2017-10

「女だらけの戦艦大和」・もったいないもほどほどに3<解決編> - 2013.11.10 Sun

その日は早朝からトレーラー在泊艦艇の医務科の面々はてんてこ舞いを強いられた――

 

『大和』『武蔵』は当然のこと、重巡・軽巡から駆逐艦そして海防艦・・・に至るまでのすべての乗組員に「水島の何々という見世に上がったか、そしてこういう男性と接したか。またそのさい男性はゴムを洗うなどの扱いをしたか」ということを聞きとり、その間に日野原軍医長、村上軍医長や神木軍医長他艦艇の軍医長、それに司令部から全権を委任された艦隊司令部の軍医など10名からが例の見世に乗り込んで行った。例の件を目撃した巡洋艦の兵隊嬢を面通しの為に同行して。

いきなり朝から軍医長たちの訪問を受けた見世では何事かと女将が顔色を青くして対応した。まず艦隊司令部の軍医長が女将に令状を見せた、そして

「この見世の男性従業員に規則違反をしたものがいる。詳しい話を聴取するため男性の全従業員をここに出せ。隠し立てすると営業禁止の措置を取るからそのつもりでいろ!」

と怒鳴って全従業員を並ばせた。

ぞの全男性従業員を睨みつけ、司令部軍医長は巡洋艦の兵隊嬢に「この中にその男は居るか?居るなら教えろ」と囁き、兵隊嬢は「はい」と言ってあの晩の男性を探す。その男性は二列に並んだ真ん中ほどにいて、「あの人です、二列目の右から六番目の」という兵隊嬢の声に駆け寄った軽巡の軍医長によって前に引きずり出された。

そして司令部軍医長はその場に座らされた男性に

「貴様か・・・貴様、重大な規則違反をしたという認識はあるか」

と問い男性はさすがに事の重大さに気がついていてガタガタ震えている。神妙な顔の男性たちと女将の前でその男性は事の詳細について語らされた。

「・・・もったいない、と思っただけです。他に変な意図は全くありません、本当です。信じて下さい」

最後は泣きながら話をした。司令部軍医長は他の男性たちを見返って

「この中に同じことをしたものは居るか?居るなら正直に名乗り出ろ!」

と怒鳴ったが他には誰も名乗り出ない、皆首を横に振り「そんなとんでもないこといたしません、絶対です」という。女将も「そのようなことを指示したことは天地神明にかけてございません」と誓う。

軍医長は彼らを一瞥した後、件の男性に

「いつからその行動に及んだか、そして何人の兵隊と接したか」

を訪ねた。男性は「あの日の三日前からしていました、それ以前はやっていません。最初は兵隊さんが眠ったあとしていたのですがあの日に限って眼の前でしました。接した兵隊さんは三日で二十人ほどになります」と言った。

日野原軍医長は「二十人か・・・皆所属が異なっているから大変だな」とつぶやいた。

 

そんなころ全艦艇では皆大騒ぎになっている。心あたりのある兵は緊急に上陸して男性と面通しをしていつ接触があったかを申告した後診察を受ける。

司令部の診療所に待機中の日野原軍医長や村上軍医長は

「とんでもないことになりましたね」

とため息をついた。昨日ああして別れたばかりでのすぐの再会にちょっと気分は複雑ではあるがそんなことを言ってはいられない状況でもある。『矢矧』の神木軍医長が寄ってきて、

「日野原軍医長、内地への帰還も近いというのにえらいことになりましたね。出航が伸びるようなことにならん様祈りたいものですね」

と言って二人のそばの椅子に座ってため息をついた。

そこに軍医長付きの従兵が紅茶を持って入ってきた・・・

 

