2017-10

「女だらけの戦艦大和」・増添兵曹女の命。 - 2010.02.23 Tue

「女だらけの戦艦大和」は戦い終えてその身を静かに紺碧の海に休めている――

 

あの戦いの詳細は祖国日本にももたらされ、大いに国威発揚になったのは言うまでもない。各新聞はでかでかと一面で報道し、ラジオは勇壮な軍艦行進曲でこの海戦の勝利を報じたのである。

 

そんな中――。

以前副砲分隊にいてその後の配置換えで、機銃分隊に配属になった増添兵曹。彼女は見張兵曹とは海兵団の同期である。

もっとも増添兵曹の方が歳は上であるが、二人はいい友人である。

その増添兵曹にちょっとした悩みがあった。

 

髪の毛、である。

 

普通海兵団入団の際、髪の毛は「女の命」ではあるが一旦短髪かお河童のようなヘアスタイルにさせられる。その後海兵団を出て各艦などに配置されたり、各科学校に入学したりしてまた艦隊勤務などにつく。

再び髪を伸ばしたり、自由にヘアスタイルを変えることができるのは、下士官任官してからである。

もっとも、水兵長になったら下士官任官をにらみ、皆そろそろ伸ばし始める。

増添兵曹もその一人で、水兵長になった頃から少しずつ伸ばして来た。そして下士官に任官してからはほとんど切らずにここまで来ている。

伸びた髪は、下ろせば腰に近いところまできている。その髪を、普段は巻いて結っているのだが。

 

(最近、私って禿げてねえか?)

時々真剣に想う時がある。仲間に、それとなく聞いてもみな、「いや!そんなんことないって!増添さんが禿げたりなんかありえませんよー」と言ってそそくさと行ってしまう。

(何なんだよ、ちゃんと見てくれたっていいじゃねえか!)

増添兵曹は不満である。

 

そして昨日、戦闘から帰ってはじめて入湯上陸した際、現地の商店の鏡に映った自分の額部分を見て打撃を受けたのだった。

「デコが、広がってる!禿が広がってる!!」その場に立ち尽くす増添兵曹。その兵曹を不審そうに見る機銃分隊の兵。

「どうなさったんですか。お顔の色が変です」と心配してくれた水兵に、兵曹は「なんでもない・・・」と、蚊の鳴くような声で言ってまた歩き出した。(どうしよう、どうしよう・・・)と夢遊病のようにゆらゆら歩く増添兵曹。

(そういえば、機銃に配置換えになってから抜け毛がひどくなったな。なんでだろう?――あっ、もしかしたら直射日光がいかんのかな?でも帽子とか鉄カブトかぶってるし・・・今回は『馬面』もかぶっていたし。直接陽を浴びたりしないのに、どうしてだ)

困ってしまって、その場に立ち止まる。腕組みして、ちょっとの間考えていた。

ふと見れば、現地の人の店がありそこになんと『部分かつら』なるものがあるではないか!

「これだ!」

増添兵曹は思わず飛びついた。自分のもともとの髪の色にごく近い色のかつらを選んで、さっそく前頭部の気になる部分につけた。

おお、今までとは別人のようだ――五歳、いや十歳若返ったと言ってもいいかも。

印象の変わった自分を、鏡に見ながら悦に入った。そばで、選んでくれた商店主の女性が、

「ヘイタイサン、似合いますネ!トッテモいい女よ!」

と言ってくれるのもうれしい。

「いやあ、ありがとう。嬉しいよ」と言って、料金を支払って店を出た。でも、まだほかの連中に知られるのがもったいない気もして、しっかり軍帽をかぶって隠すように行く。

 

常夏の島の日差しは、きつい。

 

そんなころ、見張兵曹は防空指揮所から降りてきて、居住区に向かっていた。今日はいつにもまして暑い。防暑服は汗にまみれ艦内帽も汗のシミが出来るくらいである。

例のラッタルの下で、麻生少尉が待っていた。

このヒトは、昼であろうが夜であろうが見張兵曹の当直の終わりをここで待っているのである。

「あ、分隊士。今終わりました」と、見張兵曹は言って笑った。分隊士は、兵曹の汗を見て、

「オトメチャン、すごい汗だな。上は暑かったろうに。御苦労さま、明日は上陸だから今日はがんばろうな」

とねぎらってくれた。

見張兵曹は、はい、と言ってから「こんな暑さのせいですかねえ、最近髪が抜けるんですよ。いやですね」と困ったように言った。

分隊士は、どれどれと兵曹の艦内帽を取って、兵曹の頭を見た。そして、

「いやオトメチャン。大丈夫だぞ。禿なんかないから大丈夫。まあこの暑さだし、帽子やら鉄カブトやらかぶってると仕方ないかもしれないな。でも、オトメチャンはそんなに髪長くないし、入湯上陸でちゃんと頭洗うから心配すんな」

と言ってくれた。

「よかった」と笑う兵曹に、分隊士はそっと体を寄せて「で、あすの晩はまたあの宿で・・・な?」と囁いたのだった。

 

その日、帰艦した増添兵曹は心なしかうきうきしていた。夕食時に、皆の前でおもむろに艦内帽を取って見せた。

皆は口には出さないが、(あれ!増添兵曹の前髪、昨日より多い気がする)と思っている。皆はヘアスタイルを変えたのかな、としか思えない。まさか、部分かつらを装着しているとは夢にも思っていない。

