「女だらけの戦艦大和」・スマトラ戦記2

「女だらけの戦艦大和」は随伴の駆逐艦とともに東シナ海を突き進む――

 

沖縄で台風に遭遇し、二日ほど逗留したもののその後は最大戦速でひた走った『大和』である。随伴の駆逐艦が追いつけないほどの速力に、「駆逐艦無花果」の菅直子艦長は、「野郎、てめえこちとらの速力考えながら走りやがれ、畜生!」と口汚く罵ったという。

ともあれ。

台湾・高雄において陸軍の一個師団を乗せて南雲機動部隊と合流を果たした「大和」以下の艦艇である。その後大部隊の行動としては、南シナ海に入り一路シンガポールを目指す。

シンガポールで陸海軍の将兵総勢十万人を伴ってリンガ諸島に沿って南進し、スマトラ島パレンバンに上陸し、守備を固めると言う作戦である。

もともとパレンバンに駐在の陸海軍将兵は壱万五千ほどいるが、どうやら最近ABDA艦隊(注1)が頻繁にスマトラ島周辺に出没するようになり、「ここは叩かんといかん!」と言うことになったのだ。

連合国軍にすればこのあたりの油田はどうしても渡したくはない。豊富な原油の産出量を誇る油田地帯であるからだ。

だからと言ってはいそうですかではどうぞ、とあっさり渡す日本ではない。日本の明日、帝国の繁栄のためここはどうしたって譲れるものではない。気合いが入る守備作戦となる。

 

某日。

リンガ諸島、バンカ島から海軍の『二等輸送艦』が海を真っ黒にするくらい大挙して出てきた。それらには「特二式内火艇」が積み込まれており中には数名の陸戦要員が乗っている。その中の一人は「ああ、腕が鳴るう!早くスマトラ島に上がって撃ちまくりたいわあ!」と言っては仲間と笑いあう余裕である。

そして「女だらけの大和」は・・・

高雄で乗せた陸軍部隊をシンガポールでおろした後、サルマタ海峡ビリケン島に停泊。ここで敵の艦隊の出方を見つつ進撃をせよと言う話である。

「まあ、ここにいてやつらの出鼻をくじいてやりゃあいいじゃん?どうってこたあねえだろうよ。スマトラには指一本触れさせねえよ」と麻生分隊士は言ったが。

松岡分隊長はそれを聞くと「いいかい麻生さん。物事には慎重さ、という物も大事なんだからね。自分たちの持てる能力をフルに活用して慎重にせねばいけないよ。一件堅固に見える家だって、小さなひびから崩れることもあるってことを忘れちゃいけない。いいね麻生さん」と、例のラケットを肩に担いで分隊士をいさめた。

分隊士はハッとした。そして「すみません分隊長。・・・私はちょっとどうかしていました。今回は今までとは作戦の内容が違うと言うこと、失念していました。ご指摘ありがとうございます」と頭を下げた。

松岡分隊長はそれを聞くと笑って「安心しましたよ麻生さ~ン。あなたがしっかりしてくんなきゃ防空()指揮所()はうまく機能しないんですよ。機能しないってことは『大和』が機能しないと言うことですからね。・・・わかってくれたんならもういいですよ。さあ、熱くなろうぜ!」と言って指揮所の後ろに歩いて行った。

そんな二人の姿を、見張兵曹がじっと見つめていた。

 

翌日、『大和』の電探が敵の艦隊らしきものをとらえた。

ABDA艦隊は、日本軍がスマトラに集合しているのを遅まきながら察知し、オーストラリア北部の基地から前進して来た。そしてバンダ海を西進、ジャワ海に迫ってきていた。

「大和」はビリケン島に隠れるような格好で「そのとき」を待つ。

今やスマトラ島には数万の陸海軍兵士が上陸し油田地帯を固めている。海軍陸戦隊の彼女たちも陸軍嬢たちと共同作戦を取っている。

「敵は航空機を持って油田地帯を攻撃し、そのあと軍艦で砲撃してくるつもりだろう。こちらとしてはまず、航空機を以て敵航空部隊をせん滅し、そのあと『大和』他の艦で艦隊決戦に持ち込む」