それから一時間もたたぬうち、<身に覚えのある>兵隊嬢たちがぞろぞろと上陸してあの見世に行き、

「あの人だ、あの人!間違いない」

「まさかあの人そんなことしてたなんて」

「とんでもないことをしてくれたもんじゃのう」

と騒ぎ出した。司令部軍医長は彼女たちの中から男性が申告したより前に接触のあった兵隊嬢をまず除いた。そして残った二十人ほどを診療所に移した。そしてさまざまな問診と診察のあと

「お前たちは今後のひと月、乃至ふた月は自分の体調をよく観察すること。そのうえで普段とは違うものがあったらすぐ上司に申告すべし。この次の診察はさ来月の頭に再び行う、また内地へ帰還の兵については所属艦にて診察を行うのでそのつもりで」

といい解散した。それらの兵隊嬢の所属は多岐にわたっていたが、『大和』では当該の兵隊嬢は奇跡的に一人。その一人がなんと、航海科の小泉兵曹で彼女はすっかり打ちひしがれていた。

麻生分隊士は帰艦してきた小泉兵曹に

「えらい目ぇにおうたのう。まあしばらく様子を見んとな。ちいとでもおかしい思うたら遠慮せんと言えよ、もしものときはきちんとせんならんけえね」

といい、見張兵曹や石場兵曹も「まだ出来てしもうたとは決まったわけじゃあないけえ、あまり心配せんほうがええよ。却ってからだがおかしゅうなるで」と諭した。

小泉兵曹はうんうんとうなずきながら

「ほいでもうちはこがいな思いをしたんは初めてじゃ・・・あまりにうちが遊びが過ぎるんで天罰かのう」

としおれている。見張兵曹はそんな同期が気の毒になって思わずその肩を抱くと

「そげえなことはない。天罰なんかありえん・・・小泉は普段から一所懸命やっとるじゃないか、そげえな人に神様は天罰なんぞ与えんで?気ぃ、しっかりもたんか!」

と励ました。小泉兵曹の瞳に涙がいっぱい盛り上がり彼女はその涙を落とすと

「オトメチャン・・・うち、うちは」

というとオトメチャンの身体を抱きしめて泣きだした。それを麻生分隊士と石場兵曹が静かに見守っている。そこにトメキチとマツコがやってきて見つめている。

マツコはその金色の目をしばたたかせて

「なにがあったかは知らないけど、人間っていろいろ大変なのよねえ。あのはすっぱなコイズミが泣いてるなんて、ねえ」

とトメキチを見て言いトメキチも

「そうねマツコサン。そう考えると僕たち人間じゃなくって本当によかったわね」

と言ったのだった。

 

さて。

例の男性だが彼は艦隊司令部軍医長や日野原軍医長他の軍医長連中にさんざん絞られた。

日野原軍医長は

「幸い貴様には性病などの感染症がなかったが、もし万が一貴様の接触した兵が妊娠でもしたらそれこそ大ごとになる。彼女たちはそうして身ごもった子供を産むわけにはいかんのだ。すると、どういうことを行うか、それくらい貴様にも分るだろう?彼女たちの体にも心にも大いに傷がつくのだ。物を『もったいない』と思う心は素晴らしいとは思うが、事これに関してはその思いは捨てろ!物には一回限りというものもあるのだ。その辺をよく考えて行動しろ!」

と説教した。そのあとも十名からの軍医長たちに入れ替わり立ち替わり厳しく激しく説教された男性はそのあとしばらくの間すっかり萎えてしまい、一過性の不能に陥り兵隊嬢たちの夜の相手はできなくなったという。

 

村上軍医長は

「もうこういうことが一度でもあると信用できん。これからは上陸員すべてにゴム製品を持たすようにしましょう。自分の身は自分で守るしかないのです」

といい、その後上陸する際、女の必需品・待ち受け一番とともに「ゴムかぶと」も支給されるようになったという。

麻生分隊士はその話を漏れ聞いて、

「その方がええなあ。信用しとってるんにあげえなことされたらたまらんけえのう。・・・いうても、うちやオトメチャンには無用の長物、じゃがね」

と言って笑った。

オトメチャンはその後ろで無心に勤務中である。

その反対側で小泉兵曹が懸命に自らを励ましつつ当直をこなしてはいるが何処となく元気がない。と、その小泉兵曹が不意に顔をあげて麻生分隊士のもとに駆け寄ると何やら囁くとあわてて下へ降りて行った。

