女だらけの戦艦大和・総員配置良し!

女だらけの「帝国海軍」、大和や武蔵、飛龍や赤城そのほかの艦艇や飛行隊・潜水艦で生きる女の子たちの日常生活を描いています。どんな毎日があるのか、ちょっと覗いてみませんか?

思い出をレッコ 1

大みそかを明日に控えたその日、トレーラー環礁に停泊中の各艦艇では大掃除が行われているーー

 

『女だらけの大和』でもご多分に漏れず大掃除が各分隊で行われている。

二十一分隊医務科では、病室のベッドの布団を最上甲板に持ち出して布団干し。ほかにも医療器具を消毒したり診察室のカーテンを洗ったりあるいは、床を念入りに拭いたりと忙しい。その陣頭指揮に日野原軍医長が当たって、分隊員たちはその指示に従っててきぱき働いた。

機銃分隊は機銃の砲身内に詰まりがちなカスをブラシでごしごしと掻き出す。主砲砲台はそれぞれの砲身を動かし、その動きを見て「よし。動きに異常なし」などとやっている。

通信科でも、重い通信機を動かして普段掃除のなかなかできない部分の埃を雑巾(ソーフと呼ぶ)で丁寧にふき取る。山口通信長もソーフを手にあちこち走り回って通信機を拭いたり下士官嬢たちと床を拭いたりと忙しい。

黒多砲術長は各部署を見回って

「細かい部分も今日思い切ってきれいにしよう。なんでも、年明けに呉の海軍工廠の士官が来るという噂を聞いたからね、きちんと綺麗にしておかないと<大和>の名折れだからね。頼んだよ」

と言って第一砲塔の配置の兵曹嬢は「ほう~呉の海軍工廠のね。ご苦労さんでございますな。で、そのお嬢様方なにしにいらっしゃるんで?」と黒多砲術長に言うと砲術長、

「なに言ってるの、お嬢様士官じゃないよ。男性士官が来るんだから余計きちんとやってよね」

というにおよび下士官嬢や兵隊嬢たちは

「な、なんですとー、砲術長なんでもっとはように言うてくれんのですか!おいみんな、男性士官が年明けに来なさるんじゃと、身ぃ入れて綺麗にせえや!」

大慌てでもう一度たったいま掃除した場所を点検する。黒多砲術長、その様子を見てクスッと笑いながら

「男性士官が来るというのはいい刺激になるね。ときどき来てくれたらいいのになあ」

と独り言ちる。

 

そんな中副砲分隊では高田兵曹が何だかうきうきとしてソーフを使っている。彼女の班員の西田水兵長がそれを見て

「高田兵曹、なんや嬉しそうですなあ?なんぞあったんですか」

と尋ねると高田兵曹はうれしそうな顔で西田水兵長を振り返るとその耳元に「あんまり大声で触れ回ったらいけんで?うち、年が明けた一月の二十日にトレーラー(ここ)で結婚式挙げるんよ」とささやいて西田水兵長は思わず「わあ。ええですねえ!」と大きな声を出してしまっていた。高田兵曹が慌てて「しーっ、大声出したらいけんいうんに」といったものの分隊員たちが耳ざとく聞きつけて二人のそばに駆け寄ってきて

「どうしたんじゃね西田さん」「なにがあったがです、兵曹?」

と騒々しくなってしまった。閉口している高田兵曹、そこににこにこしながら生方中尉がやってきて

「おおみんな、まだ知らんかったのか?…なんだ高田兵曹いい事なんだから教えてあげたらいいのに。私の口から言っていいね?実はね高田兵曹は年明けに結婚するんだ。お相手は<南洋新興>グアム支店長!すごいだろう~、みんなもあやかれるようにその日は結婚式に参列しよう。砲術長にはお許しいただいてるからね」

と言ってその場の皆は「ギャーッ!」と叫んで祝意を表した。高田兵曹、照れくさそうに微笑んでいる。

 

そんなころ、航海科の区でも大掃除が行われていて、松岡分隊長・麻生分隊士が指揮しながら粛々と掃除は進んでいる。ハシビロコウのハッシー・デ・ラ・マツコに、小犬のトメキチそれに仔猫のニャマトも箒を使ったり塵取りをもっていたりソーフで床を拭いたりと忙しい。

