2017-10

「女だらけの戦艦大和」・『海軍きゃんきゃん』取材班来る!4 - 2012.11.07 Wed

――大宮島(グアム)陸戦隊司令部に着いた『海軍きゃんきゃん』取材班一行は、その夜あてがわれた部屋で雑魚寝状態ではあったが、飯もたらふく食いそして風呂も使わせてもらい、田森上等兵曹の「では、ごゆっくりお休みなさい」の言葉で眠りに着いた――

 

次の朝、まだ暗いうちに一行は

「総員起こしーー!」

という割れ鐘のような大声にビックリして飛び起きた。部屋のドアが蹴破られ、昨夜の田森兵曹が完全武装で立っているではないか。しかも銃剣を構えている。

殘間中尉は驚きすぎて胸の鼓動がずきずき胸壁に響くのを感じながら「お、おはようございます」とあいさつした。すると田森上曹は皆の毛布をはぎ取りながら

「さっさと準備をしろ!訓練に出かけるぞ」

と怒鳴る。昨日のあの穏やかな兵曹と同一人物とは全く思えない、180度の豹変である。

筑紫少尉と袴田兵曹が「訓練・・・訓練なんて聞いてないや」というと田森兵曹は黒メガネの顔をひきつらせて、

「聞いてない、だと!何甘ったれてんだこの女は!ここに来たからには訓練を一緒にしてそれを記事にしろ!お客様扱いは昨夜までだ!いいか生半可な気分で訓練してたら死ぬぞ貴様らあ!」

とさらに大声をあげ、傍らで腰を抜かしている殘間中尉に顔を寄せて「・・・何事も経験なんですよ。中尉さん」と言ってヘヘヘと笑った。が、黒メガネの奥の目が笑っていないことに殘間中尉は気がついてぞっとした。

「じゃ、じゃあ行きましょうか・・・」と毛布を畳んだ一行にまたも田森兵曹の叱声、いや怒声が飛ぶ。

「こんなふうにきたなく毛布をたたんでいいと思ってんのか、貴様らそれでよくやってこれたなあ!?あんたも中尉なら部下の毛布の畳み方、指導してきたんだろう?どこの艦に乗ってたんだよ?だらしねえ艦だったんだなあ?」

殘間中尉は泣きそうになりながら、

「す、すみません。あの私たち艦隊勤務の経験とかがないんです。私は兵学校でてすぐ編集部入ったし、ほかの子も皆同じようなもんで艦隊勤務もなくって・・」

と釈明。あきれたような顔で聞いていた田森兵曹は「なんだ・・・つまりは使え()ねえ奴ら()、ってことだな」と言って皆は一様に傷ついた。が、田森兵曹は

「なんだなんだ、傷つきました~みてえな顔してんじゃない!あんたたち『海軍きゃんきゃん』の編集部員なんだろう、それなら体当たり取材でも何でもして素晴らしい記事を書け!艦隊勤務や陸戦隊に負けない根性見せろやあ!」

と檄を飛ばした。皆は「はい。わかりました」と力なく答え、また田森兵曹に叱られる羽目に。

 

ともあれ『海きゃん』一行は着ていた二種軍装を脱がされ、「これを着ろ!」とあてがわれた服を着た。しかもそれはかつて上海陸戦隊が着用していた「水兵服」。田森兵曹は「あんたらの分の装備はねえからこれで我慢しろ!言っとくがこれはかなりの貴重品だから有難く思え」と言って笑う。

兵学校出身の殘間中尉と筑紫少尉はなんだか嬉しそうな顔で水兵服に手を通したもののよく着方がわからず袴田兵曹や写野兵曹たち海兵団出身者に教わる。そして「何事も格好から入れ!」との田森兵曹の有難いお言葉でフル装備。

鉄かぶとに白脚絆、左右の肩から水筒やら薬嚢やら防毒面やらなんやら下げしまいに銃を持つと・・・

「なんだちっとも様になってねえな」

との田森兵曹のきつい一言。それでもよろよろしながら一行は百戦錬磨の陸戦隊嬢の後をついてゆく。空にはまだ星がたくさん瞬いて、一行を見守るかのようである。

 

今日は取材ということで司令も必要以上に張り切って、先頭を剣を構えて行進してゆく。朝日を浴びて、溌剌と行進する隊員嬢たちを写野兵曹のカメラが撮影してゆく。武田水兵長が「写野兵曹、列から出たらいけないんじゃないですか」というのへ、田森兵曹は「列から出ないでどうやって写真を撮れるんだよ?あいつはいいんだよ、撮影班は。それくらい解れ!」と言って武田水兵長の頭をしばく。そして「お前しかし…でかい顔だなあ。気ぃつけないと弾の的になるぞ」と言って一人で爆笑している。武田水兵長は「でかい顔」にムッとしながら(ふんだ。お前のことなんかめちゃくちゃに書いてやるから覚えてろ!)と内心で毒づく。

