2017-10

「女だらけの戦艦大和」・告白4<解決編> - 2011.08.27 Sat

麻生分隊士を呼び出す発光信号を最初に受信したのは、野村副長だった――

 

麻生分隊士はその時防空指揮所にいたが亀井一水と話をしていて信号を見ていなかった。伝声管からの「分隊士、麻生分隊士。昼戦艦橋に急げ」と言う副長の声に(何ごとじゃ!)と押っ取り刀ですっ飛んで行った。

「麻生少尉、入ります!」と昼戦艦橋(第一艦橋)に入った分隊士はとたんに「う、くさっ!なんねこれは!」と叫んでいた。そこでは艦長・副長・参謀長が例の『若返りのお茶』なるものを喫していた。そのにおいは相当に「ヘンな臭い」で艦橋要員はもうならされたものの、ほかの部署の人間は嗅いだ事がなく、それはまあ衝撃的な臭い・・・。

艦長以下がポカンとして見ているのに気が付いてあわてて「麻生少尉、参りました」と姿勢を正す。

その彼女に副長が、「上陸場から発光信号があってね、松本兵曹長から緊急の上陸要請。急いで行って来て。もし難しい用件なら帰艦は明日でもいいから。航海長にも了解済みだからね」と言って湯呑のお茶をクッと飲み干した。

麻生分隊士は「わかりました、では行ってまいります」と言ったが何やら胸のあたりがもやもやするのはお茶のにおいのためだけではなさそうである。(いったい何があったと言うんだ)

分隊士は、急きょ仕立てられたランチに乗って上陸場へ向かった・・・

 

上陸場に着いた分隊士を待ち構えていたのは松本兵曹長、彼女は大きな体を小さくすくめて「麻生少尉、お呼びたてして申し訳ございません。こちらへ・・・」と上陸場から離れた人のいない椰子の木の陰に分隊士をいざなった。

「どうした、何があったと言う」のだ、といいかけて分隊士はその木の陰に見張兵曹と石場兵曹がうなだれて座っているのに気がついた。

「どうしたんだ二人とも」と近寄って行った分隊士に、石場兵曹は何か怖いものでも見るような目で見たし、見張兵曹に至っては分隊士の視線を怖がっているようにすら見える。

「いったいどうしたんじゃね?」とその場に座った。松本兵曹長も分隊士の横に座ると、言いにくそうではあったがエヘンと咳払いをして、今までの一件を話し出した。

分隊士はその話を黙って聞いている。見張兵曹はその沈黙が恐ろしくて仕方がない。見張兵曹は(いくら一方的に『された』というても、私が石場兵曹にくっついて行ったのは事実じゃし。分隊士に『お前も不注意すぎる』言われたらもう返す言葉がない)と思い(今度は本当に分隊士は私から離れて行ってしまうかもしれん)とさみしく、悲しく、いても立ってもいられなくなった。

「・・・というわけでして」と、松本兵曹長が話し終えた。

兵曹長は、麻生分隊士の顔を見た。分隊士の口がひん曲がって(これは大変じゃ、機嫌悪い時の癖が出たぞ。どえらいことになるんと違うか)と空恐ろしい気分になる兵曹長。

唐突に「石場兵曹よ」と、分隊士が一言を放った。とたんに電気に触れたように背筋を今まで以上に伸ばす石場兵曹。

その石場兵曹を見て、分隊士はふ―っと長いため息をついた。そして「あのなあ、貴様がオトメチャンに気がある言うんは、俺はとっくのとうに知とったぜ」と言った。石場兵曹は少し意外そうな表情で分隊士を見つめる。

「貴様は前からオトメチャンに視線を送っとったじゃろ?それにようオトメチャンに接吻しとったしなあ。・・・隠さんでもええよ、俺は知っとったんじゃ。この前、オトメチャンや貴様が陸戦隊で行く晩、俺がオトメチャンを抱きしめとるんを石場兵曹は物陰から見とったもんな。はあこれはオトメチャンに十分気がある、思うておったんじゃ。じゃけえ、まあちっとは驚いたがある程度予想は出来とった・・・」

分隊士は石場兵曹と見張兵曹、そして松本兵曹長を等分に見ながら言った。「しかし、」と分隊士は言葉を継いだ。

「しかしだからゆうて許せるものでもないぞ石場兵曹。貴様は嫌がるオトメチャンを無理やり思いのままにしようとしたんじゃけえな。しかもオトメチャンにびんたを張ったらしいな。その落とし前は付けさせてもらうからのう」

そういうと分隊士はいきなり立ち上がって石場兵曹を掴んで引き起こした。松本兵曹長や見張兵曹があっという間もなく、分隊士は石場兵曹の頬に強烈な鉄拳を見舞っていた。

ドサリ、とその場に倒れた石場兵曹を見下ろして分隊士は「これが落とし前じゃ。…ええかもう二度とするなよ。こういう形で知らされるんが、俺は一番いやじゃ。で」というと石場兵曹を引き起こした。

また何かするのでは、とはらはらして見守る兵曹長とオトメチャンを横目に分隊士は上着のポケットから何かを出した。

そしてその何かを石場兵曹の手に握らせた。ハッとして手の中を見る石場兵曹。その手の中には二円が掴まされている。

「麻生分隊士・・・これ」と唇の端から少し血を流して石場兵曹がたずねると分隊士は、「それで『男』と遊んで来い。貴様は少し真面目すぎる、じゃけえこれからは少し男と遊んだらええ。十分男と遊んで、それでもオトメチャンとどうにかしたいなら言うて来い。俺も考えてやる。が、最終的にはオトメチャンの意思が一番じゃけえ、その辺を忘れんようにな」と言って座り直すと、松本兵曹長に、

「松本兵曹長、いろいろ迷惑かけて申し訳ない。せっかくの休暇だと言うんにこげえなごたごたに巻き込んでしもうて、こいつらの上司として謝ります」

と言った。兵曹長はそれこそ泡を食って両手を左右に振って「いやとんでもない、麻生少尉!迷惑なんてことは全くないけえ、気にせんでつかあさい!」としどろもどろになっている。

見張兵曹と石場兵曹も「ごめんなさい」と頭を下げた。

松本兵曹長はその大きな体をすくめて、「いやあ、もうええけえ。・・・では麻生少尉、私はこれで」と一礼するとその場を去って行った。

その姿を三人は見送って、まず石場兵曹が「分隊士。本当に申し訳ありませんでした」といい、分隊士は「俺に言うよりオトメチャンに言えよ」といい、兵曹はオトメチャンに謝った。

見張兵曹は「もうええんです、石場兵曹。これからも今まで通りに接してくださいね」といい三人の間にほほ笑みが満ちた。

石場兵曹はもらった二円を握って「男」のいるところに行き、分隊士は気がつけば最終のランチも終わってしまったので見張兵曹と「トレーラー・コンチネンタル・ホテル」に行った。その晩は長妻兵曹だとか小泉兵曹たちと一緒に楽しく語らって、すべてを忘れた麻生分隊士と見張兵曹であった。

 

その頃石場兵曹は男性とめくるめく濃厚な時間を過ごし、(ああやっぱり男ってええもんじゃのう!)と感激したとか。(今まであっさりしすぎとったんじゃなあ)と少し反省。

(俺はオトメチャンも好きじゃが、でもやはり男がええ。・・・待てよ、分隊士こそ男よりオトメチャンばっかで、それもまじめゆうんかなあ・・・。そうか!今まで男を十分食いつくしたけえもうそれよりオトメチャンのほうが新鮮でええゆうことか。う~ん、この世界は奥が深あで難しいわ・・・)

男性に抱かれながら思う石場兵曹の夜は、更けて行ったのであった――


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● COMMENT ●

まろゆーろさんへ

こんばんは

麻生特務少尉は「女だらけの大和」のヒーローです!というときっと本人は「俺は女じゃ!いい加減判れ!」と怒ることでしょうが女の中にも立派な「漢(おとこ)」はいるものですよね~。

「アルゼンチン・・・」
ワハ~~~!!わかっちゃった~・・ってこういう遊びが流行りそうなそんな晩夏のよ・か・ん!

麻生さん、かっこいい!!
男(!?)はこうあるべきです。やっぱりまっすぐと自信のある生き方をした人は強くて優しいですね。

「アルゼンチン国際ホテル」をカタカナでコメントしたらフィルターにまんまと引っ掛かりました。
さて何故でしょう。ふふふ。

音楽独言さんへ

こんばんは!

ご指摘を頂戴しありがとうございました、テンプレを変更してうまく行ったようでほっとしています。

表現・・・私自体が恥ずかしがりなもんで(ってこんな記事書いといて言うか!って感じですね(-_-;))、なんか直接的表現がいまひとつ書けないのです。
が、ベールに包んだ表現もある意味妄想を書きたてるのにいいかなと思っております。
男性がお書きになるダイレクトな表現も私は大好きですよ!直球でドカーン!と来るのは心にずん!と来ていいものです♪。

この「女だらけの戦艦大和」は私という一人の女(あまり派手な人生経験はないものの)の半生をも下敷きにして書いています。ですから男性読者の皆様にとっては「こういう表現が!」と驚かれたり新鮮に感じていただけるのかもしれないですね。

これからも私なりの着想で書き続けてゆきたいと思っておりますのでどうぞよろしくお願いいたします。

素敵なコメントをありがとうございます!

テンプレートが素敵!

見張り員さん、こんにちは

私は見張り員さんの記事を読ませていただいて、自分は、男いや、男のセイヘキであると再確認しました。
ここのコメントは不適切表現フィルターがありますので、なかなか書きにくいのですが、
フィルターにかからないように言葉を選ぶのも楽しゅうございます(笑

見張り員さんの文章は、我々男性の具体的な表現ではなく、
女性の柔らかくメンタルな表現で,、より○○く、いいですね。勉強になります。
私はどちらかというとダイレクトに表現する方が好きで、それは却って照れ隠しかもしれません。
婉曲にやさしくソフトに表現する方がイメージも広がり効果的ですね。
「オトメチャンと貴様には分隊士に対してえらい秘密が出来てしもうた」や、
「貴様は少し真面目すぎる、じゃけえこれからは少し男と遊んだらええ」というくだりは、
男の着想にはありそうでありません。新鮮で面白かったです。

※今度のテンプレートは素敵です。前の分は、コメント欄が狭くて、変になっていました。
その時からコメントの原稿を書いていたのですが、時間が経ってしまいマイルドになってしまいました。
このようなコメントは読み返せば読み返すほど、地味で面白くないものになってしまいますね。
すみません。


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Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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