2017-10

「女だらけの戦艦大和」・告白1 - 2011.08.21 Sun

言うに言えない思いを抱えて過ごす、というのは誰でもしんどいものである――

 

オトメチャンは三日間の休暇を麻生分隊士と一緒に過ごした。サイクリングをしたり、沈む夕日を眺めたり、そして日がすっかり落ちればいつもの宿に行って愛し合う。そんな楽しい天国のような三日は過ぎ、分隊士は「女だらけの大和」に戻る日が来た。

「じゃあオトメチャン、残りの日を楽しく過ごしなさい。・・けど長妻兵曹たちに変な所に連れてかれやせんじゃろうな、俺はそれだけが心配じゃ」

分隊士は桟橋でランチを待つ間そう言ってオトメチャンを心配した。が、オトメチャンは笑って「大丈夫ですけえ、分隊士。心配なさらんで下さい。私は変なとこに連れてかれても切りぬけますけえね」

と言って分隊士を安心させた。

分隊士はやがてランチに乗り込み、その姿が小さくなったところでオトメチャンは名残惜しげに桟橋から踵を返し、町中に戻る。

長妻兵曹たちと待ち合わせの場所に向かうためである。待ち合わせ場所は「裏飯屋」ではなく兵たちが使う宿屋で、「トレーラーコンチネンタルホテル」である。ホテルとは名ばかりの宿ではあるが安いしサービスがいいので、この地にあるいくつかの宿のうち、薄給の兵にはありがたいものの一つ。

長妻兵曹は「そこに一室取ってあるから、先に行ったら休んでるとええよ。俺の名前で取ってあるけん」と言ってくれた。オトメチャンは昨晩も揉まれた愛の嵐に少し、睡眠をそがれていたので宿に早めに入ってちょっと眠ろうと思って先を急ぐ。そうは言っても、昨晩も嬉しい一夜であったことには変わりはないが。

途中現地の人たちが営む商店や屋台を覗きながら歩くオトメチャン。たくさんの兵隊たちが大通りにあふれている。

「部分かつら」の店を見つけ、(ああ、これが増添兵曹御用達のお店かあ!たくさん種類があるのう!)と感心してみたりその店に禿げてもない海軍兵たちがたむろしているのを見て(変な風景じゃねえ)と可笑しくなるオトメチャン。

その中に同期の兵を見つけ「久しぶりじゃねえ」と肩を叩いた。その兵は「ああ、見張兵曹。どうしたね、休暇かね」とオトメチャンの両手を取って笑った。

「ほう、休暇じゃ。ちいとえらい作戦に出とったもんで休暇をもらえたんじゃ」オトメチャンも嬉しげにその両手を握り返した。そして、「ほいでもなんでこげえな店に?どこか禿げたんかね?」と聞いた。同期の兵――中根二等兵曹、巡洋艦『青葉』乗り組み――は、

「ほうね、そういえば『大和』は大きな作戦に出とったと聞いたが。陸戦隊も組織した聞いたが、見張兵曹も?」と言ってオトメチャンがうなずくと、自分もうなずいて「ほいじゃあゆっくりせんとね。・・・ああ、この店ね。うちらちいとも禿げちゃおらんが。なんか最近ここで部分かつらいうのを買うて、自分の髪に付けて長う見せたりするんが流行っとるんじゃと。じゃけえうちも流行りに乗ろうか、思うてねえ」と言った。

オトメチャンは「ああ、うちの艦の機銃分隊から流行り出したあれね!」と合点した。増添兵曹が止むにやまれぬ理由から買って来た部分かつらが、機銃分隊の兵員を手始めに流行り始め、今やほとんどの『大和』乗組員がひそかに入手しているのだと聞く。ただ、増添兵曹の心中をおもんぱかって、艦内では増添兵曹以外装着はご法度、という代物である。

見張兵曹と中根兵曹はしばらくそこで談笑をしてやがて「じゃ、またね。元気でなあ」と手を振って別れた。

またオトメチャンはぶらぶらと歩いて店など見ながら歩いた。

やがて繁華街の途切れる頃、例の宿「トレーラーコンチネンタルホテル」が見えてくる。でかい看板が出ているがこの看板、現地の人が慣れない日本語を書いたためか「トレーラーチンコ(・・・)ネンタル・ホテル」と一部誤った表記になっているのが兵たちには大変にうけている。兵は皆「今夜はチンコに泊まる」と言っているくらい、もうそれが通り名になっているようだ。

ともあれ、その看板を見つけホッとするオトメチャン。

足早に宿に行こうとする彼女を、「オトメチャン!」という聞きなれた声が呼びとめた。

振り向けばそこには石場兵曹が微笑みながら立っていた。オトメチャンは「石場兵曹、もうここに?長妻兵曹たちは?」と兵曹に近寄って行った。

石場兵曹は「ああ、うちはちいと用事があったもんであいつらとは別行動しとったんじゃ。・・・オトメチャンは今、なんか用事はあるか?」といいオトメチャンは「いいえ。用事はないですが、ちいと眠りたいな思うて」と答えた。

