横須賀の花嫁Ⅱ 加東副長の場合〈4〉解決編

その日の午前中、『武蔵』の艦長以下科長たちそして横須賀海軍軍需部の要人たちが一堂に集ったのはとある大きな旅館――

 

「ホテル」と言っても差し支えないくらいの構えの旅館に新婚の鍛冶屋航海長は目を瞠って

「すごいですねえ、さすが大型艦の副長と軍需部の部長の結婚式となるとさすがですねえ」

と感心したように言ってそばにいる塚田砲術長や村上軍医長たちがクスッと笑った。

女将に案内され、一同は控室に入る…

そしてそれから小一時間後にいよいよ挙式が始まった。挙式場に皆が座って待つ中、新郎新婦が静々と入場。その美しさに皆は息をのんだ。

新郎の瀬戸口大佐はこれ以上ない凛々しさの一種軍装。そして花嫁の加東中佐は白無垢姿も楚々として可憐である。その可憐な姿を、新郎の母親が涙を浮かべて見つめ時折うなずいているのを鍛冶屋航海長は見て

(副長良かったですね。瀬戸口大佐のお母さまのあのうれしそうなお顔、私はしっかり拝見しましたよ)

と思った。

皆の見守る中で杯ごとは終わり、列席者も杯を干す。本来は親族だけのものだが、「艦や軍需部の仲間も家族同様だから」という瀬戸口大佐のたっての申し出で杯をいただくことになったのである。

猪田艦長は満足そうな微笑みを浮かべて退出する新郎新婦を見ている。村上軍医長も林主計長も嬉しそうにほほ笑んでいる。

軍需部で瀬戸口大佐の下で働く鍛冶屋健吾中佐も、妻の実子中佐の隣に座って「よかった、ほんとうによかったね」と小さな声で話し、実子も深くうなずいた。

そのあとの披露宴では色打掛の後、なんと花嫁は洋装、ウエディングドレスをまとって皆の喝さいを受けた。鍛冶屋航海長は夫に

「副長は何をお召しになってもようお似合いですね。見てくださいあのドレス、とても副長にお似合いではないですか、素敵ですねえ」

と言ってうっとりとした表情である。

楽しい披露の会食の場もやがてお開きとなり、新郎新婦の見送りで皆は旅館の玄関を出た。

鍛冶屋夫妻は瀬戸口大佐、そして副長に

「おめでとうございます、末永いお幸せを祈ります」

と言ったあと、航海長は「ゆっくり休暇を楽しんでらしてください。艦のあれこれ、どうかご心配なきよう」と言って副長を安心させた。

副長は嬉しそうにほほ笑みながら

「ありがとう仮谷さん…じゃなかった鍛冶屋航海長。不在中迷惑をかけますがどうぞよろしく」

と言って航海長と握手を交わした。

 

旅館を出る一行の中に、新夫婦の両親たちがいてこれが仲良く話をしながら歩いていた。ふと瀬戸口の父親の嘉左ヱ門が、加東副長の父親に何か話しかけると二人は先を歩く『武蔵』の猪田艦長に小走りに歩み寄ると嘉左ヱ門が

「艦長様、今日はお忙しいところをありがとうございもした」

と言い加東副長の父が深く頭を下げた。嘉左ヱ門も頭を下げた。猪田艦長は歩をとめて二人に敬礼し

「とてもいいお式と披露宴でしたね、二人の人柄がよく表れていてよかったですよ」

と言ってほほ笑む。その微笑みをまぶしそうに受け取り父親たちは

「どうぞこれからも二人を御見捨てなく」

とあいさつし、母親たちも「どうぞよろしくお願いします」と頭を下げた。

 

そんなころ、夫婦となった二人はそれぞれ衣装を脱ぎ、風呂に入りほっと一息ついていた。

風呂から上がり今夜からを過ごす部屋に戻った浴衣姿の副長は、そこに夫となった剛三がいるのを見たとたんなぜか急に恥ずかしくなってうつむいてしまった。

剛三は優しく微笑みながら

「憲子さん、どうしたの?」

と言って近寄ってきていきなりのように彼女を抱きしめた。ハッ、と息をのんだ彼女であったが軽く息を吸って

「ごめんなさい、なんだか私、その、恥ずかしくなってしまって」

と言って剛三を見つめた。その瞳がいかにも恥ずかし気な感じで剛三はたまらなくなり

「のりさん…あなたはとてもきれいだ」

と小さく叫ぶとぐっと強く副長を抱きしめた。突然のことで「う…」と軽くうなった副長、その彼女の顔をそっと自分のほうへ向かせると剛三は

「これから先、長い人生を一緒に歩こう。いろんなことがあるだろうが、私はあなたとならどこまでも、歩いて行ける。そして私はあなたを守る…」

と言って…彼女の唇に自分のそれをそっと重ねたのだった。

 

新婚の夜は更けて行った――

 

          ・・・・・・・・・・・・・・・

幸せになってほしいですね。この二人なら大丈夫そんなことでも乗り越えてゆけるでしょう。

新しい夫婦たちのこの先をどうぞ見守ってやってください。

 

関連記事

コメントの投稿

非公開コメント

森須もりんさんへ

森須もりんさんこんにちは
お返事が大変遅くなってごめんなさい。

人の一生において結婚式ほど思い出に残る出来事はないと思いますね^^。これを呼んでご自分の時を思い出していただけるととっても嬉しいです。

私も若い時から綺麗とは言われたことがありません。若い時の自分の顔も好きではなかったです。
でも、最近になってスコ~シ自分の顔も好きに、というと変ですが認められるようになってきました。きっと開き直りなんでしょうけれどもそれでもいいと思っていますw。

