2017-10

「女だらけの戦艦大和」・ハワイ再進撃5 - 2010.10.21 Thu

『女だらけの連合艦隊』は水平線上にぽつぽつと現れ始めた敵のマストらしきものを確認したーー

 

攻撃から帰還中の『飛龍』飛行隊から「敵大型戦艦4隻、中型戦艦6隻ミユ」との打電を受け、『大和』『武蔵』他の戦艦群はそれを撃滅すべく主砲の照準を水平線上に合わせる。

「敵戦艦、距離6000」

『大和』の見張り員が叫ぶ。その時さらに艦橋では帰還中の攻撃機からの連絡として「敵戦艦後方に敵空母3隻認ム」。

『女だらけの連合艦隊』は色めきたった。敵は13隻を擁してきている。その前にもう数隻は動けなくしてあるし、戦艦・空母の護衛に多数の駆逐艦や潜水艦も来ているのはわかりきっている。

しかし帝国海軍の備えは万全である。

オアフ島の海軍基地からも応援の航空機数百が飛び立った。

海中では陽も差し込まないような深さから、『伊号800潜』が今や遅しと敵の艦船の通りを待っている。

 

「しかし、敵が多いんじゃないですか。大丈夫かなあ」と小声で言ったのは見張兵曹である。それを聞きつけて麻生分隊士がそっとそのそばに寄ると、「大丈夫だよ。あのなあ、実は海軍は前に俺たちがした発明をバージョンアップさせた武器を今回持たせた潜水艦や魚雷があるんだってよ。でな、この『大和』にも『武蔵』他の艦艇にもすごい仕掛けがしてあるんだそうだ・・」と囁いた。

「ホントですか?」とちょっと懐疑的な表情をした見張兵曹に麻生分隊士はその肩をドン、と叩いて「ホントだって。俺が艦長に聞いた話だから間違いない!」と言い切った。

その瞳は、『馬面』の下で妙に自信満々に輝いている。(なら大丈夫ですね!)と、見張兵曹も馬面の下の目を輝かす。

「右20度、敵機多数!」

小泉兵曹が叫び、全艦に戦闘ラッパが鳴り響く――。

 

実にこの戦いは日本とアメリカの両者の意地の戦いの様相を呈していた。どっちも「取られまい」との気概で臨むからものすごい熾烈な戦いである。

『大和』『武蔵』の主砲が、水平線上から顔を出した敵の『オバマ級戦艦』の艦橋を打ち砕き、戦艦「オサルノジョージ」の放った砲弾が至近弾となって『武蔵』のそばで炸裂する。

そのすざまじい水しぶきを防空指揮所で浴びながら、猪田艦長は敵機の様子を見たり聞いたりしながら操艦に忙しい。

「取り舵に当て。よーそろ」

「面舵60度、急げっ!」

そのたびに操舵長は舵輪をまわして『武蔵』を敵から回避させる。絶妙なコンビネーションが展開される。

それは『大和』も『長門』も、ほかの戦艦・駆逐艦とて同じである。副長は、司令塔内の防御艦橋で戦況を見守り全艦の計器に目を配っている。万一、艦長が倒れたらその代行を副長が取ることとなる、だから副長は防御艦橋に入る。

副長もそばにいる兵も緊張して計器に見入っている。時折伝令の兵が外の状況を伝えに来る。

「・・・そうか、オバマ級戦艦の艦橋を吹っ飛ばしたか」

副長はにこりともせずに言った。まだまだ戦闘の先は長い。

 

そのころ。

この戦いにおける『ハイライト』ともいうべきことが起ころうとしていた。

『伊号800潜』は敵戦艦及び空母ほかの航行を探知し、その後方に少しづつ浮上を始めた。最新鋭の『伊号800潜』、水中聴音機も素晴らしいが水中レーダーも素晴らしく、敵艦艇はもはや『伊号800潜』の前には丸裸も同然である。

