2017-10

「女だらけの戦艦大和」・流行に乗り遅れるな2<解決編> - 2011.01.27 Thu

防空指揮所に入って来た松岡分隊長を見て皆は一様に驚きの声を上げた――

 

「どう?私に似合ってるかな」

と松岡分隊長はちょっとだけ気取ってポーズをつけて見せた。皆は口の中でうわあ、と言って彼女の周りに集まった。

松岡分隊長は、昨日の上陸の際買って来た「黒メガネ」をかけている。それがなんともかっこいいのだ。

麻生分隊士までが寄ってきて、「分隊長。これをどこで手に入れたのですか?」と聞く。分隊長は笑って、「大通りの露天だよ。ほらみんながよく行く慰安所のそばにいつの店を出してるおじさんのとこ。安いけどいい品物だよ」と言ってそれを外してみんなに見せた。

「ほお。これをかければ日光も眩しくないですな」と石場兵曹が言う。見張兵曹も「訓練時にかけたら目の疲れが違うかもしれませんね」と言う。松岡分隊長は「これは私がいた空母・瑞鶴の見張り員たちの間でおおはやりだったんだ。直接日光を見るわけではないが結構南方の陽の光はきついからね、これをかけてればずいぶん違うんだよ。瑞鶴時代はいろんな形のものが流行ったなあ」と言う。

だんだん、その場の皆が(これ、欲しい)と言う気分になって来た。

それを察したか、松岡分隊長は「では明日の上陸の時私がみんなの分を買ってこよう。いいかな?」と言ったのでやんやの喝さいとなった。

麻生分隊士が「では分隊長、メガネ代をここで徴収しますか」と言うと松岡分隊長はいやいやと手を横に振って「いいかい麻生さん。私が明日かってくる黒メガネは私からみんなへの贈り物ってことで、料金はもらわないよ」と言った。

ちょっと驚いた皆、「いいのでありますか?」とか「それでは申し訳ないであります」と口々に言う。

それを手で制して分隊長は「いいんだよ。その代り普段の訓練ももっともっと、今まで以上に熱くなって欲しいんだ!」と言い、皆はその場で片手を天に突き上げて「バンブー!」と叫んだ。

黒メガネをかけた分隊長を中心にして妙な盛り上がりを見せる防空指揮所・・・。

 

さて場所は変わって機銃分隊。

露天機銃座にしゃがみこんで増添兵曹が何やらしている。そう、大事な『部分かつら』のお手入れである。

かつて前髪がすっかりごっそり抜けてしまった際、その空虚なこころを慰めてくれた『部分かつら』とはもう離れられない増添兵曹である。

そこに、長妻兵曹がやってくると増添兵曹の横に座った。何やら手に持っている。

「何持ってんのさ?」と聞く増添兵曹に長妻兵曹はその両手をそっと開いて見せた。その手のひらにはふんわりと、『部分かつら』が載っている。

「なに!?なんで長妻兵曹が?・・・どこか禿げたんか!?」

素っ頓狂な声を上げる増添兵曹に長妻兵曹は静かにしろって、と言ってから「増添兵曹、知らないのかね?あんたが『部分かつら』作ってから機銃分隊じゃこれがちょっとしたブームなんだよ」と笑った。増添兵曹はちょっと複雑な顔で、「へえ。ブームね。で?なんで禿げてもない貴様らがこんなものを買うのよ?」と言った。

長妻兵曹はエヘン、と咳払いをしてから「じゃあ聞かせてやろう。あのな、これで上陸の時髪をふんわりさせて変化をつけるんだよ」と言ってから「ちょっと見てろ」と言うと手にした『部分かつら』を自分の後ろ髪を縛るゴムをほどき、再びかつらと一緒にゴムで自分の髪の毛を縛った。

「おお!いいじゃん!」

増添兵曹は声をあげていた。長妻兵曹の、やっと肩まで届くくらいの髪が『部分かつら』のおかげで肩の下くらいまで長くなった。

「どうじゃ。これでええ女が更にええ女になる」

長妻兵曹はちょっと得意気である。そして「みんなこういうことして上陸の時は楽しんでるよ」と言うと、「これは艦内では増添兵曹以外はご法度だから」と外した。

ちょっと驚いた増添兵曹が機銃分隊内をそれとなく見て回ると機銃員たちは皆それぞれの『部分かつら』を持っていて上陸の際は必ずそれを持ってゆき、食堂の化粧室などでそれを装着してからしかるべき場所に行くのだと言う。

(でも)と増添兵曹は少し悲しくなった、(みんなはもともと髪が多いからいろいろ出来るけど私は少ないから「かつら」本来の使い方しかできない・・・)

