2017-09

「女だらけの戦艦大和」・大相撲トレーラー場所5 - 2013.07.31 Wed

いよいよ取り組みが始まる、というその時『大和』の野村副長が「ちょっと待って下さい・・・浜口大尉こちらに来なさい」と立ち上がった――

 

「どうしました副長?」

浜口大尉は野村副長に砲塔の陰に引っ張り込まれつつ言った。副長は息を整えると浜口大尉に

「ここで思いきり四股を踏んでみて」

と言った。浜口大尉は喜んで「よいしょー!」と思い切り片足を上げて四股を踏む。それを見ていた野村副長、「いかんいかん。もっとしっかりまわしを締めないと」とあわてると大尉の後ろに回ってまわしをしっかり締め直す。浜口大尉は

「野村副長、そんなに締めあげたら股間が痛いんですが」

という。しかし副長は

「これでいいんだ、浜口大尉。あなたねぇ、まわしが緩すぎて四股を踏むたび股の間が丸見えなんだ・・・私が恥ずかしいからちゃんとしてね」

と言ってから閉め方をもう一度確認して「これでよし」というと浜口大尉を開放し、自分も席に戻った。

さあ、いよいよ取り組みの開始である。

呼び出しが東の武蔵、西の大和のそれぞれの力士を呼び出し力士たちは土俵に上がった。塩を派手に捲く大砲さらに派手に捲く乃度風。四方に座を占める皆から大歓声が起こる。その騒ぎを聞きつけた手すきの『大和』乗組員がさらにその後ろに陣取り歓声はさらに大きくなる。松岡中尉とマツコにトメキチが大興奮して

「熱くなれよ、熱くなれ―!主砲、洟風邪!!」

と全く違う名前を叫んで土俵上の二人はちょっといやな顔をしたが、すぐ真剣な表情に返って仕切りの戦に両手をついた。行司役の『大和』の花山掌航海長が軍配を構える。

「見合って・・・はっけよい!」

の声とともに二人はがっぷり四つに組んだ。二人の身体がぶつかり合いドス!というような音を立てて、見張兵曹はそれをちょっと怖そうな表情で見つめている。その間にも花山掌航海長は組み合う力士の周囲を回りながら「はっけよい、のこったのこった!」と声をかけ、次の瞬間『大和』の乃度風大砲を寄り切って勝った。花山掌航海長の持った軍配が、乃度風に。

そのあとも大混戦で『武蔵』と『大和』の力士が交替に勝つという混戦状態。しかも力が互角と見え取り組みが長い。猪田艦長も梨賀艦長も

「ほう、これは文字通りの大相撲だね。おお、いいぞいいぞ!」

と両方の力士に惜しみない拍手を送る。そして小兵の舞野海と大柄な『武蔵』の馬面龍の取り組みは皆身を乗り出して興奮した。麻生少尉は柔道部員の席にいて、

「こりゃあいけんのう。舞野海は体がこまいけえ、不利じゃ。『武蔵』のあの力士はでかいけえ、投げられたらはあ仕舞いじゃ」

と心配げに呟いた。梨賀艦長、野村副長、森上参謀長が膝に置いたこぶしをグッと握って土俵上を凝視している。すると。

「はっ!」

見物の皆が息をのんだ。皆が見つめる土俵上、小兵の舞野海は大柄な馬面龍の両まわしを取るなり、その場をこまのようにくるくると回り始めたではないか。そしてさらに次の瞬間、舞野海はひるんだ馬面龍をはたき込んだ。

これには『武蔵』の力士からもどっと歓声が沸いた。「すごいなあ、あの小さな力士。あんな技見たことがない。この先楽しみな力士だね!!」そう言って顔を見合わせてうなずき合う。梨賀艦長は、満足そうな笑みを浮かべて傍らの副長に微笑みかけ、副長も微笑み返した。

そのあとも手に汗を握る熱戦が繰り広げられて見物の皆もさらに白熱。時折手が空いて見に来る『大和』乗組員たちも手を振り回したり声をあげて声援を送る。

日は高く昇り天幕に照りつける。

一一〇〇(午前11時)になって休憩時間を設け、梨賀艦長が皆に水を飲むよう注意をした。力士たちはみな全身に汗を流し、はあはあと息を荒くついている。松本兵曹長は出武錦の四股名を引いてそれが自分でもいたく気に入ったらしい。休憩後の二番目に『武蔵』の避雷針と取り組みが決まっている。

見張兵曹は、剣道着の袴の裾に気をつけてそっと立ちあがった。そして主計科がしつらえた「水の配給所」に行くと大きなコップに水をもらってそれを力士たちの座っている所へ持って行った。松本兵曹長は緊張のせいかかすかにうつ向いて、胡坐を組んで両方の足首をつかんでそれを見つめている。

