尉はそれを見て、「ああ!」と声を上げた。参謀長が彼女の顔を見た、谷原中尉は森上参謀長を見ると、しかし首をひねりながら「あれは参謀長、ハシビロコウという鳥です。しかし・・本来アフリカのいきもので淡水湖に生息している生き物なんで、ここらにいると言うのがちょっと私には理解が出来ないですね。・・・もしかしたらどこかで飼われていたのが逃げたかしたんじゃないかとも思われますが。まあこいつはおとなしいですからね、このままでも大丈夫ですよ」と言った。

参謀長は「ハシ・・ビロコウね。ふ~ん、おかしな生き物がいればいたもんだね」といい谷原中尉に「呼びたてて悪かったね、こちらでお茶でも」と艦長室に誘った。

 

参謀長が谷原中尉と、梨賀艦長・野村副長を誘って艦長室で紅茶を喫している時、見張兵曹が石場兵曹・麻生分隊士とともに指揮所に上がってきた。

「いるじゃろうか、あの珍奇な鳥は」

石場兵曹はそういいながら指揮所に入り、上を見上げると・・・

「うわあ、まだおるで。あの鳥!」

石場兵曹の声に見張兵曹と麻生分隊士が見上げる。珍奇な鳥はトップのトップにたたずんでいる。まるで自分の昔からのすみかのようである。見張兵曹は「分隊士。あの鳥、私たちをつつきに来たりせんでしょうか?」と心配そうに言った。分隊士は「うーん、まあおとなしげな感じはするがのう。今『陣痛』の士官が来て艦長たちとあの鳥の話をしとるそうじゃから、そのうち詳しいことが分かるじゃろ」と言った。

石場兵曹は黙って見つめている。

そこに、「やあ!みんな、熱くなってるかあ!」と松岡分隊長が再び登場。皆が敬礼しそれに返礼した分隊長は、トップを見た。

「なんだあ、鳥くん!まだそこにいるのかい?言っただろうそこは私の場所だよって、さあ速やかにどいてくれたまえ!」

分隊長は灰色の鳥に叫んだ。だが鳥は相変わらず微動だにしない。

松岡分隊長は、ウーンと唸って腕組みをするとしばらく考え込んでいた。そして唐突に「よしっ!」と叫ぶなり腕組みを解くと「では強制排除だ。私の邪魔をする者は誰だって許さんのだ」というと走り去った。

「あ、分隊長!」と麻生分隊士が言ったときには、神業のように分隊長の姿はトップにいて、鳥の間後ろに立っていた。

「あぶない分隊長!」

「降りてください、危険ですっ!!」

分隊士や下士官の叫びも聞こえないのか、松岡分隊長は鳥の後ろに仁王立ちになっている。分隊長は「いいかい鳥くん。私を怒らすと怖いと言うのを教えてあげようじゃないか」というと鳥の肩のあたりをガシッ!と掴んだ。かたずをのんで見守る三人に、「どうだい、こんなもの所詮は鳥じゃないか。私にかなうわけがないよ。サア、こいつを下に持っていくから工作科に大きな鳥かごを」作ってもらおう、といいたかった分隊長の言葉が途切れた。

バサッ!

とその鳥は力強く羽を広げた。大きな羽、さしわたし二メートルはありそうである。いきなりのことで分隊長は不意をつかれてその場から転げ落ちてしまった。

「ぶ、分隊長―っ!」と、麻生分隊士・見張兵曹・石場兵曹は真っ青になって叫ぶと指揮所の後ろに走って行った。

分隊長はトップからは落ちたが、かろうじて主砲測的所の屋根のヘリで止まっていた。麻生少尉たちの大声に何事かと顔を出した主砲指揮所や測的所の要員が顔を出し「何?一体何事よ?」とこれも騒ぎ出す。分隊長は大丈夫大丈夫といいながら立ち上がると、トップの鳥を指さしてにらんだ。

そして「いい根性じゃないか鳥くん。私と戦争する気満々だね。受けて立とうじゃないか、いいか戦争という物はだな」とまくし立てた。

「分隊長!」

麻生分隊士たちの悲鳴に似た声がその場に響き、主砲指揮所の兵たちは興味津津で見物を決め込んだようだ。

次の瞬間、松岡分隊長は大事なラケットを構えると、

「勝負だ、鳥くん!!」

というと一気にトップに向かってラッタルを駆け上った――!