小泉兵曹が

「おおい、部屋の中が済んだらそれぞれのチェストの中の整理せえや。なんでも年明けに内地の工廠から男性の士官が来なさる言うてよ、汚あにしとったら恥ずかしいけえちゃんとしとけや」

と言って亀井上水だの酒井水兵長たちが「ハーイ、きれいにしますぅ」と返事をする。石川二等兵曹が

「酒井水兵長はいつもきれいにしとってじゃが亀井上水は散らかっとるけえ、きちんとせえや。もし男性士官に除かれたら恥かかんならんけえの。航海科のみんながほうじゃ思われたらかなわんけえね」

という。桜本兵曹が笑いながら

「ほうじゃわ、石川兵曹はいっつもきれいに整理整頓しとってから、亀井上水は見習わんといけんで」

と言って亀井はわざとプーっとふくれて見せてみな笑った。

やがて部屋の掃除を終えて、各自は自分のチェストを点検し始める。亀井上水のチェストの中はごみこそないものの雑然としているので見かねた桜本兵曹が

「石川兵曹。すまんが亀井上水のチェストの整頓を手伝うてやってくれんかね?」

といい石川兵曹は快く「わかりました。亀井上水、ちいとうちに見せてみんか…ありゃこりゃあいけんねえ」と言いながら亀井のチェストの整頓を始める。

「さて」

と桜本兵曹は独り言ちるときれいに整頓された自分のチェストの奥から何やら入った大きめの巾着袋を取り出した。そしてしばらくの間その袋を眺めていたが

「これは年が明けたら…」

とつぶやいてチェストの奥に戻した。小泉兵曹はそれを聞いて聞かぬふり見てみぬふりをしたが、その中身がなにであるかを知っていた。

(オトメチャン、あれをどうするつもりなんじゃろうか。あの中身…オトメチャンにとっては大事なものだったが、しかし今となっては)

しかしさりげなく作業を続ける小泉兵曹であった。

 

そして新年。正月三日である。

この日オトメチャンは上陸日である。同じ上陸組に高田兵曹、長妻兵曹がいた。高田兵曹は「うちの家で遊ばん?」と言って二人を自分の<>に誘った。オトメチャンには、紅林の件の時世話になった高田の家、今となっては懐かしさがある家に

「行ってもええんですか?」

と嬉しそうに言って長妻兵曹とともに訪ねた。

今日は正月ということもあってこの家を使う将兵嬢はいないらしく、家は静かである。高田兵曹は二階に上がると「高田」の表札のある戸を開けた。ここは彼女の私室である。

「お邪魔します」

と桜本と長妻は入り、高田は「まあ楽にしんさい」と言って茶の用意を始める。それを桜本兵曹は手伝いながら

「あの、高田兵曹。長妻兵曹…」

と言った。どこか切羽詰まったような言い方に高田と長妻は一瞬顔を見合わせてから

「…なんね?どうしたんね?」

と尋ねた。すると桜本兵曹は

「あの、今夜…うちレッコしたいものがあるんです。その…お二人に立会人になっていただきたいんです」

と言ったその表情はどこか必死なものが現れていて、高田と長妻は黙ってうなずいた。

 

そしてその晩――

  (次回に続きます)

 

            ・・・・・・・・・・・・

呉海軍工廠の男性技術士官が来るというのでどこかうきうきした感じの『女だらけの大和』ですが、桜本兵曹いったい何をするつもりなのでしょうか。次回をご期待ください。

 

レッコ。海軍の言葉で「捨てる」と言った意味です。
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コメント

河内山宗俊さんこんにちは
新しい道を歩むには捨てなきゃいけないものもありますね。

高田さんのあのチェスト問題懐かしいw、でもその彼女も生まれ変わって結婚の時を迎えました。まさに娘を嫁に出す気分ですね。

今後この三人はどうなりますかご注目を!
2017-06-11 Sun 13:25 | URL | 見張り員 [ 編集 ]
オトメちゃん、あの日々の思い出を処分なさるのでしょう。チェストと言えば高田さんなのですが、あの高田さんがご結婚。なんとなく、娘を嫁に出す父親の心境ですね。
もう一人の立会人、長妻さんも加えて一時は許嫁三人娘だったんですが、三者三様という結果です。
2017-06-11 Sun 02:46 | URL | 河内山宗俊 [ 編集 ]

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