「女だらけの戦艦大和」・千人針|女だらけの戦艦大和・総員配置良し!

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「女だらけの戦艦大和」・千人針

2010.02.07(13:15) 167

「女だらけの戦艦大和」は時々大きな作戦に出ることがある。

 

そんな時、乗組員はゲン担ぎ、というわけではないだろうが入団時などにもらったりした「千人針」を腹に巻く。

これをつけるだけでなんだか故郷の親兄弟の、近所の顔なじみの激励が伝わってくるようで、身が引き締まる。

(みんなを、あの懐かしい故郷をまもる)(国を守らねばみんなを守れない)いずれが先であろうとその思いはやがて大きな「愛国心」になる。

ともあれ、「千人針」は兵士たちの心の支えみたいなものでもある。

先日の作戦時も乗組員諸氏は、出撃前に腹に千人針を撒きつけた。いろいろな千人針があって興味深い。

戦闘が終了し、ゲハルマの基地に入ってからの話し。居住区で皆戦闘服を脱ぎ始める。

小泉兵曹の千人針には、なぜかたくさんの「小銭」が縫い込んである。目ざとく亀井一水が見つけ「わあ、小泉兵曹のはすごいですね~。お金が縫い込んでありますよ。しかもこの虎のすごい緻密なこと!」と感心した。

小泉兵曹の千人針にはたくさん「5銭」「10銭」が縫い込まれしかも、トラの模様は細密で、(これはなぞって糸目をつけるの、大変かも?)と思うようなもの。布地もいいさらしである。

流石、大店のお嬢様の千人針である。小泉兵曹は、ちょっと得意気に笑った、そして「これならちょっとくらいの弾が当たっても大丈夫だって言われて、さ。と言ってもちょっとだけ重いのが玉にきず、ってとこかな」と言った。

亀井一水の千人針は虎の絵の上に「尽忠報国」と墨書してある。これは亀井一水のおじいさんの手によるものだとか。

「ふーん、すっごい達筆だね」と感心する小泉兵曹、彼女は実は自分の字がまずい、というのに気がついて以来、達筆な人にジェラシーを感じるらしい。

小泉兵曹はほかの兵の千人針も何気に拝見した。

「まあ、、似たようなもんだな」と思う。

では士官の千人針はどうか、と小泉兵曹は麻生少尉を捕まえて「分隊士。分隊士の千人針を拝見したいであります!」と言った。

麻生分隊士は「え?千人針?―――おれのはこんなふうだけど?」と言って、服の前を開いて見せた。

丁寧な作りの千人針。 小泉兵曹は「これは分隊士のおうちの方から、でありますか」と聞いた、すると分隊士は笑って「おれはねえ、実家から勘当された身なの。だからこれは親代わりの下宿のおばさんが送ってくれたんだよ。おばさんが俺が最初に艦に乗るときに『これ、ふ―チャンに』ってくれたんだよ」と言った。

「ふ―チャン!?」と小泉兵曹は言って思わず大爆笑してしまった。

なかなか笑いが止まらず、気がつくと麻生分隊士はとても怖い顔で睨んでいるではないか。

「あ、、、ごめんなさい」と、小泉兵曹は謝った。分隊士は「おれの名前は太(ふとし)だから、ふ―チャンなんだよッ、文句あっか!流石に士官になってからはふ―チャンとは呼ばれないがな!」と不機嫌に言った。そして、「どうでもいいが、、、これは俺の大事な宝物、なんだよ」と言ってその千人針を巻いた腹をなでた。

小泉兵曹は「まだオトメチャンのを見てなかったであります。ちょっと見せてもらいに行きます」と言ってそこを辞した。

麻生分隊士は(オトメチャンはいきさつがある子だから、、もしかしたら千人針なんて、、)と少し不安になった、そう言えば小泉たちには見張兵曹の生い立ちについての詳しい話はまだしていなかった。

(話しとくべきだった)と麻生分隊士はちょっと後悔した。

そして小泉兵曹の後を追うように歩きだしたのだった。

 

防空指揮所。

大きな作戦もすみ、シー・ドーベルマンとか言う訳の分かんない輩との小競り合いを制した後の指揮所は心地よい。見張兵曹はまだそこに配置要員として、数人と残っていた。

小泉兵曹は、まず見張兵曹の近くの兵に近寄ってやおら千人針の話を始めた。その兵は喜んで小泉兵曹に自分の千人針を見せる。

親が一所懸命集めてくれたものであるから嬉しくないはずがない。その嬉しさを、話している。

それを見張兵曹は一瞥しただけで見張りを続ける、しかしその兵の千人針をめぐる話はまだ続いている。

流石に見張兵曹は「おい、まだ勤務中だぞ。いつまで私語をするつもりだ。小泉兵曹ももっとわきまえろ」と苦言を呈した。

兵は「申し訳ありません」と謝ったがなんだかその謝り方が素直な感じではないように感じて、見張兵曹のカンに触った。

思わず「千人針なんぞ仕込んで、、、貴様そんなに命が惜しいか!」と怒鳴っていた。

兵は呆然としたが、はっとして「申し訳ありません、そんなつもりは一切ございません・・・」と平謝りに謝った。

すると小泉兵曹が「何カリカリしてんだよ。千人針くらいいいじゃねえか。命が惜しくってつけてるわけじゃねえだろ、、、貴様も持ってるだろう、見せろよ」と言って見張兵曹の服を探った。

