「女だらけの戦艦大和」・告白3

「トレーラー・コンチネンタル・ホテル」の裏山ではイケナイことが行われていた――

 

常夏の陽射しの中、「コンチネンタル・ホテル」の近くを歩くひとりの準士官がいた。松本兵曹長である。彼女は少し人気(ひとけ)のない所に行きたいと歩くうちこの道に出たのだった。

「なんだあ?『トレーラー・チンコネンタル・ホテル』だと!?全く小泉だの長妻が喜びそうな名前じゃねえか。しょうがねえなあ!」

例のホテルの看板を見上げて苦笑する兵曹長であったが、ふっとその裏手にそびえる「丘」を見ているうちに急にむらむらと(登りたい)という気がわいてきた。

ホテルの裏手に回ってその丘を見るに、下から登れそうではあったが(それでは当たり前じゃなあ)と思う。なんだか今日は普段と違うことをしてみたい兵曹長である。

丘を更によく見れば、海側は草に覆われた崖がありしかもその中腹には横穴みたいなものが見て取れる。

(おお!どんなもんだかさっそく登ろう)

冒険心に駆られて兵曹長はその丘の下へ行き、生えている草を掴みながら登り始めた。見た目よりは楽な崖で兵曹長は嬉しくなって鼻歌交じりで上を目指した。

 

「石場兵曹。・・・お願い、もうやめてください」

オトメチャンは必死に逃げるが石場兵曹はそれを許さない。オトメチャンの小柄な体にのしかかって「やめてやらん。俺はオトメチャンが好きなんじゃ。・・・長いこと待っておった、この時を。今日この機会を逃したら又いつまで待ったもんだかわからん。じゃけえ・・・」と、その可愛い乳首を吸った。

「やめてえ・・・誰か来てえ、分隊士ぃ」と叫びをあげるオトメチャンに石場兵曹は顔をあげると残酷な笑みを浮かべて「誰も来やせん。さっき登ってきた道には俺がこの土地のサインをくくってきたけん、だーれも上がっては来やせんよ。・・・気持ちええんじゃろ、はっきり言うたらええのに。『気持ちええ』って」と言い乳首をはじいた。

オトメチャンは絶望を感じつつも、「石場兵曹、うちもあなたを好きじゃけど、こげえなことをするんはいやじゃ。お願いじゃけえ、もう・・・」と懇願した。しかし頭に血が上った兵曹にはちっとも通じる気配はない。

それどころか、「黙らんか、だまっとった方がもっと気持ちええぞ!」というなりオトメチャンの頬を平手打ちした。

オトメチャンの瞳に涙が盛り上がった・・・

 

松本兵曹長は崖を真ん中ほどまで登っていた。

後ろを振り返る余裕さえあって、振り向けばそこにはトレーラーの蒼い青い海が広がっている。それが陽光にキラキラ輝いて、まるで天国のようである。

(おっと。見とれてて俺が天国に行っちまったらまた連中の笑いもんじゃ)と気を引き締めて両手に掴んだ草を更に握りしめた。

連中、とは彼女の家族――母・姉妹・叔父たち――である。

(あいつらときたら普段はちいとも便りもよこさんくせに、出産だの結婚だの言う時だけ便りをよこしやがる。誰がご祝儀なんぞやるもんか)

二年ほど前にいきなり「松本リキ」あてに家族から年賀状が来たがそれには姉の出産・妹の結婚のことが細かく書かれていた。

(普段はちいとも家族扱いせんくせに)と怒った兵曹長は、その葉書をびりびりに破り捨て、最上甲板から吹き飛ばしてしまったのだった。

怒りながら登ったせいか、もうあの横穴に手がかかるところまで来た。(あと、一歩!)と思った時。

 

「いやあああ!!」

ものすごい叫びが頭の上から降ってきて、松本兵曹長は死ぬほど驚いた。もうちょっとで崖から転落するところだった。が、からくもこらえた。

「な、なんじゃ一体!」と、そっと体を持ち上げるようにして、草陰から横穴を覗き込んだ・・・

「はっ!」

息を飲む兵曹長。こっそりのぞいたその先には信じられない光景があった。

(トメが!)

