2017-10

「女だらけの戦艦大和」・空中戦2 - 2014.12.07 Sun

 マツコとトメキチは、三毛の仔猫のニャマトを連れて岩井少尉の元へ行く前に、航海科の割り当ての握り飯の包みを二つ、取り出して行った――

 

岩井少尉は二次士官室(兵隊からたたき上げの士官たちが集まる部屋)に居てマツコ達を見ると「一緒に食べよう」と言って、まずマツコからニャマトを抱き上げた。ニャマトは岩井少尉の顔を見ると嬉しそうに「ニャ、ニャ、ニャ」と鳴いてほかの特務士官たちが「あ、ニャマトだ!」「ニャマトを私にも抱かせて」と寄って来た。

その特務士官たちに「いいけど?でも手荒に扱うんじゃないわよ!泣かせたら承知しないわよ」とマツコは毒づいて握り飯を大きなくちばしで二つに割って食べる。トメキチも握り飯を上手に前足で持ってかじりつく。そしてご飯を飲み下してから

「平気よマツコサン。みんな優しい人ばっかりじゃない?――もしかしてマツコサン」

と言っていたずらっぽい瞳でマツコを見る。マツコはそのトメキチを見つめて「もしかして、なによ?」という。するとトメキチはフフフと笑って

「みんなにニャマトを取られたくないとか?マツコサン、ニャマトをほんとに可愛がってるものねえ」

と言ってマツコは金色の目を不自然に泳がせて「そそそ…そんなことあるわけないでしょう?別にニャマトが誰と遊ぼうとなにしようとアタシはどうこうありませんからね!だ、だ、第一ニャマトは岩井少尉と松本兵曹長のものですからね」と言って後ろを向いてしまう。

トメキチは「素直じゃないのね、マツコサン」と笑って握り飯をさらにかじる。そんなころ航海科では「握り飯が二つ足らんで!誰がギンバイしよったんじゃー」と麻生分隊士が怒り心頭に発しているのをこの二人は知る由もない。

 

それはさておき。

昼飯を終えたマツコとトメキチは、ニャマトが岩井少尉に抱かれてミルクを飲むのを見ていた。そしてマツコは「かわいいわねえ、トメキチ。見なさいよあの綺麗な足の裏。ピンク色じゃない、いいわねえプニプニしてて!アタシここ舐めたいわ」と言ってトメキチに「肉球ね。でもマツコさん、舐めるのはやめてあげて。ここは一番敏感だから。そんなに舐めたいたら僕の肉球をなめたらいいわ」と足を差し出され、「いやあねえ!アンタのそんなきったない足の裏なんかなめたかないわよ」と言って食いつく真似をしてトメキチは笑った。

 

やがてニャマトがミルクを飲み終えた。岩井少尉はその口の周りをハンカチでそっと拭いてやっている。その周りには何人もの特務士官たちが取り捲いて見つめている。その一人、高角砲分隊の犬飼中尉が「岩井少尉、そげえにしとるとなんやらお母さんみとうですねえ」と言って微笑んだ。他の士官たちも「ほうじゃのう、お母さんみとうじゃな」と言う。岩井少尉はちょっと恥ずかしげに顔を伏せていたが

「ほら、もうええよ。ハッシー、トメキチ。ニャマトを遊ばしてやってつかあさいな」

というとニャマトをそっとマツコの肩から斜めに下がっている布製のカバンの中に入れた。ニャマトが「ニャ、ニャ、ニャ…ニャマト、ニャマト」と言ってマツコに遊びを促す。トメキチが「ニャマトは遊びたがってるよマツコサン。早く遊んであげようよ」といい、マツコは「そうね。じゃあ岩井さん、ニャマトと遊びに行ってきます」と歩き出す。

マツコ達の姿が部屋の外に消えると犬飼特務中尉が「岩井少尉がニャマトのお母さんなら…お父さんは誰じゃろうね?」と真面目な顔でおかしなことを言い皆は笑った。岩井少尉も笑ったが、いつの間にか部屋に入ってきていた棗主計特務大尉の