「あのぉ、田森さん」と恐る恐ると言った態で殘間中尉が尋ねる。田森兵曹が殘間中尉を振り返ると中尉は「今日はどこで訓練するんですか」と聞く。三谷兵曹と小林兵曹が帳面と鉛筆で二人のやり取りを速記している。袴田兵曹は周囲の様子などを歩きながらスケッチしている。

その彼女たちをみてから田森兵曹は遥か行く手を指差すと「このずーーーーっと先の北岬まで行軍する。そのあと今夜は野営。で明日の朝はその東の浜で射撃訓練だ」と言った。

三谷兵曹が「ほう、その北岬とはここからどれくらいありますか?」と問うと田森兵曹は「そうだなあ、30キロも見ときゃ釣が来るかな」と言い放った。それを聴いて一瞬皆の顔から表情が消えた。

30キロ!そこまでこれを背負って」と殘間中尉が泣きそうになると田森兵曹は「だから朝早くっから出かけたんだろうが!あんたらみたいな鈍足のチョーど素人がいるから今日はわざわざ早く出たんだよ。夜までに北岬に着かなきゃ司令に罰を食らうぜ、いくら取材でもな。こちとら遊びじゃないんだからよ」と言って「わかったら早く歩け!」と小林兵曹の背中をドン!と押した。よろける小林兵曹。

 

そしてこの後、一行は「遅い。もっと早く歩けんのか!」という陸戦隊嬢の叱責と笑いを一身に浴びつつ、最後には屈強な陸戦隊嬢に引きずられて30キロを驚異的なスピードで北岬まで到達したのだった。陸戦隊嬢たちは笑いながらこの距離を踏破し、写野兵曹は(人間じゃない・・)と背筋が寒くなった。

 

北岬に着くころには夜の帳が周囲に降りはじめ、『海きゃん』の一行は取材もままならぬほど疲れ果てていた。田森兵曹は「普段ならとっくに着いてるのになあ」とぼやく。恐縮する『海きゃん』一行、中でも殘間中尉は目もうつろである。

だが鬼の田森兵曹は「はい、じゃあ食事の手伝いして。そこの中尉さん」と休むことさえ許してくれない。殘間中尉はへとへとになりつつも食事の支度を手伝う。

疲れていても使命感に燃える写野兵曹はその周りを飛び回ってシャッターを切り、司令に「あの子はパワーがあるね。あれだけの行軍の後でも仕事をしてるよ」とほめられている。

袴田・三谷・小林兵曹と武田水兵長はそれぞれ個別に陸戦隊嬢に話を聞いている。司令は「下士官たちはなかなかいいな。うん」とうなずく。筑紫少尉は・・・と見れば足の豆がつぶれて泣きながら衛生兵に手当てを受けている。

はあ~、やれやれと司令はため息をついてかたわらの副官に頭を振って両手を広げて見せた。そのまるでアメちゃん風のしぐさに周囲から笑いが起きた。

その声も聞こえぬか、殘間中尉は必死で烹炊員たちと食事を作る。

炊事の煙が夜空に白く昇ってゆく。

 

そしてその晩は、『海きゃん』一行生まれて初めての野営を経験することになる。

「殘間中尉、これはいい経験になりますねえ」と武田水兵長が言い殘間中尉がうなずくとそばから田森兵曹が頬を精いっぱい横に広げて笑いながら、

「いい経験かも知んないが、気いつけないと毒虫や毒蛇が出るぞ。眠ってもその辺の警戒は怠るな」

と言って・・・その晩殘間中尉以下はまんじりともできなかったのだった――

    (次回に続きます)

     ・・・・・・・・・・・・・・・・・

田森兵曹の意地悪?炸裂です。

お世話係とはいいながらこれじゃあ「余計なお世話」係ですね。さあ、『海きゃん』一行の明日はどっちだ!



にほんブログ村
関連記事

● COMMENT ●

まろゆーろさんへ

まろゆーろさんこんばんは!
田森兵曹の豹変ぶり・・・いったいどういうことなんでしょうか。これが彼女の素の姿だったら??
戦場取材は命がけですね。先ごろシリアで銃撃されて亡くなった山本美香さん。あの方はどんなところでも飛びこんで行ってそこに生きる民衆を見つめ、そして世界にその惨状を発信なさっていました。志半ばで亡くなり、どんなに無念だったか・・・
そこへ行くと「海きゃん」の一行は…タメイキ。
かつて海軍の空母にも報道カメラマンが乗ったことがありました。空母・瑞鶴で沈没まで撮影されていました。そのほか陸軍にも従軍カメラマンがいましたがその多くが還りませんでした・・・
さあ「海きゃん」取材班これからが正念場!です!!

