2017-10

「女だらけの戦艦大和」・『海軍きゃんきゃん』取材班来る!6 - 2012.11.11 Sun

司令の右手が大きく上に上がったその時、各分隊長が「投石準備かかれ」と大声を出した――

 

次の瞬間陸戦隊嬢たちは小腰をかがめてさっと前に走ると、塹壕の様な横長の穴に飛び込んだ。その前には土嚢のようなものがうずたかく積んである。

殘間中尉はぼんやりとそれを見つめて「あんなものがあったんだ・・・」と初めて気がついたようである。筑紫少尉も「今まで暗かったですからねえ。私も気がつきませんでした」という。その二人を、田森兵曹の怒声が襲った。

「そこの二人!何してる、早く塹壕に入らんか」

あわてて二人が飛び込むと他の編集部員はもう中に入って不安げな顔で他の陸戦隊員嬢の横顔を見つめている。

武田水兵長はさっきひらったこぶし大の石を田森兵曹に見せながら

「しかし、こんなもんをぶん投げ合ってよくケガしないですね。陸戦隊員の皆さんッて鉄人ですよね」

と笑ったその時。

田森兵曹は血相変えて武田水兵長につかみかかっていた。あわてる武田水長に田森兵曹は

「きっさまあ、誰が本物の石を投げていいって言ったよ!?ああ?こんなもん投げて当たったら死んじまうじゃねえかよ。バカも休み休みやれ、この野郎!」

というなりそのほおげたを思いっきり張り飛ばしていた。塹壕の中で吹っ飛んで、陸戦隊嬢の足元に背中からひっくり返る武田水長。

真っ青になる袴田兵曹ほかに、田森兵曹は

「常識で考えろや!いいか、我々の投石訓練はこういうところに積んである小型土嚢を投げ合うんだよ。土嚢訓練じゃカッコわりいから投石って言ってるだけだ、本物の石なんか持ちやがってあぶねえなあ、この馬鹿野郎」

と怒鳴り、その剣幕に分隊長の秋刀魚(さんま)中尉がピッと笛を吹いて司令に<訓練開始を一時停止>を知らせ、あわてて飛んできた。

「どうしたんだ!」とでっぱをむき出しにして問う秋刀魚中尉に田森兵曹はこいつらが本物の石を持っていたという話を憤りながらした。秋刀魚中尉は、

「田森兵曹、あんたこの連中にちゃんと話した?してなきゃわかんないよいくらなんでもさあ。でも始まる前でよかったよねえ、ヒョヒョヒョ!」

と最後は変な笑いをして走り去りもう一度笛を吹く。

田森兵曹は「俺、言わなかったかな?」と首をひねりつつ「そういうことだ、悪かったな」と悪びれずいい、「おい、始まるぞ!」と鋭く言った。

一旦降りていた司令の右手がもう一度上がり、「かかれー!」という大音声、そして副官の拳銃の発砲音とともに<投石訓練>は幕を開けた。

オオーッという大声が四方からあがり陸戦隊嬢たちは小型土嚢をいくつか素早くつかみ塹壕を飛び出してゆく。

明け染めたばかりの南の島の空の下、その異様な光景は展開されて行く。陸戦隊嬢たちは土嚢を投げつけ、塹壕に身を投じ、あるいはその場に伏せて<敵>に投石、またある者は土嚢が手近にないと見るや組み合っての<肉弾戦>にもつれ込んでいる。

すさまじい戦闘シーンが展開される。

その勢いに気圧されて殘間中尉他は塹壕から出ることができない。と、田森兵曹が戻ってきて「貴様ら何してる、早く行かんか。仲間が劣勢に立たされてそれでも知らん顔をしてるとは、それでも貴様ら海軍軍人かあ!」と怒鳴りつけまず殘間中尉を、そして筑紫少尉を塹壕からひっぱり出した。すごい馬鹿力である。もう、上官もくそもないようだ。

そして「さっさと行きやがれえ!」と二人の背中を思いっきり蹴飛ばした。トトト・・・と、勢いついて先へとつんのめるように走ってゆく殘間中尉と筑紫少尉。しかし二人はあっという間に小型土嚢の弾幕に取り囲まれる。

「ああ!殘間中尉たちが・・・」

袴田・三谷・小林の三兵曹と武田水長は鉄かぶとの下の瞳を見かわすと、土嚢を幾つもつかむなり「おおおー!」と叫び声も勇ましく塹壕を飛び出して行ったのだった。

 

演習場いっぱいで展開される投石訓練を、写野兵曹のカメラが克明に写してゆく。ときには危険を冒して接写。その命知らずな行動に、見守っている司令や副官は「素晴らしい!」と絶賛。撮られる側の陸戦隊嬢も、組み合いながらも何気にカメラ目線でポーズをとったりして。

ともあれ、投石訓練場は本物の戦場もさもありなんというぐらいの状況である。浜に打ち寄せる波音さえ、かき消される勢い。

 

さて。この小型土嚢であるがこれには中に白い粉が仕込んである。そのためこれが当たると袋が割れ、その粉をかぶることになりその白さで勝敗を決めるというよそから見たらまるでお遊びのような代物である。でもやってる本人たちは至極真剣。

慣れた陸戦隊嬢はほとんど粉も付けずに走り回り、<敵>陣に斬り込んで小型土嚢をぶつけ回る。土嚢が手近になければ取っ組み合いの白兵戦となり、相手の鉄かぶとを取った方が勝つ。

 

どのくらい時間が立ったか――訓練場はもうもうたる白煙に覆われている。

副官の拳銃が二発鳴り、訓練終了。各分隊員はその場にしゃがむ。どの隊員もそれなりに白くなって、お互いに見合っては下を向いて笑っている。

各分隊長は、それぞれの分隊の陸戦隊員嬢の白さを見て表にかきこむ。それを司令と副官が再度検分し公平を期して勝敗を決めるのである。

すっかり日も高くあがったグアムの北の浜、陸戦隊嬢たちの荒い息遣いが充満しているその、皆の間を飛び回って写野兵曹はカメラのシャッターを押しまくる。袴田兵曹や三谷兵曹、小林兵曹は陸戦隊嬢にそっとインタビューして回っている。

ややあって、司令の講評があり一番の分隊は高松分隊長の分隊、高松中尉はその貴族的な顔に喜悦の色をいっぱいに浮かべて分隊員と喜びを分かち合う。

そしてビリだったのが秋刀魚中尉と田森兵曹の分隊。これはもう、不慣れな『海きゃん』取材班を入れたからで、不可抗力というべきか・・。

それでも田森兵曹は「仕方ねえよな、はじめてだったんだから。それでも俺は貴様らは見直したぜ、袴田に三谷、小林、武田もだ。なかなかいい突進してたぜ。写野はあれこそ突撃精神満載で言うことない!――ただ」と笑ったが、すっかり真っ白になってちょっと見には誰だかもわからなくなった殘間・筑紫の二士官を見返るとこれには苦い顔で、

「あの二人はだめだ。あれは艦隊勤務にしなくて良かった、あれが乗った艦は絶対ろくなことにならんからな」

と断言したのだった。

 

こうして『海軍きゃんきゃん』のグアム取材は終わった。

一行がグアムを去る前に、陸戦隊司令が田森兵曹を伴ってきて「写野兵曹を是非、わがグアム陸戦隊に欲しい。山本長官に進言したい」と殘間中尉に打診してきたが「ありがたいお言葉ではありますが、こちらにも大事な人材でありますから」と丁重に断った中尉であった。

残念そうな司令と、それ以上に残念そうな表情の田森兵曹。二人は写野兵曹にでかい羊羹を5本も贈って餞別としたという。

 

『海きゃん』取材班がグアムからまた巡洋艦に乗り、いよいよトレーラー環礁の航空基地取材に向かう。

彼女たちの行く手に何が待っているのかーー

   (次回に続きます)

 

        ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

どたばたのグアム取材を何とか終えた一行です。田森兵曹も司令も、写野兵曹が欲しかったようですが、こればかりはなかなか・・・でした。

さあ次回からちょっとタイトルを変えてトレーラー編開始です。まずは航空隊取材だそうですので、お楽しみに。
土嚢

土嚢。こんなデカくはない!?



