山中大佐危険な夜 1

山中大佐と繁木少佐はリンガ泊地に到着したーー

 

ここに目指す空母の翔鶴・瑞鶴がいる。二人はこの空母に「松岡式防御装置(つまりラケット兵器)」を実験的に施しに来たのだった。そのころには工作艦もリンガに入り「これならすぐにできますね、大佐」と繁木少佐は喜んだ。

山中大佐は瑞鶴、繁木少佐は翔鶴に一週間ほどそれぞれ分かれて泊まり込み必要事項を検分してから装置をつけることにした。

大佐は

「では繁木君。一週間後に瑞鶴で。それまで大変だがよろしく願います」

と言って繁木少佐と巡洋艦・歯黒を後にすることになった。大勢の歯黒乗員が別れを惜しみ、二人の佐官は白井艦長・田中副長に

「長い間お世話になりました。楽しい時間が持てました、ありがとうございました」

と心から挨拶して舷梯を降り、内火艇に乗り込みまず瑞鶴へ。山中大佐が瑞鶴に乗り込んだ後内火艇は翔鶴に向きを変え、繁木少佐が翔鶴へ乗り込んでいった。

山中大佐は貝塚たけよ艦長以下幹部の歓迎を受け、

「お疲れさまでした、まずはどうぞお部屋でごゆるりと」

と一室に案内された。従兵嬢が一人ついていて艦長は

「山中大佐にお付けしました従兵の柏原タキ水兵長です、何なりとお申し付けくださいますよう」

と紹介してくれた柏原水兵長は恥ずかし気に

「柏原タキ水兵長であります、どうぞよろしくお願いいたします。ご用の際はどうぞ私にお申し付けを」

とあいさつした。その初々しさに山中大佐は妻の次子を重ねていた。そして「こちらこそよろしくお願いいたします。気の利かない男ではありますがお気になさらないでくださいね」と言ってほほ笑んだ。その微笑みに柏原水兵長はほっとしたような笑みを浮かべた。

山中大佐は部屋で二種軍装を脱いで防暑服に着替えた。そして部屋の外に控えていた柏原水長に

「飛行甲板を見せてください」

と頼み、水兵長は「ではこちらへ」と大佐を飛行甲板へいざなった。

途中で貝塚艦長に出会い艦長は「私がご案内しよう」と水兵長と交代、水兵長は敬礼して大佐とそこで別れた。

貝塚艦長は

「今度の兵器は素晴らしい防御装置だと聞いています、しかも元々はどこかの艦の士官の持ち物がヒントだと伺っています。さぞ素晴らしいものなのでしょうね!」

と瞳を輝かせた。

山中大佐ははい、と言って詳しい話をしようと提案した。そこで艦長はすぐに飛行長を筆頭に各科科長らを呼び、大佐は飛行甲板で早速「松岡式防御装置」について話を始めたー。

 

「ほう…」と一同の間からため息が漏れた。

飛行長が

「そのような素晴らしい防御装置が施されたら空母にとっては無敵になりましょう。我々航空部隊にとっては大変ありがたい装置です」

と声を弾ませた。そして航海長も

「連中、飛行甲板の日の丸部分を狙って投弾してきますから、その辺を重点的にしていただけると助かります」

というと砲術長が

「艦の左右の張り出し機銃座にも何とかできませんか?敵機の機銃掃射にを跳ね返せると思うんですが?」

と急き込んで尋ねる。

山中大佐はそれぞれにうなずいて

「わかりました。これから検証をしようと思います。順番にしますので…まずは飛行甲板からでよろしいですか?」

と静かに言うと皆は異存なしとうなずき「願います」と言った。

 

それから大佐は、忙しい毎日を送ることになった。関係各科と連絡を取りあい、時には各分隊将兵嬢たち会わせて「この辺が危ない」とか「この辺りに投弾されることが多いです」「機銃掃射はこの辺を狙ってきます」などと意見を聞き、装置をどう置くかを考える日々である。

山中大佐はその日の課業終了後、飛行甲板で一人妻をしのんでいた。

遠い陽が真っ赤に水平線に落ちて行き、だんだんあたりは宵闇が這い出して来る、その時間になると大佐はどうにも妻の次子が恋しくなる。

(呉のあの家…夕餉のにおい、そして迎え出てくれた次ちゃん…そして、布団の中での次ちゃん…)

