2017-10

「女だらけの戦艦大和」・大相撲トレーラー場所4 - 2013.07.28 Sun

『大和』『武蔵』両艦の相撲部による「大相撲トレーラー場所」がその日、いよいよ開催された――

 

『武蔵』から猪田艦長・加東副長が招待を受け内火艇を使って『大和』にやってきた。相撲部の面々はそれより前に『大和』に来て、力士控室に当てられた第一主砲塔左舷側の天幕下で浜口大尉たち『大和』相撲部のメンバーとあいさつを交わした。

浜口大尉は女とも思えない大きな手で、『武蔵』相撲部主将(横綱)・高見やまゑ中尉と「今日はよろしくね」と握手を交わした。そのあと、浜口大尉が松本兵曹長に目配せをすると兵曹長が進み出て

「我々は皆四股名を持っております。そこで我々だけが・・・というのもなんですので是非『武蔵』の皆さまにも四股名を差し上げたいのですが、いかがでしょうか」

と言った。すると高見中尉以下の相撲部員は大層喜んで、

「そんなにしていただけるなんて!有難いことです、いやあ、我々そこまで気がつきませんでしたが・・・さすが『大和』相撲部の皆さん。目の付け所が違いますね~」

と騒いだ。それを「まあまあ」と押さえた浜口大尉は小さな箱を松本兵曹長に持ってこさせた。その中に、四股名の入った紙が入っていて例のくじ引き方式で『武蔵』相撲部員にも四股名をつけるつもりである。それを聞いて『武蔵』相撲部の面々は「なんと!行き届いた御配慮を。そうですよね籤なら一番公平ですよね」と喜び勇んで順番に箱に手を入れて籤を引く。

そして皆、そっと引いた籤を開く・・

と皆の顔が微妙なゆがみを見せた。浜口大尉は「どうです?これこそ松本兵曹長による素晴らしい四股名の数々です・・・お気に召していただけたでしょう?」と満面の笑顔で言う。

「はあ・・・まあ・・・。いや、まったくそのとおりです。ありがとうございます」

高見中尉が皆を代表して感謝の意を示した。浜口大尉は「では後ほど。取り組みまでごゆるりと」というと松本兵曹長と一緒に力士控室を出た。

「高見中尉・・・中尉はどんな四股名でありますか?」

浜口大尉たちが出て行ったあと、『武蔵』の鎌田上等兵曹がそっと囁いた。中尉は

「私かね、私はこれなんだけど・・・」

とはっきり困惑の表情を浮かべて自分が引いた紙を皆の前に差し出した。そこには

薄毛山(うすげやま)

と書いてあった。それを見た他の相撲部員たちは思わず吹き出してしまっていた、恨めしげな目つきで一同を眺めまわした高見中尉に、一人の部員が

「我々も似たり寄ったりです。見て下さい中尉」

というと皆が手にした紙を開いて差し出した。

そこには――

武蔵(たけぞう)

出目金(でめきん)

空梅雨(からつゆ)

日照山(ひでりやま)

出歯乃海(ではのうみ)

除虫菊(じょちゅうぎく)

帰省里(きせいのさと)

波下錦(はげにしき)

束子丸(たわしまる)

馬面龍(うまづらりゅう)

日野嵐(ひのあらし)

避雷針(ひらいしん)

大砲(たいほう)

の四股名が・・・。

「なんだあ、皆同じようなものだね。て事はだ、『大和』相撲部も同じような四股名なんだね。じゃあ、言いとするか。あっはは」

高見中尉はそういうと愉快そうに笑ったのだった。

 

そしていよいよ取り組みが始まろうとしていた。

前甲板にしつらえられた大きな天幕の下に工作科苦心の土俵が鎮座し、その正面に『大和』『武蔵』両艦の艦長、副長が座る。皆防暑服に身を包み、手にしたタオルで額の汗を拭っている。『大和』副長の隣には、森上参謀長がいて精巧な土俵の出来に「これは素晴らしい、いいねえさすがわが大和の精鋭が作っただけあるね」と感心しきりである。

そして正面から右左、そして向こう正面には出場しない相撲部員たちのほか柔道・剣道・体操の主将クラスたち、そして各科の科長、分隊長、分隊士たちが取り組みを今か今かと待っている。そしてなぜか、剣道部員の末席には見張兵曹が剣道着をつけてちょこんと座っている。士官たちに挟まれてどこか居心地悪げなのが士官たちにはかわいく映る。これは梨賀艦長から見張兵曹にじかにお願いされたもので、

