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ゴシップ 2

内地東京の<帝国新報>本社・政治部ではその写真を前に総員が「まさか…しかし」と半信半疑の顔つきでいるーー

 

そもそもは、トレーラー諸島に帝国海軍の活躍を取材に行った小林・五戸両記者が「帝国海軍軍人の結婚式」の様子だと言って送ってきた数葉の写真が発端であった。

写真とともに同封されてきた小林記者の手紙には<この花嫁は海軍の上等兵曹で相手は海軍御用達の商社の一つ<南洋新興>の社員である。何気なく見た花嫁の顔であったが、与党・推進党の幹部によく似ているとは思わないか、彼には以前から隠し子のうわさがあって何度もあちこち取材したがなかなか確証が得られない。彼の妻は、女学生のうちから彼の思想に同調し、やがて深い仲になり家庭持ちだった彼を奪って駆け落ち、結婚したと聞いている。そしてその駆け落ち前に彼女は一人子供を産んでいるという。その子供の行方は長いこと不明であったが彼の妻になった女性の親族が育てているという話を聞いてはいるがどこで育ったかがわからなかった。が、今回この花嫁を見るにどうも推進党幹部の彼によく似ている。この女性こそ彼の隠し子ではないかと私は確信したので取材を続けたい…>ということが書かれていて、デスクの続木釟郎は写真を目の前に持ってきて食い入るように見つめた後

「似てるな…、だが他人の空似ということもある。相手は与党の大物幹部、将来の総理大臣の話もある人物だ。慎重にしないと危険だ…、小林には決して早まるなと言っておこう。だがこちらもじっとしてはおれん。静かに彼の周辺、特にかつての仲間を訪ねよう。これがしかし、本当だったら大変なことだぞ」

と皆を見回した。そしてもう一度小林の手紙を見ると

<それともう一つ、ちょっと興味のある件がありますのでそちらも取材しておきます>

と結ばれていた。どんなことだか知らないが、記事になるなら追ってこいと返事を書こう、とデスクは言って皆は笑った。

そして皆はそれぞれの場所へと散らばってゆく…

 

最初に「妙な感じ」を覚えたのは上陸桟橋前の衛兵所の衛兵嬢である。見知らぬ男性がうろうろして、上陸の将兵嬢たちにカメラを構えているのをみて、

「あなたなにしています?ここは許可なく撮影はできませんよ?艦隊司令部か衛兵所長の許可証を見せなさい」

と言って近寄ると彼は慌てて

「あ!ごめんなさい、そんなつもりじゃないんです。そんなつもりじゃないんです~」

とあまり意味の分からないことを言うと慌てて走り去ってしまった。衛兵嬢がむっとして「じゃあどんなつもりなんだよ、あの野郎」とつぶやいたとき衛兵所の中から所長が出てきて

「あいつ…こないだ、ニ三日前も来ていたな」

と言い、衛兵嬢の兵曹は「こないだも、ですか?どういう人間なんでしょうね」と首をひねった。衛兵所長は

「なにか探ってるのと違うだろうか、私の勘だからあてにはならないけどもしかしたら、内地の新聞社か雑誌社の記者かもしれないよ。記事にしたいことがあるなら基地司令に言って許可を貰えばいいのだが?」

とこれも首をひねった。

その妙な男性はついに、水島の繁華街を歩く将兵嬢に接触を試みた。そろそろ内地に帰還する機動部隊の将兵嬢たちに、高田兵曹の結婚式の写真を見せて「この女性将兵を知らないか。どこの艦の所属か、知っていたら教えてほしい」と言った。

話しかけられた空母「蒼龍」の兵曹嬢の一人は高田兵曹の同期でむろん、顔を知ってはいたが首をかしげると

「さあ知りませんな。あなたここトレーラだけで何人の海軍将兵がいるとお思いです?トレーラーは小さな島が多いから合わせりゃ数万の将兵がいるんですよ?いちいち知るわけないでしょう。探し出すには大変なご苦労なさいますよ」

とかわした。一緒にいた下士官嬢もうなずいた。

そうですか、失礼しましたと言ってその場を去る男性――五戸記者だったが――を見ていた「蒼龍」の士官嬢が下士官嬢たちに近づくと

「あれは内地の新聞記者だろう。いったい何を聞きに来た?」

と言い下士官嬢がこれこれこうだと教えると士官嬢は

「何かあるな。よくない匂いがする…、その写真とやらの花嫁を知ってるの?」

と高田兵曹の同期の下士官嬢・須田に尋ねると須田は「海兵団同期であります。<大和>の乗艦の野田…言え、結婚後は佐野佳子上等兵曹です」と答え、士官嬢は「<大和>の!そうかわかった、ありがとう」というなり駆けだしていった。

どうしたんだろう、と不安げな下士官嬢たちはしばらくその場に立ち尽くしていた。

 