「どうしたんじゃろう、小泉兵曹」とオトメチャンが麻生少尉を見ると少尉は

「厠に行きたいんじゃと。よほど我慢しよったな」

と言って笑った。オトメチャンが笑って再び双眼鏡の元に立った。それから間もなく派手な足音がして麻生分隊士が

「誰じゃね?やかましい」

と顔を向ければそこには歓喜の色を顔中に浮かべた小泉兵曹の姿が。

小泉兵曹は麻生分隊士に抱きつくと

「やった、来ました来ました!これでもう平気です・・・御心配をおかけして申し訳ございませんでした」

といい見張兵曹にも抱きつくと「オトメチャン、いろいろすまんかったのう。でももうこれで平気じゃわ!」と言った。麻生分隊士が

「小泉兵曹、ちいと待てや。一体何のことじゃね」

というとオトメチャンを抱きしめたまま小泉兵曹は大声で叫んだ。

「来たんです月のものが!じゃけえもう、出来たかもしれん言う心配はなくなりました!」――と。

 
ほっと安堵の『大和』一同、いよいよ内地に向けて出航の時である。

 

そして――日野原軍医長と村上軍医長はあの日海軍診療所へ立ち寄った際キリノとその父親に会った。父親に大変な感謝をされた二人である。そして診療所の医官から「あのキリノという女の子は看護婦に向いている、ぜひにここに欲しい」とたっての願いでキリノは父親の入院とともに海軍診療所で看護婦の勉強をしながら働くことになったのだった。

 

(後日譚として・あの後の検査で不名誉な妊娠をした兵隊嬢は一人もなく、トレーラー司令部も各艦艇幹部もほっと安堵の胸をなでおろしたのだった)

 

            ・・・・・・・・・・・・・・・・・

大ごとにならなくて良かったですね。

むかし荻野式なんて避妊法があったのを思い出しました。どんな避妊法にも落とし穴があるらしいので望まない人は気をつけましょう。

わたしは子供が欲しかったし結婚してまる四年、出来なかったのでいろいろ辛い思いもしました。ですから赤ちゃんを産み捨てる事件には心底腹が立ち悲しかった。

不妊に悩む多くの女性の皆さんあきらめないでくださいね!

 

海軍で使用したとされる「ハート美人」、今でも同じ名前で販売されているんだって!(メーカーは岡本株式会社)画像お借りしました。

❤美人
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● COMMENT ●

ウダモさんへ

ウダモさんこんばんは!
ウダモさんの予想と期待をしっかり裏切る展開になりましたが楽しんでいただけましたか?
もったいないという言葉、確かにものによっては「そんなことしてもったいないー!」というのはありますが「そんな勿体ない、はないぞ!ええ加減にせえ!」というのもあるんですよね~(-_-;)。
グエエッ!ずっと同じマスク・・・ですか?あの使い捨ての奴ですよね??ちょっとそれは嫌ですね。ウイルスカモ~~ン、みたいな状態ではもはやマスクとは言えませんものね。
ウイルスが濃縮されているようでゾッとしますね…ウウウ!!

鍵コメさんへ

鍵コメさんこんばんは!
貴重なお話をありがとうございます。
洋の東西を問わずそうしたもったいないはあるんですね~w。でも「女だらけの大和」の話は極端でした^^。
またコメント入れにいらしてくださいね、待ってます!!

ぎょええええ!@@!