「見張兵曹お願い、忙しいし面倒だろうが剣道部員の席に座ってほしいの。そう、剣道着を着てね。だって、華が欲しいじゃない。汗臭い女どもばかりじゃあ嫌になるもんねえ」

と言われ不承不承承知したのだったが。それを聞いた麻生分隊士は「いったい何ね、あの艦長!オトメチャンをなんじゃとおもうとりんさるんかね??オトメチャンは花瓶の花かね?」と怒ったが、よく考えれば自分も柔道部員の席に一座を占めるのだから(まあ、ええか)と思い直したといういきさつがある。

ともあれ。

東西両力士の土俵入りが始まった。まずは東(武蔵)の力士が土俵に上がるのだが彼女たちはもう、素晴らしい土俵に度肝を抜かれている。彼女たちはまわしのみで呼び出しの声に合わせて土俵に上がる。猪田艦長と加東副長が

「格好いいですよ、しっかりね」

と声をかけ、それに敬礼して応える武蔵の相撲部員たち。それを見ていた体操の森末特務中尉が「ほう、『武蔵』の人たちは行儀がええね。それに話す言葉もなんや、ラジオの人みとうじゃ。なんかそれだけでも緊張するわ」と言って、周囲の士官たちが笑う。

そして西(大和)力士土俵入りだがこれには居並んだすべての――『武蔵』も『大和』も――、いや、相撲部員以外の皆が仰天した。

『大和』の力士たちはみな化粧まわしをつけてしかもその化粧まわしの絵は、力士すべてが横一線に並べば『大和』の艦首から艦尾までが再現される素晴らしいものであったからだ。

先ほどからカメラを抱えて撮影に忙しい『大和』の林家へゑ飛行兵曹、『武蔵』の篠山きし少尉さえ一瞬シャッターを押すのを忘れて見入ってしまったくらい、その化粧まわしは絢爛豪華である。

猪田艦長が、化粧まわしから目を離さぬままそれでも驚きを隠せない様子で、

「副長。『大和』の皆さんは意外と本気でかかってくるような気がしてなりませんが・・・副長はどう思う?」

と囁いた。加東副長は驚きを顔いっぱいに表して

「猪田艦長、私もそう思います。しかも見て下さい、あの大きな力士たち。我々の相撲部員たちより一回り以上大きいじゃないですか?いやあ、親善試合とは言いながら『大和』の皆さん力が入っていますねえ」

と答える。

その頃になるとさすがの『武蔵』相撲部員たちもこの取り組みがただの「親善試合」ではないのに気がつき始めた。薄毛山こと高見中尉はそっと傍らの「出目金」兵曹を呼んで

「大和の相撲部から来たという招待状、持っているかね?」

と聞き、出目金が「これです」と差し出したあの、招待状をよく読めば・・・

「なんだこれは、宣戦布告ではないの?誰だ一体親善試合だなんて言ったの!?」

高見中尉は我を忘れて叫んでいた。確かにその文言は御招待します、という生易しいものではなくどう読んでも挑む気満々の文章ではないか。

馬面龍の四股名の上等兵曹が「それを最初に読まれたのは猪田艦長です。猪田艦長から『親善試合をしようと言ってきている』と聞きましたが?」と言って、高見中尉は頭をかきむしると

「ああもう!猪田艦長は何事も良くとらえてしまわれるからなあ。この手紙も良い方に捉えられたのだろうが、これは絶対全く当然果たし状ではないか・・・ああ~そうと早く知ってたら」

と言ってうなった。が、不屈の『武蔵』魂がここで燃え上がりだした高見中尉、キッと顔をあげると力士たちに

「いいか、こうなった以上負けられない。あんなこけおどしの連中に負けたら『武蔵』の名がすたる。いつもいつも『大和』の陰に隠れている我々が表舞台に出るいい機会だ。絶対負けるんじゃない。『武蔵』の名において連中を撃沈してやろう!」

と檄を飛ばした。

『武蔵』力士もその瞳を輝かせて、「おうー!」と片手を天に突き上げる。

 

それを見ていた浜口大尉以下『大和』の力士たちも

「おお、やっとやる気を出してくれんさったね。ほいじゃあ、うちらも目いっぱいやらせてもらうけえね」

とやる気満々、フルパワー、出力全開になったのだった。

そして、観覧席ではラケットを振り振り「熱くなれよー」と叫ぶ松岡中尉とマツコ、トメキチの姿が・・・。

    (次回に続きます)

 

        ・・・・・・・・・・・・・・

まずい、『武蔵』の力士たちが単なる親善試合ではない事に気がついてしまいました。

さあ、両艦の激突相撲はいったいどうなるのでしょうか。次回をお楽しみに^^。

 