「あら~、そんなの決まってるじゃない?機関科の松本兵曹長よ。岩井少尉と松本兵曹長はねえ、ウフフな御関係よ」

という声に岩井少尉は頬を真っ赤に染めると部屋を走り出てしまった。棗大尉はうふふっと笑うとその場の特務士官嬢たちに一言「――ほら図星!」と言って嫣然と微笑んだのだった。他の士官たちはぽかんとして棗大尉を見つめている――。

 

マツコとトメキチは防空指揮所へ上がった。が、そこでは麻生分隊士が見張り員たちを前にして「昼飯を二つもギンバイした犯人が名乗り出ん、ええ加減にせえよ、尻を出せえ」とあろうことか松岡中尉のラケットを持って仁王立ちで怒鳴っている。そばで松岡中尉が何も言わないで黙っているのが気味悪い。ともあれ分隊士がそうとう怒っているらしいというのがマツコとトメキチにも解って、トメキチは

「マツコサン、早く謝った方がいいわ。僕たちつい、持って来ちゃったもの。ほんとになぜかどうしてかつい、なんだけどいけないことはいけないわね」

と震えた。マツコも金色の瞳をたいへんに動揺させて「そうね…でもアタシもさすがに今日の麻生は怖いわ。人間って食い物の事になると怖いのねえ」と震えている。恐怖感で体中の羽根が逆立って普段のマツコとは違う鳥のようだ。と、マツコの背中でニャマトが鳴いた。不意にマツコは、肩からカバンのひもを取るとニャマトをカバンごとトメキチに抱かせて「いいこと?謝るのよ麻生に。で、その時このニャマトを差し出すようにして謝れば一発よ。――いい?ニャマトちゃん、あなたのそのけがれない瞳が私たちを救うの。お願い協力してね」とニャマトにいい含めおそるおそる、怒り狂う麻生分隊士のそばに立った。

分隊士はいきなりそばに来たマツコとトメキチに、ラケットを振り上げたまま「なんじゃ!」と怒鳴った。トメキチが一歩前に進み出て

「ごめんなさい僕たちついうっかり、置いてあった握り飯の包みを二つ、もってっちゃったんです。でもわざとじゃないの、解ってください。本当にごめんなさい」

と言ってさりげなくニャマトを前に出すようにして謝った。マツコもトメキチの隣に立って「ごめんなさい」と謝る。

麻生分隊士は「き、貴様らか握り飯持ってったんは!」とラケットを振り上げたが、ニャマトが分隊士を見上げて「ニャ、ニャ、ニャ、ニャマトニャマトニャマト―」と鳴いたのでラケットを持った手を下におろした。突然麻生分隊士の表情が柔和に変化したのを、マツコもトメキチもそして、整列中の見張兵曹ほかの連中もしっかり見た。ラケットを下した分隊士を松岡分隊長がじいっと見つめている。

分隊士はラケットをその場にガランと落としてトメキチの手からニャマトを抱き上げた。そしてニャマトにほおずりすると

「ハッシ―もトメキチもやたらとそこらに置いてあるもんを持っていったらいけんで?人数分の割り当て言うもんがあってじゃけえな。お前たちの飯は烹炊所に行けばもらえるじゃろう?なあ、ニャマト~」

と言ってニャマトに接吻。マツコとトメキチは再度「ごめんなさい、もうしません」と謝って分隊士は「わかったらええわ。二度としたらいけんで」と許してくれた。ニャマト効果、絶大である。

松岡中尉は床に投げ出されたラケットを拾うと一つため息をついて麻生分隊士に向き直り

「はあ~、麻生さーん。あなたは情にほだされやすいんですねえ。ニャマトの顔を見た途端あの悪鬼のような形相も、地獄の閻魔も真っ青な怒りも何処へやら。ダメですねえ、あきらめてるだろう!だからすぐそういう態度に出ちゃうんだろうが!もっと尻の穴をしっかり締めてかかれよ、いいか?解ったらもう一度この連中に『けつラケット』をお見舞いするんだ、やれ、やるんだ麻生さん」

