「女だらけの戦艦大和」・スーパーアイドル誕生1

「女だらけの戦艦大和」は日本の春の真っただ中にいる――

 

心浮き立つのは階級には関係ない。一水兵も、最上甲板から見える呉の桜に彩られた景色に不意に鼻歌の一つも出ようと言うものだ。

もちろん艦長・副長・参謀長だって例外ではない。

今日は珍しくその三人が防空指揮所に上がって桜満開の景色を満喫中である。と、梨賀艦長がふっと懐かしい唱歌を歌い始めた。

すると副長もそれに唱和する。続いて参謀長が、副旋律を歌い出し見事なハーモニーを醸し出した。

「おお・・・」

「すごいねえ」

「イケるねえ」

と艦長・副長・参謀長が互いに顔を見合わせてにっこり笑った。「じゃあ今度は・・」とまた別の歌をハモリ出す三人。なんだかものすごくきれいにハモれるのが嬉しい。

唱歌から流行歌、果ては軍歌まで、ちょっと無理があるような歌でも参謀長が頑張ってハモる。三人はだんだん「その気」になって来たのも仕方がないだろう。

 

「よし!こんな素晴らしい三人組をこのままにしておくのはもったいない。――今日から『海軍一のアイドルグループ』を目指そうではないか!」

梨賀艦長の一言で、乗りやすい副長も参謀長も完全に乗っかった。「まずは『大和』の中から発信だ!事あるごとに我々が歌って踊ればこういうことには口の軽い我が乗組員のこと、あっという間に評判が広まっていずれは海軍省のお墨付きのアイドルになれるかも、だ!」と艦長が言った。

「あ、でもちょっと待って」と副長が、待ったをかけた。

「なに?何かあるの」と艦長がちょっと不審げな顔をした。その艦長に副長は、「その前に大事なこと、忘れてますよ。艦長。・・・グループ名を考えなきゃ。それと私たち三人の愛称もね」と言って、艦長と参謀長は「ああ!それは肝心なことを忘れていたよ!」と合点した。

さあその日から三人の『グループ名』探しが始まったがこれがなんとも難しい。

色女三人衆(ピンクレデイー)』→「だめ!色女なら長妻兵曹とか小泉兵曹でしょう?私たちは清らかな三人組!」と言うことで却下。

YMT四八』→「YMTって何さ?」「YAMATOYMTですよっ」「四八ってなによ?」「いや・・・なんとなくノリで」「いい加減すぎ!真面目に考えて!」と言うことで却下。

その他いろいろ考えたがこれと言う物が出てこない。

考え始めてからもう一週間が経った。

参謀長はほとほと困り果てて防空指揮所に上がり、聞くともなく兵員たちの会話を聞いていた。

いつものように麻生分隊士と見張兵曹が話をしている。

「ねえ分隊士。この先私たちがアメリカに言ったら、やはり英語とやらをしゃべれないといかんでしょうか?」

「ほうじゃねえ。まあちょっとした言葉くらいは話せんと帝国海軍軍人がすたるかも知れんねえ。ああ、聞いた話じゃけど英語では二つ以上の物には「ズ」ってつけるんじゃと」

「『ズ』、ですか?じゃあたとえばここにまんじゅうが二つ以上あったら『まんじゅうズ』言うんですかあ?」

「ほうじゃのう。『せんべいズ』とか『機銃ズ』とか。ここで言うなら『双眼鏡ズ』、かあ?」

そして二人が大笑いしているのを参謀長は聞いた。参謀長はちょっとは英語がわかるのでそれを苦笑しながら聞いていた。

が。

次の瞬間、「そうだ、これで行こう!」と叫ぶとその場を走り去って行った。麻生分隊士と見張兵曹は「わっ、参謀長いつの間にいたんじゃあ?」と驚いている。

 

参謀長は、まず副長を探した。なかなか見つからない、と思ったら副長は日野原軍医長とおしゃべりに花を咲かしている。

「おお、副長!話がある、早く昼戦艦橋に来て!」

いきなり飛び込んできた参謀長に日野原軍医長はぎょっとしながらも「忙しいのにごめんね副長。またあとで」と副長を送り出した。副長は軍医長との楽しい時間を邪魔されてちょっとふくれている。

「なんの話をしてたんだ。軍医長と」と聞く参謀長に副長はいやらしい笑いを浮かべて「ヘヘヘ。男の体の仕組みだよ」と言った。

「男の・・・っておぼこ娘見てえなこと言って。そんなんで喜ぶんはオトメチャンくらいだよ」と参謀長は言ったが、よく考えればオトメチャンは男の体の仕組みなんぞ関心の埒外だろうしそういう話に飛びつきっこない。副長も「オトメチャンは清らかですからね、そんな話で喜ぶわけないでしょう」と突き放したような言い方をしてあきれた。

「ところで、なんの話ですね?」と副長は訊ねた。参謀長は「ほら、グループ名を考えついたんだよ。もう最高のやつ!だから早く梨賀のやつ呼んで!」とせかす。

副長は「艦長ならさっき艦長室にいたから・・・」と二人は艦長室に行った。果たして艦長は、部屋でトメキチに邪魔されながら書類の整理中であった。

「え?グループ名出来たの?なになに、早く教えて~」

艦長は書類を机の上にほっぽり出して飛んできた。

三人は、艦長室のソファに座った。

「早く、森上さん!もったいぶってちゃ嫌だよ」

艦長・副長がせっつく。

森上参謀長は、手帳を出すと万年筆で何やら書いた。そして「こうだ。これならいかにも海軍のアイドルグループらしいだろう!」と言って手帳をテーブルにドン、と置いた。

艦長・副長がのぞきこんだそこには、こう書かれていた。

「艦艇―ズ(かんていーず)」・・・・

 

    (次回に続きます)


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Comments 6

見張り員">
見張り員  
matsuyama さんへ

こんばんは

突然私の頭に降ってわいた名前が「艦艇ーズ」。結構いい加減なネーミングだと今更になって思います(恥)。
品質。これは問題あるかもですねえ、なんてったって海軍生活長い連中ですから・・・。
第三者機関が査察に入った方がいいような気もしますが、ここは分別ある「大人」のすることですから・・・?

キャンデイーズとピンクレデイー。懐かしいですね、よくうちの近所の公園で小さい子供たちがピンクレデイーの振り真似をしていましたが、どっちかというとキャンデイーズのファンは年齢が高め、というか中学生以上が圧倒的だった気がしますね。子供に受けたのがピンクだったような気がします。
「艦艇ーズ」の振り付け・・・怖いですね、悪夢を見そうですww。

それにしてもスーちゃん、お気の毒でした。本当に涙が出ます・・・。

2011/04/25 (Mon) 18:58 | EDIT | 見張り員さん">REPLY |   
matsuyama  

艦艇ーズ、ですか。なるほどなるほど、海軍に相応しい名前ですね。
だけど中年歌手グループは、デビュー前に品質を鑑定しておかないとね。
大和の名を汚さないためにも事前のチェックを(笑)。

当時の人気を二分したキャンディーズとピンクレディ。
ものまねコンテストを開催すると、決まって参加するのが小学生以下の
女の子でしたね。振り付けではピンクレディ組が勝ってたかな。
中年艦艇ーズ、おどろしい振り付けも忘れずに(笑)。
大爆笑受けあいですよ。

しかし、スーちゃん若いのに無念だったでしょうね。ご冥福をお祈りします。

2011/04/24 (Sun) 19:09 | EDIT | REPLY |   
見張り員">
見張り員  
ジスさんへ

こんにちは。
こちらこそいつもありがとうございます。

私の主に小学校高学年から中学時代を彩ってくれたキャンデイーズ。大好きでしたね。カセットにはエアチェック(もはや死語?)したキャンデイーズの曲が必ず入っていましたね。
よく友人と休み時間に振りつけて歌った記憶が鮮明です。
だから今回のスーちゃんの訃報は本当にショックです・・・。

さて。
ひるがえって「女だらけの大和」のアイドルグループはいかが相成りますか、ご期待くださいね~~。

2011/04/24 (Sun) 12:10 | EDIT | 見張り員さん">REPLY |   
ジス  

こんばんは。いつもありがとうございます。

時事ネタかな?って思いながら読んでました。その期待を裏切らない素晴らしい結末かと思います。

私が子供の頃、TVではやはりキャンディーズ、ピンクレディが大人気でした。まだビデオもない時代、その時その時が勝負で真剣に見てましたね。

田中好子さんのご冥福をお祈りしたいと思います。

2011/04/23 (Sat) 22:28 | EDIT | REPLY |   
見張り員">
見張り員  
まろゆーろさんへ

きゃっ!
わかってしまいましたね~ww。艦艇ーズ、ですよぉww!!
さあ今後この艦艇ーズがどうなりますやら、ご期待を~~v-238

え!?
いや~ん私そんな男の人のからだとか生理なんてぜんぜんわかんな~~い。

・・・このかまとと女(爆)!!

2011/04/23 (Sat) 20:58 | EDIT | 見張り員さん">REPLY |   
まろゆーろ  

素晴らしい!!
まさに昨日今日の話題を大和に差し替えておいでる。
失礼ながら大いに笑ってしまいました。
が、見張り員さん。
男のカラダや生理加減もよくご存知のご様子に
もう、脱帽です。
益々のノリノリを期待しております。

2011/04/23 (Sat) 20:49 | EDIT | REPLY |   

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女だらけの「帝国海軍」、大和や武蔵、飛龍や赤城そのほかの艦艇や飛行隊・潜水艦で生きる女の子たちの日常生活を描いています。どんな毎日があるのか、ちょっと覗いてみませんか?
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ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)