 (次回に続きます)

 

ハッシーことハシビロコウ。コウノトリの仲間らしいです。アフリカのウガンダ、ビクトリア湖に住んでるようです。上野動物園や千葉市動物公園にいます。(写真WIKIより)

 

軽巡・神通。(「女だらけの~」の軽巡・『陣痛』のモデルにさせていただいた艦です。(写真WIKIより)

ファイル:IJN cruiser Jintsu on trial run in 1939.jpg

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● COMMENT ●

渓流の民様

渓流の民さん こんばんは!

さぎ。
昔は東京と千葉を結ぶ総武線沿線でよく白鷺を見かけたものですがここ20年で見なくなりさみしい限りです。ごくごくたまに、市ヶ谷あたりのお堀にいる、と聞きますが・・・。

鳥のでっかいのは怖いですね、鋭いくちばしでつつかれたらと思うとおっかなくって。これは子供のころTVでヒッチコックの「鳥」を見てからのトラウマです。

名前はわかりませんが、たぶん「さぎ」だと思うのですが、大きな羽を広げていた鳥を観ました!
勿論、川の奥地です!今時分の季節ですが!
最近は見ませんが!
迫力があり、攻撃されたら堪りません?
怖かった?

かなやのぶ太 さんへ

かなやのぶ太さん こんばんは!

「陣痛」なんだか乗ったら最後苦しみそうな名前でありますっ(爆)。本来は「軽巡洋艦・神通」ですw。軽巡は主に「河川」の名前をつけられています。
いつか軍艦の名前について書いてみようと思います!

分隊長は「鳥」相手に何をしてるんだか・・?
本当に「暇」でのどかな艦隊です。
「女だらけの陸海軍」、こんな感じです♪

「陣痛」に吹いたkanayanoです^^(あっ、いえ、海軍には詳しくないのですがっ汗)
とりさん相手に戦争をはじめちゃう分隊長さんの本気ぶりが愛おしいですね^^それをみてるまわりのあわただしさがまた楽しい。
軍隊は非常時にそなえてこその組織なのだと思いますが、こちらの「大和」は常時のほのぼのぶりが本当にあったかくて大好きです☆

ローガン渡久地さんへ

ローガン渡久地さん こんばんは!

いや~あまりランキングを見ないのですが、一位なんてこっぱずかしいですね、ほかにも素敵なサイトさんがいっぱいいるのに・・・。でもうれしいです!

ハッシー、顔つきが鳥じゃないですよ。本物見ると時間を忘れちゃいます。

オスカーさんへ

オスカーさん こんばんは!

私も本当は鳥って怖いのです・・・だってあのくちばしで突っつかれたりしたら痛いじゃないですかあ~(泣)。

こいつは「大和」にいると思いますのでまたひと波乱ありそうですぞww。

お楽しみに~~~!!

Re: まろゆーろさんへ

> まろゆーろさん こんばんは
>
> 本当にすごいでしょう!?私は何年も前に千葉市動物公園でこれを見たのですがその時の驚きたるや「!!!???」でしたww。
>
> まさかこんなのがコウノトリの仲間だなんて、思いもよりませんでした!これは「大和」より「陣痛」に行くべきだったかもしれないですね~ww。
>
> さあ今後どうなりますか!ご期待を!!

こんにちは!!

見張り員さん、こんにちは!!


「百合小説人気ランキング」ぶっちぎりの1位でしたね!!
これからも頑張って下さい(〃∇〃)

ハシビロコウ・・・思慮深そうな顔をしてるなぁ。

こんばんは。いかにも何かやらかしそうな感じの鳥!!ペリカンとかだともっとコワイかも…パクっとされたらカツラが…いやいや(笑)
海の王者(?)は誰か、続きが楽しみです!

怖ろしい形相の鳥ですね。
こんなのが本当にいるのですか。しかしよく見つけて……、さすがに見張り員さんです。それに陣痛とコウノトリのお仲間を上手くリンクさせて!!
主役がまた増えて、これからの展開が楽しみです。


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ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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