と怒鳴った。すると麻生分隊士の怒りが今度は松岡分隊長に向いた。

分隊士は分隊長の前に仁王立ちになると

「そうはおっしゃいますがのう分隊長。ニャマトのあの顔を見たらたかが握り飯の包み二つくらいでこがいな大騒ぎをした自分が恥ずかしゅうなりますわ。人間には怒りの収めどころいうんもあるんと違いますか?それを教えてくれたんはニャマトじゃとうちは思いますが。ほいで!分隊長はなんでうちを悪鬼じゃの地獄の閻魔に例えるんですか?うちはそげえにひどい顔しとりますかのう?」

と食ってかかった。すさまじい迫力でその場の皆は立ちすくんだ。

あわてて見張兵曹が列から出て来ると「分隊士、いけません。そげえに分隊長に食ってかかったら後でどがいなお咎めを受けるか」と言ってその右腕をつかんだ。麻生分隊士はそう言われてやっと、ふう―ッと息を吐くと一歩、分隊長から引きさがった。

松岡分隊長は「おおお!見ましたか皆さん、これぞ愛の力です。麻生さんは今、特年兵君の愛の力によって私への攻撃を中止しました。愛、愛の力!すごいぞ、麻生さーん。さすがですね特年兵君。これからもその大いなる愛で麻生さんを支えてあげてちょうだいね、これ修子のお願い」と一気にまくし立てるなり「では私はこれで。皆さんごきげんよう」

とラケットを担ぐなり指揮所から去ってしまった。

「なんなんじゃあれは。うちにはまったく解らん」

そう、酒井上水が呟いた――

 

わけのわからない騒ぎのあと、各科の見張り担当兵は前甲板に集まって麻生分隊士の簡単な見張り術講義を受けることになった。担当の兵隊嬢たちはそれぞれ手に帳面と鉛筆を持ち麻生分隊士の講義を聴く。

傍にはオトメチャンが助手として控えている。そのオトメチャン、正面の呉の山の方から何やら黒い集団が湧きでてきたのを見た。細かいゴマ粒のようなパラパラとした集まり。

(あれなんじゃろう?まさか敵機)

そう思ったがよく目を凝らすとそれはカラスの集団であった。だんだんその数が増してきているような気さえする。(えらい集団じゃなあ。何処に行きよるんじゃろ)

そう思ううちにその集団は『大和』の上空を覆っていた。

 

防空指揮所ではマツコが叫んでいた、「トメキチ!危ない、中へ逃げるのよ。こいつら極悪カラス集団よ!!」トメキチがニャマトを抱いて逃げようとしたその瞬間――!

          (次回に続きます)

 

               ・・・・・・・・・・・・・・・・・

毎度毎度松岡分隊長のわけのわからないお話につきあわされる麻生さん以下は本当に気の毒です。

それはさておき、「極悪カラス集団」が『大和』上空に飛来!どうなるみんなの運命は!

次回をお楽しみに^^。


可愛い三毛猫ちゃんがミルクを飲む動画を見つけました!



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● COMMENT ●

まろゆーろさんへ

まろゆーろさんこんばんは!
ニャマトは『大和』のアイドルの座を、マツコとトメキチから奪うこと必至ですね^^。そしてこの子の存在感が『大和』の今後にも影響してくるような??
この動画を見たときまさに「萌え死に」寸前でしたw。なんて可愛い…もう言葉がありません❤
そして極悪カラス集団。
この連中がどうなるのか??お楽しみに♪

柴犬ケイさんへ

柴犬ケイさんこんばんは!
からすってけっこう頭がよいし力もあるので怖いですよね(-_-;)…うちではベランダの星場に置いてあった洗濯バサミをごっそり持って行かれました(泣)。
チワワが連れ去られたなんて…ぞっとしますね!
さてニャマトはどうなるのでしょう、そして松岡のラケットは唸りを上げるのでしょうか?ご期待下さい!