その手を今までにないくらい激しく払って、見張兵曹は「おれはそんなもん、持ってない!そんなもんを送ってくれるような親も親せきも、この世にはおらん!」と怒鳴った。

小泉兵曹は瞬間、自分の行為を恥じたーーーそうだ、こいつには親と呼べる人がいなかったのだ。

見張兵曹は憤然として、「時間だ。俺は降りるぞ」と言い捨てて上がってきたばかりの亀井一水と入れ替わりに下に降りて行った。

亀井一水が小声で「・・・どうなさったんですか?」と聞いたが小泉兵曹は「いや、、なんでもない」と言ってこれも黙って降りて行こうとした。

そこに麻生分隊士が来た。険しい表情である、その顔で「小泉兵曹。貴様見張兵曹に何を言った?」と問い詰めた。

小泉兵曹は目線を下に落として今あったことを正直に告げた。

麻生分隊士は大きなため息をついた。そして「ああ、貴様なら見張兵曹の境遇を分かってると思ったのになあ。もっと詳しく話しておくべきだったかもしれないな、今から話すがこれは他言無用だぞ」と言って、そこにいた亀井やほかの兵に「呼ぶまで来るな」といい麻生分隊士は見張兵曹の生い立ちの詳しい話をしてやった。

「・・そこまでとは、知りませんでした。ああ、、私はなんてことしちゃったんでしょう。浮かれすぎました」

小泉兵曹はうなだれた。確かに見張兵曹は親と縁を切ったことやもらいっ子、と罵倒されたことは知っていたが、不義の子としてそう言う不遇な育ち方をしたという詳しいことまではあまり知らなかったのだ。

「そう言えば以前『私は不義の子、、』って言ってたことはありましたが、まさか」

麻生分隊士は小泉兵曹の言葉を聞いていたが、「まあ、人には表に出ないいろいろな事情があるって事を思い知るんだな。貴様、友達無くすぞ?貴様は恵まれた家庭に育って、、まあ、、母親を亡くして継母が来たのは不幸なことだが、、それでも見張兵曹よりはずっといい境遇だということを忘れるんじゃないぞ」といい含めた。

「はい、、、どうしたらいいでしょう」とおろおろする小泉兵曹に麻生分隊士は「まあ、時間を待つしかないがな。オトメチャンの気持ちが落ち着いたころを見計らって謝るんだな」と言ってやった。

麻生分隊士は「あ、そうだ」と言って「じゃ、俺はこれで行くぞ。亀井たち呼んでおけ」と下に降りて行った。

 

麻生分隊士は、酒保に行った。そしてあるものを購入し、あることを始めた―――

 

それから数日後。まだちょっと見張兵曹は小泉兵曹に対してよそよそしい態度を取っている。小泉兵曹はそれを当然と受け止めて、逆らわない。千人針をめぐる話はいつしか皆の間に広まって、そのことを口にすること自体がタブーになってきていた。

その日、午前中の課業が済み昼食時間になった。居住区で皆箸を取ろうとした時、「ちょっと済まんなあ~」と麻生分隊士がやってきた。そして「見張兵曹、ちょっといいか?」と声をかけた。

「はい!では皆、、『いただきます』」と皆のために号令をかけた見張兵曹、居住区の外に出た。

麻生分隊士は「こないだは、小泉が済まないことをしたな。あいつも反省してるから、許したやってはくれまいか?」と言った。

見張兵曹ははにかんだような笑顔を浮かべた、そして「私もいい出すきっかけがなくって実は困っていたんです、分隊士、ありがとうございます!」と言った。

「そうか、、でな、悪いとは思ったが小泉にはオトメチャンの過去を詳しく話してしまったんだ。小泉に知ってもらうためにはやむを得なかったんだ、、、これも謝る」麻生分隊士は頭を下げた。

見張兵曹はあわてて、「そんな分隊士、いけません。却って私はお礼を言うべき立場ですから」と分隊士を押さえた。

「許してくれるか」と分隊士は言い、見張兵曹は「許すもなにも、、、」と首をそっと振った。

麻生分隊士は「でな、、」と言って懐から何かを出した。

兵曹の前に出すと、「これな、俺たちからオトメチャンへの贈り物だ」と言った。兵曹はちょっと不思議そうな顔でそれを広げた。

それとは。

大きなさらしに「見張兵曹 武運長久」と見事な筆致で描かれた下に、立派なトラがいてそれはそれは素晴らしい「千人針」であった。一目一目、糸を丁寧に結んであり虎の目には5銭玉、10銭玉がそれぞれ縫い付けてある。