『伊号800潜』の一番艦の艦長は「魚雷発射準備」を命じた。砲術員がてきぱきと動いて魚雷が装てんされ発射を待つばかり。

艦長は潜望鏡とレーダーを交互に見ながら「・・・ぎょらーい・・。テ―っ!」と叫んだ。

『伊号800潜』の魚雷発射管から魚雷が飛び出し、敵の艦艇に向かって進んで行く。

1・・2・・と数える間もなく、ズシーッ!という重い音がしたとたん、『伊号800潜』はちょっと揺れた。

「艦長、魚雷命中です!」砲術長が叫び、さらに魚雷発射が追加される。また、ズシーン!と音がして「命中、命中!」の声がして艦内は沸いた。

 

そこから、北に行ったところに展開中の別の『伊号800潜』は直上の海面に水雷艇がいることに気が付いていた。深度を深く取らねばなるまい・・・

「潜航深度、800」

艦長が言った時、水中聴音員が「爆雷投下!相当数投下の模様です!」とレシーバーを掴んで叫ぶ。艦内に緊張が走った。

がしかし、艦長はなぜかにやり、として「あわてるな。爆雷くれえどうってこたあねえよ?」とうそぶいた。

爆雷が『伊号800潜』の至近まで降りてきた――ーとその時、信じられないことが起こった。『伊号800潜』の近くに降りてきた敵の爆雷が、ものすごい勢いで上、そう、海上に向けてすっ飛んで行ったのである。

たまらないのは敵の水雷艇であった。わけのわからないうちに自分の放った爆雷を自分たちで受け取ってしまったのだ。

あっという間に「轟沈」の敵水雷艇――。

何が起こったんだろう、と不思議そうな顔つきの兵員に『伊号800潜』の艦長は嬉しそうに笑いながら「何が起こったかわかる?わかんない?今は教えてあげないよ、あとでね~」と言って皆を呆然とさせたのだった。

 

その頃海面上はものすごい戦いの真っ最中。

『大和』も『武蔵』も『長門』も、いや、空母たちも敵の機銃攻撃にさらされているが、わが方の対空砲火のすごさに敵もダメージは与えられないようで焦っている。

いつの間に来たのか、松岡中尉は防空指揮上で走り回っている。馬面をつけて敵機に向かって「マジ東風、マジ東風~」とうたっては「敵もアッパレ、熱くなってるぞ!みんなも頑張れよ!」と見張り員たちを督戦する。

その時一機のグラマンが機銃をバリバリと鳴らして指揮所に突っ込んできた。麻生分隊士は「ふせーー!」と叫んだ。皆がその場に伏せようとした時、見張兵曹がちょっと遅れた。機銃弾がはじける。

「あぶなーい、特年兵!」

松岡中尉が叫ぶなり、例のラケットをブン!と振った。すると・・・敵の放った機銃弾は中尉のラケットに当たると、まっすぐにその次に突っ込んできたグラマンの操縦席あたりに飛び込んで行ったのだった。

グラマンはコントロールを失って、『大和』の左側に落ちる。

皆が松岡中尉を見ると中尉はまだあのラケットを勇ましく構えて「来い!いいか俺が戦争のやり方を教えてやろうじゃないか。いいか戦争と言う物はだな・・・」とわめきたてて敵機を指さして叫びながらその場に仁王立ち。

麻生分隊士が「分隊長、危ないーー」と言いかけた時また敵機が突っ込んできて機銃弾を放つ。「タアーーッ!」

と雄たけびを上げた分隊長はその機銃弾を撃ち返し、また一機撃墜。

「し、信じらんねえ」と、双眼鏡の架台に身を寄せながら石場兵曹と小泉兵曹はつぶやいた。しかしこの分隊長の行為は敵の格好の目標となり、敵は『大和』防空指揮所めがけてやたらと突っ込んでくることになってしまい、第一艦橋にちょっと降りていた梨賀艦長はあまりのすごさに指揮所に入れなくなるほどになった。