No title

一瞬にして骨抜き!! ニャマトの存在の有難さがこれから大和の津々浦々に浸透してくるのではないでしょうか。
そしてこんな動画が!! ネコ好きにはたまらない可愛らしさですね。おぉ、ネコ好きでなくても可愛く感じております。
極悪カラス集団の襲来ですか。新たなキャラというか役者が生まれそうですね。見張り員さんの腕の見せどころを楽しみにしています!!

No title

見張り員さん    こんばんは♪
いつもありがとうございます♪
カラス軍団が気になりトメキチ・ニャマト
がカラスに連れ去れないか心配です。
今回は松岡中尉のラケットが活躍しそう
ですね。
カラスが庭で遊ばせていたチワワを連れ去
った話がありカラスには注意ですね。
動画の三毛仔猫ちゃんミルクを飲んでいる
姿可愛いですね。

オスカーさんへ

オスカーさんこんばんは!
さあ、どうなるのでしょうか?マツコトメキチそしてニャマトの運命やいかに!?
松岡中尉が変なことしないよう祈りましょう(・・;)。
本日真珠湾攻撃の日、昔は「大詔奉戴日」と言いましたね。あの日出撃して行ったまま帰ってこなかった29機の攻撃機と、5艇の特殊潜航艇に心から合掌…
>「わだつみ」は青年のまま十二月
この句を今日はかみしめたいです。

すっとこさんへ

すっとこさんこんばんは!
私も気絶しました!この猫ちゃんかわいすぎますね、萌え死に寸前でした。
この哺乳瓶も「こんなのあるんだ!」とびっくりです。いやあ、奥が深い世界だ(なんのこっちゃ)。
そしてそして。
ニャマト危うし。
極悪カラス集団にどうにかされなきゃいいのですが――次回をお楽しみに^^。

こんにちは。
空中戦のお相手(?)登場でしょうか~マツコの出番はあるのか? 「カラス軍団に対抗するのはカモメの水兵さんです!皆さん、早くこれに着替えて!」と松岡さまが言い出さないことを祈ります。クチバシであちこち大和のみなさんが傷つけられたりしませんように。
今日は日米開戦の日ですね。植木里水さんの『
「わだつみ」は青年のまま十二月』という句にいろんなことを考えます。

No title

きゃぁぁぁぁああああああああああああ。
しばらく気絶しておりました。
動画可愛杉!こんな猫用哺乳瓶って
あるのでしょうか?
そして
きゃぁぁぁああああああああああああ!
極悪カラス集団が大和の上空を集団旋回ぃぃぃぃ?
ニャマト危うし!
神様仏様トメキチ様ニャマトを守って!

はづちさんへ

はづちさんこんにちは!
松岡分隊長の部下の降りまわしはすさまじいものがあります。怖いです…が、それに敢然と?立ち向かう麻生さんの勇気は特筆ものです。
仔猫子犬の破壊力はまさにメガトン級、それを前に出されては麻生さんもひとたまりもないですねw。
そうです、松岡はかつてニャマトを持ったまま艦内を迷走したことがありましたね。
極悪カラス軍団。
嫌な予感がいたします…次回を御期待下さいませ❤

おじゃまします

こんにちは
松岡分隊長、相変わらず皆さんをブンブン振り回してますねえ。(^_^;)
部下の前でデレデレする麻生分隊士はだらしがないのかもしれませんが、
それだけニャマトが可愛いという証拠ですし、
かくいう松岡分隊長もニャマトを抱えて走り回ったことがあったわけですからねえ。
子猫・子犬の可愛さは、とてつもない破壊力ですから、
麻生分隊士でなくてもデレデレしますよね。
さて、極悪カラス集団は、この後どうからんでくるのでしょうか・・・。


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ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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