横須賀の花嫁シリーズ、読ませていただきました。

結婚式って、やっぱり嬉しいことですよねえ。
恥ずかしながら、自分の結婚式を思い出しました。
思い出させてくれるような
柔らかな映画のシーンのよう。

私、人から美人と言われたことがないので
若いときは自信がありませんでした。
年を重ねるごとに、ま、いいか!という
開き直りがでてきましたー(笑)
って、変な話になりました。



ponch さんへ

ponchさんこんばんは
加東副長の挙式、無事済んで『武蔵』のみんなもほっとしております^^。

そうなのです、この世界では女は白無垢で結婚をします。かっこいい一種軍装や二種軍装の副長…それもお見せしたいですね。

お知らせですがどうもこのブログへのログインがうまくできなくなりました。よって、この後の記事はGOOブログから発信します。こちらのブログは残しますので過去記事は読めますが、コメント欄は閉じます。過去記事へのコメントも新ブログへ書きこんでくださるようお願いいたします。

どうぞ今後もよろしくお願いいたします!

加東副長の結婚式無事に終わってよかったですね。
副長の美しい白無垢姿と瀬戸口大佐の凛々しい軍装が目に浮かぶようです。

それはそうと、女だらけの世界でも女は白無垢なんですね。
自分としては凛々しい軍装の加東副長も見てみたかったです。

河内山宗俊さんへ

河内山宗俊さんこんばんは
おめでたいこと続き、大変いいんですがもしも二人同時に…となるとほんと大ごとですからね,うまくゆくといいんですが(-_-;)。

自信に満ちているけど中身の伴わない女性(いや男性も)はちょと願い下げですね。むつかしいかもしれないけどそうあってほしい、そう思いますね。

おめでた続きの武蔵なのですが、同時にお二人がご懐妊となった場合は、後任人事が大変なことになりそう。
自信に満ちた女性は美しいものですが、やはり内面を伴っていないとね。

sukunahikona さんへ

sukunahikonaさんおはようございます
あのあたたかさがうそのような寒さ、クリスマス寒波とはよく言ったものだと感心してしまいますね。
インドにいらっしゃるんですかいいなあ^^、インド旅行が素晴らしいものでありますように。
今年一年ありがとうございました、また来る年もよろしくお願いいたします。よいお年を追う替えくださいませ。

寒いですねー、やっぱりクリスマスです。
インドに行ってきます。なんだか変な感じです。いろいろやらなきゃいけないことも残ってますが急な話で仕方がありません。
では、風邪などひかないように、帰ってきたらまたゆっくり遊びに来ます。よいお年を

まろゆーろさんへ

まろゆーろさんこんばんは
コメントをありがとうございます!

結婚式にはその夫婦や親たちの心のうちが現れると思っております。古いと言われても、やはり日本人である以上継承してゆきたいものが結婚式の中にはあると思っています。
主役だけでなくすべての人が美しい、そんな結婚式が理想です。
剛三さん・憲子さんきっと幸せになります♡

クリスマスイブ…仕事に始まり仕事に終わりました(-_-;)。が、仕事が終わればのーんびり、ですww。好きな艦艇の本を見ながら楽しいイブでございますww~!
ええっ、昭和天皇のご大典のときに!!
なんとおおらかな時代だったのだろうと楽しくなりますね。それにしてもサンタの扮装とは、そんなころからクリスマスがあったとはびっくりです。せいぜいミッションスクールくらいだったと思っておりましたw。
そういえば夜7時ころだったか青梅街道を10台ほどの大型バイク集団が通ったのですがそれに乗る人たちがサンタやトナカイの扮装で思わず見入っておりました。隣り合わせた自動車の中の人たちが手を振っているようでした。
なんかほほえましい風景でした。

にいさまも素敵なイブでありますように♪

こんにちは。
見張り員さんの得意とされている結婚式の情景の描写。今回も堪能させていただきました。
これまで結ばれた新郎新婦の姿に日本人の精神の真髄がちりばめられていて、いつも心洗われる思いがしています。主役も脇役も風景もすべてが美しいです。
今回の剛三さんと憲子さんも末永く幸せになってもらいたいです。

メリークリスマスですね。
ヤフーのニュースで昭和天皇のご大典の時に町の人がサンタの扮装でお祝いしたとか。
もう90年も前なのに当時から日本にクリスマスの風習があったことに驚きました。
すてきなイブをお過ごしくださいね。
プロフィール

見張り員

Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

最新記事
最新コメント
フリーエリア
カテゴリ
未分類 (21)
大和 (484)
武蔵 (66)
大和と武蔵 (41)
海軍航空隊 (28)
麻生分隊士 (3)
オトメチャン (37)
連合艦隊・帝国海軍 (154)
ふたり (69)
駆逐艦 (10)
ハワイ (8)
帝国陸海軍 (23)
私の日常 (109)
家族 (17)
潜水艦 (3)
海軍きゃんきゃん (24)
トメキチとマツコ (2)
ものがたり (8)
妄想 (5)
北辺艦隊 (1)
想い (14)
ショートストーリー (4)
アラカルト (0)
エトセトラ (5)
海軍工廠の人々 (3)
戦友 (5)
月別アーカイブ
リンク
FC2ブログランキング
FC2 Blog Ranking

FC2Blog Ranking

最新トラックバック
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム
RSSリンクの表示
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード