2017-10

「女だらけの戦艦大和」・『海軍きゃんきゃん』取材班来る!5 - 2012.11.09 Fri

「寝る時も気ぃ抜くなよ。毒虫や毒蛇が出るからな」と田森兵曹に言われた『海きゃん』一行はその晩――

 

彼女たちはたき火を囲んで特別に配布された毛布にくるまっていたが、風で毛布の裾が吹かれたり誰かがねがえりをうつたんびに殘間中尉が「わっ、蛇!?」とか筑紫少尉が「ギャー!毒蜘蛛が背中に入った!」と騒ぐので眠りも浅くなるというもの。さすがに写野兵曹が腹を立てて立ち上がり、

「静かに出来ませんか?いくらなんでも私は我慢がなりません!殘間中尉、起きて毛布の下や荷物をどけて確認してください!筑紫少尉!服を脱いで叩いてください!」

と二人を指差して怒鳴り始めた。彼女は撮影という重要な任務を必死にこなしてきたため、緊張の糸が切れかかっていたのだ。

血相を変えて怒鳴る写野兵曹の声を聞きつけて、司令が田森兵曹に「なにがあったか?他の隊員にも迷惑がかかるから、たもさん見てきて?」と天幕の中から声をかける。

見張り番に着いていた田森兵曹は(仕方ねえなあ、もう)と内心ふくれつつも立ち上がって『海きゃん』連中がいる場所に歩く。たき火の明かりに写野兵曹が怒り狂って手足を振り回しながら叫ぶ姿が不気味に映る。

「おい、どうした」

田森兵曹が声をかけると、一番手前にいた殘間中尉が振り返った。彼女もその隣の筑紫少尉も服を脱いで裸である。他の部員たちはもう疲れたのか毛布に頭までくるまって高いびきである。

殘間中尉が「ああ、田森兵曹!」とすがる。田森兵曹はその手を軽く払いのけ、「なにがあったんですね?そんな格好して」と不審げに尋ねる。

殘間中尉と筑紫少尉がかわるがわるいきさつを説明すると田森兵曹は大げさに天を仰いだ。そして「何バカなこと言って騒いでるんだか。これだけボンボン火をたいてりゃ蛇も虫も来やしませんって。・・・おい、写野兵曹。こっちこいや」と言って写野兵曹を手招いた。

写野兵曹はまだ鼻息荒く怒っていたが田森兵曹のそばに行った。田森兵曹はそっと写野兵曹の耳元に口を寄せると「貴様も大変だなあ。こんな連中と一緒にいるのも大抵じゃないだろう。今夜はおれんとこで寝ろよ」と言って、写野兵曹はなんだかほっとしたような顔になった。

そして二人は『海きゃん』一行から離れた田森兵曹の分隊の寝場所に行き、そこで写野兵曹はゆっくり眠ることができた。

が・・・殘間中尉と筑紫少尉の二人は結局夜が明けるまで「蜘蛛が!」「蛇が!」と言ってほとんど寝られなかったのだ。

 

そしてまた暗いうちに「総員起こし!」がかかって殘間中尉と筑紫少尉は寝不足の目をこすりつつ起きる。袴田兵曹が「夕べなんだか大騒ぎしてましたね、何があったんです?」と聞いたが殘間中尉は体裁悪くて何も言えない。筑紫少尉が小さい声できまり悪そうに「・・・いや、ちょっとした勘違いだよ」と言ってそっぽを向く。

「はあ、そうですか」と袴田兵曹は言って「あれ、写野兵曹はどこに?」と探した。すると闇の向こうから写野兵曹が歩いてきた。もちろん田森兵曹も一緒。

しかし、その二人を見た三谷兵曹の顔色が少し変わった、小林兵曹をつついて「おい、あれ。みろよ」と言って二人を凝視した。

皆がそっと二人を見やると、なんと田森兵曹が写野兵曹の手をしっかり握っている。そして田森兵曹の顔はほんのり紅くなっているではないか。

「うわあ~。写野兵曹夕べ田森に食われたのかなあ」

袴田兵曹が言うと武田水兵長はうんうんとうなずいて「可能性ありですよ。きっとこれも記事になりますね。うん」とひとりごちる。

一行の前で田森兵曹は繋いだ手を離すと

「さあまたこの先の浜まで行軍だ!今日はそこで実戦訓練だからそのつもりでおれよ」

と威張って、写野兵曹を見て「じゃ、またあとで」というと去り際、写野兵曹のお尻をさっと撫でていったのだった。

皆は(これは本物だ)と確信――

 

さあ、今日も訓練開始。北岬から東へ5キロほど行った浜辺で実戦訓練である。

陸戦隊嬢たちは浜に着くとさっそく装備を点検、整え始める。袴田兵曹は田森兵曹に「実戦訓練、ということは銃を撃ったりするんですよね!ああ、銃を撃つなんて初めてだからドキドキしちゃうなあ~」と話しかけた。すると田森兵曹はまるで人を小馬鹿にしたような笑みを浮かべて、皆を見返るなりこう言ったのだ。

「あんたらみたいな素人以下が銃を撃つなんてそんなおっかないことできるわけないだろうがよ?今日は<投石>で訓練変わりだ。しっかり鉄兜かぶっとけ。へたに当たったら怪我じゃすまないぜ」

殘間中尉と筑紫少尉は真っ青になった。そして殘間中尉は「・・・と、投石って言うとあのなんですよね、そのあのここら辺にあるその・・・」としどろもどろで田森兵曹に話しかける。

田森兵曹は「決まってんでしょうが。投石って言ったら投石だよ。でもさ、遊びじゃねえからね。あんたたちは俺の分隊に入って戦ってもらうからそのつもりで。それから、写野兵曹」と写野兵曹を呼び付けた。