石場兵曹は「また昨夜は分隊士とええことしよったな。眠れんかったんじゃろ」と苦笑した。オトメチャンは頬を紅く染めてうつむく。

石場兵曹は「まあ、ええわ。ほうじゃ、ちいと俺につきあわんか?昼寝にええとこあるけん、行ってみんか」と誘った。オトメチャンは「ほうですね、まだ時間も早いですし皆もまだ遊んだり食事もあるでしょうし。行きましょう」と石場兵曹の提案に乗った。

石場兵曹はオトメチャンを宿の裏側にある丘にいざなった。

ほとんど道らしきものがないが、そこを石場兵曹は生い茂った草を踏み倒し、道を作りながら登ってゆく。そのしぐさがなんだかおかしくってオトメチャンが笑う。

石場兵曹は後ろを振り返って「ここから先はな、俺だけの秘密の場所じゃ」といい、その場の草を左右からひっぱって固く縛った。見ようによっては通行止めの標識のようでもある。

何のまじないじゃろう、と思うオトメチャンではあったが石場兵曹はずんずん奥に入ってゆく。あわてて後を追うオトメチャン。待って石場兵曹、という声に石場兵曹は振り向くとオトメチャンの手を引いてさらに奥へと歩く。

足もとの草は深さを増し、少しオトメチャンが心細くなってきた頃石場兵曹は、

「ここじゃ。着いたで、オトメチャン」

と言って先を指さした。そこには海に向けて大きく丘をくりぬいたような場所で、ふかふかした草が生えていて天然のカーペット。岩陰に大きな箱が一つ置いてある。

ここに向けてここちよい風が吹いてくる。

「うわあ、石場兵曹。いつの間にここを?」オトメチャンは声が上ずっている。石場兵曹はふふっと笑って「もうずいぶん前じゃ。たまたま見つけてな」といい「座らんか?」と片隅の箱から大きな布を出してその場に敷いた。

二人はその上に腰をおろした。

そしてしばらく黙って海を見つめる。

サア…っと気持ちの良い一陣の風が吹き抜けた。その時不意に、石場兵曹が隣に座ったオトメチャンの手を握りしめた。

「石場兵曹・・・?」

オトメチャンは石場兵曹を見つめた――

   (次回に続きます)


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● COMMENT ●

音楽独言さんへ

こんばんは!

コメントをありがとうございます、嬉しいです。

ええ!?○○○ネンタル、そのままでは「不正」ですか・・・いいじゃないですかねえ?記事に書いてあるんだから別に。それじゃ記事だって不正だと思うのですが、変だぞww。

どんどんの声を掛けてください、喜びます。
年齢は、もう若くはないです。ちょっとやそっとでは動じない年頃です(ってなんだそりゃ?)。そして何よりエロは好きでございます(爆)。
下ネタとかも本当は大好きです。
ですから不安に思われることなく、躊躇なくコメントとか入れてくださいね~、待っています!

これからもよろしくお願いいたします♪

No Subject

見張り員さん、おはようございます

面白いですね、特に○○○ネンタルは(笑
でも、私はエロかロック見たいな人への
コメントは無理がないのですが、
見張り員さんの文を面白がりながらも、
どうコメント書いていいものやら、
でも○○○ネンタルで書かせてもらいました。
私には、興味ある見張り員さんですが、
年齢とか傾向とか計りかねて、声をかけるのが
不安でございます(笑
今後ともよろしくお願い致します。

○○○ネンタルを記事のそのまま(記事のまま)書き込んだら
『不正な投稿』だと判断されました。
FC2は自分に甘く、他者に厳しい、システムですね(笑




matsuyama さんへ

こんばんは!

○○○ネンタル。これは昔から私がよく言い間違えるんですねえ~(汗)。人からは「わざとだ!」と言われますがさにあらず!

秘密基地、私も子供のころ友人たちと作りましたね~いろんなところに!一番大がかりだったのは、地面に掘られていた穴をさらに皆で大きくほって子供が5~6人入れた基地ですが、大人に見つかり「危ない、生き埋めになるぞ!」と言われて数日後埋められちゃいました(泣)。

さて石場兵曹。
どういう心持なんでしょうか、ご期待を!

まろゆーろさんへ

こんばんは

幸せの余韻は長いほうがいいですよね♪・・・しかし、石場兵曹は何を考えているのでしょうか、このまま何事もなく、とはいかないかも!

私はなんでか方言が好きです。広島の言葉は子供のころ読んだ本が広島弁満載でなんとなく覚え、九州は親せきがいますし、甲州弁は母方・・・というわけであります。
でもまったくわからなかったのは島根県の言葉でした。遠縁の人がtellしてきた時なにも言えなかったです(汗)!!

No Subject

トレーラー○○○ネンタルホテルは良かったね(笑)。

石場兵曹の秘密基地。
よく子供の頃、森の中の誰も来ないようなところに、自分だけの部屋を作っていましたよね。
こっからここはゲーム室、ここは漫画を見る部屋、そっちはお菓子を食べる部屋。外では大きな木の枝に蔓を巻いてターザンごっこ。友達を連れて来て適当な枝を見つけてチャンバラごっこ。
う~ん、懐かしいですね。
石場兵曹、純真な子供心が急速に大人に成長したのでしょうか(アセアセ)。

こんばんは

幸せの余韻が物憂いオトメチャン。
なんだかちょっと危険な香りが……、展開が楽しみですねぇ。

しかし、見張り員さんは地方の言葉をよくご存じですね。


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Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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