「蒼龍」の士官嬢、川原中尉は自艦から無電をうつと『大和』の同期を急いで訪ねた。その同期は生方中尉で彼女は舷梯を駆け上がる兵学校のクラスメートを笑顔で迎えた。

「川原中尉、久しぶりだねえ」

とうれしがる生方中尉に川原中尉は急いで挨拶をするとその両肩を掴んで

「貴様、<佐野佳子>という下士官を知っとるか?」

と言い生方中尉はまた嬉しそうに

「知ってるも知っとるも何も、私が介添えしたんだよ。私の部下だからね」

と言った。川原中尉は彼女を砲塔の隅に連れていくと「じつは、」と話し始めた。

「実は、内地の新聞記者らしい男が彼女を嗅ぎまわっているらしい」

えっ、と生方中尉は驚いた。いったい何を嗅ぎまわるんだろう、と言った生方中尉に川原は

「それが皆目わからんが気を付けたほうがいい。佐野兵曹は休暇中か?ならだれかを知らせにやらせろ。絶対かかわるなと言っておくんだ。何か…いやな気がしてならん」

と言って生方中尉は絶句した。

 

生方中尉はその日のうちに緊急に上陸許可をもらうとランチに乗り込み、佐野夫妻を訪ねた。夫妻は佳子の養母・瑞枝と家にいてのんびりしていたが生方中尉の話に

「心当たりがありませんね、私も佐野さんも。もちろんお母さんも」

と首をひねる。佐野も瑞枝も「全く心当たりがありません」という。

生方中尉は「思い過ごしかもしれないが万が一、そのような男に付きまとわれたら巡邏かあるいは憲兵に助けを求めなさい、私からも言っておくから。場合によっては艦隊司令に申しあげトレーラーから退去させることもできるからね」と言い含めて「ではごきげんよう」と三人の家を後にした。

道々生方中尉は(なぜ高田、いや佐野兵曹を追うような真似をするのだろうか?単に結婚式に対する興味だけではなさそうだ)と考え込んだが、ふと顔を上げると

「まさか…彼女の…」

と言ってしばらくその場に立ち尽くしていた。が、やがて我に返ると巡邏の分駐所そして陸軍の憲兵の水島分駐所にそれぞれいって事情を話し「こういうことがあったらすぐに男の身柄を確保しておいてほしい、そのうえでトレーラー艦隊司令部に連絡されたし」と言いおいた。

憲兵隊は普段から<大和>の浜口機関長の怖さを知っているのでかしこまって話を聞き、

「わかりました。ではそうした輩を発見次第確保しその上で中尉にもお知らせいたします」

と言ってくれた。

 

また同じころ。

小林記者は別のターゲットを射程に入れつつあった。そのターゲットとは――。

  (次回に続きます)

 

              ・・・・・・・・・・・・・・

 

「そんなつもりじゃないんです~」ってどこかで聞いたセリフですがならどんなつもりなんだこのオトコ!というわけで生方中尉佐野兵曹に注意喚起に行きました。

そして小林記者のもう一つにターゲットとは?さらに緊迫の次回をお楽しみに! 
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Secre

やまびこさんへ

やまびこさんこんばんは
そうです!!私の祖母の実家はその『風間酒造』です!昔、祖母のきょうだいが存命のころ何度か下於曽の家に行ったことがありました。懐かしく思い出されます。祖母は7人くらい兄弟がいてその下から二番目だったと記憶しています。つくり酒屋のお嬢さんで大きくなりましたが検察官の祖父と結婚し、四児をもうけたあと昭和二十年三月の東京大空襲を契機に山梨の明野(祖父の実家)に疎開し、そこでさらにもう一子をもうけますが終戦後約十年ほど明野に居続け、鬼姑にいびられ、やったこともない野良仕事をして…と地獄の日々だったようです。

あのあたりもずいぶん変わったことでしょうね。いつの日か尋ねてみたいものだと思います。やまびこさんが山梨県のかただと知ったとき何かうれしくって…^^。今後もまたよろしくお願いしますね、『女だらけ~』も頑張りますよ!

河内山宗俊さんへ

河内山宗俊さんこんばんは
「この時代」にもマスゴミを登場させてみました!一応大手新聞社の設定ですが…いろいろとこの世界もあるようですよね。それにしても人の秘密を暴いて喜ぶ悪い癖、もう止めたらって言いたくなる時が多々あります。

も一つのターゲット、たぶん彼女でしょう。まさに帝国海軍を敵に回す覚悟を持って当たらなきゃいけませんからある意味、社運をかけているのか<帝国新報>!

甲州市下於曽の酒蔵。もしかして「風間酒造」?このほか数軒ありますが…。甲州市は私が住む山梨市とは笛吹川をはさんで反対側。下於曽は車で7~8分の距離。なにかしら見張り員さんが身近に感じます。

 「女だらけの…」・小説の投稿引き続き頑張ってください。期待しています。

この時代から、マスゴミなんですね?
3流週刊誌ならばともかく、大手新聞社さんのようなのですが、
一番気にしてるのは購読部数。(自称○○万部ってやつ)
今も昔も人の不幸は蜜の味ってのは変わってないけどw

さて、もう一つのターゲットってのは、
話の展開から察するとオトメちゃん関連、
紅林関連続報って感じの特集?
もっともそれを記事にするには、
帝国海軍を総て敵に回す覚悟の上で
プロフィール

見張り員

Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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