予想していた展開とは全く違ってたああ!ww
いやはや、さすが見張り員さん!完敗です!w
なんだか妙に清々しい気分ですよw
>物には一回限りというものもあるのだ。その辺をよく考えて行動しろ!
おおお!かっけええ!www
勿体ないを間違えちゃあイカンです(笑)
それを見事に文章で証明された見張り員さん、さすがです^^b
勿体ないからと言って、いつまでも同じマスクを着用している人を知っています。
自分はいいだろうけど、まわりのみんなは迷惑ですよね。
どう見てもウイルスなんて防げそうにもない代物に変化してしまった物をいつまでも…orz
あなたの風邪がうつったら迷惑するのは私たちです!…と言いたい(笑)

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matsuyama さんへ

matsuyama さんこんばんは!
独身女性には切実な問題ですよね(-_-;)。毎月コンスタントに来客がある人ほど、遅いと気が気じゃないものです^^。
この男性、いわゆる絶倫なのかそれとも手抜きをしているのか!?それはみなさまのご想像にお任せでございます♡
かつての軍隊では「突撃一番」という名称が一般的だったらしいですが海軍は「ハート美人」だったという話を聞いています。
今でもその名称のものが市販されているらしいですよ。こういうものの名称ってあまり時代を問わないんでしょうか、ね??

まろゆーろさんへ

まろゆーろさんこんばんは!
男性は・・・その・・・一日どのくらいの女を相手にできるのでしょうか・・・普通・・・(-_-;)。こればっかりは本物を観察するわけにもいかず、大変難儀いたしましたww!
ゴムかぶと。ウフフフ~~~!
かの男性に接したみんなもどうもないようでなにより。
そしてキリノはこの先看護婦として活躍する日が来ます!
そして『大和』他は日本へ・・・また騒動が始まります、どうぞよろしくです^^。

毎月のお客さんがあって安心するって、女性ならではの悩みですよね。
それにしてもその男性逞しいですね。三日で20人ですか。思わず何時間に1人って計算しちゃいましたよ(笑)。今はもう身体が続かないし、その気力もないですね。
海軍で今でも使用しているんですか、ハート美人。やはり男と女の問題は今も昔も、どこでもあるんですね。

オスカーさんへ

オスカーさんこんばんは!
私たちのころくらいまででしょうか、予防接種の注射器を数人使い回しだったのは。あれも肝炎などの感染を引き起こすとかでそのあとから別の形になりましたね。
戦時中、特に戦地ではどれほどの劣悪な環境で医療行為をしていたかと思うと・・・軍医だった大叔父に聞きたかったです。
赤ちゃんポスト、賛否ありますが殺すよりはいいのでしょうか。いずれにしても望まない妊娠は避けないと不幸になるのは子供ですものね。
いまでも駅のコインロッカーをみると時折、世間をにぎわしたコインロッカーベイビーというのを思い出します。あれも酷いなあと思いましたが今はもっとすごいことが行われていますね。
命ってそんなに軽いのかなあ??

朝からクスクスと笑いながら読み進みました。
3日で20人と!! この男、いくら商売とは言え強者ですね。1日におよそ7回も!! 出来る訳がない。それとも漏らしていないとか。
「ゴムかぶと」には思い出すだけでもニヤついています。見張り員さん、素晴らしい!!
それにしても皆さん全員良かったですね。そして何ごとも無かったように元に戻るところがカッコイイ。
さらにキリノさんの看護婦さんへの登用、粋な計らいも海軍ならではのかっこよさでしょうか。今どきこんな世界はないかもしれません。

Re:

こんばんは。注射器の再利用とかも昔問題になりましたよね?医療器具もきちんと消毒されていないとコワイですね。戦時中の医療関係者のみなさまはたくさんの苦労やジレンマがあったと思います。
コインロッカーベイビーとか信じられませんでしたが、最近は全く話をきかない赤ちゃんポストとかも利用者は増えているのでしょうか?女性だからこそ、女だらけだからこその今回の物語だと思いました!


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Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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