そしてその晩になって、増添兵曹はなんだかとてもかつらのあたりが痒くなってきたのを感じていた。

でも、取ってまで痒いところを掻くのはなんだか嫌だ。もうこの部分かつらとは一心同体のような気がしているからだ。

(まあ、汗もかいたし仕方ないな。明日になったら風呂でこっそり洗おう)

そしてその晩は眠ったのだが。

 

朝六時、起床ラッパが鳴って皆が一斉に起床した。増添兵曹も飛び起きた。昨夜はかゆみがあって眠りが浅かったが、起きるときはぱっと起きる。

素早く身支度をして、居住区の前の廊下に出た。

そして班の全員が集まった、その時。

「ま、増添兵曹!その頭どうした!」

と、小金沢兵曹長が叫んだ。他の兵たちが増添兵曹の頭を見て、はっと息をのむ。

「え!?

と声をあげた増添兵曹、思わず例の部分かつらのあたりに手を持ってゆくと、なんと、かつらはずっと後ろの方にずれ、しかももともとの部分は毛がごっそり抜けていた。

「ぎええ!」

と、増添兵曹は奇声を発して、その場に昏倒していた――。

 

そのあと、増添兵曹は皆の手で医務科に担ぎこまれた。彼女を診察した日野原軍医長は、いかにも気の毒そうに増添兵曹に言った。

「あのねえ。あんたちょっと髪伸ばし過ぎなんだよね。髪全体に栄養が行ってないうえにこんなにひっつめて結ってたら前も禿げるよ。それに良く頭皮を洗ってないなあ。

しかも、この部分かつらでその頭皮を覆っちゃってるから痒くなってしかも、寝てる間に自分で引っ掻いたな。毛根が弱ってるもんだからごっそり抜けちゃったんだと思うなあ。

・・・兵曹、今日午前の課業が終わったら理髪室に行って髪を切れ。これは軍医長の命令だ!」

 

愕然、増添兵曹。

 

そして増添兵曹は恥ずかしいようないたたまれないような気分で午前の課業をなんとかこなし、昼飯の後、理髪室で長かったその髪にハサミを入れたのだった。

上陸前に、その話を聞いた見張兵曹は小泉兵曹たちに「増添兵曹を励ます会でもやるか!?」と誘われ、発起人の一人となった。

が、肝心の増添兵曹が大事にしてきた髪を短髪にしたショックと、『励ます会』が『禿げ増す会』に聞こえたらしく激しく拒否して来たのでお流れとなった。

 

その晩上陸した見張兵曹はまたもや例のコテージで麻生分隊士と過ごしていた。麻生分隊士も、増添兵曹の話を聞いていて、「あんなに髪を伸ばす奴があるか、あれじゃあ禿げてあったりめえよ!俺やオトメチャンくらいの長さでいいんだよ、な?」と言って、大きなベッドの上で兵曹を抱きしめた。

見張兵曹は抱きしめられながら「はい。分隊士の髪はかっこいいであります」と褒めた。褒められて嬉しくなった分隊士は、見張兵曹の胸の先をひっぱりながら、「そうだろ?海の女はこれが正統派だよ。でもオトメチャンの長さもいいな、可愛いよ・・・」と言った。

見張兵曹は、「分隊士ぃ・・・」と喘いでベッドの上を逃げ回り、分隊士は「気持ちいいか?そんなにいいか?もっとこうしてやろうか」といいながら兵曹を攻めたのだった。

オトメチャンの、洗いたての髪がシーツに広がって分隊士は余計そそられて―――

 

             ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

髪は女の命、とは申しますが最近は抜け毛や禿げに悩む方も多いと伺っています。このストレス社会では仕方ないことかもしれません。

女性の場合、ストレスが大きな原因だと聞いたことがあります。・・・そうだと思いますね、私も。

そして長くのばして縛っていたりすると、額がなぜか広くなります。そんな感じがするだけなのか実際そうなのか。

でもどっちであれ、女には切実な問題であります。

男性なら『貫禄』なんですが・・・ねえ。


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● COMMENT ●

愛国さんへ

こんばんは!

ちょっと気分を変えてみました。いかがでしょうか?

こちらこそいつもありがとうございます!

チハタンさんへ

こんばんは

「連合艦隊」大好きです、時々DVD見て感激していますよ。

鶴田浩二さんの伊藤長官、よかったーー!

NoTitle

おっ、、、雰囲気が・・・

いつもご来訪、ご支援を賜り感謝申し上げます。

村○です「

NoTitle

鶴田浩二は・・・自髪か
連合艦隊では伊藤長官役が
とても素敵でした

陸戦隊さんへ

こんばんは

あ、、男の方もやはり、、ですか。
でも私は個人的には、見事に禿げた年輩の方が好きなんですね。かっこいいじゃないですか~ってそこまで年齢のいかない方にはちょっと酷なことなんでしょうね。

え、、!下にも白髪が?
うわああ、、、、。

オセロ・・・

見はリンさん、こんにちは。 髪は男も命でもあります! 年を取ったら最後の城壁。 禿げ上がったらいっそのことツルッパゲにしたいと思っておりますが、幸せかな今のところ大丈夫なようであります。髪の毛の量は半分になったとはいえ白髪がひときわ目立つようになり、不覚にもチン毛まで白軍が・・・ポ~ルに白旗状態であります!


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Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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