そんな悲しさを一刻も早く打破するため、今日も増添兵曹はまだまだうすい前髪部分を豚毛のブラシで叩いて「頭皮の刺激」に余念がない。

(これが私の中の流行、いや!ちがう。これは私を、私本来を取り戻すための『仕事』なんだ!)そう、使命感にも似た感情で頭皮を叩く兵曹を、機銃の指揮官の平野少尉が(ああ、大変だなあ。早くふさふさになりますように)と後ろから拝んでるのを兵曹は知らない。

 

さて。

翌日、十三分隊の松岡分隊長は予定より早く上陸から戻って来た。

「あれ?分隊長は今日は泊まりだったのでは?」と言う麻生分隊士と見張兵曹に笑って見せた分隊長は「ここの配置のみんなを呼んで」と言って、皆が集合した。

「どうしたんです」とどやどや集まった皆に分隊長は

「みんなあ!さあ、これが昨日約束した『黒メガネ』だよ。さあ、一人一つづつ受け取ってほしい」

と言って分隊士から順々に渡して行った。

皆にわたると分隊士の音頭で「ありがとうございます!」と一同敬礼。それを満足そうに見てうなずく分隊長。

「さあ、みんなもさっそくこれをかけて熱くなろうじゃないか!」と言うことでその場の総員『黒メガネ』をかけた。

「わあ、似合うじゃねえの!」とか「ちょっと不良っぽくっていいな。巡邏がビビりそうな感じ!」などと言っては笑いあっている。

麻生分隊士は『黒メガネ』をかけたオトメチャンを見て「おお、そういうオトメチャンもいいなあ、ときめいちゃうよ」と興奮気味。オトメチャンは恥ずかしげに「そうでしょうか・・」と言う、それがまた分隊士にはたまらない。

そこに梨賀艦長と野村副長、森上参謀長が上がってきてその「異様な」光景に立ちすくんだ。

確かに異様な光景であった――防空指揮所の見張りや伝令はおろか、分隊長・分隊士までが『黒メガネ』をかけて集まっているというのは。

息を飲んだ参謀長が言った――「うわああ。「ちょい悪見張り員」だ・・・」。

 

この『大和』艦内のそれぞれのブームは終息の目途なし、である。今日も第一艦橋では「ヘンな臭い」のお茶が喫され機銃分隊では上陸時に皆がそっとポケットやカバンに『部分かつら』を偲ばせている――


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● COMMENT ●

matsuyama さんへ

こんばんは!

ああ!!あのマッカーサーのサングラスですね!!
なんか同じものを手に入れて身につけたりすると気分がいいですよね~w。
でもそのサングラスの行方が大変気になります、見つかったら御一報を~~~!!

ジスさんへ

こんばんは!

最近は日本でも日差しがきつくって白内障予防のためにもサングラスが欲しいくらいですね。

「女大和」のサングラスは士官の分隊長・分隊士はナス型。兵員は丸型です^^!
みんなが黒メガネで「何か?御用でしょうか?」なんて振り向かれたらちょっとビビるかなあ??ww。でもこれも面白いかもしれませんね。

もう寒さも飽きましたね、早く温かい春が待ち遠しいですね。

NoTitle

昔、マッカーサーの掛けていたサングラスがほしくてね。
なんとか手に入れたんですけど、2,3回掛けてはその辺をはしゃぎまわってました。
なんか英雄気取りになっちゃったみたいで(笑)。
でもその後は掛けず仕舞い。今はどこへ行ったのかな。
僕のサングラス!(笑)。

NoTitle

こんばんは。いつもありがとうございます。

確かに!海上の日差しは「黒眼鏡」なしではきついでしょうね。時代の背景から、形はオーソドックスな「ナス型」をイメージしましたが合ってますでしょうか?勢ぞろいの風景、粋な感じがしますね。

明日また寒くなりそうです。
お互い気をつけましょう。

まろゆーろさんへ

こんばんは!

「女だらけの大和」、こんな感じですww。
まろゆーろさまにもきっと何かあると思いますよ、見つかったら教えてくださいね~。

気が付いたらこんな状態のブログになっていました。どうぞこれからもよろしくお願いいたします!

雪風さんへ

素晴らしい!
コーヒーのあの香りって官能的でさえありますよね~。
しかも豆からひくなんて・・・も~う、ぜ・い・た・く!うふっ。

NoTitle

なかなか粋なブームですね。
さて、自分自身なにかワクワクするようなブームってあるかなぁ。

長編小説、カッコイイですね。楽しみにしています。

NoTitle

私のブームはコーヒーを豆から煎れるです
コーヒーメーカーが砕いている豆を勝手に
煎れてくれるんですけど・・・少し時間の贅沢


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Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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