「あの、松本兵曹長?」

見張兵曹はそっと話しかけた。松本兵曹長はハッと我に返ったように顔をあげて見張兵曹を見た。兵曹長の顔にいつもの笑みが浮かんだ。兵曹長は

「おお!オトメチャン。オトメチャンは剣道着がよう似合うのう。・・・どうね、相撲大会は?」

と言って「そこに座れ」と自分の前を指差した。オトメチャンは「はい」というと袴に気をつけてそっと座り、水の配給所からもらってきた大きなコップを松本兵曹長に差し出した。そして

「いよいよですね、松本兵曹長。頑張ってつかあさい。ほいで、これ」

と言った。松本兵曹長はちょっとびっくりしたような顔でオトメチャンを見つめた。オトメチャンはまっすぐ松本兵曹長を見つめたままでコップを差し出している。兵曹長は、

「これを・・・うちに、か?ええんか?」

と言った。オトメチャンが深くうなずき「どうぞ、飲んでつかあさい」と言う。兵曹長は座りなおし、手刀を切るとオトメチャンからコップを受け取った。そしてごくごくと水を飲んだ。その様子を嬉しげに見つめるオトメチャン。兵曹長は飲み終えて口元を右手の甲でグイッと拭いて、

「ああ、美味かったで。オトメチャン、ありがとうな。よし!うちは頑張るで。オトメチャンに力水をもろうたけえ、勝てる!見とってくれよ」

と力強く言い、オトメチャンはもう一度「頑張ってつかあさい」というと立ち上がり敬礼すると自分の席に戻って行った。その後ろ姿を見送りながら松本兵曹長は(トメはかわゆいのう。それにいつもああして人を気にかけることを忘れんのだから大したおなごじゃな。麻生少尉はそのへんに目えつけたんじゃろうか)と思っている。

そして、休憩時間が終わり取り組再開。倉庫暗(そうこくらい)日野嵐(ひのあらし)の取り組みは五分を越える大相撲となったが突き倒しで日野嵐辛くも勝った。双方から惜しみない拍手が送られ、負けてしまった倉庫暗には『武蔵』猪田艦長から

「良い取り組みでしたよ。惜しいところでした」

と称賛の言葉が贈られた。恐縮して下がる倉庫暗

そしていよいよ松本兵曹長・出武錦の出番である。相手の避雷針はかなりの大柄で、(これはちいときつかもしらんのう)と少し弱気が出て来た兵曹長であったが『武蔵』からかけられた声に大奮起することになった。その声とは――

「頑張れ避雷針。兵学校出の意地を見せてやれー!」

松本兵曹長の全身に<やる気>がモリモリ湧いてきた。(兵学校出じゃと?そんなもんに負けてたまるか!)闘志をその瞳にめらめらと燃やして相手と見合った。避雷針こと稲妻ひかる少尉は松本兵曹長を半ば馬鹿にしたように鼻で嗤って、

「ふん。たたき上げの準士官ずれが俺にかなうと思ってんのかよ。胸を貸してやるから、おい、どっからでもかかってこい」

と吐き捨てるように言った。行司役の花山掌航海長が軍配を構えて

「おい、余計なおしゃべりはやめんか」

と注意した。「申し訳ございません」と避雷針は謝り、力士ふたりは仕切り線に手をついた。

「はっけよい!」

出武錦 避雷針の大きな体がぶつかり合った。大きな松本兵曹長、それよりも大きな稲妻少尉こと避雷針はぐいぐいと力で松本兵曹長を攻める。松本兵曹長は少しづつおされぎみになってきた。(うう、いけん。これでは負けてしまう)兵曹長は歯を食いしばって相手の猛攻に耐える。その耳元で、避雷針が「もう駄目だろう、そんなに踏ん張るなよ。貴様は俺には勝てないんだよ。俺は貴様らより出来がいいんだよ。兵学校を出てるんだからな・・・」と囁いた。

「俺だって」

松本兵曹長は踏ん張りつつ言った。避雷針が、何?というように少し身体を傾けた。その時、見物席から「松本兵曹長、頑張ってつかあさーい」

と見張兵曹の良く通る声が兵曹長の耳に入った。次いで梨賀艦長、野村副長、森上参謀長の「いけえ兵曹長、負けるなよー」という大声。兵曹長の脳裏に子供時代に家族から受けた屈辱がよみがえってきた。姉の言った、「あんたはうちより出来が悪いけえ、お母さんが嘆いとりんさった。あんたは松本んがたの子供と違うわ、うちんがたにはあほなガキは要らんておじさんたちも言うとったで」という一番屈辱的な言葉がよみがえった。

(くそったれ!)

兵曹長の、相手のまわしを取った手に力が入った。見張兵曹の、「松本兵曹長、もうちいとじゃ。頑張ってつかあさい!」という声がもう一度、兵曹長の耳に届き・・・

「うちだって、やればできるんじゃああ!!」

と雄たけびとともに、避雷針は大きくその体を翻し――土俵の上に叩きつけられていた。

とたんに満場の大喝さい。花山掌航海長の軍配が、松本兵曹長をさした。

出武錦―!