南雲司令長官はそう言って各空母の攻撃隊に攻撃準備命令を出した。

「飛龍」艦橋でも、すっかりスリムになった山口司令官がその命令を受け取って攻撃隊にいつでも発艦出来るよう命を下した。

既に飛行服に身を固めた搭乗員たちは「来たねえ!さあ、いつでも来いだわ!」と飛行帽の頭をバンバン叩いて気炎を上げる。

中にはもう、「必勝」とか「尽忠報国」の文字も鮮やかな鉢巻きを飛行帽の上から巻きつけている子もいる。

「スマトラ島・パレンバンをとられてなるものか!」

全軍の意地と誇りがスマトラ島に炸裂しようとしていた――

  (次回に続きます)

 

注1)   日本軍の蘭印占領を阻止すべく編成された連合国による急造の混成艦隊のこと。

アメリカ(American・イギリス(British)・オランダDutch)・オーストラリアAustralianによる。


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Comments 4

見張り員">
見張り員  
matsuyama さんへ

こんばんは!

特二式内火艇の連中はなかなか血気盛んです、女だてら、という言葉の通用しない世界の女どもですww。
陸戦隊も、陸軍さんももう腕が鳴るなる、といった感じですね。

的あて!
うちの近所の「井草八幡宮」という大きな由緒あるお宮の秋祭りには必ず出店していますが、これホント当たらなくって。でも雰囲気が楽しいんですよね。

東京は蒸し暑く、夜は申し訳ないんですが節電ができないです・・・(泣)。
このところ不眠とじんましんに悩んでいますがこれはストレスのなせるわざ、仕方ないですね。
がんばります!!
いつも本当にありがとうございます!

2011/06/27 (Mon) 22:04 | EDIT | 見張り員さん">REPLY |   
見張り員">
見張り員  
ジスさんへ

こんばんは!

今も昔も油をめぐる戦いは後を絶たないですよね。
そして最近では「水資源」を巡る争いもありそうな・・・。

「女だらけの陸海軍」も、大事な油田を守るため今日も必死です!!
さあこの後どうなりますかご期待くださいね。

どうも蒸し暑さが身体にこたえます。
明日はもっと熱いとか・・・ヒエエエ!
お互い熱中症には気をつけて励みましょうね。
いつも本当にありがとう!

2011/06/27 (Mon) 21:53 | EDIT | 見張り員さん">REPLY |   
matsuyama  
No title

特二式内火艇で腕を磨いた連中には実践が楽しみなんでしょうね。

昔、子供の頃夜祭りで的当てゲームってのがありましたよね。今でも温泉地の歓楽街に行くとありますけど。
コルク玉の銃で目の前の商品をゲットする。できるだけ的の前まで身を乗り出し、狙って打つんですが、これがまたなかなか当たらない。

陸戦要員の皆さんも腕が鳴るんでしょうね。
子供心にかえってもう1度的当てゲームしてみたいな(笑)。

東京は暑さが続いているようですが、お身体大丈夫ですか。
御身お気をつけてください。

2011/06/27 (Mon) 20:55 | EDIT | REPLY |   
ジス  
No title

こんばんは。いつもありがとうございます。

油田などの資源は国にとって死活問題であり、今現在でも中国などを含み大変な問題ですね。どうか無事に守れますように。みなさんのひとりひとりの気魄が伝わってくるようです。

今日も暑かったですね。このまま梅雨明けなのか・・?そうもいかないのでしょうか?

2011/06/26 (Sun) 21:18 | EDIT | REPLY |   

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女だらけの「帝国海軍」、大和や武蔵、飛龍や赤城そのほかの艦艇や飛行隊・潜水艦で生きる女の子たちの日常生活を描いています。どんな毎日があるのか、ちょっと覗いてみませんか?
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ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)