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● COMMENT ●

ウダモさんへ

ウダモさんこんばんは!
きゃんきゃん突っ走りましたよ~~ww!
どうぞごゆっくり読んでくださいね、ハチャメチャな話です^^。

ちょwww

ちょっとゲームしててブログさぼってたら、きゃんきゃん6まで行ってるしーー!w
これは大変@@!
ちと、お茶とお菓子準備してからゆっくりと読みたいので、また後で来ます★

matsuyama さんへ

matsuyama さんこんばんは!
本当に石なんか投げたら流血の惨事になりますよね・・・ガクブル・・・おしろいのような粉ならいくらでも!です。
写野さんは陸戦隊には行きませんでしたが、司令から直々にだと名誉です。しかしいかんせん、何の経験もないですから(^_^;)
コメント欄の件、一応テンプレを変更してみました。
いかがでしょうか・・・ご迷惑をおかけしました!!

オスカーさんへ

オスカーさんこんばんは!
まさに雪国・北方なら雪合戦ですよね!そいえば雪合戦の公式試合があるそうですがきっと壮絶なんじゃないかと勝手に想像しています^^。アリューシャン列島の守備隊でやりそう!
さていよいよトレーラー環礁に一行が来ます。航空隊、そして大和。何かが起きーるww。
服薬の甲斐あり、頭痛はかなり軽くなってきました。たくさんご心配をいただきまして本当にありがとう、お優しい言葉に涙が出た日もありました。
これからもがんばりますね、どうぞよろしくです^^!

まろゆーろさんへ

まろゆーろさんこんばんは!
すさまじい展開でした・・・今どきの学校の運動会ならPTA・モンスターペアレンツの非難の的になりましょう・・・(-_-;)
陸戦隊嬢たち、いつ敵と遭遇してもいいようにガンバッとります。命を張っとります!
田森兵曹、結構いいやつです。けじめの女です。
『大和』の出番が最近ありませんが、もうちょっとで「海きゃん」取材班が到着しまた何かありそうですからお楽しみに^^。

く~パパさんへ

く~パパさんこんばんは
お返事遅くなりごめんなさい。
ご訪問ありがとうございます、私は千葉市で育ちました。大多喜の地名は有名ですよね~!
これからもよろしくです^^!

土嚢の中味が白い粉で良かったですね。日焼けで真っ黒になった顔が、白粉塗ったように美しくなったかもしれませんね。
きゃんきゃん隊へのヘッドハンティング(?)。実現しなかったようですが、本人にとっては名誉ですよね。
このコメント欄へのリンク、クリックしてもなかなかアクセスできなくて往生しました。右サイドの最新記事一覧からやっとアクセスできましたけど、こんなことって自分のPCだけですかね。

こんにちは。雪国だったら雪合戦になっていたのかなぁ?なんて思いました。場所を移してまた何が起こるのか?楽しみはつきません。体調と相談しながら物語をすすめていって下さいね。無理はダメですよ~!!

いやはやほとんど運動会!!
それでもしっかりと気合が入ってて、やっぱり命を張っているんですね。
それはそれ、これはこれと区別しているような田森さん。もしかしたらやっぱり良い人かもしれなかったですね。
壮大な「女だらけの戦艦大和」、登場人物も場所が変わるともう出番も無くて寂しいですね。なんだか友情出演みたい。

How do you do ?

(^-^*)/ちわ^^
訪問ありがとうございます。
必殺訪問ポチ返しに伺いました。
ランキング、ピカピカの1位ですね。
ランキング興味あれば、当方日々更新してますので応援できますよ。
当方ブログ何も有馬温泉ですが、これからも宜しくお願い四万十温泉。
See you


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Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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