大佐の心の中は次ちゃんで占められて、どうにもこうにも切ない気分でいっぱいになった。

そして大佐は一つ大きな咳をした。一昨日あたりから風邪をひいたのか、のどが痛む。多少発熱してきたのか寒気がするが

(ここで負けていられない。もうひと踏ん張りもふた踏ん張りもしなければ)

山中大佐はへそのあたりに力をふん、と入れた。その晩柏原タキ水兵長が「お風呂をお使いになりますか」と尋ねたのへ「願います」といった大佐、ふろに入ったものの寒気が止まらず夕食の後

「申し訳ありませんが少し寒気がしますので早めに寝かせてもらいます。もしも緊急に何かありましたら遠慮なく起こしてください」

と水兵長に言うと彼女は目を見開いて

「それはいけません。軍医長に見てもらったほうがいいでしょう?」

と進言したが大佐は微笑んで

「いやいやそれには及びません。一晩眠れば大丈夫、治りますよ」

といったので水兵長は「ではご気分がよくないときはお呼びくださいませ」と言いおいてそっと部屋を出た。

ドアが閉まったのを見届けて大佐はふっと息をつくとふんどし一枚になるとベッドにもぐりこんだーー

 

どのくらいたっただろうか、大佐はすさまじい寒気に目を覚ました。これはいかん、と独り言を言いながら起き上がりベッドの下の引き出しから毛布を一枚取り出した。寒くて寒くてたまらなかった。部屋の空調を止めた。

ふーっと熱い息を吐いてベッドに戻ろうとしたとき、彼はベッドの上に誰かがいるのを見た。

(まさか…幽霊ではないか?それとも話に聞いている南方妖怪の類か?)

さらに寒気が増幅したがここは男の子、踏ん張らねばとふらつく両足を踏みしめ、ベッドの上のなにかと対峙する格好になった。

なぜか…入るはずのない月明かりが舷窓から差し込み、大佐はその時初めてベッドの上にいるだれかの顔を見ることができた。

「あ、あなたはー!」

大佐はのどの痛みを忘れて叫んでいたーー。

  (次回に続きます)

 

              ・・・・・・・・・・・・・

山中大佐、リンガ泊地に到着してすぐ大変忙しい身になりました。あのラケット兵器に正式名が付いたようです。「松岡式防御装置」、なんとも素晴らしい名前が付きました。果たして『瑞鶴』・『翔鶴』にきちんと施せるのでしょうか、ご期待ください。

そしてまたも山中大佐は女難に陥るのでしょうか??次回をお楽しみに。

翔鶴(WIKIより)翔鶴
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Comments 6

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見張り員  
河内山宗俊さんへ

河内山宗俊さんこんばんは!
風邪は怖いですね、私も三年ほど前の年末から年始にかけて高熱を出し苦しかったですw。
新さん、女難の相が出ているんでしょうか。大ごとですw。
ベッドにいたのはだれ?
そしてリンガと言えばあれしかないのかもww。

2015/12/09 (Wed) 00:15 | EDIT | 見張り員さん">REPLY |   
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sukunahikona さんへ

sukunahikona さんこんばんは!
さあこのお化け?、足があるのかないのか!?
どうぞご期待くださいませ^^。
いつもご訪問をありがとうございます!

2015/12/09 (Wed) 00:13 | EDIT | 見張り員さん">REPLY |   
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オスカーさんへ

オスカーさんこんばんは!
夜のおつとめ…うふっ、なんだか隠微な感じがしていい言葉ですねえw。
そしてそして大佐の貞操は守られるのでしょうか、大変気になりますね^^。
大変な空気の乾燥、もうたーいへん、ですw。
オスカーさんもどうぞお大事に、ノロウイルスが流行だそうですからくれぐれもお気をつけてくださいませね!

2015/12/09 (Wed) 00:12 | EDIT | 見張り員さん">REPLY |   
河内山宗俊  

御難続きですね、新さん。風邪は万病の元ですから、さっと治してしまうのがよいのですが、いったい何者がベッドにいたのでしょう?リンガといえばあの事件の再来?

2015/12/07 (Mon) 10:32 | EDIT | REPLY |   
sukunahikona  

危険な夜ということで朝から身を乗り出して読んでみればお化けが出たでござる

2015/12/07 (Mon) 09:54 | EDIT | REPLY |   
オスカー  

おはようございます。
夜も熱心に「おつとめ」に励む方がいるようで……ああ、彼の貞操がアブナイっ!(笑) 空気が乾燥していますね。温かくしてお過ごし下さいませ。

2015/12/07 (Mon) 08:08 | EDIT | REPLY |   

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(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)