オトメチャンが素裸で石場兵曹に組み敷かれて泣いているではないか、しかも石場兵曹はオトメチャンの「乙女の部分」に手を伸ばしている。松本兵曹長はカッとほほが熱くなるのを感じた。兵曹長は(トメを苛める奴は許さん!)と、一気に横穴に登った。そして背後から、「石場あ!」と大音声で怒鳴りつけた。

驚いたのは石場兵曹である。オトメチャンの上から飛び退いた。とたんにオトメチャンの一糸まとわぬ体があらわになり、兵曹長は思わず目をそらした。

オトメチャンは「松本兵曹長・・・」と泣きながら裸のまま兵曹長にすがりついた。兵曹長はその場に散乱していた服をオトメチャンに着せかけるとオトメチャンを抱きかかえて石場兵曹に向かい、

「おい石場兵曹。ここになおれ!」と自分の前を指さして怒鳴った。石場兵曹は夢を破られたような目つきで、それにしたがった。そしてまず石場兵曹に一発の鉄拳を見舞った。その場に倒れる石場兵曹、オトメチャンは怖いものを見るように目をそむけている。

石場兵曹がよろけつつもその場に座ると、兵曹長も座った。そして、「石場よ、一体貴様はどういうつもりでこげえな事をしたんじゃ?オトメチャンは麻生分隊士の大事な想い人じゃと言うんをしっとろうが?」と話しかけた。

石場兵曹の目から急に涙があふれ出した。それは彼女の正座した膝の上に置かれた手の甲に、ぽたぽたと落ちた。

「・・・知っとります。しっとりますがうちは、もうどうにも我慢ならんかったんです」

石場兵曹は泣きながら告白した。兵曹長は黙って石場兵曹を見つめている。石場兵曹は、「うちはオトメチャンが『大和』に乗って来た時から好きじゃった。でもどうして思いを伝えたらええか、ようわからんかったんです。そのうちオトメチャンは分隊士と仲ようなってしもうたけえ、話し出せんかった・・・」と泣きじゃくった。

兵曹長はここでやっと口を開き、「そうか・・・その思いはわかるがのう、もうオトメチャンは分隊士のもんじゃ。それを横取りしようとは石場、いけんなあ。しかもこういうやり方はまずいんと違うか?オトメチャンと貴様には分隊士に対してえらい秘密が出来てしもうたことになる。このままでええんか?それともぶん殴られるんを覚悟の上で告白しに行くか?」と言った。

オトメチャンと石場兵曹は同時に顔をあげて兵曹長を見た。

「・・・えらい秘密」

オトメチャンはそう呟いて下を向いてしまった。が、ややして兵曹長を見上げると「松本兵曹長、うちはどがいにしたらええんでしょうか?」と消え入りそうな声で言った。

兵曹長は、「隠し事が一番いけんからね。正直に分隊士に話してみたらええ。まあ麻生分隊士がどう出るかは俺もわからん。じゃが、どう出てもそれは貴様の責任じゃけえね、石場。責任は取らんといけんぜ。オトメチャンを不幸にするんも幸せにするんも、な。」と言った。石場兵曹はうなずき、オトメチャンも蒼い顔でうなずいた。

オトメチャンは「私はもう、はようこのことを分隊士に言いたいです。こんな気持ちを抱えてあと二日もおるんは耐えられません」と絞り出すような声で言った。兵曹長は、そうじゃな、と言って「じゃあ、今から麻生分隊士をなんとか呼び出そう。話はそれからじゃ。・・・覚悟はええね」と立ち上がると、「トメ、服を着ろ・・・」と言って背中を向けた。オトメチャンは自分が素裸なのに気が付いて、頬を紅く染めながら服に手を通す。

石場兵曹も、脱ぎ捨てられたままの服に手を伸ばした――

   (次回に続きます)


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Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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