「・・・分隊士」とそれを見つめる見張兵曹の瞳に涙が盛り上がった。

「この字は艦長。糸は乗り組みのみんなに頼んだんだよ」と麻生少尉は言った。あの後、少尉は酒保でさらしを買った後、艦長にいきさつを話し、揮毫してもらった。そして副長と参謀長も加わって見張兵曹に悟られないよう、乗組員に糸を結んでもらって回ったのだった。

「みなさん、、ありがとう」

見張兵曹は皆の心のこもった千人針を抱きしめて、泣いた。いつの間にか居住区からみんな顔を出して笑っていた。

小泉兵曹もあの時怒られた兵もとうにわだかまりなど無くしていた。それもこれも、見張兵曹の生い立ちを知れば仕方のないことである。

トメキチが兵曹の横に後足で立って、兵曹の腰に前足を掛けて笑っていた――――

 

           ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

お久しぶりです。体調悪く寝込んでました。

 

さて千人針。虎の絵柄が多いですね。私はかの遊就館で拝見しますがいろいろなものがあります。小泉兵曹の千人針は展示のものをヒントにしました。

虎は千里を行って千里を帰るということから使われ、「死線を越える」から5銭、「苦戦を越える」から10銭が用いられたとか。

これを腹に巻いていると弾よけになると信じて皆、戦場に立ちました。家族や故郷の人たちの思いを含んだ千人針はきっと重みがあったことでしょう。

しかし、、南方ではシラミの巣になったというちょっと悲しいお話も、、、。



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コメント
> ジスさん、こんばんは!
>
> 時にはこんな話もいかがでしょうか?千人針を見ているとそれを縫い付けた女性たちの思いが見えるような気さえします。機会があったらぜひ見てくださいね。
>
> だいぶ体調が戻ってきました。ご心配いただきありがとうございます!
>
> 寒いと思えば今日の東京、20度でしたよ。で、明日は11度だそうです(泣)。
> お互い気をつけましょうね!
【2010/02/09 20:38】 | 見張り員 #- | [edit]
ご無沙汰しています。なんだかジーンとする良いお話でした。
体調崩されたとのこと、お大事にしてください。
最近また、いつまでも寒いですね・・・。
【2010/02/09 01:07】 | ジス #- | [edit]
こんばんは

遅くなってごめんなさい。
いや、、なんだかとても強そうでいいですね~。そんなキャラクターができそうな感じですね、鉄フン戦隊とか言ってwww。
バンザイ突撃の際は、、、どうしましょう、、、???
【2010/02/08 21:14】 | 見張り員 #- | [edit]
見はリンさん、こんばんは。 五銭と10銭を針金で繋いだクサリカタビラとフンドシのボディアーマーを作れば犠牲者も最小限度ですんだのではないかと思います。 実際、胸当ての布に鉄板を入れたものをオークションで見ました。 でもバンザイ突撃の時に敵に一番先に股間を狙われそうですね、金的と言うぐらいですから・・・あはっ!
【2010/02/07 20:34】 | 陸戦隊 #- | [edit]
こんばんは

本当にあの頃の人々の心の豊かさとか、思いの深さには圧倒されますね。

私も最初、トラの目に何が縫い付けてあるんだろうと思っていました。それが5銭、10銭硬貨で、しかもそんなに深い意味があるなんて。

知った時は感激しました。
しかし、、、では今の時代なら何を縫い付けるのかなあ???
【2010/02/07 20:31】 | 見張り員 #- | [edit]
愛国様、こんばんは

そうですね、日教組バリバリの教師にはその奥深くの魂の話なんかは分かんないでしょうから、単なる「悲話」としてしまうのでしょう。
しかしそういう単純なくくりであの時代を見るならそれは間違いですよね。今とあの時代ではまったく価値観も世界観も違うのですから。
対等に論じよう、ということ自体が無謀にすら感じます。対等に、、という観点だとあの時代は完全に間違ってるということになりますし。

おかげさまで体調も戻ってきました、ありがとうございます。
またがんばりますのでどうぞよろしくお願いします!

【2010/02/07 20:28】 | 見張り員 #- | [edit]
5銭、10銭の話は初めて知りました
思いは深いですね
【2010/02/07 20:00】 | 雪風 #- | [edit]
千人針

こういう話も日教組などは戦争悲話一色に染め変えてしまうのでしょうね((汗^^

見張り員様、お身体ご自愛ください。

村ポチ
堂々3位ですね、応援致します。
【2010/02/07 14:09】 | 愛国 #- | [edit]
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