写野兵曹は「はあ、なんでしょうか」とカメラを構えたままで田森兵曹の前に来た。田森兵曹は「写野兵曹は撮影専属だから、司令のおそばで撮影しなさい。けがをしたら大変だからね」と優しく言う。小林兵曹が思わず「なんで写野ばかり。ひいきじゃないか!」と口走るとそれが意外に大声になっていて田森の耳に入る。

田森兵曹は真っ赤になって怒りだし「いいんだよ!これは司令のご命令でもあるんだから。もっとのその前に俺が司令にお願いしたがな!四の五の抜かすと漬物石投げるぞ貴様!」と小林兵曹に食ってかかった。

そして「貴様らこっちに来い!」と田森兵曹の所属分隊に連れて行かれる。小林兵曹は写野兵曹の耳に、

「写野兵曹よ、貴様昨夜田森兵曹と何があった?」

と囁いた。写野兵曹はカメラを持って走りながらう~ん、と唸って

「あれから田森兵曹と司令に挟まれて寝たよ。すっごいい毛布で寝かせてもらってよかったあ!あれは普通の海軍毛布じゃないような気がしたなあ。あ!きっと司令の私物かもねえ~」

隣を走りながら聞いていた袴田兵曹が「・・・挟まれて寝た!?まさか貴様、司令にまで食われちゃったのかよ!」というと写野兵曹は不思議そうな顔で「私が食ったんですよ」と言い殘間中尉もぎょっとして写野の顔を見る。まさか、写野兵曹は年増好みだったのか!

が、写野は全く邪気のない表情で「おいしかったなあ、司令にもらった羊羹!あんなでかくておいしい羊羹、内地でも見たことないですよ。さすが陸戦隊は違うなあ~」と言って笑っている。

三谷兵曹は複雑な表情で「・・・羊羹をね・・・」と言った。

筑紫少尉は(写野兵曹はようするに司令と田森に気に入られたんだなあ。写野って女に好かれるタイプだったんだ・・・人って見かけによらんなあ)と感心(寒心?)している。

 

さて、いよいよ陸戦隊名物?「投石訓練」の開始である。これは8つの分隊を4つずつ紅白に分け投石をして勝敗を決めるというもの。

「こんな訓練、聞いたことないわあ」とこぼす殘間中尉にそばにいた陸戦隊嬢がそっと「知らなかったですか・これは最近司令が考案されたもので、銃弾の節約の為と隊員相互のレクリエーションも兼ねてるんですよ」と言ったが、筑紫少尉が「こんな危ないことがレクリエーションだなんて信じられん。しかも節約!?そんなに補給がひっ迫してるのか!?」と驚いた。

が、先の陸戦隊嬢は怖い顔で少尉をにらんで、

「そんなことがあるわけないでしょうが、あんたら『海きゃん』の編集のくせに帝国海軍の戦況も知らんとは潜りじゃないかね?銃弾も何も腐るほどあるが、司令はあるからと言ってやたらに使ってはいかん、使う時と使わんときを分けないと!・・・とこうおっしゃっておられるのだ。で、今日は貴様らの様なド素人が来たから余計もったいないわ、ということで投石訓練にしたんだよ。・・・しかし久しぶりだなあ~」

と最後は嬉しそうである。

「そ、そうですか」

殘間中尉はもうげっそりとして立っているのがやっとのようである。

各分隊がそれぞれ訓練場に配置されると、司令から「夜明けを期して攻撃開始。総員、ピストルの音を合図に攻撃せよ」との通達があり、田森兵曹はもう浮き浮きしている。

不意に武田水兵長が「田森兵曹。我々は記事を書かねばなりませんから外していただきたいであります」と言った。

が、田森兵曹「記事なんかあとで書けるだろうが。まずは体験だよ、貴様逃げようったってそうは烏賊の金玉だ!・・・それよりいつでも飛びだせるようしとけ。攻撃に間に合わんぞ」と彼女をにらんだ。

皆は泣きそうになりながら(ああ写野兵曹はいいなあ。特別扱いされて)と思いつつ薄暗がりのなか、手元の石を握った。

東の空が明るみ始めた。

腕時計を見つめていた司令が、右手を大きく上げた。

そして)――

  (次回に続きます 

     ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

長い話です・・・(-_-;)

グアム編もう少しお付き合いくださいね。さあ、危険なにおいの投石訓練が始まります。戦闘ど素人の『海きゃん』一行、どうなりますか。投石って石が当たったらただじゃすまないと思うんですが???

そして写野兵曹はこの後<無事に>グアムを離れられるのでしょうか!!



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オスカーさんへ

オスカーさんこんにちは!
ホントこの話は登場人物が多くって…いろいろ大変ですw。
取材も結婚も就職も・・・「こんなはずじゃ!」というのって多いですよね。取り返しのつくものならまだしも結婚なんてちょっとやそっとじゃリセットできないし・・・って最近はみんな景気よくリセットしますが…(-_-;)
「海きゃん」の一行、トレーラー等取材を終えるまでにたくましく、一人前の「ジャーナリスト」?になれるでしょうか。
海猿・・・というより海笊かもしれないww。
長い話ですがどうぞよろしくお願いします^^。

こんにちは。登場人物が多いとそれだけカップリングの数が増えるのは仕方ないことですね!?(笑)
でも、実際に取材って「こんなはずじゃなかった…」ってことが多い気がするので(結婚生活もですけど)時代を超えたリアリティーがあるような~さすが見張り員さま!!
海きゃんの皆さまがだんだんたくましくなって海猿になる日も近い!?
また続きを楽しみにしていますね~♪


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Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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