敵の攻撃隊長は「アノヘンなやつをうち取って名をアゲヨウ!」と言って突っ込んできた。真正面から目が合う形になって、「モラッタヨー!」と敵の隊長は機銃を打ち込んだ。真っ赤な線となってそれは松岡中尉に吸い込まれていったのだが。

次の瞬間、敵の隊長は「バシュッ!」と言う物凄い音とともにコックピットに下げておいた、彼氏からの贈り物のマスコットが粉砕されているのを見た。

ハッとして機体を見れば、燃料タンクに穴があきそこから燃料が吹きだしている。

「イヤアーーん、ジミーからのプレゼントがあ!!」

隊長は泣きだし「ジミーからのプレゼント」の弔い合戦とばかりに旋回すると他の仲間の機の間をかいくぐって一矢報いんとした。

が。

他の味方のグラマンが放った機銃弾を分隊長が跳ね返し、その機銃弾は見事隊長機の片翼を吹き飛ばした。

「イヤーーン!!もう!あの化け物!」

隊長は叫び、叫びながら隊長機は海に突っ込んでしまったのだった。

 

敵襲が止んで、防空指揮所の皆が松岡中尉を見ると彼女はいつの間にか戦闘服の下に「竹」を編んだ帷子のようなものを着こんでいたのだった。

戦闘服はあちこち切れたりちぎれたりしていたが「竹」の帷子は無事である。

松岡中尉は「だから言ったでしょう?『竹になれ』って。竹はしなやかで、しかも強いっ!」と言い、皆は「おお!すごいすごい!流石『竹』の威力」と拍手喝采したのだった。

 

その後、連合艦隊は敵に甚大な被害を与え敵戦艦・空母全滅させた。残った艦艇は駆逐艦が大破して1隻、油送船が無傷であったがこれは帝国海軍が接収した。

ハワイ各島の被害も無く日本軍の大勝利に終わったのだった。

が。

『蒼龍』では柳本艦長以下総員が悲痛な面持ちでいる――

 

        (次回に続きます)


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● COMMENT ●

陸戦隊さんへ

こんばんは

松岡中尉は「人間兵器」です。
そうですねこれから「月月火水木金金」で練磨してもらい、そのラケット一本で米英撃滅を遂行してほしいものですねww。

イケイケ帝国海軍ーー!!

misia2009 さんへ

こんばんは
いやあうれしいですねえ~。読んでいてくださったんですね!
こういう話で困るのは登場する艦船の名前とか人物の名前ですね、「オバマ級」はTVでオバマ大統領を見て思いつきましたww。
ラケット迎撃も、伊達キミさんの試合を見て思いつきました。
これからももっといろいろなものを出してゆきますのでご期待のほどを!
ご訪問心から感謝いたします。
またよろしくお願いいたします。

見張りんさん、こんにちは。 松岡中尉、凄いですねぇ~  その調子で今度は20ミリ機関砲弾のマシンガンサーブを雨あられと繰り出し、厄介な敵急降下爆撃機はスマッシュで海のコートに叩きつけてやって下さい! そのうちミラクルサーブで一度に三個の46サンチ砲弾が見事、エンタープライズに当るかもょ・・・

初めまして

misia2009と申します。『沈黙の意思』さんから辿って参りました。少し前から拝読させて頂いております。
よく詳しく御存知ですね、などと申し上げるのもはばかられ、読み逃げしておりましたが…今回「オバマ級」と「ラケットで迎撃」の笑撃には耐え難く…一筆執らせて頂きました。
敵機を撃墜すれば敵方とはいえ犠牲が出るわけですが、不覚にも面白かったですwww
「イヤアーーん、ジミーからのプレゼントがあ!!」「竹になれ!」
綿密な調査と緻密な設定のうえでの遊び、敬服いたします。
『蒼龍』…海行かば? 待て次号、が辛いです。
また、お邪魔いたします。


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Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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