昨日(727日)午後の北の空です。この数時間後大変な大雨になりました(-_-;)・・・
DSCN0869.jpg


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● COMMENT ●

すっとこさんへ

すっとこさんこんばんは!
もともと相撲は好きな方でしたが実家に帰っているときずっと見ていて虜になりました^^。
いろんなしこ名を見ていて、この話を思いつきました。
きせのさと・・・はっ!帰省の里!
とかw。
だいぶ体調もよくなりましたがまだ腹の調子が・・!
はい、ねえさまのお言いつけの通り「大事の里」でまいりますっ!!

matsuyama さんへ

matsuyama さんこんばんは!
東京、随分前に梅雨明けしたんですが最近ではまた梅雨みたいな空になりました(-_-;)・・・
都心であんな川が大ごとになったのはあまりないことですので本当に驚いています。山口・島根の大豪雨も終息してほしいところですね。
そういえば東北の「梅雨明け」したんでしょうか??
先日の大雨ではうちの店の方に雨漏りがありました(^_^;)。大したことではなかったですがちょっとびっくりでした。
女相撲、いよいよ佳境です!しこ名、結構考えるといろいろできて楽しいです。
相撲見ながらだと余計はかどりました^^。

よくぞ!

よくぞ!思いつかれる四股名の数々!
今をときめく きせのさと を
帰省里・・・・ってのが一番笑いました!
おからだ大丈夫ですか?
夏バテはあなどってはイカンよ。
無理しちゃイカンよ。
大事の里、でいってください!!

東京の空は夏空ですね。あっ、当たり前か、梅雨明けしてるんですものね。
都心の豪雨は静かな川を一変させたみたいで、あわや氾濫かと思わせるような勢いだったとか。
その前日にはこちらも大雨。土砂崩れや落雷による停電が相次いだようです。昨日は西日本が被害にあったようで、このところ日本列島、豪雨が駆け巡っているようですね。被害はありませんでしたか。
そんな中の女相撲、四股名もついて盛り上がってきましたね。それにしてもユニークな四股名。よくぞ思いつきました(笑)。

まろゆーろさんへ

まろゆーろさんこんばんは!
全く東北の雨にも驚いたんですが山口の雨のすごいこと!!
昔…山口市や萩市で遊んだものとして心痛む風景です。早く収まりますよう祈るばかりです。その雨、関東で半分でもお引き受けしたいとさえ思いますね。
少し、暑さ負けしたようです。数日前からの不調が昨晩、胸から下腹にかけての激しい痛みとなって現れました。昨晩は食事も取れず今夜になってやっと食べられました^^。
あの痛みはきつかったですw。でもまろにいさまとの約束を守って無理せずおります!
『武蔵』のしこ名はちょっとかわいそうですが、その分大いに力を発揮するかもしれませんね!ああ、一度本物の相撲を見に行きたい・・・。
そんな願望を抱きつつこの話を書いています^^。
にいさまもくれぐれも御身大切になさってくださいね^^!

オスカーさんへ

オスカーさんこんばんは!
本当に土曜の大雷雨、怖いと思いました。隅田川の花火大会さえ中止に追い込んだ雷雨って聞いたことないですよね。
そう!それなのに「節水をお願いいたします!」とは…とほほです。
被害のないくらいにダムの上に雨が降ってほしいと切に思いますよね(-_-;)
相撲、あまり見る機会がなかったですが実家にいるとき観ていて改めて「面白いなあ」と思いました。いつか本物を見に行きたいと思いますね~^^。
女だらけの大相撲、かぶりつきで見たらどえらい迫力かもしれませんね(^_^;)。さあ、どんなになりますか。ご期待くださいませ^^。
ちょっと暑さ負けした私です。オスカーさん、どうぞ御身大切にお過ごしくださいませ。

おはようございます。
山口の雨を東京に持って行きたいくらいの不均衡さですね。ひどいのは困りますがそこそこ降ってくれなきゃどうなることやらと心配しています。
お疲れは出ていませんか。さっそく仕事をしていらっしゃるんだろうなと思っています。無理は禁物、私との約束を守ってご自分を大切にして下さいね。
本当に勝てるの?? と思いたくなるような気の抜けた四股名の数々に笑ってしまいました。ところがどっこいの土俵が待ち受けていることでしょう。楽しみにしています。

こんばんは。土曜日の雷雨には本当に驚きましたね。それなのに水道局の広報車からは節水を呼び掛けるアナウンスが…うまくダムの上に雨が降ってほしいものです。あくまでも適量で!!
お話はいよいよ対決ですね~かぶりつきで見たいです(笑)
お身体に気をつけて下さいね。


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Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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