松本兵曹長は勝ち名乗りを受け艦長たちの席に一礼した。そして見張兵曹を見つめ(やったで!)というように片眼をつぶって見せた。見張兵曹もうれしそうに(えかったですね。やっぱり兵曹長じゃ、かっこええ)と手を振った。

松本兵曹長は意気揚々と元の席に戻った。

そして負けた避雷針こと稲妻少尉は、ほかの少尉連中から「あんな負け方しやがって。なんで『大和』の力士をよく調べて置かないんだよ。兵学校出の恥さらし!」と罵られ、こそこそと皆の後ろへと逃げるように入ってしまった。

 

そして。

いよいよ最後の大一番、横綱対決が始まろうとしていた。

東『武蔵』の横綱・高見中尉薄毛山 対 西『大和』の横綱・浜口大尉芽多保山 の対決である。

呼び出しの声に合わせて、両横綱が土俵にその身を現した――

   (次回に続きます)

 

           ・・・・・・・・・・・・・・・・

松本兵曹長、あっぱれです。経歴を鼻に掛けるような人と同じ土俵に降りては詰まらんぞ~。

そしてそして、大注目の横綱対決の時が来ました。こうご期待です^^。


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● COMMENT ●

matsuyama さんへ

matsuyama さんこんばんは!
女子プロレス、よりも女相撲のほうが妙なインパクトがありますよねw。
でも相撲と名がつくからにはそれぞれ妙技を見せてほしいものですね~^^。罵り合いはちょっといただけないかなあ~~(-_-;)。
さあ、艦上の女相撲はいかなる結果に相成りましょうか、ご期待ください^^。

女相撲もいよいよ佳境に入ってきましたね。
そういえば今思い出しましたが、昔女相撲を興行にしていた頃がありましたね。うろ覚えなんですが、女子プロレスではなく、確か女相撲だったように気がします。町の片隅にポスターが貼ってあったような…。
どんな相撲を取るのかな、と子供心に興味津々だったような気もしたんですが、取組よりもお互い土俵上で罵り合っていたようなことしか脳裏に残ってないです。
さてさて結びの一番は横綱同士の対戦ですね。罵声、中傷の戦いではなく立派に実力で戦ってほしいですね。

まろゆーろさんへ

まろゆーろさんおはようございます!
しこ名のカラー化は、書いている本人もわからなくなることがあるからやってみました。結果、ご好評いただきうれしいです^^!
土俵上大混戦です。連中、全くのアマチュアなので何でもありみたいな感じがしていますが、それでもシーマンシップにのっとってやろうとしているみたいですね^^。
相撲、見ていると本当面白いですね。子供のころからよく見ていました。仕事を始めてからはなかなか見ることができなかったのですが今回じっくり見ることができ楽しかったです♪
昨日の九州の暑さは尋常じゃなかったようですね。東京もこのところずっと蒸しています。しかも今頃梅雨のような空模様なことが多くて(-_-;)。
もうちょっとしたらお盆休みです、ゆったり構えていたいと思います。
いつもご心配いただきまして、本当にありがとうございます!!

オスカーさんへ

オスカーさんおはようございます!
さあいよいよ最後の大一番・・・横綱対決だあ~~ww!
どっちが勝っても、きっと何かが飛ぶ・・・艦上だから一体何が??ちょっと怖い感じもしますがw。ご期待ください^^。
長かった、そして夢中だった7月が終わりました。気が付いたら7月が終わるという感じが正直な感想です。その節にはご助言・励ましをたくさんありがとうございました。
おかげさまでつぶれずにここまで来ることができました。
きっとこの先もなんやらかんやらあるでしょうけど乗り越えて見せます^^。
時には愚痴りたくなる時もあるかもですが…どうぞよろしくです^^!

ありがたい。四股名をカラーにして下さって(笑) 年寄りにはこれくらいのメリハリをつけて頂く方が臨場感も伝わってきます。さすがに優しいなぁ、見張り員さんは。
取り組みも土俵もなんだかテンヤワンヤのようですがそれもまた楽しいことですね。
しかし見張り員さんは相撲にも精通しておいでるとは。なかなか見上げたものです。
さて、暑い暑い夏もいよいよ盛りを迎えました。これ以上盛ってどうなるのと言った感じですが、どうか暑さに負けずに過ごして下さいね。体調を整えながらゆっくりとそこに座っていて下さい。お願いしますね。

こんばんは。横綱対決は水入りの大一番を期待しています~座布団はないでしょうから、投げるとしたら何を投げるのかな?(笑)
今日で7月も終わりですね。見張り員さまには本当に大変な1ヶ月だったと思います。これからもたくさんの出来事に悩まされるかもしれませんが、それに負けない応援団もいますので…相談したり愚痴を言ったり…なんでも頼って下さいね!


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Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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