「女だらけの戦艦大和」・山口少将の大作戦2

山口たも少将は、作戦室に足を運んだ――

 

彼女を見て誰もがハッとしたように目を見開いてそして顔を伏せる。山口少将は(おや。そんなに驚くほど痩せたのかな私。これは二航戦の連中も驚くよね、きっと)などとひとりで思っているが。

ハワイ奪還作戦の作戦詳報を書き綴った書類を抱えて作戦室に行くと、そこには宇柿連合艦隊参謀長がいた。

「宇柿さん、おひさしぶり」です、と言いかけた山口少将の耳に、信じられない言葉が飛び込んできた。

「ウギャッ!や、山口さん!どうしちゃったの!!」

叫ぶ宇柿参謀長に山口たも少将は頬笑みながら「え~、私そんなに変った?いやそんなに驚かれると・・」と言いかけたが、宇柿参謀長の次の言葉に凍りついてしまった。

「まんまるになっちゃったじゃないの!ハワイ作戦の前に合った時よっかまんまるになっちゃって、一体どうしたっていうのよ!」

なんだって!

山口たも少将は固まったまんまで宇柿参謀長を見つめている。宇柿参謀長は山口少将の肩を掴むと、「どうしたっていうのよぅ、こんなに太っちゃって。何があったの?もともと山口さんはふっくらしてたけど、これはちょっとひどいよ。健康に悪い!・・・山口さん、『連合艦隊参謀長命令』です!」と最後は厳しい声で言った。

山口少将は絶望的な表情で宇柿参謀長の顔を見つめた。宇柿参謀長は厳かな声で「命令。山口たも少将は速やかに体重を減らし、軍服の中サイズになるようダイエットすべし!」と言い、そして「ごめんね、厳しい嫌なこと言って。でも私は山口さんが心配なの。わかって?だからお願い、もうちょっとやせて。身体によくないから、たもさんに何かあったらお子さんたちも困るんだからね?ね?」と囁いてその肩をそっと叩いた。

はいありがとうございます、と消え入りそうな声で言って、山口司令官は作戦詳報綴りを宇柿参謀長に手渡すとふらふらとその部屋を出た。

そんな、そんな・・・そんなに私は太った?

山口司令官は自問自答しつつ廊下を歩いた。途中南雲忠子中将とか『蒼龍』の柳本柳子艦長にもであったが皆なんだか気の毒そうな顔つきで愛想笑いで司令官を見送った。

(イカン憐れまれてる)と山口たもは思った。

(こうなったら捨て身の攻撃だ。攻撃こそ最大の防御と言う。痩せることだって、ある意味戦争と同じじゃないか。今まで私は部下たちに過酷な訓練を強いてきた。今度は私が自分自身に過酷な訓練を強いて見事に痩せてやろうじゃないか!)

山口司令官は、キッと表情を引き締めると上半身に力を入れた。その瞬間、「びりっ!!」と音がして、彼女の軍服の背中の縫い目が思いっきり裂けた。

 

さあその晩から本格的な「痩身作戦」が決行された。今度は昨日までの生易しいものとは一線を画している。

まず、昼はお茶の一杯だけ。「茶腹も一時、と言うからね。う~ン、一時と言えば大体二時間くらいか?ならまた二時間後にお茶を飲んだらまた二時間は持つってことだね。おう、これは節米にもなって一石二鳥じゃないか」とたもは悦に入っている。

夕飯も取らない。子供が、いつもならご飯は大もりにしてぱくつくたもの前に何も出ていないのに怪訝な顔をし、次に母親が「どうしました?たもさん。今日は全然お食事をいただかないんですか?」と不審げな顔つきで訊ねる。

たもは、「痩身作戦」を気取られまいと作り笑いで「ええ。ちょっと最近胃の調子が悪いもので。こういうときは食べないでおくのが早く治るんですよ」と言ってお茶をすする。

それを聞いていた長男が無邪気に「ふーん。痩せるつもりとかじゃないんですねえ」と言ったのには正直、心臓が鎖骨まで跳ね上がるくらい驚いたたもではあったが、一所懸命平静を装って「何言ってるんです?この私が痩せるなんであり得ませんよ」と言い、みんなは「そうよね~、お母さんが痩せようなんて、お天道様が西から登るわ!」と大笑い。

たもは内心傷つきながら(笑ったなあ!今に見てろ、ガリッガリに痩せてカッコ良くなって驚かしてやるからな!)と決意をまたも、固める。

しかし、その晩遅くになってたもの腹の虫がギューギューと鳴き始めたではないか。(うう、腹が減った。でもここがが何のしどころだ。これを幾日かつづけたらそのうち慣れる。それまでの我慢だ)たもは必死に歯を食いしばって耐えた。

その後もたもの「痩身作戦」は壮絶に続けられた。三週間ほど過ぎた時、たもは自分の体の変化に気がついた。

今まで胸の下に盛りあがっていた「肉塊」が小さくなってきた。その上、軍服の肩のあたりが少しゆるくなった感じがしてきた。何気に行った銭湯の体重計に乗ってみるとあら嬉しや、なんと八十キロからあった体重が七十三キロまで減っているではないか。

(やった!この調子でガンガン落とせば軍服中サイズどころか小サイズも夢じゃあないぞ!)

