2017-09

「女だらけの戦艦大和」・山口少将の大作戦3<解決編> - 2011.05.28 Sat

山口たも少将は、連日過酷なダイエットに励んでいる――

 

ダイエット作戦開始から、はや、四か月が過ぎた。もうすっかりスマートになって以前のたも少将とは違う。「飛龍」に久しぶりに行った時、加来艦長が遠くからこちらを矯めつ眇めつしているのに気がついた。たも少将は内心(やった。流石のとめさんもわからんようだ!)とうれしくってたまらない。

やっと、至近距離まで近づいた時加来艦長はあっと声を上げた。そして敬礼した。山口少将が返礼すると、加来艦長は「いやあ・・・驚きました。司令官とてもおきれいになられてしまって。私はしばしわからなかったですよ」と感に堪えたように言った。

山口少将は嬉しさを隠せないが、表情は必死に引き締めて「そうかな?そんなに変ったかな・・・でもそう言ってくれると嬉しいですよ、加来さん」と厳かに言った。

でも、と加来艦長は口には出さないが心のうちで思った、(ずいぶん短期間でお痩せになった気がしてるが、司令官は体調は大丈夫なんだろうか)。

だが山口司令官は身のこなしも軽やかにラッタルを上り下りしている。

艦爆の搭乗員たちがその姿を見て「ねえ、あれ山口司令官じゃん?ずいぶんスマートになっちゃったんじゃない?鬼の『多聞丸』、自分にも鬼になったんだねえ、さすが!」と感動している。

実は山口司令官は訓練の厳しさでは二航戦では右に出る物はないと言うくらいである。搭乗員や「飛龍」乗組員は司令官のことをその名前の「たも」から「人殺し多聞丸」と陰で呼んでいた。そのくらい激烈な訓練を課すので有名である。彼らはそのうっ憤を横須賀の町の料理屋の女将さんで晴らしていた――と言うのもそのおかみさんはたもさんにそっくりであったから――。当の女将さんは笑いながら「ハイハイ」と言いながら彼女たちの注文品に一品多く添えてくれるのがいつもの光景であった。

「まあ、さ。人に厳しいなら自分にも厳しくなきゃ、嘘ってもんじゃない?」

と皆は言ったがしかし、(あの巨体がよくあそこまで痩せたもんだよ)と改めて見直している。

 

そんなある日、山口司令官は身体にちょっとした不具合を感じていた。

ラッタルを上がる足が異常に重い。なんだかとてもだるい。

(いったい何でだろう。こんなに体は痩せて軽いっていうのに)

司令官は不審に思ったが、でもきっとそのうち治る。今はやせ始めたばっかりだから体が慣れていないんだろうとあまり気にもとめなかったが。

そのうち、だるさが全身に広がりだした。

立っていることすらつらくなってきた。「飛龍」の洋上訓練で相模湾に出た際、いつもなら艦橋で立って航空機の発艦を見ているのだが今回は小さないすを持ちこんでそれに座っている。心なしか顔色が良くない。

加来艦長が「山口司令官、お気に障ったらごめんなさい。はっきり申し上げますがお顔の色が優れません。ちょっとお休みになられたらいかがでしょうか」と進言したが司令官は「いや!そんなことないから大丈夫。とめさん見間違いだよ。でも気にしてくれてありがとう」と言って顔をそむける。

加来艦長は複雑な顔で司令官の横顔を見つめている。

 

そしてその日は来た。

いつものように洋上訓練の最中、編隊を組んで「飛龍」の上を飛んでゆく艦爆を見上げた司令官が突然その場に昏倒してしまったのだ!

さあ艦橋は上を下への大騒ぎになった。医務室に運びこまれた山口司令官を見て軍医長は「ずいぶんお痩せになりましたが、この顔色は尋常じゃないです。ちょっと血液検査いたします」と言って山口司令官は嫌いな「注射」をされることに。

その後司令官は艦内医務室ベッドで、検査結果が出るまで「絶対安静」の羽目に。しかしここでも出された患者食を残し軍医長から「召し上がってくれなきゃ、ダメっ!」としかられた。

 

血液検査の結果が出た。

しかつめらしい顔をした軍医長の前にまるで罪人のようにうなだれて座る山口司令官。(今まで風邪ひとつひいたことがなかったのに。しかも健康的な体になったと言うのにどうして)と納得いかない。

