「女だらけの戦艦大和」・山口少将の大作戦1

・・・これはあの『ハワイ奪還作戦』終了後、日本に帰国した後の二航艦司令官・山口たも少将の、語るも涙の物語である・・・

 

思い返しても「ハワイ奪還作戦」の際は山口司令官は大変な活躍をした。空母・飛龍から発艦した攻撃機は普段の司令官の訓練の成果を思う存分発揮し、随所に敵を撃滅し多大な戦果をあげた。

もちろん人的被害は皆無、であった。

その嬉しさから山口司令官は――食べた。

食べた食べた。なんと言ってもハワイの食事の盛りの多さに大感激したので、もっと食べた。

そうしたら、当然の帰結として肥った。

(え?そんなに太ったかねえ?あの通信科の山口水兵長((注1))と言う子も肥っていたね。でも私とどっこいどっこいかね。いいんだよそんなこと。肥っているは健康の証だもんねえ)

山口司令官は自分がどれだけ太ったかに全く頓着していない。

しかし。

航空艦隊が、横須賀に帰ってきた。

大きな戦闘の後の懐かしい内地。将兵いずれもほっと安堵のため息をついた。そしてそれぞれの艦で上陸する者もいればまだ艦に残る者もいる。

山口司令官は、加来艦長とともに下艦した。上陸場への内火艇の中で艦長は「司令官は、これから軍令部に行かれるんですか?」と聞く。山口司令官はちょっと嬉しげな表情で艦長を見て、「軍令部は明日。今日は家族が来てるから横須賀で一泊するの」と言う。加来艦長は、ああ、と言って「そうでしたね。では皆様によろしく。軍令部にはお気をつけて行ってらっしゃい」と二人は内火艇を降りた。

衛兵所長たちが居並んで迎える中を敬礼しつつ歩く二人、門を出ると子供の声がした。

ハッと艦長が見れば四人の子供が山口司令官に向かって走ってくる。「山口司令官、お子様方ですよ」と艦長も嬉しそうである。

「おお、なんかちょっと見ない間に大きくなったねえ」と山口司令官は両手を大きく広げて子供たちを迎えた。

・・・「おかあさーん!」と、その両手の中に思い切り飛び込んで行った子供たちが・・・

なんと司令官の太鼓腹に跳ね返されて三メートルほど吹っ飛んだのだった。

「きゃー!」と子供たちは投げ出されたが、再び「おかあさん!」と言って今度はそっと司令官の前に集まる。

司令官はその四人をまとめて抱き寄せて「ただいま~!待たせたねえ!」と言ってそれぞれに頬ずりをした。

ああ、感激の親子の再会。加来艦長は見とれたが、ひとりの子供がお尻をさすっているのに気がついた。そこで「ぼうや、どうしましたか?」と寄って行ってその子供を見た。

その子は「お尻が痛い」と言って艦長を見た。艦長は「ほう、ちょっと私に見せてくれるかな」と子供のズボンを少し下ろした。

「ああ、これはいけないね。すりむいていますよ、司令官、そこの衛兵所で薬をもらいましょう」加来艦長は司令官の子供を抱き上げて衛兵所に。そのあとを「とめさん、ごめんね」と山口司令官と後の三人の子供たちがついてゆく。

衛兵所で薬をつけてもらったあと、司令官は「加来さん、一緒に食事をしよう」と誘った。加来艦長は「いえ、せっかくの家族水入らずをお邪魔しては・・」と断ったが司令官も子供たちも誘うので、行動を共にした。

司令官たちが今夜一泊すると言う旅館に行きそこで昼食を取った。

そこでちょっとした異変が起きた。

いつもならたくさん食べる山口司令官が今日はあまり食べようとしない。加来艦長はそっと「・・・司令官、どうなさいました?あまり召し上がらないですね、ご気分でもよくないですか?」と聞いた。

司令官はかぶりを振って「いやあ、そうじゃあないの。いや、ちょっと朝食べ過ぎたからね」司令官はそう答えたが。

実はさっきの光景に(ヤバいッ。子どもを自分の腹で吹っ飛ばしてしまった・・)と大変な後悔の念にさらされていたのである。(これはやっぱり私が『肥りすぎ』ってことなんだな。子供を吹っ飛ばす親なんて親の風上にもおけん。・・・これは一念発起して)

