2017-10

「女だらけの戦艦大和」・海軍銀輪部隊2 - 2011.04.13 Wed

「女だらけの戦艦大和」十三分隊分隊長の松岡修子中尉は、買ったばかりのごつい自転車を下宿まで走らせる――

 

下宿の玄関に自転車を入れて、松岡中尉は「おばさ~ン、今帰りましたよ~!」と大声を出した。すると玄関の戸がガラリ、と開いて下宿の女主人が顔をのぞかせた。笑いながら「松岡さん、今日はまた何を買って来たんねえ」と言いながら出てきた。中尉はラケットを背中から引き抜いてカッコよく構えると「今日はほら!こんなにすごい自転車ですよ。これでまた熱くなれますよ!」と言って笑った。

下宿のおばさんもラケットを構える真似をして「熱く、ね!」と言って二人は笑いあった。

 

そして翌朝、松岡中尉は昨日買った自転車を駆って上陸場に戻った。

ランチを待つ間他の艦や「大和」の兵たちが彼女を物珍しげに見ている。しかし当の松岡中尉は全く気にしていない。一つだけ気にしているとすれば・・背中に背負った大事なラケットがずり落ちたりしていないか、と言うことだけだ。

ともあれやって来た「大和」のランチに自転車を抱えて乗りこむ中尉、でもおかげで三人ほどが乗るスペースがなく、あとのランチに乗る羽目になったのは災難と言うべきか。

ランチは水面を走り、やがて『大和』に接舷した。松岡中尉は重いはずの自転車を器用に抱えてラッタルを上手に登ってゆく。それを見て他の中尉や大尉がポカンとして見上げている。またそれを見るランチの漕艇員は笑いがこみあげて仕方がない。

舷門当直の下士官は、松岡中尉がとてつもなくデカイ自転車を抱えて登って来たのを見てあごが外れるくらい驚いた。

それを甲板士官が見つけ、「わああ!またなんだってあの人はあんなでかいものを・・・全くこの艦はいったいぜんたいどうなってんだっ!」と頭を抱えてわめきだす始末。

そのそばを「やあ、甲板士官くん!熱くなれよ―!」と自転車を引きながら笑いかける松岡中尉。涙のたまった瞳でそれを見送る甲板士官・・・嗚呼。

松岡中尉はたくさんの折りたたみ自転車の格納してある後部甲板に来た。それらを一通り眺めまわし、ふいに満足げな頬笑みを浮かべた中尉は「よーし!さあみんな、さっそく明後日あたり熱くなろうぜ!」とひとりで大声を出して叫んだのだった。

 

その日のうちに松岡分隊長は副長に、「明後日あたりですが『陸戦訓練』をしようと思うのですが。特に今回は自転車を所持している分隊員を中心にしたいんです」と進言した。副長に異存のあるはずはなく「明後日は訓練日だから、適宜訓練要員を出してするといいよ」と言ってくれた。

松岡分隊長は「やった。これで熱くなれるぞ!」と嬉しそうである。

 

翌日、十三分隊員は「明日全員自転車を持って上陸し『陸戦訓練』に参加すべし」との通達を受けた。分隊員は「全員ッて、艦がお留守になるじゃないか!」と思ったが、操舵長は訓練から除外された。操舵長はちょっと残念がったがそれが後で幸いすることになろうとはこの時は思わない。

「折りたたみ自転車で、陸戦訓練かあ。陸軍の「銀輪部隊」を意識してるんかな、分隊長」

と皆は口々に言った。「まあ、この先何があるかわからんからね。アメリカに上陸する時自転車で進撃したら気分よかろうねえ!」となんだか心浮き立っている。

そして『陸戦訓練』当日。

十三分隊は折りたたみ自転車を各自持参して数艇のランチに分乗して乗り込み、上陸場に向かった。あらかじめ分隊長から「上陸場にて待て」との指示を受けている。

麻生分隊士は買ったばかりの折りたたみ自転車をしっかり持って「一体どんな訓練になるんだろうな?まああの人のことだから『熱くなれ、熱くなれ』ってやかましいんじゃろうなあ」と言って皆が笑う。

見張兵曹も自転車を自分の前に支えながらでもしかしちょっとだけ不安そうな表情を見せている。その表情を素早く見てとって麻生分隊士は「・・・オトメチャン、どうした?顔色が良くないぞ」と尋ねた。見張兵曹は力なく笑って「ええ。あの、私あまり自転車に自信がないんです。うまくみんなに付いてゆけるかどうか・・・」と言った。

麻生分隊士は「大丈夫だよ。俺がちゃんと付いていてあげるから心配するな!」とその肩を優しく叩いた。

見張兵曹は嬉しそうにほほ笑んで「はい、ありがとうございます。がんばります」と言った。

やがてランチの列は上陸場についた。

皆は「せーの!」と掛け声をかけつつ自転車を持ち上げてランチを降りて行く。麻生分隊士が「衛兵所を出た外で待っていろとの分隊長のご指示だ」と言い皆はぞろぞろ衛兵所を敬礼しながら通ってゆく。

衛兵所では「何ごとじゃ。これは?」と衛兵所長以下ポカンとしてこの珍妙な列を見送っている。

 

「ここらでええじゃろう。みんな自転車を開いておけ。すぐ走れるようにしとかんとな」

麻生分隊士がいい、皆は折りたたみを開き始めた。気の早い酒井上水とか亀井一水はもうまたがっている。

そして「ああ、はよう走りたいなあ。一体どこを走るんじゃろうね」と、まるでサイクリング気分である。

それから十五分ほどした時。

ようやく松岡分隊長が姿を現した。

が。

その姿に皆はかつてない衝撃を受けてその場に立ちすくんだ――

       (次回に続きます)


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● COMMENT ●

ジスさんへ

こんばんは

奥様御心配ですね、大丈夫でしょうか?意外と春という季節は体調を崩しがちになることが多々ありますから、どうぞお大事になさってください。

さあ。
松岡中尉は一体どう出たのでしょうか~~??
次回をお楽しみに~~ってホント私も引っ張るの好きやな~~(爆)。

No title

おはようございます。今日も良い天気ですが、妻の体調があまりよくありません。
PCに向かう時間がたくさん取れたのは良いかもですが。

松岡氏・・ええっ・・・・・いったいどんな?
次回を楽しみに・・・ですか?引っ張りますね!


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ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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