酔漢さんへ

酔漢さんこんばんは!
いつもありがとうございます。
もう少しで『大和』の取材に参ります予定です^^。
暗号室・・・入れてくれるでしょうか??
「海きゃん」一行案外と抜けてるからNGかもしれません(-_-;)
陸戦隊。見るだけできつそうな感じで私は遠慮したいです、そいえば以前うちのお客さんのお爺さんが「上海特陸」にいらした方でした。
真珠湾も「歴史」ですか・・・まあ、田中角栄氏が歴史の教科書に出る時代ですものね・・昭和は遠くなりにけりなのでしょうか?
サミシイ。

matsuyama さんへ

matsuyama さんこんばんは!
「体験」。お寺のお勤めの体験は正直ちょっとでもきついものがありますね。
私も中学時代の修学旅行で座禅体験した時「朝っぱら早くから座禅なんて出来ん~泣」でしたものw。
「海きゃん」どんな記事が出来るでしょうか。まだまだ先が長い取材です・・・(-_-;)
寒さもそろそろ本格的になりつつありますね、お互い健康には気をつけてゆきましょう~!

いきなり!! 変貌ですか。
これは何か意図があるのかなぁ。本当は心を鬼にして愛のムチとか。
しかし取材というのは決死の覚悟でないと出来ないことですね。特にこんな戦地の取材は臨場感や緊迫感が無ければただの小説ですから。命を張って闘っているいる人たちにとっては、「取材班だとぉぉぉ!?」みたいな思いもあったのかもしれないですね。
戦地の記事内容もですが、彼女たちの悪戦苦闘のこれからにワクワクしてきました。

取材だぁ。

まとめて拝読させていただきました。
大和が雑誌の取材を受ける?大いに宣伝してください!
場合によっては暗号室へもどうぞ。
陸戦隊随行はきついよなぁ。
次男の歴史の授業。
NHK「そのとき歴史が動いた 真珠湾」を見せられたとか。
歴史の授業になる時代なんだなぁ(当たり前なのかも)と思ってしまいました。

体験取材ですよね。これはいい経験になるでしょう。
昔、社員だった頃、自分も1日体験研修というのに参加したことがありました。
お寺の本堂を利用し、朝早くから読経のお務め、ラジオ体操、ランニング、写経、座禅、滝の水行など内容豊富な研修でしたね。普通の暮らしに慣れた身体にはきつかったです。
今は思い出だけで、二度とやれない研修ですけどね(笑)。
体験取材、さぞや中味の濃い記事が書けるでしょう。
立冬に入り、寒さも一段と堪えるようになりました。十分お身体気を付けて、海キャン取材続けてください。

オスカーさんへ

オスカーさんおはようございます。
どたばたのしょうもない取材です(^_^;)でもやはり、そう!経験ですよね何事も。習うより慣れろといいましょうか・・・
この後彼女らがどうなりますか!まだトレーラー取材も控えておりますからながい話になりそうです。よろしくお付き合い願えればと思います^^。
昨日の立冬は比較的暖かでしたが今朝はちょと冷えますね。
オスカーさんも御身大切にお過ごしくださいね!

こんばんは。順風満帆とはいかない取材活動ですが、何事も経験ですね!海きゃん編集部の皆さまがどんなふうにたくましく成長するのかも、活躍が楽しみです。
今日は立冬ですね。本格的な冬はまだまだですが、お身体に気をつけてお過ごし下さいませ。


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://haitiyoshi.blog73.fc2.com/tb.php/1660-a69667f7
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

「女だらけの戦艦大和」・『海軍きゃんきゃん』取材班来る!5 «  | BLOG TOP |  » 「女だらけの戦艦大和」・『海軍きゃんきゃん』取材班来る!3

プロフィール

見張り員

Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

最新記事

最新コメント

フリーエリア

無料アクセス解析
無料アクセス解析
現在の閲覧者数:
Web小説 ブログランキングへ
小説家志望 ブログランキングへ ブログランキングならblogram
夢占い 夢ココロ占い (キーワードをスペース区切りで入力してください。)

カテゴリ

未分類 (21)
大和 (486)
武蔵 (66)
大和と武蔵 (41)
海軍航空隊 (28)
麻生分隊士 (3)
オトメチャン (39)
連合艦隊・帝国海軍 (155)
ふたり (69)
駆逐艦 (10)
ハワイ (8)
帝国陸海軍 (23)
私の日常 (112)
家族 (22)
潜水艦 (3)
海軍きゃんきゃん (24)
トメキチとマツコ (2)
ものがたり (8)
妄想 (5)
北辺艦隊 (1)
想い (14)
ショートストーリー (4)
アラカルト (0)
エトセトラ (5)
海軍工廠の人々 (5)
戦友 (10)

月別アーカイブ

リンク

このブログをリンクに追加する

FC2ブログランキング

FC2 Blog Ranking

FC2Blog Ranking

最新トラックバック

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム

RSSリンクの表示

Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QRコード