ダイエットをしよう、と決意した山口司令官であった。

その晩から、山口司令官の「ダイエット作戦」はついに決行された。

まず、米の飯をやめた。

そしておかずの量を半分に減らした。

更に小さな楽しみの晩酌も断腸の思いでやめた。

その晩、司令官は子供たちの寝息を聞きながら(あーもう、腹減ったなあ。でも我慢我慢、ここを我慢してどんどん行けばやがてあの南雲さんや「武蔵」の猪田艦長みたくスリムになれるんだから。二航艦の連中をあっと驚かせるまで頑張るぞ)と思った。

翌日も朝も、ご飯は「みんなで分けなさい」と茶碗のご飯を子供たちに均等に分けてしまった。「おかあさん、おなかすいちゃうよ?」と心配する長女に「お母さんは大丈夫。こんなに太ってるからねえ」と言って子供たちの笑いを取った司令官であった。

その日のうちに山口司令官一家は自宅に帰り、司令官自身は軍令部に向かうことに。同居している実の母に「では母上、行ってまいります。子どもたちを宜しく」と言って出掛けた。

歩きながら(なんか、少し痩せたかなあ)と思う司令官ではあるが「まさかね、たった一日で」と笑った。

 

やがて赤れんがの軍令部に、山口司令官は着いた――

  (次回に続きます)

 

(注1)山口司令官と山口水兵長との件については2010・11・13の『また来る日まで』をご参照ください。


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Comments 4

見張り員">
見張り員  
ジスさんへ

こんばんは

お返事遅くなりましてごめんなさいね。

ダイエット、皆さんが気にすることですよね。おっしゃるようにこれほど苦難と挫折に満ちた苦痛の道もないですね。
代謝の悪さは本当に実感します、特に女の場合は閉経するとやせにくくなるというので、私はもう必死です。もう二度と体重80キロには戻りたくないです。
お互いに健康を損ねないように素敵にダイエットしましょうね!

2011/05/20 (Fri) 19:59 | EDIT | 見張り員さん">REPLY |   
ジス  
No title

こんばんは。いつもありがとうございます。

ダイエットですね・・・私もどれだけ気にしていることか、そして何度挫折してどうでもよくなってしまっていることか。

特に30代後半からの代謝の悪さは自分でも驚きです。
運動もほとんどする機会がありません。しかたないんで、なるべく歩けるときには車を使わずに歩くとか、エスカレータの代わりに階段歩くとか・・・

健康のため、ぼちぼち頑張りたいと思います。

2011/05/17 (Tue) 23:16 | EDIT | REPLY |   
見張り員">
見張り員  
matsuyama さんへ

こんばんは

とき~どきぃ~・・・ものすごいお腹の奥さまを奥様をお見かけしますよねww。まぁ、あんな感じでしょうか(爆)。
過度な肥満は危険ですからやはりダイエットですね!

なんとジムにお通いになったことが!
いろんな器械があって面白そうですが私のようなヘタレにはちょっと無理かなと(-_-;)・・・。

でもたとい週一回でも通われたなんてすごいですよ!汗をかくというのが大事なんだそうですよ!

2011/05/16 (Mon) 23:08 | EDIT | 見張り員さん">REPLY |   
matsuyama  
No title

すごいですね。太鼓腹にあたって3mも吹っ飛ぶなんて。何て腹してるんでしょう。
これはもうダイエットしかないですね。

自分も昔、ジムに通ってダイエットに挑戦したことがありました。
何ていうんですか名前はわかりませんが、自転車を漕ぐマシーン、腹筋、走行器、ストレッチなどやみくもにチャレンジしてみましたが、汗はかくけど体重は一向に減りませんでした。
やっぱり週1回だけのダイエットでは効き目がないんですかね(笑)。

2011/05/16 (Mon) 13:09 | EDIT | REPLY |   

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女だらけの「帝国海軍」、大和や武蔵、飛龍や赤城そのほかの艦艇や飛行隊・潜水艦で生きる女の子たちの日常生活を描いています。どんな毎日があるのか、ちょっと覗いてみませんか?
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ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
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(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)