山口司令官は心浮き立った。思わず不気味な笑みが浮かぶ。それを近くで見ていた年配の女性は少し気味悪くなったか、そっと山口司令官のそばを離れた。

更に山口司令官の「痩身作戦」は続く。

作戦開始二カ月後には早くも体重が六十キロ台にまで落ち込んだ。いままで着ていた軍服がとうとう「ゆるい!」とはっきり実感できるようになった。

胸の下にあった「肉塊」は姿を消し、今までさわりもできなかった骨盤にもしっかり触れられるようになり山口司令官は満足である。

司令官の母親は「ずいぶんスマートになったものね、たもさん。具合が悪いと言うのではなくって?」と心配したが、司令官は首を横に振って真実を話した。

母親は「そうだったの。確かにあなたのあの時の肥り方は異常でしたよ。でも急激な痩身は身体を壊しますからね、適当になさい」と言い含めた。司令官ははい、わかりましたと答えながらも(そうかあ、そんなに異常だったのか。でもこれでもう誰にもデブとか言わせないよ)と思っている。

 

山口司令官は、それからも快調にダイエットを続ける。ほとんど食事を取らないで、たまに食べるくらい。一週間でまともに食事をするのは三回もあればいい方ではなかったか。

体重は時折停滞しつつも順調に減っている。

そんなある日、衝撃の出来事が山口司令官を襲った――

  (次回に続きます)


にほんブログ村 小説ブログ 百合小説へ
にほんブログ村
関連記事

コメントの投稿

非公開コメント

ジスさんへ

こんばんは!
こちらこそありがとうございます。

私は過去何回かダイエットと称するものをしてきましたが、そのたび挫折してきました。
本当につらいんですよね、太ってるとよくない(健康にも、見た目も)のはわかっているんですが、ねえ・・・。
でももう5,6年前にリゾートホテルの浴場の大きな鏡に映った自分のチョー醜い姿にがく然とし、その時まさに山口たも式ダイエットを敢行しました。
痩せましたが・・・よくないこともありました。

何事もほどほどがいいんですよね。
ジスさんも「心の負担」になるようなダイエットは絶対なさらないでくださいね。
普段一所懸命働いてらっしゃるんですから、休日のビールはいいと思うんです。でないと「やってらんねえ~」ですよね。

NoTitle

おはようございます。いつもありがとうございます。

凄いダイエットですね。私にはとても真似ができません。食事療法は本当にストイックにならないと無理ですね。そういう私は休日なのを良いことに朝からビールを飲みながらwww・・・こんなんじゃ痩せれないですね(-_-;)

matsuyama さんへ

こんばんは
遅くなってごめんなさい。

私の体験が少し入っています。私も以前80キロあって、たも少将と同じように「絶食ダイエット」をし、半年までに約30キロ落としました。
私も醜くふとっていた時は、親戚とかから痩せてる義兄の嫁さんと比較されていやな思いをしたので一念発起、ダイエットしました。

・・・そう、女の執念はこわいですぞww。

宇品太郎さんへ

こんばんは
お返事遅くなってごめんなさいね。

暑かったと思ったら昨日から寒くなった東京です。今日のそちらはいかがでしょう?
いつもありがとうございます。

NoTitle

80kgの体重が2ヶ月で60kg台ですか。それはすごい。
涙ぐましい努力ですね。ていうか食事療法だけで痩せたんですか。
それにしても痩せるためには好きな食べ物も断ってしまう決断力の強さ。
痩せたい思いだけじゃないですよね。太っていた時の自分を、白い目で見て
いた人への見返しでもあるんでしょうか。
女の執念は怖いものがありますね(笑)。

NoTitle

こんばんわ

最近 蒸し暑く なりましたね~

見張り員様! 夏ばてには ご注意を

元気で がんばりましょ~

ポチ!
プロフィール

見張り員

Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

最新記事
最新コメント
フリーエリア
カテゴリ
月別アーカイブ
リンク
FC2ブログランキング
FC2 Blog Ranking

FC2Blog Ranking

最新トラックバック
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム
RSSリンクの表示
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード