「女だらけの戦艦大和」・秘密の花園、『大和』❤1

大宮島(グアム)に来た「海軍きゃんきゃん」取材班一行は陸戦隊取材を終え、よれよれになってホテルに戻るとその日はまだ日の落ちないうちから食うことをすっかり忘れて爆睡したのだった―――

 

そして早くも二日後には今度は駆逐艦に乗っていよいよトレーラーに向かうこととなった。殘間中尉は正直(またフネか・・・もういやだなあ。早く内地に帰りたい)と思っているがそんなことはおくびにも出せないつらい立場である。

ともかくも、一行は第5963水雷戦隊を率いる巡洋艦のうちの一隻にお邪魔してトレーラーを目指すことと相成った。

巡洋艦・陣痛。

この艦はもうトレーラーではおなじみの艦である。『大和』と一緒に訓練をしたこともあるし、何よりこの艦の士官があの『ハシビロコウ』について、無知な艦長以下に詳しくレクチャーしてくれた過去がある。

その「陣痛」に一行は物珍しげに乗り込んだ。「陣痛」の乗組員たちは「『海きゃん』の取材班だって!もしかしたら『海きゃん』に載るかもしれないよ!」とうれしげに囁きあったが『海きゃん』の肝心どころの殘間中尉と筑紫少尉などがひどい船酔いになって居住区から出られないという状態に陥って、航海士の平沼中尉はがっかりしたような顔で

「なんだ・・取材班だなんていうからよっぽど命知らずのすごいのが来るのかと思ったら・・ありゃあただの<陸海軍(おかかいぐん)>じゃねえの。勝海舟と同じだな」

と言った。それを聞きつけた操舵員の下士官が「へえ!平沼中尉は博学ですねえ!勝海舟先生は陸海軍(おかかいぐん)だったんで?」と問うと、平沼中尉はうんとうなずいて

「そうらしいんだ。何でも勝先生は咸臨丸に乗ったはいいがえらい船酔いで航海中一度も艦長室から出てこなかったらしいぜ。そこへ行くとあの福沢諭吉さんはちっとも酔うことなく船には強かったっていうからなあ。『海きゃん』の連中もほらみろ、士官がへろへろなのに下士官はへばってないだろう?あの士官どもは<陸海軍>だぜ。なっさけねえの!!」

といい二人は大笑いしたのだった。

 

トレーラーへの航海は約三日ほどかかった。途中水雷戦隊と対潜訓練をしたからで、その様子を写野兵曹は果敢にカメラに収め、袴田兵曹以下の下士官・兵は記事に書いたり訓練の合間に乗組員たちにインタビューしたりとその任を懸命に果たした。

が、殘間中尉・筑紫少尉はやはり居住区のハンモックから出られない・・・真っ青な顔色で筑紫少尉はまるで呪文のように「約束が違う、約束が違う・・・こんな訓練するなんて言わなかった・・二日でトレーラーに着くって言ったのに・・・」とつぶやいていた。

 

四日目の朝、『海きゃん』一行が待ちに待った声が令達機(スピーカー)から流れて来た。

「トレーラー島を視認」・・・!それを聞いて、気分が悪いはずの殘間中尉がいの一番にハンモックから飛び降りて来た。そしてまだ青い顔の筑紫少尉をゆり起して

「筑紫さん、筑紫さんやったよ!とうとうトレーラーだよ。やったねえ、いよいよ着いたよ」

とわめき散らしている。筑紫少尉は(まるで自分が操艦してここまで来たような言い方!この人もいいかげんだなあ)と思いつつもようやっとその身をハンモックから起こした。

他のハンモックを見れば袴田・写野・三谷・小林・武田たちのはもぬけの殻。実は彼女たちは昨日の夜のうちに当直士官から「明日の朝早くにはトレーラーの島影が見えるところまでいくよ」と聞かされていたので、「ではその記念すべきシーンを撮影して記事を書こう」ということでとっくに甲板に出ていたのだった。

やっとの思いで甲板に出た殘間中尉と筑紫少尉を見て、「陣痛」乗組員たちは最初きょとんとして、次に吹き出して笑った。なぜなら、彼女たちは髪は乱れ防暑服の前はすっかりはだけてしかも、半ズボンの裾からは褌が10センチ以上垂れ下がっていたのだから。「陣痛」の副長はそれを離れたところからしげしげと見つめて「ほう。やはりいるんだねえ、半ズボンから褌垂らしてるやつ!『大和』の梨賀さん以外にはいないと思ってたら、まさかここで会おうとは!でもわが陣痛の乗組員じゃなくってよかったあ~」と言ったものだ。

『海きゃん』取材班一行は軽い恥?をかいたが、無事にトレーラー環礁に着いた。そして「陣痛」乗組員に懇ろに礼を言うと「陣痛」のランチでトレーラー・水島に降りた。

 

「さて殘間中尉。我々はこれからどうするんです?」

三谷兵曹が額に汗を噴き出して、たくさんの原稿用紙の詰まったカバンを重たげに肩に担ぎなおして問うた。小林兵曹が「宿、宿に行きましょうよ。どこにとってあるんです?」と聞く。が、筑紫少尉が「とってないよ」とあっけらかんとして行ったのに皆は驚いた。

少尉は

「今日から『大和』の取材だから、『大和』に泊めてもらう。えらいでかい艦らしいから、我々の10人や20人泊る場所くらいあるだろう、と山本長官がおっしゃった。『大和』にはもう我々が行くことを知らせてあるから、衛兵所からでもどこからでも発光信号で迎えを頼みゃあいい。・・・さ、殘間中尉行きましょう」

というと皆を励ましてすたすた歩いてゆく。すっかり船酔いも取れた筑紫少尉は帝国海軍期待の戦艦・<大和>をこの目で見られるとあってもう浮き浮き気分。

袴田兵曹や他の下士官・武田水兵長も重い荷物を担ぎなおして筑紫少尉の後を足取りも軽くついてゆく。

そのあとを殘間中尉がまだ青い顔色のまま「ま、待ってよう。まだ私気持が悪・・・い・・・」と言いつつそれでも何とか付いてゆく。

 

そんなころ。

女だらけの『大和』・昼戦艦橋では梨賀艦長と野村副長、森上参謀長が

「『海きゃん』取材班が今日にも来るはずだが。まだ発光信号も手旗信号もないか?よく見張れ!」

と見張り員や信号員に話しかけている。

麻生分隊士は何が何だか分からないらしく、「あの連中、何を浮かれとるんだかようわからん。誰かなんぞ聞いとらんか?」と周囲に尋ねている。するとオトメチャンが、

「あの、うち昨晩艦橋で当直でしたがその時副長がいうてました。『明日になったら<海軍きゃんきゃん>の取材班が来るけえ皆楽しみにしとったらええよ、って。何でも<海きゃん>で南方の基地や部隊や艦艇を取材して特集を組むんじゃ、いうてましたがはあうちには何の事だか?』

と知る限りのことを教えた。

麻生分隊士は「ほうね」と言うとオトメチャンをいきなり抱きしめ、その耳元に

「ほいでもうちは心配じゃ。もし万が一、<海きゃん>にオトメチャンが載ることになったら前海軍の将兵がオトメチャンを欲しい、言うんじゃないかと思うとうちはもう気が気じゃない・・・」

と囁いてからオトメチャンの瞳をじっと見つめると、

「なにがあろうが誰がオトメチャンを欲しいいうても、オトメチャンはうちのものじゃけえね。誰のものにもなったらいけんよ」

と言い――その唇に自分のそれをそっとつけたのだった。

その様子を主砲発射指揮所の上で見ていたハッシー・デ・ラ・マツコとトメキチは何となく恥ずかしくなってそれぞれの翼や前足で両目を隠したのだった。

 

上陸場から<海きゃん>取材班が来た事が『大和』に知らされ、迎えのランチが上陸場へと向かって青い海を走りだした――

            ・・・・・・・・・・・・・

さあ、いよいよ真打ち登場の『大和』取材編開始です!

いったいどんな取材になり<海きゃん>一行は何を目撃するのでしょうか!? トレーラー編始まりです!! 
陣痛

「陣痛」のモデルにさせてもらいました、本物の「神通」です。「神通」は昭和2年島根県美保関沖にて夜間無灯火演習中に駆逐艦・蕨と衝突。神通は艦首を喪失、蕨は沈没。後続の「那珂」も「葦」に衝突して両艦とも大破するという事件がありました。死者119名を出す惨事となり、神通艦長・水城圭次大佐はその後軍法会議の判決を待たずに自宅で頸動脈を西洋剃刀で切って自決なさいました(美保関事件)。



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オスカーさんへ

オスカーさんこんばんは!
「神通艦長」=陣痛浣腸!素晴らしい脳内変換です。
そういえば「女だらけの大和」の護衛駆逐艦に「無花果」がありましてその艦長は「無花果艦長」=「イチジク浣腸」と脳内変換された過去がありますww。
さあ。
「海きゃん」取材班はどんな取材を『大和』で敢行するのでしょうか!?
最近遅筆な私ですがどうぞよろしくお願いいたします!!!

まろゆーろさんへ

まろゆーろさんこんばんは!
さあとうとう『大和』に海きゃん一行が乗りますがいったい何が起きるでしょうか!
「女だらけの大和」、結構変な女が多いですから大変なことになるかも知れませんね・・
少し風邪気味でまた頭痛の再来、本当に困ったものです。でも楽しい話が浮かんでいますからキーボードをたたく指も軽やかにいきましょう~~!
神通艦長の潔さに比して今の政治家の居汚さ。
鳩山氏はまたまた議員を引退とか言ってるようですが前のこともありますから誰も本気にしないかも…!?
きっちり日本の舵を取れ!--ですね。

こんばんは。「神通艦長」の言葉の響きが「陣痛」と「浣腸」に変換され、出産を思い出していました…大変申し訳ございませんっ!!(ToT)
「大和」で何があるのかドキドキです~寝起きチェックとか!?(笑)
続きを急がなくても今までのお話がたくさんあるので楽しく読み返しています。のんびりマイペースですすめていって下さいね。

いよいよ大和に乗船!!
どんなドタバタ劇が始まり、そしてきゃんきゃんの人たちが巻き込まれていくか。楽しみです!! 大和には千両役者ばっかりが揃っていますもんね。きっと前代未聞だらけになるのではないでしょうか。
体調を整えられていよいよ佳境へと筆を……、マウスをカチカチして下さいね。
責任を取って艦長が自死する神通の事件。今の日本の舵取りをしている人たちと雲泥の違いですね。究極のプライドかもしれません。

かぎコメさんへ

こんばんは!
ありがとうございます、どうにかよくなってきましたが急に寒くなったのでちょっと風邪気味です(^_^;)
いろいろ大変でしたね、でも良くなって安心しました。
ご活躍を楽しみにしています^^。

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Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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