その司令官に軍医長は厳かに言った――

「山口司令官、結果から申し上げますなら、司令官は栄養失調であります」

ヒエっ!・・・と司令官の喉の奥が鳴った。え、栄養失調ですと!?言葉にならない司令官の言葉がその口から洩れる。

軍医長にはその声が聞こえていたかどうかはわからないが軍医長はひとりうなずいてそして言った。

「司令官の血糖値が異常に低いのであります。これはまごうかたなき栄養失調で今や内地にもこんな血糖値の人間はおりません。要するに」

「要するに?」と司令官は少しばかり涙のたまった瞳で軍医長を見つめておうむ返しに言った。

軍医長は少し咳払いをして喉を滑らかにしてから話し出した、「司令官は極端なダイエット、痩身をなさいましたよね。そのせいでこうなってしまったんですよ。いいですか司令官。私からの『命令』です。今後極端な痩身を絶対禁じます。どうしても痩せたい、今の体型を維持したいなら、朝と昼はしっかり召し上がってください。そして夜はごく軽く。そうでなくても司令官の仕事は厳しいのですから食べないと言うのはとても危険なんですよ。・・・お子さん方もまだお小さいんですからどうぞ無理なことはなさいますな」と、最後の方は優しく言い含めるように話した。

山口司令官は、どっと涙を流し「わかりました軍医長。あなたの言葉をしっかり実行します。私は今まであんなに太っていてそれを当り前と思っていたけどあるきっかけで痩せよう!と思ったんですよ。でもそのやり方はよくなかったようですね。明日から、いや!今日からちゃんとした痩身をしますから軍医長、どうか力を貸してください」と軍医長の両手を握って言った。

軍医長は優しく微笑んでうなずき、その一部始終を衝立の蔭で聞いていた加来艦長もほっと安堵の胸をなでおろしたのだった。

 

さあ、この日の夜から山口司令官は少しの夕食を取り始めたが、うわさに聞いた「リバウンド」がどうにも心に引っかかってならなかった。でもその心配は懇切丁寧な親身の指導の軍医長のおかげで払しょくされたとか。

 

今日も『飛龍』艦橋には、すっかり身軽になった山口司令官が立っている――


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● COMMENT ●

太郎さんへ

こんばんは!

お心遣い嬉しく拝読しました!
いつも本当にありがとうございます、頑張ってゆきます!!

NoTitle

余り 無理されない様に してくださいね~! 

matsuyama さんへ

こんばんは!
司令官は危ないところではありましたが本当によかったです。
やはり絶食ダイエットはだめですね。
ってこれはほとんど私の体験みたいなものです。ある時ものすごいだるさを覚えて医者に言って血液検査をしたところ、「血糖値が異常に低いです!・・・これは昭和19年とか20年の戦時中の血糖値ですよ!今どきあり得ません!栄養失調ですよ」と言われたのです、今から一年前。
驚きました。
それほどきついダイエットをしているつもりでなかったのでホントに驚きでした。

その後はどうなったか??
今度また血液検査してこようと思います!

樹☆gon さんへ

こんばんは、拙ブログにお越しいただきありがとうございます。

さっそく樹☆gon さんのブログを拝見しました。大変参考になります、またお邪魔しにまいりますね!

ジスさんへ

こんばんは!

無理なダイエットは本当に怖いですよね、拒食症から死に至る場合もあるそうですから侮れないですよね。
でも一回きりの人生、食べたいものを極端に我慢するのも哀しいですよね。
ドカ食いにならなければいいと思いますね。

いつもご心配いただいてありがとうございます。
あまりよい体調ではないですが頑張っておりますよ~w!!

太郎さんへ

こんばんは

体調は実はあんまりよくなかったりしますがでも頑張っておりますよw!
ご心配いただきありがとうございます!!

NoTitle

やはり無理なダイエットはどこかにしわ寄せが来るんですね。
良かったじゃないですか、この時点で原因が分って。
食べながらダイエットすることが一番です。
軍医長の指導のもとでのダイエットなら安心でしょう。
今のスタイルを維持してください。
見張り員さんの実生活にもご参考に。
あっ、ダイエットする必要ないのか(笑)。

こんにちは

スタイルエクサ+Kというダイエット法をご紹介しております。宜しかったらお立ち寄りください。

NoTitle

こんばんは。いつもありがとうございます。

司令官、ご無事でよかったです。やはり無理な食餌療法は怖いですね。私はもう好きなだけ食ってますが・・・

見張り員さんもお身体の具合はいかがでしょうか。どうぞお大事にしてくださいね。

NoTitle

こんばんわ

身体の 調子は どうですか?

あまり 無理しないで ゆっくり 休んで くださいね!


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Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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